ゼロと師   作:シャザ

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 ファイアーエムブレムエンゲージ発売記念に書いたIFストーリーです。
 今回の話は本編とはまったく関係ないので悪しからず。
 作者もこれからやりますのでエンゲージのネタバレはありません。


外伝
異伝 ルイズと魔法の指輪


 …少女は、呆然と()()を見ていた。彼女の名前はルイズ、トリステイン魔法学院に通う生徒であり、メイジだ。

 落ちこぼれと馬鹿にされることも多いが、努力家である。欠点と言えば…魔法が使えないことくらいであろうか。

 現在彼女は『サモン・サーヴァント』で使い魔を召喚しようとしていたのだが…。

 

「…なんで、なんで…なんで使い魔召喚で指輪が出てくんのよぉ!!?」

 

 そう、ルイズが召喚したのは、なんだか禍々しいデザインの指輪だったのだ(もちろん生き物ではない)。

 その様子を見たクラスメイトたちは、ルイズを馬鹿にした。

 

「はっはっは!なんだあの、だっせぇ指輪!」

 

「ふふふ、無能(ゼロ)のルイズにはお似合いよ!」

 

 ルイズがプルプルと屈辱に震えていると、教師のコルベールが話しかけてきた。

 

「……えー、ミス・ヴァリエール。……とりあえず、それに『コントラクト・サーヴァント』をしてみてくれないだろうか?」

 

「や…やり直させてください!だって指輪ですよ!?魔法生物どころか普通の生き物ですらないじゃないですか!!」

 

「次の授業の時間ギリギリまで待ったんですから、早く契約したまえ」

 

「…………ハイ」

 

 ルイズは観念したのか指輪に向けて杖を振った。

 

「わ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。……このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

 ルイズは禍々しい指輪に口づけする。指輪の裏側にルーンが刻まれ、この指輪はルイズの使い魔になったのだ。

 コルベールは興味深そうに指輪を観察する。

 

「ミス・ヴァリエール、少しだけそれを貸してくれないか?ルーンの写しを取りたいのだが…」

 

「…いいですよ」

 

「ありがとう。……見ずらいな。………よし、こんなところか。…ミス・ヴァリエール、返しますよ」

 

 ルイズは指輪を受け取ると、左手の薬指に禍々しい指輪をつける。

 

(……なんだか、呪いの指輪みたいで怖いわね)

 

 そう思いながらも、彼女は次の授業のために移動を始めた。

 

 

 その次の日、事件は起こった。メイドの少女が拾った小瓶から始まる二股発覚である。

 その中心人物であるギーシュは、鬼のような形相でメイドを責めていた。

 

「きみィ、わかっているのかね!?きみが余計なことをしなければ、あの二人が傷つくことはなかった!きみのせいだ!!」

 

「ひっ…ご、ごめんなさいっ…」

 

 メイドのシエスタに、悪意があったわけではない。むしろ善意で行動した結果ギーシュの不貞が発覚したのだ。

 

「ごめんですむ問題じゃあないだろう!きみの罪は消えない、消えないぞ!」

 

 ルイズはその様子を見ていた。…ギーシュを止めなければという気持ちはあるが、足が動かない。

 

(……間違ってるわ。ギーシュのやっていることは間違っている…。善意で動いた平民を虐げていいわけがない…!…でも、わたしにはどうすることも……)

 

 その時、ルイズの左手に嵌まった指輪が、ほのかに熱を帯びた。ルイズははっと指輪を見る。

 

(……ちがう。…力がないというだけで諦めれば、わたしはきっと大事なものを見失ってしまう…!戦わなくちゃ、()()()()()()()()()()()…!!)

 

 ルイズは、ギーシュに向かって歩き出す。それに気づいたギーシュは、怪訝な顔でルイズを見た。

 

「……なにかね、今こっちは忙し……」

 

「いい加減にしなさい二股ギーシュ!!あんたが全部悪いし、その子に罪はないわ!」

 

 ルイズの正論に、ギーシュはポカンと口を開けると彼女を睨みつけた。

 

「な、なにィ!?無能(ゼロ)のくせに生意気だぞ!今すぐその言葉を撤回しろ、ミス・ヴァリエール!」

 

「そんなことするわけないじゃない!あんたがあのメイドに謝罪するまで許さないわっ!!」

 

「………互いに、譲る気はないってことだね…。…ならば、決闘だ!!」

 

 ギーシュの宣言に、周りにいた生徒は動揺した。

 

「お、おいおいギーシュ、さすがにそれは…」

 

「そうだぜ、相手は女の子だぞ…?」

 

「こちらに喧嘩を売ってきたのは彼女の方だぞ!?身の程をわからせてやる!」

 

 冷静さを失っているギーシュに、ルイズは内心ビビりながらも宣言する。

 

「上等よ、かかってきなさい!」

 

「ヴェストリの広場で待っている、精々準備することだ!」

 

 ギーシュが去っていった後、シエスタは震えながらルイズに近寄った。どうしても聞かなければいけないことがあったからだ。

 

「…どうして、助けたんですか…?わたしのことなんて、放っておいてもよかったはずなのに…」

 

「あなたが悪いことしてたわけじゃないでしょ?ちょっとあいつシメてくるから、楽しみに待ってなさい!」

 

 

 十分後。

 

「ぎにゃんッ!?」

 

 ルイズは、ギーシュが造ったゴーレム『ワルキューレ』に転ばされていた。土だらけになったルイズに、ギーシュはため息をつきながら降参を促した。

 

「…あのさ、無能(ゼロ)が僕に勝てるわけがないじゃないか。よくわかっただろう、杖を置いて降参したほうが身のためだぞ」

 

 ギーシュは女子に本気を出すのが大人げないとでも思ったのか、直接の暴行を避けてルイズを足払いで転ばし続けているのだ。

 

「こんのぉ…みぎゃッ!まだまだ…ぐにゃ!?」

 

 ルイズは諦めずにギーシュに攻撃するために近づこうとするものの、『ワルキューレ』のせいでうまく進めない。

 

(…諦めるもんですか。絶対にあいつの顔面ぶん殴ってやるんだから…!!)

 

「………ちっ。こうなったら腕の一本でも折らないと駄目のようだね。…もう少し賢いと思ってたよ、きみは」

 

 『ワルキューレ』に蹴りつけられ、ルイズはゲホッと咳をする。

 

「………ぜ、絶対に…負けてたまるもんですか…」

 

 ……その時、ルイズの指輪が光を放った。

 

「………え?」

 

「な、なんだっ!?」

 

 

 そこに現れたのは、妙な風貌の男だった。美形の顔立ち、手には骨のような剣を持っている。…しかし、ルイズはそんなことよりも男の異常性に目を奪われていた。

 

『………永い、夢を見ていた気がする』

 

 男は半透明で、宙に浮いていたのだ。

 

「………お、おばけ…」

 

 思わずそう呟いたルイズに、男はきょとんとしている。彼女が付けている指輪に気づくと、むっと不機嫌そうな顔になった。

 

『…自分はおばけではない。きみの付けている指輪に宿る『紋章士』だ。知らないで付けていたのか?』

 

「…紋章士?」

 

『そうだ。その指輪には、自分の持っていた力が封じられている。…習うより慣れよ、ともいうし試してみてくれ』

 

「た、試すって言ったって…どうすればいいのよ!?」

 

 ルイズは『紋章士』に困惑している。その間に、ギーシュの『ワルキューレ』が様子見をやめて突っ込んできた。

 

『とりあえず攻撃してくれ、話はそこからだ』

 

「わ、わかった…!」

 

 ルイズはいつものように失敗魔法を撃つが、直線的な攻撃なので『ワルキューレ』は簡単に避けてしまう。

 

『………それ、もう一回』

 

 ベレトが指を鳴らすと、時が止まった。何も動いていない世界に、ルイズはうろたえる。

 

「………………はぁ!?え、なにこれどういうこと!!?」

 

『…自分の力で時を止めたんだ。このまま時を戻すから、敵の動きに合わせて魔法を撃ちこむんだ』

 

 彼女が気が付いた時には、様子見をやめた『ワルキューレ』が先ほどと同じように突っ込んできた。

 ルイズは『ワルキューレ』の動きを思い出しながら、進行する場所に向かって爆破する。ゴーレムは粉々に砕け散った。

 

「な、なんだって!?」

 

「…すごい…!」

 

 今まで時を自由自在に操った経験など、ルイズにあるわけもない。彼女は目を輝かせながら笑顔を浮かべた。

 

『なかなかやるじゃないか…ええと、きみは…』

 

「ルイズよ」

 

『…良い名前だ』

 

 『紋章士』は頬を緩ませる。そんな二人を見ながらギーシュは叫んだ。

 

「まぐれ当たりだ!行け、『ワルキューレ』たち!叩き潰せッ!!」

 

 ギーシュは六体のゴーレムを造ると、ルイズを取り囲んだ。

 

「うわ、きた!どうすんのよこれ!一体でこれだけ手こずったのに…!?」

 

『大丈夫だ。今、きみが使った時を操る力…『天刻の拍動』だが、あれは自分の力の一端に過ぎない。…さあ、共に戦おう!』

 

「え、戦ってくれるの?…というか戦えるの!?あんた身体ないっぽいけど!」

 

 ルイズは『紋章士』の顔を見る。彼は微笑みながらルイズに手を差し伸べた。

 

『…きみと自分で融合するんだ。『紋章士』は指輪を付けた者と合体することで、その真価を発揮する!』

 

「え、ええー!?」

 

『共に叫ぶんだ、『エムブレム・エンゲージ』と!』

 

「わ、わかったわよ!やればいいんでしょ!?」

 

 ルイズは困惑しながらも、『紋章士』を信じることにした。どっちにしろこのままではやられてしまうことは明白だからだ。

 少女が左手の指輪をかざすようにポーズをとると、『紋章士』もそれと対になるように剣を構える。

 

「『…エムブレム・エンゲージッ!!!』」

 

 

 『ワルキューレ』を突進させようとしたギーシュは、突然の強い光に動揺する。

 

「な…なんだぁ!!?い、いったいなにが…!!」

 

 光が収まった後、ギーシュが見たものは…不思議な衣装を着たルイズの姿だった。

 白銀の装束に身を纏い、骨のような剣を左手に持った彼女は、女神のように美しかった。

 戦意を失いそうになりながらも、ギーシュは声を張り上げる。…そうしなければ、彼女に俯いて許しを請いそうになるから。

 

「…こ、こけおどしだあああ!!!」

 

 ギーシュのゴーレムが槍を持ってルイズに襲い掛かる。ルイズはそれを横目で見ると、剣を横に一閃。

 青銅の戦士は横にずれていき、崩れ落ちる。

 

『(その剣の名はブルトガング、英雄の遺産だ。とりあえず剣を出してみたが、どうだ?)』

 

「うわ、頭の中に声が…!?すごい切れ味ねこれ!」

 

『(エンゲージしている時は、特別な武器を使えるようになる。自分の場合戦闘スタイルによって武器の種類を選べるが…きみは随分多才のようだ。

どうやら全ての武器を扱えるらしいな)』

 

 ルイズは慌てて首を振った。

 

「ちょっと待ってわたし武器を取ったのも初めてよ!?これあんたのおかげじゃないの!!?」

 

『(え゛、うっそだろきみ…。それで素人は伸びしろの塊じゃ…、よし、次はコレを使ってみてくれ)』

 

 剣が消え、ルイズの手に槍が現れた。彼女は前方の『ワルキューレ』たちを槍で乱暴に薙ぎ払い、ギーシュに突撃しようと迫った。

 

「覚悟しなさいギーシュッ!」

 

「うわああああ!!く、来るなぁああ!!」

 

 ギーシュは全力で逃走を図る。『紋章士』は戦況を一瞬で分析すると、再び武器を換装する。

 

『(ルイズ、弓で狙い撃てッ!!)』

 

「よっし、いっけええええ!!!」

 

 魔弓『フェイルノート』を構えた彼女は、背を向けるギーシュの持っていた杖を破壊した。彼はゴロゴロと転がった後、冷や汗をかきながら撃たれた自分の手を確認している。

 

「ぎゃあッ!?ゆ、指が取れた!?………つ、杖がへし折られただけか…」

 

 …ルイズの服は学院の制服に戻り、手にしていた武器も光となって消えていった。

 

『……なんであの男ではなく杖を壊したんだ?外したのか?』

 

 『紋章士』は首をかしげている。ルイズは首を振って否定した。

 

「はじめっから杖狙いよ。メイジは杖をどうにかすれば無力化できるから、メイジ同士の決闘だと杖を攻撃した方がスマートよね?ほら、ゴーレムも動かないでしょ?」

 

『なるほどなぁ、理に適っている。…きみは力を示した。指輪の持ち主として、自分はきみを認めよう』

 

「ありがとう、力を貸してくれて!………えっと、あんたって名前とかないの?『紋章士』って名前じゃないんでしょう?」

 

 ルイズの質問に、『紋章士』は頭をかく。

 

『……言っていなかったか?』

 

「聞いてないわね、忙しかったから」

 

『……自分は風花の紋章士ベレト。…これからよろしく』

 

「…ええ、よろしくねベレト!」

 

 彼らはにっこりと笑い合うと、ギーシュに向かって歩き始めた。

 

 

 これは、指輪の戦士たちの物語。一人の少女と指輪に宿る剣士の行く末を知る者は、まだ誰もいない。





 続かない。

<人物紹介>

<ルイズ>
 本編とは異なる方法でベレトと関わったメイジの少女。非生物を呼んだルイズはどこかにいるかもしれないが、指輪を使い魔として召喚したのは多分このルイズだけ。

<ベレト>
 『導き手の指輪』に宿る『風花の紋章士』。指輪をつけた者にガンダールヴとしての力を与えることができる。
 戦闘スタイルによって使える英雄の遺産が変わるが、ガンダールヴの力でどんな遺産でも使いこなせるようになったため臨機応変に戦えるようになった。
 リーフに謝れと言いたいくらいにやりたい放題だなこの教師!
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