ソードアート・オンライン 《Now Dead Future》 作:クロス・アラベル
続く筈も無く。
○
誰かが、石を投げる。
誰もが、非難する。
お前は人間ではないと。
ただの人殺しであり、この世にいてはいけない存在だと。
出ていけ。
この世界から立ち去れ。
二度と帰ってくるな。
お前など_____生まれて来なければよかった。
人殺し。
化け物。
「____そうだ。僕は人間じゃない」
「ただの人殺しだ」
「排斥されるべき存在だ」
「でも……彼女は違う」
石を投げられるのは、僕だけじゃなかった。
僕の隣にいた赤い髪の少女もまた、その対象だった。
だから、前に出る。
その罪のない、言葉という凶器から守るために。
そう、守る。
人々の、純粋な正義感から。
断罪を良しとしよう。けれど、彼女は排斥される謂れは無い。
彼女は自らの命を守るために剣を振るった。それは人間として当然のことだろう。
その先に《殺人》という結果があろうと、それだけは認められていい筈だ。
蔑む目。
非難の声。
投げられる石は、止まない。
「やめて」
「やめてくれ」
「やめろ」
「やめてくれ_____!!」
「やめろっ____!!」
いつの間にか、僕は青薔薇の剣の柄を握っていた。これでもかと、強く。
投げられる石は、明らかに僕ではなくティーゼを狙っていた。
それが、許せなくて。
それを止められない僕が、赦せなくて。
何よりも_______こんなことに巻き込んでしまった僕自身が赦せなかった。
「_____やめろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおッッ!!!!」
心の中の黒いナニカが、爆発して、
つぎの瞬間、青薔薇の剣を鞘走らせた。
刀身が血のように紅く光り、周りにいる影のように黒いナニカを斬り伏せようとして_______
「_____________ !!」
誰かに左手を掴んで止められた気がした。
○
「_____っつ……また、嫌な夢を見ちゃったのかな」
一夜明けだようだ。
昨日はあまり良くないことがあったから、あんな夢を見てしまったのかもしれない。
「……ティ______ぁ」
向かいの木に寄りかかって寝ていたティーゼを起こそうとした時、彼女が僕の膝の上で寝ていることに気づいた。
さすがに寒かったのかもしれない。丸くなってまだ寝ている。
彼女は、僕の左手を握っていた。もしかするとあの夢の中で僕を止めようてしていたのは、ティーゼだったのだろうか。
「…そうだ。彼女は違う」
夢のあの言葉が蘇ってきて、すぐさま頭を横に振る。
罪を犯したのは僕であって、彼女は自らを守ろうとしただけに過ぎない。
自らを守ることが罪だと言うのなら、一体何が許されるのだろうか。
「……」
天候は、生憎の曇り。
灰色の雲に覆われた空は、今にも泣きだしそうだった。
○
小川を見つけた。
そして、そこで体を洗うことに。
先にティーゼに洗ってもらう。
男である僕は後でいい。
ティーゼは女の子だ。やっぱり気にするだろうし、必要だと思う。こんな状況ではあるけど、やった方がいい。
「………っ」
衣擦れする音。
水が落ちる音。
ただそれだけで、心臓の鼓動が早くなる。当たり前だ。僕自身、女の子と接すること自体多くはないんだ。それに今すぐ側には水で体を洗う、年下の女の子が一人。
緊張しない方がおかしい。
女の子と接すること自体あまり多い訳ではなかった。けど、この2ヶ月間でこういう状況は幾度となくあった。
その度にこうやって悶々としているわけだけど、やっぱり慣れない。
残念だけど僕も男であり、人並みの_____いや、この先は言うまい。というか考えたくない。考えたら色々我慢できないような気がする。
他のことを考えよう。何か、それ以外のことを考えるために、違うことをしよう。
そんなこんなで僕は周りの警戒と青薔薇の剣の手入れを始めた。
ここは山の中腹だ。ここからなら村の様子もここら一帯の景色も見ることが出来る。今のところ、異変はない。
「……」
青薔薇の剣の天窓を開けてみる。天命値はさほど減っていない。
しかし、あの時、青薔薇の剣は血を吸ってしまった。僕が、血に濡らしてしまった。
この穢れを知らない____御伽噺にさえ出てくるこの剣を、穢してしまった。
青薔薇の剣にも申し訳ないことをした。
「……ごめん、相棒。こんな事をさせてしまって」
謝って青薔薇の剣を鞘に戻す。
キリトは言った。剣もまた相棒だ、と。
自らの命を預けるという点に至っては、運命共同体だ。だから、大切にしてやらないといけない。
今は亡き僕の相棒の言葉を、まるでつい昨日聞いたかのように覚えていた。
「ユージオ先輩、終わり…ました」
後ろから声が聞こえた。
ティーゼが水浴びを終えたようだ。これで僕もちょっとは落ち着ける____と、ホッとして、油断した直後に顔を赤くしながら動揺する羽目になった。
「________っ!?」
水浴びを終えてこの旅路で拾った大きなタオルで体を拭いた筈が、あまり拭けていない。
ところどころ濡れていて、髪も乾いていない。したた落ちる水、健康的な肌、扇情的に感じる、顔。
ただ、僕の傍にいてくれた後輩が_____一人の女性である事を痛感した。
その艶かしい姿に、言葉が出なくなる。
息を飲んだ。
心臓の鼓動が、変にうるさい。
自分自身、どんな顔をしているのかも分からない。
「ユージオ先輩?」
「_____いや、何でもない」
高鳴る鼓動を聞かないふりをする。
大切な後輩にそんな感情を抱いた自分を心の中で殴りつけて、黙らせる。
それでも熱は冷めない。だから駆け足で源流へ。水を被れば、少しは落ち着くはずだから。
「見張り、頼むよ」
「?……はい」
○
服を脱いで水を被り、ふぅ、と一息。
鎮まるだろうと思っていた動悸は、止まらない。
「_____何、考えてるんだ」
水を被り、冷静になろうと目を閉じる。
けれど、落ち着きを取り戻すことは無かった。
「…っ」
最後に思いっきり水を被って身体を拭いた。
「____ぁ」
そして気付いてしまった。
この今使っているタオルは、ティーゼも使っていたものだった。
じゃあ、これは____
「____馬鹿、何考えてるのさ___!!」
思いっきり頭を降って自分を叱責する。
あれだけ水を被ったのに、顔は熱い。身体も、熱い。
「…早めに戻ろう」
いつまでもティーゼを1人にしておく訳には行かない。
僕は頭をタオルで拭きながらティーゼの元へと戻った。
「お待たせ、ティーゼ」
「_______ぁ、先輩。おかえりなさい」
ティーゼはもうすぐにでも出かけられるように準備を済ませていた。
と、言っても荷物なんてほとんどない。
今日は山脈の方へと行ってみようと思う。
村の人達は山へ行くことを___禁じている訳では無いが、行こうとはしない。
当たり前といえば当たり前だ。
だって、その山を超えた先は______ダークテリトリー、暗黒の地なのだから。
ダークテリトリーに入ることは、禁忌目録によって禁じられている。
だから、村の人達は山へ行くことを避けている。
まぁ、山に行く用事なんてのは無いに等しいだからというのもあるけれど。
「____早く行こう。誰かに見つかる前に」
「___はい」
僕とティーゼは少ない荷物を背負って、森の中へと再び入る。
もっと、森の奥へ。
人に見つからない____所へと。
♦
空は一面灰色。
泣き出しそうな空は____二人の道行に、何かが起こることを暗示しているようだった。
二人は___それに気づくことはなかった。
アンダーワールドにはトイレもとい、排泄機能自体が存在しないそうです。ですが、多分ありますよね。男女特有の身体の部分。
はっきり言って、性欲というのもある筈です。ユージオ君だって、例外ではないでしょう。あのケチャップとマスタードやピエロにだって多分あるっぽいですから。
それなりに、ユージオ君もあるし、こんな状況でもティーゼに対して、そういう風に意識してくれていると、私、興奮します(救いようの無いバカ)