無職転生二次SSまとめ   作:ミリソ

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ある暑い日

 ここ最近暑いですね……わたしが学生として魔法大学に通っていた頃に比べてですが、少し夏の暑さが増した気がします。

 まあ、ラノアは北国なので夏はすぐに過ぎ去ってしまうのですが。それでも暑いものは暑いです。ルディみたいに部屋を冷やせればいいんですが、そんな魔力もありません。

 なので、家に持ち帰った仕事などはルディの近くでしたいのです。ま、まあそれをルディのそばに行く理由にしていないかと言われたら否定はできませんけど……。

 

 そんなわけでルディを探しているのですが……いませんね。しばらくお休みと聞いていたので家にいるかと思ったのですが、散歩でしょうか。台所にはシルフィたちがいるので買い物ではないでしょう。

 

「『氷槍』!」

 

 む、ルディの声です。これは庭の方ですね。魔術を使ったようですが虫でもいたのでしょうか。

 

「おやロキシー。おはようございます」

「おはようございます。あの……何をしているんですか?」

 

 先ほどの魔術で生やしたらしい氷の前で、これまた魔術で拵えたらしい柄のついたヤスリのようなものと、やや深めのお皿を構えたルディがそこにはいました。

 

「本当に何をしているんですか……?」

「最近暑いですからね、かき氷でも作ったら涼しくてみんな喜ぶだろうと思いまして」

「かきごおり」

 

 一体なんなのでしょうか。氷というくらいですからきっと冷たいものでしょう。

 かき……かき……花卉……?氷の花でも作るんでしょうか。視覚的に涼しそうですね。

 ララかアルスが壊しちゃいそうですけど。

 

「それでかき氷とはなんなのでしょうか」

「氷を細かく砕いた食べ物です。甘いシロップをかけて食べるので、今シルフィとアイシャに作ってもらっています」

「ほう、甘いものですか……!」

「ええ、ロキシーは好きですよね?」

 

 もちろん、と頷きそうになりましたが自制です。子どもたちに見られたら笑われちゃいますし。

 

「シルフィたちがシロップを作っている間に氷を作って削ろうとしていたんです」

 

 こんなふうに、とルディが右手にもったヤスリを氷に押し付けました。わざわざザリフの籠手を持ち出してきたようで、みるみるうちに氷が削れていきます。

 そしてお皿の上にまるで雪のように削られた氷が積もっていく……幻想的ですね。確かにこれは涼しそうです。

 

「ルディーシロップできたよーー。あ、ロキシー、おはよう」

「おはようございます。すみません、手伝いもせずに」

「いいんだよ、ああ、ならロキシーが味見してくれる?」

「いいんですか!?」

「うん、甘いものならロキシーが一番だからね」

「じゃあどうぞロキシー、削り立てをお召し上がりください」

 

 差し出されたお皿の上に築かれた雪の山に向かってシルフィがシロップをかけて、わたしに回してくれました。

 

「いただきます」

「はい、どうぞ」

 

 かき氷を口に含む。

 まずやってきたのは頭の芯を貫くような冷たさ。次にフワシャリとした食感と、イチゴと砂糖を使ったシロップの甘み。これは……!

 

「美味しいです!」

「それは良かった、追加削りますね」

「あ、別のシロップもあるよ、味見してくれる?」

「もちろんです」

 

 先ほどの自制も忘れてつい即答してしまう。でも仕方がない。だって美味しいんですから。

 

「こっちはレモンですか、さっぱりしていて良いですね……!」

「ロキシーって本当に美味しそうに食べてくれるよね、作りがいがあるよ」

「はい、シルフィの分もできたぞ。どっちかける?」

「あ、ありがとう。イチゴの方お願い」

「はいはい」

「おや、ルディは食べないのですか?」

 

 シルフィの分を削り終わったルディは手を止めてしまいました。てっきり一緒に食べるものと思っていたのですが……。

 

「いえ、俺も食べるんですけど……」

「?」

「先にみんなの分を削ってしまおうかと」

 

 そう言いながらルディは後ろを指差しました。立ち上がって彼の肩越しに指差す先を見てみると……

 

「涼しそうね!」

「なにそれ?」

 

散歩帰りらしいエリスとララが、二人手を繋いで不思議な物を見る様な目でわたしたち……の手元を見ていました。

 

「あれ?アルスとジークは?」

「アイシャがお風呂に入れてくれてるわ」

「ああ、それで待ってる間に庭に来たんですね」

「そう言う事ね!」

 

 で何してるのよ、とルディにエリスが尋ねて、いつの間に削ったのかルディが二人にかき氷を差し出しています。

 

「冷たくて美味しいわね!」

「あまい、おいしい」

 

 二人ともすごい勢いで食べていきますね……後でお腹痛くなったりしないでしょうか。

 そんな事を思っていると、

 

「ウッ」

「大丈夫ですか!?」

 

 呻き声を上げてララがスプーンを取り落としました!

 あわわわ喉、喉に詰まった……!?と、とにかくすぐに吐かせないと……!

 

「ああ、大丈夫ですよロキシー、これは何でもないですから」

「パパ、ママ、頭キーンってする」

「冷たいものを一気に食べるとそうなっちゃうんだ、不思議だよな」

「ほ、本当に……?」

「はい、なんでかは知りませんが」

 

 見れば近くでエリスも頭を抑えていました。

 シルフィも困った様に笑っているので本当に深刻なものではないのでしょう。

 

「あ、安心しました……」

「でもあんまり勢いよく食べちゃダメだそララ、かき氷はすぐに溶けるけど、ほかの固いものとかだと喉に詰まっちゃう事もあるからな」

「ん、わかった、気をつける。……おかわり」

「はいはい……ロキシーもおかわり食べますか?」

「はい、いただきます。次はイチゴシロップでお願いします」

 

 ホッとしたら甘いものが欲しくなっちゃいました。

 ルディからおかわりをもらって、エリスとララがお風呂に行くまでの間、二人から散歩中にあった事を聞きつつかき氷を堪能し。そして二人と入れ替わりで庭に出てきたアルスとジークとも同じ事をする。

 体は冷えているのに心は温かい、そんな時間でした。こんな事もあるなら、暑い日も悪くないものですね。

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