説明回、とでも言いましょうか
「さて、新入生諸君。俺はこの1-Aクラスを受け持つ、真島智也だ。
この学校では卒業までの3年間、クラス替えは無い。
その為、諸君らはこのクラスて俺と3年間を共に過ごす事になる。以降、よろしく頼む。
また、これより1時間後に入学式が行われるが、その前に、本校のSシステムについてやルールについてを説明していく。
まずは、これより配布する資料を確認して欲しい。
順次、後ろへと回してくれ」
そうして、送られて来た資料を確認すると、大まかな事が書かれた内容となっていて、その内容は以前、合格通知書と共に送られて来た書類とほぼほぼ同じであった為、この資料に書かれているモノは既に頭の中に入っていた。
・この高度育成高等学校は他の一般的な高校とは異なったルールが敷かれていていて、生徒は在学中は学校が用意した寮で寝泊まりしなくてはならず…在学中は、特例を除き外部との連絡を禁じられている事。
・この学校が60万平米の広さがあり、カラオケ・映画館・カフェ・ブティックといった娯楽施設や、コンビニエンスストアにスーパーといった施設も用意してある
以上がの2点が資料に記載されていた大まかな内容であった。
(このある意味牢獄の様な環境下でも不平不満が少ないのは、娯楽施設等の所謂、発散出来る場所が存在しているからなのでしょうね)
「よし、資料は行き渡ったな?
では、次に諸君にこの端末を配る。
この端末は、学生証と携帯電話の機能を兼ね備えている。
なお、この端末には既に予め、プライベートポイントと呼ばれる物が振り込まれていて、そのポイントを使用して敷地内の施設の利用やコンビニ等での商品の購入が可能となっている。
要約すれば、本校限定のクレジットカード、とでも思って貰えれば良い。
学校敷地内にあるものならば、何でも購入可能だ」
(ほう、何でも、ですか...)
「そして、ポイントは毎月の初め、1日に振り込まれる事になっている。1ポイントは1円で計算されていて、新入生の諸君らには10万ポイントが用意されてる」
その真島先生の言葉に生徒は浮足立つが、それでも落ち着いている生徒の方が多い様だ。
(落ち着いている生徒が多いようですね。
しかし、真澄は表に出ないまでも若干、浮足立っている様ですね。
まぁ知らぬ仲でもありませんし、後で少し話をしておきましょうか。)
「比較的、冷静な者が多いようだな最初に言っておくが、当校では実力で生徒を測る。本校の入試の倍率は300倍なのだから、それをクリアしたお前たちにはそれだけの価値があるということだ。
その評価のようなものだと思えばいい。ただし、卒業時には、学校側が全て回収する。
どれだけポイントが残っていても現金化は出来ないので注意しろ。ポイントをどう使おうがそれは自由だ...好きに使ってくれて構わないからな。
仮にもし使う必要がないのならば、友人に譲る方法も良いだろう...だがカツアゲ等の苛めは容赦無く処断するから注意する様に。学校は苛めに敏感だからな
さて、ここまでで何か質問がある人はいるか?」
真島先生は質問が無いかと聞いてきたので、すぐに手を挙げる。
「ふむ、白河だけか?では、答えられる事には答えよう。」
「ありがとうございます。では簡潔に、来月以降のポイントは実力次第、と言う事でよろしいでしょうか?」
「確かにそうだ、その認識で間違いは無い。
他にはあるか?」
「では次に、この学校が測る実力と言うのは個人評価以外のモノもあると考えているのですが、その辺りは如何でしょう?」
「ほう、面白い質問だな、白河。間違っていない、と答えておく」
「分かりました。質問は以上です。ありがとうございました。」
「他に質問のあるものは居ないな?
...では、入学式が始まるまでは自由にしてくれて構わないが、時間までには時間までには席に着いている様に。」
そう言い残し、真島先生は教室を後にする。
そこから、教室内は喧騒に包まれていく。
10万を手にして浮かれる者、この先の学校生活に思いを巡らせる者、様々だ。
そんな中、愁は考えを巡らせる
(先程の私からの質問に対して、先生は明確な意図を持って具体的な答えを避けていた。それは何故か?
恐らくは現段階で生徒には答えを知られるのを避けたかったからだろう。全ての答えは来月の1日に、と言う事でしょうが、見えてきましたよ。
先生が発言した、敷地内のモノは何でも買える、実力次第、個人評価以外で測られる実力。特に要点となるのはこの3つでしょうね。幾つかの答えは連想出来ましたので、あとは答え合わせ、と言った所ですね)
「ねぇ、ねぇ、愁、聴いてるの?」
ふと思慮に耽っていると自身を呼ぶ声が聴こえるの、そちらへ意識を移すと、神室が心配そうな表情を浮かべていた。
「ねぇ、どうしたのよ?先生に質問した後、急に真剣な顔して黙っちゃって。あのやり取りの中でそんなに気になる事があったの?」
「えぇ、なかなか有意義なやり取りが出来ましたよ。...しかし、自由時間になってスグに私の所に来て下さるなんて、嬉しいですね」
「な、な、何言ってんの!愁が教室の一番隅っこの席で寂しそうにしてたから、わざわざ心配して来てあげたのよ!」
「分かりました、分かりました。わざわざ御心配して頂きありがとうございます。
ただ、顔を赤らめて、そっぽを向いていなければ、それで納得出来たんですけど、本当は貴女が私の所に来たかったんですよね?」
「〜〜っ///」
愁にそう指摘された事により、より一層顔を赤くして、両手で顔を覆ってしまう。
「おや、何となくの予想で言ってみましたが、どうやら当たってしまったみたいですね。」
(先程の廊下での出来事が効いている様ですね)
「そ、それよりも!、入学式が終わった後はどうするの?」
「そうですね。それなりに時間を取る事になりそうな事、落ち着いてゆっくりと話しもしたいので、カフェにでも行きましょうか。」
「ん、分かった。でも、愁?
そんなに色々とあるの?まだ入ったばかりよ?」
「仰る通り、まだ入学式すら始まってはいませんが、今の段階だけでも、充分、この異質な学校について分かった事は幾つもありますよ。
1つ例を上げるとするならば、先生も先程の説明で仰っていましたが、この学校は倍率は300と異様に高く、入学するにしてもかなりの狭き門となっています。そして、それだけの狭き門を突破を無事に突破するだけでも確かに称賛に値するでしょう。
しかし、だからと言って、中学から高校に上がったばかりの生徒に校内限定の使用とは言え、いきなりに10万もの金額を渡すものでしょうか?間違い無く何かあるハズですよ。
真澄も表に出てませんでしたが、浮足立っていたでしょう?」
「う、うるさい!言うな!
でも、言われてみると確かに不自然な感じがするのも確かね。
愁って、実は結構色々と考えてる?。」
「まぁ多少は、とでもお答えしておきましょうか?」
と、小さく笑う。
そんな愁の微笑を見て、その顔から目が離せなくなってしまう神室。
ジッと見つめて来る神室を不思議に思いながら、声を掛けようとすると
「突然割り入ってすまない。
先程の真島先生への質問が実に興味深かったので、少し話を聴かせて貰えるだろうか?」
と、突如2人に対して第三者の声が掛かる。
愁と神室、2人は声の方へと視線を向けると、頭髪の一切無い
禿頭の大柄な男子が1人立っていた。
「俺の名は葛城康平。今後、同じクラスの一員としてよろしく頼む。」
「これはご丁寧に。此方こそよろしくお願いします。
私は白河愁。此方の彼女は神室真澄さんです。」
そうして互いに自己紹介を済ませる。
神室は愁に紹介されると、軽く会釈をした後、愁に近付き肩と肩が触れ合う距離までに近付く。
内心、2人の時間を遮られるのが嫌だった様だ。
「どうやら、君の彼女には嫌われてしまった様だな。神室さん、2人の時間を邪魔してしまい、すまないな」
「そ、そんなじゃないからっ!」
葛城にそんな言葉を否定しながらも、神室は両手で顔を隠し、葛城に背を向け、愁の肩へと顔を埋める。
直ぐ側の愁だからこそ見える、そのキレイな紫色の髪の隙間から除く神室の耳は、完全に真っ赤になっていた。
「すみませんが、彼女にはその手の発言はなるべく控えて頂ければと思います。この様にすぐにオーバーヒートしてしまいますので。
ところでお話とは?
声を掛けて来た時の口振りからすると、間違えでなければ、用があるのは私の様にお見受けしますが、貴方は私に何をお聞きになりたいのです?」
「あ、あぁ。今後は気を付ける。
そうだな、ズバリ聞こう白河、君は「そのお話、私も混ぜては頂けませんか?」ん?」
愁と葛城は声のした方へと視線を向けると、そこには小柄で長い銀髪の髪にベレー帽の様なモノをかぶっている少女とも言える外見の女子が立っていた。
ただ、その女子に一際目を引くのが、手に持つ杖である。
どうやら、何かしらの障害を抱えている様であった。
「会話への割り込み、失礼致します。ですが、先程、白河君が真島先生にした質問が気になりましたのでお話しを是非とも聴いてみたいと思い、声を掛けさせて頂きました。
私の名は坂柳有栖と言います。」
そう言いながらも、やや値踏みする様な視線を愁へと向ける
(坂柳...もしや理事長の?
それにこの方の眼は...)
「いや、今しがた俺も似た様な事を白河に対してしたからな、此処で目鯨なんて立てないさ。」
「私の方も特に気にはしていませんので、大丈夫ですよ。
しかし、貴女に名前を教えた訳でも無いのに、私の名前を知っていると言う事は、朝、黒板に張り出されていた、席配置表に書かれていた名前を?」
「ありがとうございます。
はい、全て記憶しましたよ。もちろん、今現在、白河君の肩に顔を埋めている彼女の事も」
その言葉を聞くと神室の身体は微かにビクッと震える。
「やはりそうでしたか。
現在、彼女にはノータッチで御願い致します。それで貴女の聴きたい事と言うのは?」
「私の聴きたい事は恐らく、そこの葛城くんと同じ様な事だと思いますよ?」
「なるほど。
御2人が私に聴きたい事、それは、来月から毎月振り込まれると言うポイントがホントに10万振り込まれるかどうか?
と言う内容だと思うのですが、如何でしょう?」
その言葉に若干眼を見開かせながら、少し驚く葛城と坂柳。
「驚きました。まさか分かっていたとは。」
坂柳は口に出して言う。
対する葛城は口には出さないものの、感心した表情を浮かべる。
「大方の予想は付きますよ。
さて、御2人の質問に対する私の答えですが、答えは否、と言っておきましょう」
「それはなぜそう思う?」
葛城が愁の答えに疑問を挟む。
「真島先生は来月のポイントは実力次第、と言う私の質問を肯定しました。
ここで言う実力次第とは、学力や実技、具体的に言えばテストや体育等でしょう。それらの結果で好成績を収めればポイントはそのままかも知れませんが、逆に成績が悪ければ、それは獲得するポイントが減る、と言う事態に繋がるのかもしれません。」
「なるほどな。まさに文字通りの実力次第、という事か」
「その通りです。それに加えて、普段の授業態度や生活の仕方等もポイントの評定に含まれると思います。
御2人も既にお気付きだとは思いますが、この教室を含めて学校敷地内の至る所に一切の死角を潰すかの様に配置された監視カメラの数々。
恐らくは、プライバシーを重度に侵害しないまでのレベルで学生達の生活を観ているのでしょう。
そして、何かしらの犯罪や悪事をした生徒はその分、ペナルティとしてポイントを引かれる等される事があっても、なんら可笑しくはありません。
纏めると、学生として普通に勉強や娯楽を楽しみつつ生活してる分には何も問題ありませんが、そうでない場合はポイントを引かれる事になるでしょう。」
「全ては自己責任、ということですか。」
「そうだと思われます。確たるモノがありませんので、あくまでも私の推察に過ぎませんの」
「いや、充分だ。とても有意義な話しを聴かせて貰った。感謝する」
「はい、私としても今のお話しを元にして色々と考えてみたいと思います」
そう言って、2人は愁から離れて、それぞれが居たグループの様な所に戻っていく。
リーダー格なのだろう、2人はグループの輪の中心になっている。
その光景を眺める愁は1つの予感を立てる
(このAクラスという、1つの集団にリーダーは2人も必要ありません。リーダーは1人だからこそ、リーダー足り得るのです。
これは荒れてきますね。一種の派閥争い、とでも言いますか)
これから先、このクラスに訪れようとしてる荒波の予感を感じとる。
愁の前から葛城と坂柳が去り、教室の隅で2人キリの状態に戻ると、未だに愁の肩に顔を埋めている神室に声を掛ける。
「真澄、いつまでそうしてるんです?
もう2人は行きましたよ」
「ご、ごめん...
あんな顔を他の人に見られたくなかった...」
埋めていた顔を出すと、だいぶ落ち着いた様だ
「だいぶ落ち着いた様ですね。
しかし、肩に顔を埋められるとは思いませんでした。
出会った時のツンケンした感じは何処に行ったんですか?」
からかい半分に聴いてみる
「言わないで!
自分でも自分が分からなくなってきてるんだから...
でも、さっきの2人との話しを聞いてたけど、本当に色々と考えてるのね。素直にスゴいと思う」
「持ち上げ過ぎですよ
何にも考えずに過ごすより、多少なりとも考えて過ごす方がマシ、と思っているだけです」
「ううん、それでもやっぱりスゴいと思う私には出来ないもの」
そういう神室の声色には僅かにだが尊敬の念が含まれている気がした。
「誰でも出来るとは思いますよ
ですがまぁ、お褒めの言葉は素直に頂戴しておくとしましょうか」
その後も教室の片隅で、2人きりで他愛の無い会話を交わす神室と愁。
その後に葛城の提案でクラス全員が自己紹介をしたりしていると、入学式の時間が近付いてきたのか、真島先生が戻ってくる。
そして、式は無事に終了した。
おかしい…
書く前に大まかな流れを組み立ててから書こうとしてるんだけど、神室さんが勝手に動き回って、それを崩していく。
そのせいで全然ツンツンしてない。
ま、チョロインだからいっか(適当)