なんとなく目が覚めた。
寝苦しかったのかもしれないし、夢見が悪かったのかもしれない。ひょっとしたら人肌恋しくなったのかも。いずれにせよしばらくは寝つけそうになかった。
こういう時は散歩だな。
と言ってもこんな時間に外を出歩くのは危ないから、家の中だが。
足音を立てないように注意しながら廊下を歩く。
普段は6人の子どもたちが立てる喧騒で溢れている我が家もこの時間は静寂そのもの。
むしろこんな時間に騒ぐような子はエリスの尻叩きとシルフィのお説教が待っている事だろう。前にララがやられてたな。
そんな事を考えているうちに目的の部屋の前に着いた。音を立てないように注意しながらドアを開く。
「すー……すー……うへへ……」
シルフィの部屋である。
笑っているところを見ると、何やら良い夢を見ているようだ。
眠っているシルフィを観察する。彼女は体を丸めて眠る事が多い。今日もそうだ。
俺と寝る時は同じような体勢のまま体をすり寄せてきたりする。腕の中にすっぽり収まる感じだな。小動物めいて大変可愛い。
「んん……るでぃ……」
名前を呼ばれた。もしや起こしてしまっ……てはないらしい。よかった。
「なでなでして……」
要望に答えて頭を撫でる。
「ん……えへへ……」
我慢できなくなる前に部屋を退出。あんまり長居すると辛抱できなくなりそうだ。
起こしてもシルフィは許してくれるだろうけどな。
次の目的地に着いた。やっぱり音を立てないように部屋に侵入する。
「……すやあ……」
ロキシーの部屋である。今日の神は布団を抱き枕のようにして眠っている。おい布団そこ代われ……と言いたいが、無理矢理剥ぎ取ったりしたら間違いなく起こしてしまうし、よく考えなくても俺と寝る時は抱きついてきてくれるのだ。自重自重。
ロキシーのキュートなほっぺたをつんつんするくらいで我慢だ。
「……おや、ルディですか……」
もぞもぞとロキシーが身じろぎをする。
しまった、今度こそ起こしてしまったか……!
「キスしてくれたらいいですよ……」
何をだろう。だが答えない道理はない。ほっぺたにキスを落としてみる。
「………すやあ……」
寝てしまった。ロキシーは何を許してくれるつもりだったのだろう、すごく気になります先生!
まあいっか。そのまま部屋を退出。次の目的地へ向かおう。
もうお分かりだろう。エリスの部屋である。
エリスは大の字になって眠っている。いつもならその腕を枕にさせてもらっているのだが……今日のエリスはなんでかちょっと寝苦しそうだな、暑いのだろうか。ちょっと部屋を冷やしておこう。
それにしても、こうして寝顔を見ているとボレアスの屋敷にいた頃を思い出す。授業を抜け出したお嬢様にイタズラしようとしたらボレアスパンチをもらったのも今となっては懐かしい思い出だ。
そんな事を考えながらエリスの寝顔を眺めていると、
「何してるのよ」
「え」
エリスの目が突然見開かれ、俺とばっちり視線があった。
「や、やあこんばんわハニー、でももう良い子は寝る時間だよというわけでおやすみああああああああ!」
脱兎の如く逃げ出そうとしたら腕を掴まれてベッドに引きずり込まれてしまった!
「なんだか寒気がしたと思ったらルーデウスだったのね」
ああそっか、冷気は俺を中心に出るんだから俺が近くにいたらそりゃ寒いよな。
「うん、ごめん、なんとなく寝付けなくてさ、みんなの寝顔見たら眠くなるかなーとか思ってね」
「そう、丁度いいわね」
「えっと……何が?」
「私も寝付けそうにないし、運動したらきっとよく眠れるわ!」
その言葉を最後にエリスは俺を蹂躙した。
確かによく眠れたなと朝方エリスの腕枕の中で目覚めながら俺はそう思ったのだった。