食料品店の外から聞こえて来た轟音を聞いてボクが最初に思った事は、しくじったな、だった。次に急いで帰らないとと思い、最後に両手に提げている今日の晩御飯の食材を思い出して諦めた。
「雨なんて、珍しいな」
滅多に雨が降らない冬の北方大地なのに、店の外を見ればざあざあと横なぐりの雨が道を叩いている。
誰かが水聖級魔術を使ったというならこんなにも激しい雨が降るのはわかるけど、街中でそんな魔術を使うような人はまず居ないと思う。だからこれは本当に偶然降ってきた雨なんだろう。
仕事や学校に行ってるルディたちが帰ってくる時に滑って転んだりしないか心配だ。
「早く止まないかな……」
家を出る時は青空だったから傘は持ってきていないし、魔術で散らしてしまうのはあまり良くないとルディもロキシーも言っていた。
かといってこの雨の中を帰ろうにも、そんな事をすればさっき買ったばかりの食材がダメになってしまうのが目に見えてる。
だから、今は待つしかない。
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幸いにも通り雨だったらしい、本当に珍しいや。
「そんな事より急がないと……!」
急ぐのには理由がある。
と言ってもそんな重大な理由というわけじゃない。ただ今日は朝からいい天気だったから、洗濯物を多めに干しておいたのだ。
けど、今から帰ってももうびしょびしょになってしまっているだろう。
今日は家にゼニスさんとリーリャさん以外はララたちしか居ないから、リーリャさん一人で取り込むにはちょっとキツい量のハズだ。だから少しでも早く帰って洗い直しを手伝わないといけない。
そんな事を思いながら道が凍ってしまわないように水切りをしている人々を横目に家まで急ぐ。早く帰らないと晩御飯までに間に合わない……!
「ただいま!」
「おかえりなさいませ、シルフィエット様」
「おかえり、白ママ」
「あれ?リーリャさんにゼニスさん?ララも?」
買ってきた物を脇に置いて先に洗濯物を片付けてしまおうと居間に入ると、今朝干しておいたハズの洗濯物を畳んでいるリーリャさん。そしてテーブルを挟んで真向かいのソファーに座るゼニスさんの膝の上で珍しく手伝っているララに出迎えられた。
ひょっとしてリーリャさんが取り込んでくれたのかな。足を悪くしてるのに申し訳ないな……。
「ありがとうございます、リーリャさん」
「いえ、お礼でしたらララ様に」
「ララに?」
「はい、ララ様が雨が降るから洗濯物を取り込んだ方がいいと」
本当かな。時々見透かした事を言うような子ではあるけど……。
「ばあちゃんとレオが雨が降りそうって教えてくれた」
「へ?」
「リーリャばあちゃんは足怪我してるから手伝ってあげてってゼニスばあちゃんが」
「そっかあ……ありがとね、ララ」
にんまりと、最近ますますルディに似てきた笑みを浮かべながらゼニスさんに頭を撫でられているララによると、アルスとジークもララが取り込んでいるのを見て自分から進んで手伝ってくれたという。
二人は疲れてレオを枕にそのまま寝てしまったらしい。起きたらレオ共々いっぱい褒めてあげないとね。
「ララ、リーリャおばあちゃんのお手伝いしてくれたから、お礼にあとで好きなオヤツをなんでも作ってあげるよ。何が良い?」
「んー…………甘いやつがいい」
「じゃあホットケーキ焼いてあげる」
「楽しみ」
さらに笑みを深くしたララを可愛く思いながらリーリャさんとボクとララの三人で洗濯物を畳み終えた。
ちょうどその頃に起きてきたアルスとジークの分も含めてホットケーキを焼きながら、ルディたちが帰ってきたらこの事を教えてあげようと思った。ルディもロキシーもエリスもきっと驚いて、そして嬉しそうにするんだろうな。
子供の成長は本当に早い。みんながどんな大人になるのか、今からすごく楽しみだな。