ふと見た時に数字を見て驚きました。
これからも拙い文章など駄文が多い作品ですが、どうぞご愛読ください。
1
早朝4時。
いくつかの書置きを残して、詩季はミズキに指定された場所にいた。
とあるデパートの立体駐車場。予め渡されていた偽装のカードで電子ロックをスルーして、2階に向かう。無論、監視カメラの類はあるが、護衛対象のハッカー──ウォールナットが現在ハッキングして偽の映像を流しているらしい。
目的の3階には、何処にでもありそうな二台の白の乗用車が止まっており、それに寄りかかる形で、ミズキが頭以外を妙な着ぐるみを着て缶コーヒーを飲んでいた。
「おはよー。飲む?」
「貰えるなら」
そう言うと、ミズキは車のトランクにあるクーラーボックスから缶コーヒーを取り出して詩季に投げて渡す。
「ウォールナットは?」
受け取った缶を開けながら、詩季が疑問に思って聞くと、
「此処だ」
乗用車のドアが開き、小柄な少女が顔を見せる。どう見ても自分より若い、小学生と言われても納得出来るような少女だった。
「......冗談はよせ、と言いたいけど、前例があるから言えないのが悲しいところか。そいつはどうするんだ?」
「其処にあるスーツケースで運ぶ予定よ。防弾に防爆性能も高い、DAの技術力の粋を結集した要人警護用素材を使ったスーツケース。因みにアンタの乗る車にも全く同じものがあるけど、血が詰まったボトルが大量に入っているのよ。その場凌ぎなら騙せるくらいはリアリティはあるわ」
そうか、とだけ言って詩季は車のトランクを開ける。時間的に、そろそろ着替えなきゃいけない時間だった。
「......なんだこれ?」
白と黒。
パンダを模した、謎の着ぐるみが入っていた。
「見ての通り、パンダだ」
「いや、見ればわかるけど」
「色々と機能もあるし、何より僕みたいなのは顔が割れないようにするのが長寿の秘訣なのさ。基本、僕は顔が割られないよう最大限努力している」
その割には、オレやミズキには簡単に素顔を見せているな、と詩季が言うと、
「ん?ああ、暫くリコリコに居候として居座るつもりだからな」
すらり、と、爆弾発言をかました。
「言ったでしょ。色々と弾んでくれた、って。DAからの依頼や私たちの仕事を手伝ってくれることになったのよ」
そうミズキが補足すると、
「僕は肉体労働じゃなくて電脳戦専門だけどな」
そう付け足すウォールナット。一々言い返しても仕方ない。幸い、とでも言うべきか、詩季がいつも使う制服でも着られるように調整がしてあった。
「まあ、細かいことはどうでもいい。鬼が笑う。それで一応、オレは港。ミズキは空港で合っているか?」
「ああ。そのマスクにはマイクが仕込まれているから、ルートはその度に僕が案内する」
了解、と詩季は返し、車に乗り込む。内装も一般的であり、特殊なものはなにもない。
『聞こえるか?』
パンダの着ぐるみについたマイクとスピーカーから、加工されたウォールナットの声が聞こえる。
「通信良好。こっちの音声は?」
『聞こえている。設備に不備はないな』
車の方も、走らないで出来る確認作業は全てしていく。慣らし運転が出来ないのが唯一の後悔だが、それはこれから調整していくしかない。
さて、これからどうなることやら。
相手の戦力が不明なのが不安要素だった。いつだったか、とあるものを千束と車で移送していたとき、人気のない山奥だということを利用してアサルトライフルで武装した男たちの乗る何台もの乗用車とカーチェイスを繰り広げたことを思い出す。
結局は、落ち着くところに落ち着くか。
そんなことを思いながら、パーキングブレーキを解除した。
2
『午前5時。
〇〇地区の第四立体駐車場からウォールナットの乗るとみられる乗用車が発進。運転席はフィルムによって見ることは不可能』
「来た来た来たァ!」
とあるマンションの一室。
ロボットのマスクを被った、青年というには若すぎる声色の少年は届いたメールを見て声を上げる。
嗚呼、この日を何度夢見たことか。
ついにあのウォールナットを越えて、この界隈でトップになることを。
老人はさらば。時代は僕のような若者が作るものなのだから。
「さあ、下剋上の時間だ」
キーボードを叩く。今回雇った駒にメッセージを送る。それなりの装備を持ったチームのため、値は張ったが、必要経費だ。
それに。
画面に映る、黒塗りの車両。そのドアには、スズランを模した紋章が描かれていた。