ソードアート・オンライン 《Now Dead Future》   作:クロス・アラベル

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書き溜めてた分を投稿です。
多分10話無いくらいで終わるかと思います。


終わりの無い旅路

 

 

雲ひとつない青空の下。

僕らは歩いていた。

 

「〜♪」

 

ティーゼは鼻歌を歌いながら2歩ほど前で歩いている。

 

「…」

 

逃げ始めて2ヶ月。僕らは終わりのない逃避行を続けていた。

そして、今日も途方もなく歩き続ける。果たして今日はどこに行き着くのだろうか。

二人歩く中、一言も喋ることは無い。ティーゼが鼻歌を歌うのは、僕らの置かれた状況を、孤独感と不安を紛らわせる為だろう。

 

ふとティーゼを見る。

少し黒く汚れた修検学院の初等練士の制服、そして、風に揺られる燃えるような紅い髪。

この何も無い道に映える彼女の姿。まるで、絵画のような幻想的な風景。

そう、あれは確か、御伽噺に出てくる_____

 

…いや、もう忘れてしまった。

この光景を見て、僕は不思議と嬉しく、そして、何か惜しい気がした。

こんな綺麗な光景を、誰にも伝えられないなんて。

ただの一つ居場所も無くなってしまった今、そんなことを思うのはおかしいかもしれない。けど、自然にそう思った。

 

そして、僕は同時にその光景を両目で見られないことを後悔した。右眼はもう開くことは無い。あれからも治療を試みたが、1度も成功しなかった。あの治癒術は傷を負って半日以内に使わないと効果がない。故に僕はこのまま左眼だけで生きていくことになる。

でも、今は彼女に傷が残らなかった事だけが幸いだった。

 

このまま、この時間が続けばいいのになとどれほど思うだろう。学院にいた日々も僕にとっては幸せだったけれど。今のこの瞬間も、何物にも代えられない時間なのだ。

僕らに未来は無い。社会から孤立してしまった僕らには心を伸ばす場所などない。

でも、君だけは、生きて欲しい。

僕は、そう思う。

 

失った物はある。

僕は、キリトを失った。

僕と一緒に歩んでくれていた相棒。けれど、もういない。

しかして、僕よりもティーゼの方が失った物が多い。

ロニエを失ったのは勿論、輝かしい学院生活も、彼女の家族との時間も。

 

もう、戻ることは無い。

でも______

もう、失ったものを数えなくていいんだ。

この逃避行に、意味は無い。

前に進んだって、後に下がったって。

あるのは暗闇。不確定な未来。

幸せなんて無い、言葉通りの地獄だろう。

 

僕は、キリトとアリス。2人に出会うために生まれてきたのかもしれないとそう思っていた。けれど、その意味もとうに失ってしまった。キリトは死に、アリスへの道は遠ざかるばかり。

だからせめて、失ったものを数えるのではなく、何か別のことを数えよう。

分かっている。

ティーゼが、本当は心の奥底でずっと泣いているのを。

分かるから______

何も気にしないで、泣きじゃくってもいいと思うんだ。

だって。

こんな、大罪を犯した僕らの声なんて。

誰も聞いちゃいないんだから______

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、どこに向かってるんですか?」

「…何か、ここっていう所がある訳じゃないけどね。僕の故郷を目指そうかなって」

 

僕が目指しているのは僕の生まれ故郷、ルーリッドだ。

でも、受け入れられることなんて無いと、僕は確信している。理由は言うまでもない。禁忌目録を破り、殺人という大罪を犯した僕らを受け入れてくれる筈がない。

だから、僕はその近くの森に身を隠そうと思っている。その森のずっと奥に小さな小屋でも建てられれば、と思っている。あの森に入っていく人はそう居ない筈だ。

もうひとつの選択肢として、央都セントリアの近くにあるノルキア湖、その隣にある森の中にあるという度々幽霊が出ると噂の古い屋敷に行くのもあったが、そこだと央都が近くにある為に整合騎士が早く来てしまってもおかしくない。

 

「先輩の、故郷ですか!?」

「うん。ルーリッドって言ってね。故郷と言っても、何も無い場所だよ。田舎だし」

「いえ、私、楽しみです!ユージオ先輩の故郷かぁ…」

 

ティーゼは楽しそうに話すが、村に入るつもりは無い。

 

「ごめんね、ティーゼ。僕は…」

「分かってます。村には入らないんですよね?」

「……ありがとう、ティーゼ」

「いえ!私も、今私達が置かれている状況は理解してますから」

 

笑顔で続けるティーゼに、申し訳ないと思いながらも、僕は感謝する。

 

「…ルーリッドに着くにはまだかかると思うから。もう少し、辛抱してね」

「はい」

 

ルーリッドはあと1日かければ辿り着くハズ。

 

「……」

 

ルーリッドに入る気は無い。なら、彼女に会うこともない。

心の中で安心のため息を吐く。

アリスを連れて帰ってくる。

そう約束したセルカに合わせる顔など、僕は持たない。

後悔と懺悔の想いを胸に、僕は歩き続けた。

 




ユージオ君は灰色の布____ティーゼの制服のスカートの一部で作った眼帯を右目にしています。
原作でも、神聖力の結晶を使って先生が治してくれましたが、ティーゼの右目を治した時に周辺の神聖力を全て使い果たしてしまい、治療が出来ませんでした。
眼帯曇らせユージオ君爆誕です()
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