カフェを出た後、寮へと続く道を手を繋いで歩む白河と神室。どうやら、神室の方から繋いだ様だ。
早いもので既に空は黄昏時を迎えており、どこか哀愁を漂わせていた。
そんな中、神室の顔は夕日のせいか、はたまた手を繋いでいるせいか、ほんのりと赤みが指しているが、その表情は何処か幸せそうであった。
周囲の生徒達も昼間よりかは減りはしたが、それでも喧騒はそこまで変わらずで、みな思い思いに過ごしていた
その喧騒を何処か楽しそうに観ながら、歩みを進める白河は、現在、手を繋ぎながら一緒に同じ道を歩く相手、イタズラを思い付いた様な表情で神室へ声を掛ける。
「真澄、気付いていますか?」
「な、なにを?」
「入学式前にもこの周辺を散策して、分かってるとは思いますが、街灯や建物の壁に取り付けられた複数の監視カメラで、私達のこの状況、カメラの向こう側の人に丸見えですよ?」
その指摘に神室はみるみる顔を赤くさせていき
「〜〜っ!
そう言う事言わないでよ!ただでさえ手を繋ぎながら歩くもの恥ずかしいのに、変に意識して余計に恥ずかしいじゃん!」
照れ隠しなのか、いつもよりも大きな声を出して余計な事を言った白河へと怒る
そんな神室の様子を見て、楽しそうに笑いながら白河は
「そんなに大きな声を出したら、もっと余計に注目されてしまいますよ?」
「えっ.. 」
白河に指摘されて周りを見てみると、周囲を歩いてた他の生徒達が2人を見ており、白河と神室はすっかりと注目の的となってしまった。
しかも、往来のど真ん中と言う事もあり、それなりの人数になっている。
その事実を認識した神室の顔は先程よりも赤くなり、瞬く間に茹で蛸の様になってしまう。
そして、恥ずかしさと照れで居た堪れなくなった彼女は、白河の手を握ったまま、どうにかその場から逃れたい一心で、寮へと続く道を走り出す
「も、もう無理だから、、、行くよ!」
「やれやれ、分かりましたよ」
手を引っぱられながら、自身の前を走る彼女の姿を微笑を浮かべて、着いていく。
しばらく無言で走り続けて、白河を若干引き摺りながら走る彼女は途中人目に付かない脇道へと入っていく。
その道は人通りも無く、今は2人しかいない。
物陰に立ち止まり、周囲に人が居ない事を確認した神室は、どうやら自身の限界を超えて走ったのか、膝に手を付き、肩で息継ぎをしている。
それに対する白河は全く持って自然体としており、余裕そうに
していた。
「真澄、大丈夫ですか?」
「誰のせいだと思ってるのよ!!変な事急に言うから!」
その様子を見て、気遣う白河の余裕ある一言に対して、呼吸を乱しながらも顔を上げて神室は必死の叫びを上げる。
その顔はさっきまでの茹で蛸みたい状態よりかは赤みは引いているが、それでもほんのりと赤くなっていた。
それは果たして、全力疾走した影響なのか、はたまた別の要因かーー
そして、彼女の叫びは続く
「あー、もう!あんなに周りの人達に注目されちゃって、変な噂が立ったたらどうすんのよ!」
「立ったたら立ったで、特に問題も無いでしょう?」
ケロッと答える彼の様子に彼女は少し憤りを感じる
「愁が無くても、コッチがあるの!まだ入学してすぐなのに、これからの学校生活どうするのよ!」
彼女としては色んな人に噂されながらの学生生活はどうにも許容出来ないようだ。
確かに、往来の中で手を繋いでいた男子に叫びを上げてしまえば、いくら噂は四十九日と言っても、瞬く間に千里を走るのが噂である。
学年全体とは行かなくても、入学早々に好奇の目に晒されるのも確かに嫌だろう。
彼女の言葉を聴いて、白河自身も少しため息を付く
「確かにそうなってしまうと、真澄の学校生活が大変ですね。
もし噂になった時は距離を置きましょうか?」
白河のその発言に、神室は先程までの勢いはどこかにいってしまい、一気に大人しくなり、俯いてしまう小声で言う
「え、、そ、それは、ちょっと...
と言うか、かなり、嫌、なんだけど、」
距離を置く、その言葉に幾分かのショックを受けた神室は、白河と共に居ながらも好奇の目に晒されながらの学校生活と、もし噂になった時に白河との距離が離れた生活を想像して、比べる。
その想像をしている最中にも、先程の神室の小声の呟きを聴き取った白河は今も繋がっている手を離そうとする。
「いや!いや!大丈夫だから!離れないで大丈夫だから!」
白河との手が離れ様とした瞬間、必死になって離れそうになる白河の手に追い縋る神室。
彼女の眼には離すまいという、強い意志が宿っている。
そんな彼女を観て、白河は一息付くと
「大丈夫ですから、落ち着いて下さい」
優しく声を掛けながら、神室を抱き寄せて背中を落ち着かせる為にポン、ポン、とゆっくりと叩く。
神室は彼の胸に顔を埋めながら、
「いじわる、愁はいじわるだ...」
と繰り返していた。
少しして、落ち着いてきたのか
「ねぇ、頭撫でてよ、、いいでしょ?」
そんな事を不貞腐れた様に言うので、思わず苦笑してしまう白河。
「良いから、早くなでる!」
「はいはい、分かりました」
急かす様に言う神室の姿がどこか面白かったのか、笑みを浮かべながら、白河は空いている片方の手で優しく彼女の頭を撫でていく。
撫でられる彼女は幸せそうな表情を浮かべて、より白河の胸へと顔を押し付けていく。
少しの間、撫で続けていると、神室は白河の胸から顔を離して、満足そうな顔で白河の眼をしっかりと見つめながら、彼の手をしっかりと握って、さぁ、もう寮に帰るよ、と言って、彼を引っ張っていった
いじわるオリ主