「………スー…スー…」
「あ!パパだ…!」
最近やっと慣れてきた学校。その授業が早めに終わり、お昼より早くお家に帰ってこれた。キッチンに居た白ママにただいまをして、最近もらった自分のお部屋で着替えてからリビングに入ると、パパがソファーでお昼寝をしてた。
お仕事でしばらく居なかったけど、私が学校に行った後に帰って来たのかな?
飛びつきたくなっちゃったけど……我慢する。パパはなんだかとてもお疲れみたいだから、起こしたらダメだと思う。
でもそれよりも気になる事があった。寝ちゃってるパパのお髭だ。ぼーぼーに伸びている。
パパはいつもはお髭に触らせてくれない。私が触ろうとするとすぐにお風呂場に行ってしまう、だから触れない。出張から帰ってきた時もまずお風呂に入る、やっぱり触れない。
でも今日のパパはお風呂に入る前に寝てしまってて、しかもみんな別のお部屋に居るか、お仕事かお買い物で出かけてて今リビングには私とパパ以外誰もいない。
「……んしょ」
パパの上に登って、起こさないように気をつけながらお口の周りに手を伸ばす。
じょり…じょり…
「ふふっ…」
ママたちにも、お姉ちゃんたちにも、おばあちゃんたちにも、もちろん私にもないコレが好きだ。普段は触らせてくれない物をこっそり触ってる感じもいい、ララがイタズラ好きな気持ちもちょっとだけ分かる気がする。
パパの匂いも好きだ。いつもよりちょっとだけ汗くさい気もするけど、やっぱり安心するし、なんだかあったかい。
「…ん…ふわぁ……」
しばらくパパの匂いとお髭のじょりじょりをたんのうしてたら、なんだか眠たくなっちゃった。
今日のパパはすごく疲れてるみたいだし、多分私の方が先に起きれると思う。
うん。
だから私もパパの上でそのままお昼寝をする事にした。パパとお昼寝をするのなんかすごく久しぶりだ。パパより早く起きて、起こしてあげたらきっとパパも喜んで、褒めてくれるかなぁ…
---シルフィエット視点---
洗濯物を取り込み終わって、そろそろルディを起こしてあげた方がいいかな?とリビングに足を踏み入れたボクは、珍しくも微笑ましいものを見てその足を止めた。
「うわぁ…可愛い…!」
ソファーでクッションを枕に眠ってるルディと、その上でルディの顔に手を伸ばしながら同じく眠ってるルーシー。
ふたりの寝顔は本当にそっくりで、いつもちょっとだけ口を開けて寝てるから口の端から垂れるよだれの跡まで同じだ。
普段からちょっとおませさんな所があるルーシーを見てて初めて会った頃のルディを思い出す事もあるけど、こういう時にやっぱり親子なんだなぁと改めて実感する。
「あ、でも何もかけずに寝てたら風邪をひいちゃうかも」
さっき取り込んだ洗濯物の中からタオルケットを持ってきてふたりにかけてあげる。風邪くらい魔術ですぐに治せるけど、予防しないで良いってワケでもないしね。
それにしても、本当に無防備な寝顔…
ルディはカッコいいけど童顔な方だし、ルーシーもまだ7歳だから当然なんだけれど、ふたりとも眠ってる顔はいつも以上に可愛くて、年齢よりもずっと幼く感じさせる。
「んふふ…」
何の気なしに、ふたりの頬を軽くつついてみる。口をもごもごさせる仕草さえ同じで、そんな何でもない事が無性に嬉しくてたまらない。
「……ふあぁ…」
ふたりの顔を見てたらなんだかボクまで眠くなってきちゃったな。
お昼ご飯の時間までまだ少しあるし、仕込みももう終わってて後は仕上げてしまうだけだ。他にやる事も特にない。
………ちょっとくらいなら、良いよね?
ふたりが寝てるソファーを背もたれに、少しだけお昼寝させてもらおう…
---ルーデウス視点---
「ん……?」
なんだか胸の辺りがポカポカしてるような気がして目が覚めた。
今回の出張はちょっと面倒な案件だったせいか、家に帰ってくるなり風呂も入らずにソファーに寝転んでしまったんだったか。うっかりしてたな、汚れは事務所で最低限落としてから帰ってきたけど汗の匂いとかがソファーに付いちゃう。
それにしてもあったかいな、なんだか嬉しくなる重みと温もりだ。そんな事を思いながら目を開くと、
「あれっ?ルーシー?」
俺の胸にひしっとしがみつきながらスヤスヤと眠るルーシーの姿があった。
視界の端には風に揺れる真っ白な髪の毛がかかっていて、どうやらソファーに寄りかかってシルフィも寝てるらしい。
俺とルーシーにタオルケットがかけられている所を見るに、シルフィがかけてくれてそのまま一緒に一眠りすることにしたのかな。
「ふふっ…」
穏やかな寝息をたてているルーシーを撫でてみると、くすぐったそうにちょっとだけ身じろぎしたり、可愛らしい耳がぴょこん、と動いたりする。シルフィそっくりだな。
位置的に俺からは見えないけど、きっとシルフィも今のルーシーと同じ寝顔をしているに違いない。
「…ん…くあぁ…」
本当にあったかい。あったか過ぎてまた眠くなってきた。
本当はそろそろふたりと一緒に起きた方が良いんだろうけど、でももう暫く、もう暫くだけふたりとこうしていたい。
「まぁ、大丈夫だろ」
今が何時くらいか分からないけど、朝帰ってきてからそう時間が経っているとも思えないし。
俺の上で寝てるルーシーが落っこちないように左手で抱きしめて、右手はシルフィを起こさないように気をつけながら彼女の手に添えて。
ああ、俺は最高に幸せだ。