よう実〜平穏な学生生活を送りたい〜   作:はるおみ

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続いちゃいました

そして、やっちゃいました。
しかし、後悔は無い。
本望である。


第ニ話

日本政府の佐々木

高度育成高等学校理事長の坂柳

数々の博士号を持つ白河

 

 

(いよいよ、今日からですか)

3人の邂逅から時が経ち、いよいよ高度育成高等学校へ向かう日となった。

今は早目の時間に出て、学校へのバスがあるバス停の近くのコンビニでコーヒーを飲んで一息を付いていた。

学校側から送迎の車を出すとも言われたが、折角ですが...と、丁重にお断りしていおいた。

 

愁の普段からの遠出の際の移動手段は国側が用意した車両にSPを同伴してという事もあり、何かと拘束されてしまい、不憫な移動となっていた。

 

もちろん、それらも若干10代にして博士号を獲得した稀代の天才科学者を守る為であるが...

なので、現在の様に1人でのんびりと遠出をするのは久し振りであり、それを楽しんでいた。

 

 

コーヒーを飲み終えて時計を見て時間を確認する。

(少し早いですが、遅刻するよりはマシですから、行きますか...ん?)

時間は少し早いが、席を立ち、バスに乗る為にコンビニを出ようとすると、1人の女の子が目に付いたので、棚の影に身を潜めて様子を伺う。

その女の子は紫色の長髪をサイドテールにしており、愁と同じ制服を着ている事から、同じ学校の生徒だというのが分かる。

 

そして、彼女は店員と防犯カメラの死角に入ると、周囲を確認した後、商品を手に取り自分の鞄の中へと入れ様としたので、その瞬間に影から飛び出し、彼女の手首を掴む。

「っ、だれ!?」

「おやおや。見付かったのが私だから良かった物を...どう言った理由でこの様な事をしているかは存じ上げませんが、他の人に見付かる前に辞めた方が良いとは思いますが?」

そう言うと、驚きに満ちた表情が苦虫を噛み潰した様な表情へと変わっていく

「くっ!」

「ひとまず、見付かって騒ぎになる前にお店を出ませんか?」

その言葉が止めになったのか

「はぁ〜、分かったわよ。ここはアンタに従う。それでいい?」

と、愁の提案を受け入れた。

受け入れたのを確認して、掴んでいた手首から手を外す。

「結構。では、取り敢えず行きましょうか?学校へと向かうバスも丁度そろそろ来るハズですからね」

「分かった」

愁の言葉にそう答えると、歩き始めた愁のすぐ後ろを歩いて付いて来る。どうやら、少なくともこの場ではホントに従う様だ。

 

バス停に着くまでの歩いている間は終始無言であったが、バスに乗り、隣り合って座席に座ると、彼女の方から愁に話し掛けてきた。

「ねぇ、さっきコンビニでアンタが私を捕まえた時に言ってきてた、見付かったのがアンタだから良かったってどういう意味?」

「あぁ、アレですか?

万引きは見付かって捕まったりしたら、警察の厄介になる。それはもちろんご存知ですよね?」

「えぇ、まぁ、それは分かってるわよ。でも、その言い方だとその事じゃないんでしょう??」

「その通りです。私が言いたい事は、もし仮にその現場を変な男に見付かった場合、それを弱味のネタにされ、何をされるかは分かりませんよって事です。そうなった時、警察に捕まっておけば良かった。と間違い無く思う筈ですよ」

「あ、アンタには関係無いから..」

と、そうなった時を想像したのか、顔色を悪くし、声を震わせながら答える

「仰る通り、確かに私には関係はありません。ですが、貴女は美人なのですから、変な男の標的にされない様に気を付けておいた方が良いですよ」

「なっ、なにを//」

「何をと言われましても、私から見たら貴女は稀に見る美人、だと言う事です」

「っ〜〜///」

 

そこまで話すと、愁は返事を待たずに、自身の鞄から様々な世界中の論文が掲載された本を取り出し、意識をそちらへと傾ける。

そんな愁の隣にいる彼女は顔を赤くしながら、チラチラと愁へと視線を送るものの、声を掛ける事は無かった

 

結局、バスが学校に着くまでその状態が続き、学園のバス停に着くと、それなりに早い時間だったせいもあってか、降りたのは愁と彼女のみであった。

そこから、徒歩で學校へと向かうのだが、何故か不思議と横並びになった状態で歩いており、愁が止まると彼女も止まり、愁が歩き出すと彼女も歩き出すと言う、愁を持ってしてもよく分からない状態が続いていた。

 

愁も気になったので立ち止まり

「まだ、私に何か御用が?」

と、彼女に問い掛けると、

「名前..アンタの名前、教えてよ」

という言葉が若干モゴモゴしながらも帰って来た。

 

「私の名前ですか?白河...白河愁と申します。

貴女の御名前は?」

「か、神室真澄...ねえ、白河はさ、万引きしてる事を頭ごなしに注意したりはしないの?」

「どうでしょうね、確かに悪い事ではありはしますが、神室さんにも何か理由があるのでしょう?

でしたら、貴女の事を何も知らない私がとやかく言って、否定したりは出来ませんよ」

「へぇー、そんな風に考えるんだ。何か変わってるね」

「変わってるのは否定はしませんよ。

ですがまぁそれらを踏まえた上で、私から唯一言わせて頂くとするならば、神室さんは美人なんですから変な男に弱味を握られない様にくれぐれもお気を付けてって事位ですかね。ま、この事に関してはバスの中でも言いましたが、敢えて、再度の忠告って所です」

「わ、分かったから//、気を付けるから//」

(なんで真っ直ぐにコッチの目を観て、そんな事が言えるんだ?顔が熱くなる!)

 

「どうかなさいましたか?」

「な、なんでもない、大丈夫だから」

(ダメだ今は直視出来ない)

 

「それなら良いんですが。

おや?あれは…どうやらクラス分けの表みたいですね。神室さん行ってみましょう」

そう言って、神室の手を握り歩き出す愁。

「ちょ、ちょっと!」

突然の事態に若干困惑しつつも連れられて歩き出す神室。

 

周囲に他の生徒は居ないは僥幸ではあったが、もしこの状況を他の生徒に観られていたら、と一度想像してしまうと、その想像の放流は止める事は叶わず、神室の顔は恥ずかしさとパニックでどんどん赤く染め上げられていく。

 

しかし、そんな状態でも神室は無意識に寄るモノなのか、繋がれている愁の手を時折、ニギニギと握ってくる。

まるで、温もりや存在を確かめているかの様に。

 

(ん?なるほど。あの万引きは、そう言うことでしたか)

愁は今の神室の行動により、万引きを常習している理由とその背景に多少の想像が付いたが、今は言わないことにした。

気付けば神室は借りてきた猫の様に顔を赤らめながら大人しくなっていた。

 

そして、クラス表が掲示されている場所まで着き、自分の名前を見付けると。

 

白河愁ーーAクラス

 

そこには表記されていた。

 

(Aクラスでしたか...下のクラスから這い上がってみるのもまた一興かと思いましたが、まぁ他の方々と私とでは元来の目的が違いますので、これはこれで良いでしょう。

さて、彼女の方は?)

 

自分の名前を無事に見付ける事が出来たので、次いで今も手を握り合い隣に立っている彼女の名前を探していくと、

 

神室真澄ーーAクラス

 

という表記が眼に入る。

どうやら、愁と同じくAクラスの様であった。

 

「これは奇遇ですね、神室さん。まさか同じクラスであったとは思いもしませんでした」

「それはコッチのセリフ。私だって同じだとは思わなかったわよ。それよりも、いつまで手、握ってんの?」

繋いでる手に視線を落として言ってくる。

 

「これは申し訳ありません。完全に無意識でした。お嫌でしたか?」

「べ、別に嫌じゃないわよ...

ていうか、無意識で会って間もない人間の手を握るって、どうなの?」

顔を赤くしながらも弱々しく否定しつつ、ジト目で愁の事を見る。

 

「うーん、どうやら私、人との距離感が上手く測れないんですよね。ですが、嫌じゃないと言うのであれば良かったです。」

「はぁ?何よそれ。まぁ良いわ。それでこれからどうするの?時間はまだあるみたいだけど。」

「これからですか?そうですねぇ」

ジト目に答える様に返事をしたが、どうやら呆れられてしまったようだ。

そんな中、これからどうするのかと、言われたので、少し考える。

(このまま、振り分けられた教室に行き、クラス内やクラスメイトの様子を観るのも良いですが、それよりも、以前理事長と佐々木さんの3人で話していた際、実力に基づいて評価されるとの趣旨の発言をしていました。果たしてその実力とは学力だけなのでしょうか?いや、国が関与し、進学・就職100%を謳うこの学校が人の学力だけで判断する訳がありません。となると、やるべき事は決まりました)

 

考えが纏まったので、彼女に提案する

「決まりました。

神室さん一度クラスに荷物をおいて、時間まで校内を散策してみませんか?」

「それは賛成、これから此処で生活を送っていく訳だから、最低限、どこに何があるかぐらいは知っておきたいし」

 

どうやら、提案は通ったみたいだ。

 

「それでは、話しは決まりましたね。早速荷物を置きに行きましょうか」

そう言い教室へ向かうべく歩み出そうとすると、

「ま、待って!手、繋いだまま行くの!?」

若干、パニック状態の様に言う。

 

そう、ずっと繋いだ状態だった手。

その状態のまま、歩き出そうとすると止められてしまう。

しかし、実の所、最初に手を繋いでからはそこまで握る力を入れている訳では無く、むしろ神室の方がしっかりと愁の手を握っている状態であった。

 

そんな今の状態を面白く感じたのか、愁は神室のすぐ近くまで寄り、顔を耳に近付けて

「そうです。だって、嫌じゃないんでしょう?

でしたら、教室の前に着くまではこのまま一緒に行きましょうよ。」

と、囁く。

 

すぐ耳元で囁かれた神室は顔をゆでダコの様にまっかにして、俯きながら、小さな声で

「はぃ...」と、答えた。

 

流石に校内にまで入ると、人が居ない、という事は無く、教室へと向かう途中の廊下では何人もの生徒達と擦れ違っていく。

その間、神室はずっと恥ずかしそうに俯きながらも、その手はしっかりと愁の手を握っていた。

 

「さて、どうやらここのようですね」

少し歩き、Aクラスの教室の前まで着いたので、愁は先に言った通り、握っていた神室の手を離した。

離した際に「ぁ...」と寂しそうな声がしたので視線を移してみると、さっきまで握られていた手を見つめる神室の姿が視界に映された。

 

(おやおや)

「神室さん、どうしました?教室に着きましたよ?」

 

「はっ!な、なんでもない!だ、大丈夫だから。」

そう答える神室の顔は何処か、残念そうな、寂しそうな雰囲気を醸し出していた。

 

「そうですか?

では、中に入りましょうか」

「そ、そうね」

しかし、愁はその雰囲気を無視して、中に入るよう促していく。

神室自身も流石に教室の入り口の前で立ち止まっている訳にはいかないと思ったのか、それに続いていく。

 

教室に入ると、半分とまではいかないものの、クラスの約3分の1程度は既に各々の席に荷物を置いて出掛けていたり、小説を読んだり、ゲームをしたりしていた。

そんな光景を見つつも、黒板に張り出された座席表を見ると、愁の席は窓側の1番後ろとなっており、神室とは少しばかり離れる形になってしまう。

 

「流石に席は離れてしまいましたか、残念です」

 

「そうね、でもコレばっかりは私達にはどうしようもないわよ」

 

「そうですね。ですが、いくら仕方無いと言いはしても、やはり寂しいものがありますね。神室さんは寂しくないんですか?」

 

「うっ.. まぁ、少しは寂しい...わよ」

 

「では、毎回時間が出来たら私の席に遊びに来て下さい。待ってますから。」

 

「なんでそうなるのよ。良いから、さっさと自分の席に荷物を置きに行くわよ。この後、校内を回るんでしょう?時間が無くなるわよ?」

 

「それはご尤もです。では、置きに行くとしましょう」

 

そうして、2人は別れてそれぞれの席へと移動しながら、

、愁は先程までの神室の反応を交えながら、これまでの彼女の事を思い返していく。

 

特筆すべき点は、まず、その外見からしてお金に困っている訳でも無いのにも関わらずほぼ玄人並の万引き常習犯、手を握っていた際の握り返し、そして、握っていた手を離した際のあの反応と表情、雰囲気。

 

以上の点から、愁はこれまでに推測の域を出なかったある事が、ほぼ確信へと変わりつつあるのを感じる。

 

(現状、私の推測にほぼほぼ間違いは無いでしょう。しかし、まだ確実性が足りません。もうしばらくは得られた情報を整理しながら、要観察といきましょう。

しかし、この教室の感じ、何処か違和感を感じますね。

この違和感の正体は…ん?おや、あれは?...あぁなるほど、違和感の正体はアレですか。とすると此処だけの筈はありません。恐らくは校内にも。

取り敢えず今は、彼女と校内を見て回るしましょうか。その中でこの推測を確実なモノにしましょう)

 

思考を切り替えて、自分の席から神室の元へと向かう。

 

「お待たせしました。よろしいですか?」

 

「えぇ、大丈夫。それじゃ行くわよ」

 

神室の方も問題無いらしく、2人で教室から廊下へと出る。

そんな2人が教室内に居た人達からの視線を集めていた事は、

神室は気付いていない様だが、愁の方は気付いていた。

 

(まさか、ここまで注目されるとは。視線の感じからして、教室内に居たほぼ全員からでしょうか?皆さんもお好きですねぇ)

 

そんな風に思考を巡らせていると、横から声が掛かる。

 

「ちょっと、白河。どうしたの急に真面目な顔して黙っちゃって。何かあったの?」

 

どうやら、神室が急にだんまりを決め込んだ愁の事が気になった様で、心做しか心配そうな表情で愁に声を掛ける。

 

「あぁ、すいません。大丈夫、何でもありませんよ。」

(いけない、いけない。私とした事が変な思考に入り過ぎてしまった様です)

 

「そう、それなら良いんだけど」

そう言いながら、何処か安堵の表情を浮かべる神室。

そんな神室に

「ちなみに、今は教室を出て廊下ですが、手を繋ぎましょうか?」

そう言って、手を差し出す。

 

すると、少し間があった後に、そっぽを向きながら、しかし、彼女の手はしっかりと愁の手を手を握る。

 

「こ、これで良いんでしょう。ほら、さっさと行くわよ」

恥ずかしからだろうか、半ばヤケクソ気味に歩みを進めて、愁を引っ張っていく。

チラッと見える神室の横顔は赤くなりながらも、何処か嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

そこから、校内にある、コンビニ、特別棟、食堂、保健室等を見て回って行った。

もちろん、その間もずっと手を繋いだままだったので、行き交う生徒達からは、黄色い声や視線を受け続けていた。

 

一通り見て回って、良い時間になってきたので、そろそろ教室に戻りますか、と言う話しになり、今は教室へ戻る最中で、そこで愁は神室に質問を投げ掛ける。

 

「時間の許す限り、一通り回りましたけど、どう思いました?」

 

「明らかに監視カメラが多過ぎる。かと言って、裏路地や校舎の裏とか、人目に付かない様なあるべきハズの所には逆に監視カメラは無いし、その辺りに作為的なモノを感じる」

 

「流石、良い着眼点です。私の推測ですが、この学校の掲げる、実力で評価をする、という謳い文句は、学力だけに限らず、人目に付かない場所や監視カメラの死角を上手く用いて悪事を隠す事すら、実力の内に含まれると思います。」

(まぁ明らかに不自然ですから、流石に気が付きますか。本当はそれ以外にも何点かありますが、取り敢えずは良しとしておきましょう。)

 

「そう思うわ。だから、白河がバスの中で言っていた、変な男に弱味を握られてっていうのが、凄い現実味を帯びてくるもの...」

そんな風に話す神室は、もしそうなった場合の事の"最悪"を想像してしまったのか。

顔色は少し青くなり、身体は震え、これまでになく愁の手を強く握りしめてくる。

 

("最悪を"リアルに近い形で想像してしまいましたか。仕方がありませんね。こういう時は…)

 

そんな神室の状態を見かね、愁は神室を連れて付近の人目に付かない死角まで移動して、

「お嫌でしょうが、今回は大目に見て頂ける有り難いですね。

と、空いている方の手で神室を抱き締めて、大丈夫、大丈夫と耳元で落ち着かせる様に優しく囁いていく。

そんな愁の突然の行動に驚くも、神室も空いている方の手で愁の事をキツく抱き締め返し、得られた暖かな温もりで落ち着いてきた思考で、神室は今朝会ったばかりなのに今、自身を抱き締めて安心感を齎している男ーー愁の事を思い返す。

 

ーー始まりは万引きを見付かった事、次にバスの中で自身の事を真剣に心配してくれた事、学校に着いてから急に手を繋がれるも、確かな温もりを与えてくれている事

そして、今も"最悪"を想像してしまい、恐怖と不安に苛まれて仄暗い沼にハマりそうな自身に安心感を与えて掬い上げようとしてくれてる事ーー

 

たった、これだけの事。

しかし、物心付いた時から両親から関心を向けられずに育ってきて、承認欲求に飢えて不安定だった神室にはそれで充分であった。

 

神室は自身を観てくれた事、心配してくれた事、温もりをくれた事、安心感を与えてくれた事により、自身が抱く、承認欲求が満たされていくのを感じる。

それは一種の強力な麻薬の様な物で、非常に甘美であった。

 

こんなに強力で甘美な麻薬を知ってしまえば、もはや引き返す事は不可能。

そして、それはやがて愁への想いへと変化していく。

 

(そっか、私、無意識の内にいつの間にか、白河に...違う、愁の事が好きになってたんだ。こんな今朝会ったばかりの男相手に我ながらチョロいなぁとは思うけど、だって仕方がないよ。私が本当に欲しがって物をピンポイントでくれるんだから。それにコレを知ってしまったらもう戻れないよ)

 

そう思っていると、今の現状へと意識を戻す。

 

ーーもう大丈夫

先程までの震えも恐怖も無くなったので、抱き締めている愁の背中を優しく叩いて、落ち着いた事をアピールする。

 

「もう落ち着ちましたか?」

身体を離していく愁に

 

「えぇ、もう大丈夫だから」

そう返す神室の表情は何処か少し重しが落ちた様な雰囲気を纏っていた。

 

「それなら良かったです。しかし、急に抱き締めたりして申し訳ありませんでした。かむ「真澄」ろ...え?」

 

「今度からは真澄って読んで、私も愁って呼ぶから。あと、抱き締めたコトに関しては気にしないで、良いから。元々は私が悪いんだから」

そう、早口で捲し立てると、顔を赤くしてそっぽを向いてしまう

 

「フフ...分かりました。では、今度からは真澄と呼ばせて頂きます。それにしても落ち着いたのなら良かったです。さ、ボチボチ教室に戻りましょう」

 

「そうね、行きましょうか。....愁、その、ありがとう//」

 

 

「いえいえ、お気になさらずに。

それはそうと、式とオリエンテーリングが終わったら、この学校について話しませんか?」

 

「良いけど、どこで話す?」

 

「それはまぁその時に決めましょう。終わったら私の所に来て頂いてもよろしいですか?」

 

「ん、分かった」

 

そして、話しながら歩いていくとAクラスの教室に到着する。

 

「着きましたね。それじゃ真澄さん手を離しましょうか?」

 

「……」

しかし、神室からの返事は無い。ただずっと、手と手の繋いだ部分を見つめていた。

愁としても、流石に教室の扉の前でずっとこの状態で居るわけにはいかないので、神室の眼前で手を降る。

すると、我に返ったのか、驚きながらも愁の事を見つめる。

 

「戻って来たみたいですね。これから教室に入るのに手を離そうかと思うんですが、大丈夫ですか?もしかして、やはり、さっきの影響が?」

愁が心配そうに尋ねると、

 

「ご、ごめん、ごめん。何でもないから、それじゃ教室入りましょうか。」

(い、言えない。手を離すのが嫌だったなんて。)

 

「?、そうですか?それなら良いですが、

それでは、また後程。」

 

「う、うん。また後でね。」

 

そうして、御互いに手を離して教室に入り、自分達の席に着いていく。

ただ、神室は手を離してからずっと、握っていた方の手を見つめていた。

 

愁は離れた席から、そんな神室を観ながら、思考の海に入っていく。

(先程の事で確信しました、真澄は飢えているようですね。自分自身を観てくれて、認めてくれる相手に。

そうですね、承認欲求と言うモノでしょうが、彼女の場合は歪な承認欲求とでも呼んでおきましょうか。そして、更に彼女に与えるべきものは……)

 

そんな風に思考を巡らせていると、教室の扉が開かれて現実へと意識が引き戻されていく。

扉を開けて、教室に入って来たのは、スーツをビシッと着こなした短髪を金に染めた男性。

見た感じ、歳の感じは20代後半といった所だろう

 

その男性が教壇に立つと、教室内の喧騒は消え、皆一斉に注目する。

 

「ようこそ、高度育成高等学校へ。新入生諸君、我々教職員一同は諸君らの入学を心より歓迎する。」

 

 

(フフフ...いよいよですか。楽しみですねぇ)




ウチのヒロインはチョロいんです

御都合主義、バンザーイ!


しかし、視点変更がなかなかに難しいですね。
まぁやっていく内に何とかなりますか
それまでは、どうか御容赦下さい
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