無職転生二次SSまとめ   作:ミリソ

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夜更けの侵入者

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 近頃、事務所に侵入者が出るらしい。

 侵入者は夜な夜な事務所に侵入し、お茶請けとして置かれているお菓子を持ち去っていくのだそうだ。

 そう俺に相談してきたのは受付の……ファリアさんだったか。彼女が出社すると夜中に侵入者が居た形跡があり、食糧庫が荒らされているのだと言う。

 社長とアレクはまるで気にするそぶりがないので俺に話したんだそうだ。

 確かに最近お茶菓子の減りが早いなーとは思っていたがまさか侵入者が居たとは。秋も深まり……というか北国だから日によっては普通に雪とか降ってきてすごく寒いのに泥棒も大変だ。

 まさかヒトガミの仕業なのだろうか。いくらなんでもそこまでコスい真似はしないよな……?

 

「とりあえず今晩張り込んでみるから、また何かあったら報告してくれ」

「はぁ……よろしくお願いします」

 

 

---

 

 

 一度家に戻って夜食を用意しまた事務所の食糧庫、その隣室へ戻ってきた。

 夜食は張り込みと言えばこれだろうと言う事であんパンもどきと牛乳にした。古き良き刑事ドラマスタイルだ。

 ちなみにこの事務所の家主である社長は自室でそれはもうスヤスヤと睡眠中だ。龍族好みのパジャマとご丁寧にナイトキャップまで着け、寝た子を叩き起こすようなプレッシャーを放ちながらリラックスしている。正直羨ましい。

 それはそれとして。今日侵入者が来てくれるのかな……俺も歳だから連日の徹夜は流石に堪えるしそもそもシルフィたちとのイチャイチャ時間が取れなくなるのは本当に困る。こうして一人であんパンと牛乳をかっ食らっているととても心細い。

 ……そもそも侵入者って人間なのかな。ここは街ハズレだしひょっとしたら魔物というセンもあるのではないか。いやそれなら社長が気づくか……。

 魔物でなくても幽霊。そう幽霊だ。社長は墓石に腰掛けたりするような人だし死者から恨まれててもおかしくない。お目にかかった事はないが死霊魔術だってあるんだから夜な夜な墓からパウロとギースが出てきて事務所のお菓子を食べながら思い出話に花を咲かせ……いや無いな。あの二人ならその近くにある酒に手を伸ばすだろう。

 なんかさっきから変な方向に思考が散るな。寂しいのかな……なんか窓枠がカタカタ言っててポルターガイストみたいだし……。

 

ガサ……ゴソ……

 

「!」

 

 今までとは違う何かを漁るような物音。間違いない。泥棒がやってきたのだ。やろうぶっとばしてやる!

 

「誰だ!!」

「っ!」

 

 犯人の手からポトリと落ちる菓子袋。

 そいつはまるで小人族のように小柄な……というか子供そのものの姿に青い髪、寒さのせいか少し赤くなった鼻がチャーミング。ロキシーそっくりだがロキシーではない。この真ん中で分けられた青い前髪は……

 

「何してるんだ、ララ……」

 

 口元に食べかすをつけたララがそこにいたのだった。

 

 

---

 

 

「ごめんなさい」

 

 悪い事をしたというのはわかっているのだろう。開口一番に謝ってくるのはいい事だ。

 

「でもなんでこんな時間に忍び込むような真似をしたんだ?言ってくれたらお菓子くらい持って帰ったのに」

「あんまりワガママばかり言ってるとアルスたちに舐められる」

 

 お、おう。意外とメンツみたいなものを気にするんだな。リニプルあたりの影響か?

 

「あと忍び込んでない。アレクが夜に散歩してたから着いて行ったら入れてくれた」

 

 マジか。アレクもグルだったのか。

 いや時々夜中にシャリーアを巡回してるみたいだしそこにララがついてきたらそりゃ入れるか……。

 

「はぁ……俺はともかく社長たちにあんまり迷惑はかけるなよ」

「迷惑などではない」

 

 うおっ!?

 社長!?寝てたはずなのに!

 

「また来たのか」

「うん、ここのお菓子美味しい」

「そうか、ならまた持って帰るがいい」

「そうする」

「オルステッド様、あんまり甘やかさないでください」

 

 またって二回も言ったな。そうかだから社長もアレクも気にしてなかったのか。犯人はララだったから気にする必要がないと思われていたのだろう。

 

「む……」

「そんな顔をしてもダメです。もしかして家までララを送ってくださっていたりしました?」

「ああ」

 

 なるほど。こんな夜中に歩くなんて何があったらどうするんだと思ったが行きは北神帰りは龍神ならルイジェルドの近く並みに安全な事だろう。

 

「けどなララ、あんまり夜中に歩き回るもんじゃないぞ。もし様子を見に行ってララが居なかったらみんなすごく心配するんだからな?」

「うん、分かった。もうしない」

「よし。じゃあお土産持って帰るか」

「いいの?」

「みんなで分けるんだぞ」

 

 俺だって鬼じゃない、悪いと分かっていて反省も十分しているならこれ以上叱る必要もないだろうし。

 ただ今度からはもうちょっとお土産の甘いもの比率を増やそうかなとかは思ったりした。

 

 

 その後。

 二人で仲良く手を繋いで家に帰ったら門の前に腕組みをしたエリスと半泣きで杖を構えたロキシーが立っていた。

 なんでも夜中におしっこで起きたジークとトイレまで連れて行ってあげたルーシーが子供部屋から抜け出しアレクに着いていくララを発見、三人の母に報告したんだそうだ。

 悪い事は隠そうとしてもバレる。尻叩きの刑に処されるララを見ながら俺はその事実を再確認したのだった。

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