スノウドロップ   作:宮棟メルカ

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 本作とは関係ありませんが、ブレイクブレイド完結しましたね。
 ああ、また一つ楽しみが減った...
 二期のアニメ化待ってます。


嘘つきと疑惑Ⅴ

 1

 

 銃撃は、いつのまにか止んでいた。

 どうやら向こうも終わったらしい、ということを、詩季は朦朧とする頭で理解した。

 依頼人、ウォールナットは死んだという報告を受け、千束とたきなが偽装した救急車に乗って運ばれるのを見送った後、クリーナーを頼んで一息つく。

 ズキン、と、頭が痛む。

 酷く、気分が悪い。

 息が上がるほど動いたつもりはない。怪我もしていない。周辺には、増援で来た五人を含めて計十二人の気絶した子供が転がっている。

 まさに問題なし(ノー・プロブレム)だ。

 確かに手間はかかったが、それ自体はどうでもよかった。

 

「さて、どうしたものか」

 

 思わず、そう呟く。

 頭が、痛い。

 ガランサス時代にいた戦場にいた時にあった、あの痛みだ。

 あの時と同じく子供を相手にしたからか。否。そんなわけはない。

 あるとすれば──空気、だろう。

 あの場所と同じ匂いだ。硝煙と血、麻薬と煙草の匂い。そして、

 

「へぇ。てっきりあの街で死んだものかと思ったが、意外としぶといみてぇだな。詩季」

 

 緑髪の男が、目の前にいた。

 真島。

 ガランサスが中東のとある街で活動していたころだ。少年兵として、その街を仕切る武装勢力に潜入していたころに、一度交戦し、同じ目的のために二度共闘した男。

 目的は同じだ。その武装勢力の現地指揮官を暗殺することによって、戦力の均衡を保つ。それが日本という国家の国益に繋がる、ということだった。

 真島の目的は、ガランサスとは違って単純なものであり、欧州の支援によっていきなり勢力を増した武装勢力の力を削ぐことで『バランス』を取ろうとしたらしい。

 

「お前こそ、少年兵を使うような人間には見えないけど。宗旨替えでもしたのか?」

 

 少なくとも、真島は自前の部隊を保有しているし、それなりの鉄火場を渡り歩いていない限り、大人でも仲間に入れないような人間が、少年兵を部隊に入れるわけがない。

 そして、一度戦っている以上、互いの実力はある程度知っている。真島の言葉を見るに、詩季が此処にいたことは想定外のことだろう。詩季を殺すならば、完璧に此方を倒しうる数の兵隊を持ってきているはずだ。

 

「まさか。偶然この辺りから銃声が聞こえたもんだから、見に来ただけだよ。元々、この国には用事があったからなぁ」

 

「お前が来たのは、ただの依頼?」

 

「いや。今回にクライアントはいない。これは俺の信条に沿った行動だ」

 

「バランスを取る、ってやつか」

 

「ああ」

 

 くつくつ、とおかしそうに真島は笑う。心底楽しいと言わんばかりに。

 

「お前、何が目的だ?」

 

 先ほどの笑みから一転、ギラリとした目で詩季を見る。

 

()()?何処までお前が調べたか知らないけれど、お前が此処に来たのなら別だ。だけど、()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言って、詩季と真島は別れた。

 特段、積もる話もない。そんな再会だった。

 

 

 


 

 2

 

 バスや鉄道を利用してリコリコに帰ると、不貞腐れた千束と、団子を用意するミカ、不満げな表情をするたきな、笑うミズキだった。

 

「なんだミズキ、もうネタばらししたのか」

 

 面白くない、と肩を竦める詩季。

 

「なんだよー、詩季知ってたのかよー」

 

 ぐでー、とカウンター席にうつ伏せになる千束。

 

「だってあんた芝居下手だし。むしろたきなと一緒に自然に騙されて自然なリアクションしてくれた方がいいじゃない?ほぉら、こーゆー」

 

 笑いながら、スマホの画面を千束に見せるミズキ。其処には、恐らくウォールナットが死んだと勘違いして泣いている千束の顔が写っていた。

 その写真を消そうとミズキのスマホに手を伸ばす千束と、面白そうに笑うミズキ。どこからどう見ても、あんなことがあったとは思えない光景だった。

 

「やっぱり、命大事に、って方針は無理がありませんか?」

 

 浮かない顔をしていたたきながそう言った。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

「あの時、きちんと三人で動けば、こんな結果にはならなかったと思います」

 

「目の前で人が死ぬのをほっとけないでしょ」

 

 千束がそう言うと、珍しくたきなは声を荒げて、

 

「私たちリコリスは殺人が許可されています!敵の心配なんて......」

 

 千束は両手を叩き、

 

「あの人たちも、今回は敵だっただけだよ。誰も死ななかったのは良かった良かった」

 

「そういう話では...ないと思います」

 

 気まずい空気が流れる中、ミカがそれを破るように、完成した団子をカウンターに並べる。

 

「ほら二人とももうやめろ。私たちも騙すようなことをして悪かった」

 

「あー、先生甘いもので買収するつもりぃー?」

 

「いらないか?」

 

「ううん、食べますー」

 

 いつも通りの調子で会話をする千束とミカ。それでもたきなは納得がいかない。

 当然といえば当然だ。人として正しいのは千束かもしれないが、リコリスとして正しいのは間違いなくたきななのだから。

 

「雪城さんは、どう思うんですか」

 

 ふと、たきなが詩季にそう聞いた。

 対して、詩季の解答はシンプルだ。

 

「生憎と、千束ほど博愛主義じゃない。だけど、別に殺さなくていい状況なら、千束の主義とやらに付き合ってやってもいい。ただ、それだけだよ」

 

 そう言って、詩季は奥の更衣室に入る。

 その後、国外逃亡したはずのウォールナットが二階の座敷部屋に住むことになっていた話は、割愛させてもらおう。

 

 

 

 




 タイトル決めるのが何気に難しい。
 一応四話まで書いたら未来福音と痛覚残留に軽く触れる予定です(痛覚残留については本当に少し程度ですが)。
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