ソードアート・オンライン 《Now Dead Future》   作:クロス・アラベル

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こんにちは。
何時ぞやに青薔薇の剣士シリーズで言っておりました、救われない物語の開幕です。

運命の歯車が狂ったのは______アリシゼーション、人界編修剣学院での大事件でのこと。
キリトがライオスの片手しか斬ることが出来なかっただけ。
ただそれだけで変わる、物語でございます。

救いはほぼありません。
ただ、ユージオ達が曇り、傷付き、苦悩するだけのものとなっております。

それでも良いというのなら_____どうぞ、ご覧くださいませ。


僕は、その現実(地獄)から逃げた

 

 

 

 

どこで道を違えたのだろうか。

 

僕は目の前の光景を見て絶望していた。

血だらけの部屋。そこにあるのは3つの死体。

 

1人は体を右肩から左腰に向けて真っ二つに斬られて左手首から先は無く、右肩から先は無い。ベッドに転がっている彼の首はまるで亡霊を見たかのような顔をしている。

 

1人は焦げ茶色の髪の女の子。胸には深々と刺傷がある。大量の血が流れている。表情は見えない。壁に叩きつけられており、既に、動く気配はない。

 

そして、最後の一人。黒髪の男。無惨にも首が斬り飛ばされて、部屋の隅に頭が転がっている。彼も、動かない。

 

それを呆然と見る赤い髪の女の子。僕と同じように右眼から血を流している。

 

先程、貴族の男……ウンベール・ジーゼックは片腕を黒髪の男に斬り飛ばされて悲鳴を上げながらどこかへ走り去っていった。多分彼はもうすぐ学院の誰かを呼んでくるだろう。

 

そして、先程色白い無表情な誰かが虚無から何か神聖術らしきものを唱えてどこかへ消えた。

確かではないが、もしかするとここに整合騎士がやってくるかもしれない。8年前____アリスがダークテリトリーに指を1本触れてしまった時も、同じ現象が起こってその次の日、整合騎士の男が来た。僕の故郷であるルーリッド村はセントラルカセドラルからかなり遠かったから1日かかったのだ。セントラルカセドラルが近いこの学院ではもうすぐに来てもおかしくない。

 

「____ぁ」

 

僕の口から出る、力の抜けた声。

ここにいれば、整合騎士が来る。そうなれば、僕は何も出来ないまま罪人として裁かれてしまう。そして、金髪の男_____ライオス・アンティノスを斬ってしまった赤い髪の女の子____ティーゼ・シュトリーネンは僕と同じように裁かれてしまうことになるだろう。こうなってしまったのは僕が何も出来なかったからだというのに_____

 

嫌だ。

 

何の罪も無い彼女が、裁かれる?

 

そんなの、正義じゃない。

 

罪の無い少女が罪人として裁かれてしまうなど、そんなものは法じゃない。

 

でも、僕らにはそれを証明することも出来ないし、整合騎士に反旗を翻す勇気も無い。

 

そして、僕は最後に決断を下せないままに、ティーゼの返り血を浴びてしまった右手をとって、こう言った。

 

「________ティーゼ、逃げよう」

 

「_____」

 

「誰にも知らない所へ___整合騎士だって来ない所に…………に、逃げよう……!」

 

「_____はいっ…!」

 

ああ、何処で違えたのだろうか。

 

僕とティーゼ達が出会った時?

僕とキリトが学院に来た時?

僕とキリトが剣術大会に勝った時?

僕がギガスシダーを切り落としてしまった時?

それとも、僕とキリトが出会ってしまった時なのか?

 

 

否______僕という存在自体が、間違いなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める。

 

この逃亡生活の始まり、あの日。

僕らが全てを置いて逃げたあの日を夢として見てしまった。

 

「……」

 

ボロボロの小屋。そこに僕らはいた。

僕は床に、ティーゼは古いベッドに。

 

まだ朝日が登って間もない。

壁の隙間から残暑の風が通る。

天井の隙間から見える雲一つない青空。

あの日から2ヶ月。

 

「___んぅ……ゅー、じぉ……せんぱぃ…」

 

ティーゼの寝言が聞こえる。

 

「____ああ、なんて」

 

なんて、愚か。

僕らはあの日から未だに逃げ続けていた。

 

 

 

 

 

 

目が覚めて少し。

また、遠出する準備を始めた。

人を殺すと言う大罪を犯した僕らの居場所はどこにも無い。宛もなく歩くだけ。

まだティーゼは眠っている。彼女には悪いが起きたらすぐここを発とうと思っている。

準備が出来て_____持っていくものなんて、青薔薇の剣とキリトの黒い剣しかないけれど______あとはティーゼが起きるのを待つだけとなった。

 

「………」

 

ふと、ティーゼの寝顔を眺める。

眠っている彼女を見て、また彼女も自分と同じように罪を被り日陰で生きていくのかと思うと胸が痛くなる。

 

「ごめんね、ティーゼ」

 

そして、僕はもう開くことの無い右眼……黒い布で覆われた部分に触れた。

 

 

 

あの日、僕と同じように右眼を失ったティーゼは2人で央都から離れて追っ手を振り切った後。僕はティーゼの右眼の修復に取り掛かった。ティーゼ自身は僕を優先しようとしてくれたが、僕がそれを許さなかった。

何たる偶然か、不幸中の幸いと言うべきか。僕は少し前に図書館で回復系の神聖術の本を読んでいた。その中に、体の一部を欠損した場合の修復の為の神聖術が載っていてそれを僕は覚えていた。

そして、奇跡的にティーゼの右眼を完全に修復する事に成功した。

僕は安堵した。僕は治らなくっていい。せめて彼女だけは治したかった。

 

だが、誤算があったとすればその修復の神聖術の使う神聖力の量にあった。

ティーゼが僕の神聖術を真似して僕の右眼を同じように治そうとした。が、彼女を治した時にその場の神聖力の殆どを使い尽くしてしまったのか、それとも、彼女にその神聖術を使う力が無かったからか。僕の眼を治すことは出来なかった。

ティーゼはそれはもう大泣きしてしまった。何度も何度も術式を唱えては叫んだ。

 

『嫌!!そんなの……嫌ぁ…!!先輩だけ……なんで先輩だけが、こんな目に遭わなきゃ行けないの!?』

 

ああ、これが1つ目の罰ではないだろうか。

場所を移動しても神聖術が成功することは無かった。この神聖術は他人に施されなければ殆ど発動しない。僕自身も試して見たものの出来なかった。

 

『良いんだよ、ティーゼ。これは僕が背負うべき罰なんだよ。だから、泣かないで』

 

『ごめんなさい……!ごめんなさい…!!』

 

 

 

 

 

 

 

「……ユージオ、先輩?」

 

「あ…おはよう、ティーゼ」

 

「……何か、悪い夢を見たんですか…?」

 

「いや、そんなことは無いよ。そんな風に見えちゃったかな?」

 

「泣いてる、から…その………」

 

「______」

 

気付かぬ内に、ボロが出ていたらしい。起きた直後の彼女に見抜かれてしまった。

 

「……嘘が、付けなくなっちゃったなぁ…」

 

「…私が、ついていますから…泣かないで」

 

「_____ごめん」

 

これは、ただの傷の舐め合い。親を失った子猫がそうするように。

分かっている。でも_____

 

「……」

 

「……」

 

もう少し、こうしていたい。

 

 




片手のライオスが狂気に走って、キリトの首を斬り落とし、ロニエを惨殺し、その果てにユージオとティーゼに斬られてしまいました。
その時に、ティーゼも右目の封印を突破しています。
殺人に手を染めた、少年少女。

彼は________逃げてしまいました。
少女の手を取って。
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