別にモチベが下がったわけではないんです!試験勉強が忙しいんです!
なるべく14日にはもう1話投稿...したいなぁ...
1
「ああ、なんだ。そんなことか」
ビニール袋の中に入っていた飲料水や食料を冷蔵庫に入れながら事のあらましを全てたきなから聞いた詩季は呆れたように言った。
因みに千束はつまらない誤解をした自分を恥じているのか、ソファに顔を埋めてなにやら呻いてはいる。それを苦笑いしながら見ている有栖。
「先ほどはすみませんでした。不法侵入した上に下衆の勘探りのようなことをしてしまい...」
たきなも心なしか申し訳なさそうに言った。
「気にしなくていい。誤解されるようなことをことをしているのはオレだし、主犯は十中八九千束だろ」
「彼女、有栖さんとはどういう関係なんですか?」
「昔入院していた病院が同じで、よく有栖がオレの部屋に逃げてきていた。お互い、歳が近かったからな」
その程度の仲だよ、と詩季は言った。
「彼女もリコリスなんですか?」
「違うよ。至って普通の学生だ。後、あんまりリコリスの名前は有栖の前でだすなよ。昔、千束がうっかり言った時に誤魔化すのが大変だったからな」
たきなはベッドに寝転がる有栖を見ながら、小声で聞く。
「(いいんですか?一般人を個人宅に入れて)」
「(別に。オレがそういう人間だと身バレするようなものは置いていないし、有栖もオレも、他人の私情に踏み込むような質じゃない)」
ごもっとも、自分は粗方有栖のことを知っているのだが、という言葉を詩季は心にしまっておくことにした。
「ところで、二人して何しに来たんだ?」
詩季が聞くと、あっ、とたきなは千束の方を見て、
「千束。言い出したのは貴女なんですから説明を」
「......せっかくだから三人で友好を深めようと思っただけですー」
「友好を深めるのと、其処にある袋一杯の食材は何の関係が?」
そう詩季が聞くと、たきなはきょとんとして、
「千束が雪城さんが料理が少しばかり出来ると言っていたんだけど」
「......千束」
詩季が睨むと、びくり、と千束の肩が揺れる。
「ナ、ナンノコトカナー?」
思わず詩季はため息をつく。大方、自分の部屋が片付いていなかったからだろうな、という予想を立てて、
「悪いけど、オレには料理はできないよ。おかゆとパスタを茹でるのが精一杯だ」
流石にその言葉にはたきなも驚いたようで、千束の方を見る。強張った表情で目を逸らす千束。
「まあ、後は千束がやってくれるだろうからオレは休むぞ。もうオレと有栖は食べたからな。
用意するなら、そうだな。軽めか、胃に優しいものを頼む。部屋の中にあるものは自由に使ってくれて構わないから」
そう言って、詩季は床に寝転がる。床に転がるボロボロの雑誌を手に取って、それをつまらなそうな表情で読み始める。
「......千束」
棘のある言葉を千束にかけるたきな。わかりました、と少し怯えめいたものが混じった声を上げてキッチンに向かう千束。
「度々思うんだけど、キミは少しは自分のことに拘りを持った方がいいんじゃないか?」
そういう有栖に向かって、詩季は、
「それはお互い様だ」
そう返した。
2
ちょっとした小噺だけど。
いつ悪化して死ぬかもしれない。一生病室で過ごすことになる可能性もあるとすら言われたが、数年である程度は持ち直して病弱体質にまで落ち着いた私。
大きな外傷で運ばれ、完治したが虚弱体質の詩季。
一時期、生命の危機に晒されて、今も何かの拍子にコロリと死にかねない、という意味では同じだった。
趣味と呼べるものも、執着するものもボクにはない。基本的にものは必要な時に使えればいいという思考であり、其処に好みが入る余地はない。
だから、そういう人間特有の雰囲気みたいなものは、よくわかるつもりだ。
錦木さんには、何故かそういう意味では親近感を感じた。
予め言っておくと、ボクは錦木千束という人間が嫌いだ。
自分と似たもののはずなのに、万人にあれだけ明るく接して、人の心に残ろうとすることが。
ただ亡霊としてではなく、生者として存在しようとする行為が。
生者として生きようとしている癖に、何処か達観した雰囲気を持っているのが。
そんな中途半端さが、ボクには許せない。
だけど、折り合いはつけることが出来る。
錦木千束という、人間は許せなくても、リコリコの店員。一時期好きだった人を好きであろう少女としてなら、割り切ることが出来る。
台所で笑いながら鍋らしきものを作る二人。つまらなそうに、何度も読み込んだであろう雑誌を読む詩季。
こんな日常が続くのなら、こんな不快感も嫌悪感も心地いいものだな、と。
ボクはそう思うのだ。