よう実〜平穏な学生生活を送りたい〜   作:はるおみ

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ダラダラと進めておりますので、暖かい目で見守って頂ければと思います。

次で入学初日が終わる筈


第十話

2人はモール内の食品コーナーへと歩みを進めていく。

時間も少し遅くなって来たとは言え、それでも周囲にはまだまだ他の生徒達が観てとれる。

その為、それを気にしてか、モールに入るまでは白河の腕にくっ付いていた神室も流石に離れていた。

 

ただ、離れたと言っても、互いの腕と腕が触れ合う距離であり、さほど変わりはなかった。

歩いてる間はお互いに無言であり、特に会話もなかったが、しかし、その空気感はイヤなモノは感じず、寧ろ逆に程よい心地になる。

 

そうして、食品コーナーに到着すると、白河が口を開く。

 

「さて、折角ですので、何か料理のリクエストがありましたら、それを作ろうかと思いますが、あったりしますか?」

 

「いいの?じゃあ、私、肉じゃがが食べたいんだけど」

 

「肉じゃがとは王道ですね。

分かりました。では、肉じゃがにしましょうか」

 

「ありがとう。作ってもらう訳だし、せめてカゴ位は持つわよ」

手を差し出しながら、神室は言う。

 

「そうですか。では、お願いしましょうかね」

 

そうして、カゴを持った神室を連れたって買い物を始めていった。

 

ある程度食材を揃えた段階で、ふと何かに気付いた様な白河が口を開く。

 

「男女が2人、片方がカゴを持った状態で一緒に食材のお買い物。

これは傍から観れば、私達、夫婦の様な事をしていますよね。

過ごした時間を考えれば、熟年と言うよりかは、新婚、と言った感じでしょうが…」

 

この唐突な白河の爆弾発言に、神室の思考停止してフリーズする。

 

「…は?ふ、ふうふ??」

 

「はい、そう言いました。」

(結構サバサバしていたり、他者と壁を作る気概がチラホラと見受けられますが、意外と初心なんですよね、彼女)

 

白河にそう言われ、止まっていた思考が再起動して、何を想像したのか、頬を赤く染め上げながらも、空いている方の手で彼の肩をバシッと叩く。

 

「急にそんな訳の分かんない事言うな!」

 

「ったた…、それは失礼致しました。ふと、脳裏に思い浮かんだので、言ってみました。」

 

叩かれた肩を擦りながら、さして悪びれる感じも無く、微笑を浮かべながら軽い感じで言う。

そんな白河に対して、神室は余裕が全く感じられ無い状態になっていた。

 

「ふーん、そう…」

(急に何を言い出すかと思ったら、夫婦みたいって、一瞬、本気でフリーズしちゃった上に、変な事想像しちゃったじゃないのよ。ていうか、今日一日でこれ何度目よ…

こいつにずっと振り回されっ放しだし、なんか屈辱。)

 

返事は彼女らしく淡白なモノでありながら、しかし、その心の内は、今日一日だけで、これまでの彼の発言で振り回される自身を思い出し、少し屈辱を感じていた。

 

「ま、良いわよ。それよりもさっさと材料買って、部屋に戻らない?」

(これ以上、こんな所でまた訳の分からない事を言われたくないしね。)

 

「それもそうですね。では、さっと買ってしまいましょうか。」

 

 

ーーーー

 

それから何事も無く食材の買い出しを済ませた2人は、モールを出て、寮へと続く道を歩いていた。

空は買い出しへと赴く際とは異なり、すっかりと暗くなっており、夜空にはキラキラと星が散見している。

季節は4月、日中は程良く暖かったと言えども、夜になり風が吹くと流石にまだ少し寒さを感じる。

 

レジにて会計を行う際に神室が、作ってくれるのだから半分位は出す、とやや押し気味で言ってきたが、白河はそれを断り、今回は彼が1人で会計を済ませる形となっていた。

その代わりに、次回、もし今日と同じ様な形で食事をする事になった際は、神室がある程度出す、という所に落ち着く形となった。

 

 

寮へと着いて、2人でエレベーターに乗り、白河の部屋のあるフロアにて降りて、部屋へと向かう。

幸い、部屋に付くまでに他の男子生徒に見付からなかったのは、ある種の救いとも言えよう。

 

そして、部屋の前に着き、中へと一緒に入っていく。

 

「では、どうぞ中へ。」

白河がそう言って招き入れる。

 

「お邪魔します。」

それに応じる形で部屋の中を少し見渡しながら、部屋の中へと入る神室。

 

神室が部屋に入ったのを確認すると、白河は食材の入った袋を部屋のテーブルの上に置いて、中から食材を取り出して、台所へと移動して調理器具を片手に早速、調理を開始する。

 

「夜風で思いの外、冷えてしまいましたし、時間も時間ですからね、早速、作り始めましょう。」

 

「ホント、思ってたより冷えたわね。作ってくれるんだから、私も何か手伝うわ。」

 

料理を作り始めた白河の元へ、何か手伝える事がないかと近付いていく神室。

 

「まぁただ、待ってるだけ、と言うのも手持ち無沙汰でしょうから、この野菜達の皮剥きをお願い出来ますか?」

 

「そういう事。待っている間にただボーッとしてても仕方が無いからさ。そんな事で良いの?分かった、任せて。」

 

差し出された野菜とピーラーを受け取り、皮剥き作業を始めていく。

何事も無く作業をしていた神室ではあったが、途中でふと、先程の買い出しの際にモール内であった2つのワードを思い出す。

 

それは、『夫婦』『新婚』である。

 

この2つのワードを神室は今の自身が置かれている現状を省みて、思い浮かべてしまった。

同じ部屋の中で男女2人きり、しかも台所に2人並んで立っている。

この状況下で意識をするな、と言う方が難しいのかも知れない。

そうして神室は野菜の皮を剝きながらも、色々と想像を掻き立てて思考の迷路へとグルグルと入り込んでいってしまう。

 

「…澄、真澄、どうしましたか?」

 

ふと、自身を気遣う白河の言葉が聴こえてくる。

そして、声を掛けられた方へと顔を向けると、かなりの至近距離に彼の顔があった。

 

流石の距離感に神室も驚く。

褒めるべきは、驚きで声を張り上げる様なマネをしなかった事かもしれない。

 

「顔が少し赤い様ですが、大丈夫ですか?少し身体を冷やし過ぎましたか?」

 

パニックをお越し掛けている彼女の心境を知らず、気遣いの声を掛ける。

気遣ってくれるのは嬉しい、嬉しいが今の物理的距離感は心臓に悪い、と複雑である。

それでも、気遣いの声を掛けられた以上は返事をしなくてはならない。

 

フーっと、軽く静かに深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

そのおかげで、何とか平静を取り戻す事が出来た神室は口を開く。

 

「ううん、何でも無いから大丈夫。ていうか、顔の距離が近過ぎるから、少し離れてよ」

(間近で観ると男の癖にキレイな肌してるわね。あ、少しイラッとした。)

 

「確かに無作法に近付き過ぎてしまいましたね。失礼しました。まぁ、体調不良とかで無いのでしたら良かったです」

 

「悪かったわね。さ、ちゃっちゃと作っちゃいましょ」

 

その発言で気持ちを切り替えたのか、神室はこれまで止まっていた手を再び動かす。

それに伴い、白河の方も調理を再開する。

2人共、手を止めること無く、スムーズに調理を進めていった。

 

そこからは料理の完成は早く、2人の手捌きが良い事も相まってあっという間に出来上がる。

 

(終わっちゃったか。自分が誰かと一緒に料理をするなんて思ってもみなかった。もう少しだけ、続けてたかったな…)

 

出来上がった料理を見て、嬉しい反面、少ししょんぼりしながら心の中で呟く神室。

白河と隣に並びあって、一緒に料理を作る。

ただ、それだけの行い。第三者から観たら、そこまで大した事柄では無いかもしれない。

 

でも、それでも、過去の家庭環境による影響を受けて来た神室にとって、人と一緒に料理を作る、と言う行いは、彼女に良い効果を齎した様だ。

 

「さてと、それでは、料理をテーブルに運んで、少し遅くなってしまいましたが、夜御飯を食べるとしますか。」

 

そう言って、配膳を進める白河の姿を観て、神室も動き出す。

 

「そうね。私も配膳手伝うわ。」

 

そして、配膳はすぐに終わり、それぞれ椅子に座って、食事を始める。

 

「私が料理手伝った以上は美味しいに決まってるんだから、味わって食べなさい。」

 

自信満々に言う神室の顔は良い笑顔であった。

 

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