五月十一日月曜日。放課後、今日は風間ファミリー全員が秘密基地にいた。百代が持ってき
たハンバーガーとポテトの匂いが部屋中に充満している。
「うーん、やはりマッグはてりやきバーガーだな。」
「姉さんよくバーガー買う金あったね。」
「や、これは私が物欲しそうに見てたら私のファンが買ってくれたんだ。既に買われてしまったバーガーに罪はないしな。」
「さっきから匂いを嗅いで腹減ったぜ…。」
「龍はどこのバーガーがいいんだ?」
「…………最後はいつ行っただろうか…。」
「ああ、そうか。まぁこれからお気に入りを見つけようじゃないか。」
龍の扱いもだいぶ慣れたクリスは龍を励ます。
「ポテトはいらん、皆で食べろ。」
「いっただきまーす!」
「ダーリン、ポテトゲームしよっ。」
「……………ダーリンじゃないからしない。」
「チッ。」
「相変わらず女性に凄い人気ですねモモ先輩。」
「すげー!流石大人の下着が似合いそうな姐さん!」
松風が喋ると空気が一変する。皆が改めて思う。仲良くなった上で改めて気になる事が出来たと。
「……結構きわどい事言うんだよね、あのストラップ。」
「ねぇ、確認するけどさ。あの馬はまゆっちが喋ってるってことなのよね。」
「そうだね。あまりにも自然に喋ってるけど…。」
ということで松風というキャラクターについて調べることになった。
「ちょっと話しかけてみようか。」
「おう、なんだいモロボーイ。オラの指名料とか高いぜー。銀座レベル?」
「好きな食べ物とかは何?」
「そりゃ…フグの刺身だよ。」
「松風はアレかな。馬の中じゃ速いし強いの?」
「まぁ言うたら北陸の黒いユニコーンだし。」
…つくづくキャラが濃い。そして持ち主とは正反対であることがわかる。
「ほんとすげーなぁ、その腹話術。」
「腹話術言っちゃった!」
「ですから松風には九十九神が…」
「真面目な話さ、他に友達欲しいんなら松風が足引っ張ってると思うぜ。」
翔一の真面目な意見に頷く一同。耐性が出来ている風間ファミリーは問題無いのだが、友達百人作るとなると、彼の存在はひかれてしまうのだ。
「ですが今更松風と離れる事なんて出来ません。松風も認めて欲しいですっ!」
「ありがとう……まゆっち。オラの最高のダチ。」
「泣けてくるのは何故かしら。」
「……………別の意味だから。」
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五月十四日木曜日。今日のホームルームはいつもと違った。担任の小島先生がタロットカードを持ってきたからである。
「それぞれの人間には、性格に則して大アルカナが設定されているという。」
「大アルカナ……タロットカードですね。」
「うむ。当てはめていくと面白いぞ。こうやってランダムでとるカードがそれだ。」
小島先生は”女帝”のアルカナ。岳人は”力”、千花は”恋愛”、翔一は”愚者”。名称は悪いが冒険の始まり、精神の解放。冒険家の翔一にはぴったりなカードである。
続いて一子は”太陽”。進歩、活動的、命の源、幸福。クリスは”正義”、京は”吊られた男”。不滅の魂、変転の時、極限の選択。
卓也は”教皇”。慈悲の心、正しい忠告、思いやり。スグルは”隠者”。深い知識を示すアルカナ。育郎は”星”。真与は”女教皇”。聡明、正確な判断、清純。
大和は”世界”。忠勝は”悪魔”。羽黒は引かずにいる。ということで自然と最後に引く人物が彼となった。
「加藤、お前も引いてみろ。」
「……………はい。」
引いたのは…羽黒が恐れていた”死神”。意味は終焉、絶望、変化、試練、苦難、再生。忠勝同様暗い性格ではある龍にはある意味微妙に似合うとクラス中が盛り上がる。
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放課後の秘密基地。話題は今朝のタロットカードになる。由紀江と百代が引いてみることに。
「はいどうぞ。モモ先輩は何かなぁ……。」
「せいっ! おおこれは”審判”だな。」
「えと審判は物事の好転、生の喜び、自由だっけ?」
「龍―!私は自由だそうだー!」
「……………離せ。」
龍はソファーの上に押し倒され、組み敷かれる。
「ぬぬ、私も参加したいけど…はい、まゆっち引いて。」
「せやぁ!あ、”節制”です。」
「節制は死神の次の位置にあるカードで、中庸・調整力・成長・自制心・忍耐・倹約……。」
「イメージと合うなぁ…当たってるぜ。」
「僕も引いていいかい、京?」
「これは興味深い…何が出るかな。」
クッキーが引いたのは”世界”。大和と同じである。
「成長のアルカナですか…。」
「スクスクと成長しねぇと。半端はいけねぇぜ。」
友達を作ろうと再燃する由紀江を尻目にこちらはほのぼのとしていた。
「男のくせに肌すべすべで生意気だぞー!まさか女?!」
「……………男だ。」
「あんまりやると顔が崩れるからダーメ。」
「……………重い。」
百代と京を乗せている龍に向けて話しかける翔一。
「そういや死神といえば龍のタロットは死神だったよなー。大丈夫か?」
「…………これ以上の絶望は起こらないさ…。」
「私と付き合うと絶望が希望に変わるよ?」
「……………別にいい。」
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五月十九日火曜日。由紀江は父親に向けて手紙を書いていた。内容は仲間が出来たのでその面々の紹介らしい。
直江大和…友達が沢山いる。接し方が穏やかで好印象。人付き合いにおいてはお手本。
風間翔一…不思議な魅力を持っている。明るく人を引き付ける。憧れる。
椎名京…弓の名手。仲間との繋がりを誰よりも大事にしてて龍が好きな人。
クリス…新参者同士仲が良い。気が強く、自分をしっかり持っている。
島津岳人…握力計を破壊する程力持ちで、友達というものかを説いてくれた。
師岡卓也…ネットや雑誌とかに詳しい人物で、優しく穏やか。怖い時もあった。
川神一子…努力の天才。好戦的で面白い人物。マスコット的存在。
川神百代…最強の武神。最強から見える景色はどんなものだろうか。
そして…
「加藤龍さん。…正直どういう方なのか未だによくわかりません。一方で私達に優しくしてくださったかと思いきや、わざと嫌われようとなさる不思議な方です。詮索するつもりはないですが、嫌われたい理由には何やら秘密がありそうです。」
手紙を終わらせようと思った由紀江だが、もう一文加えることにした。
「龍さんについてはまた追加の手紙を差し上げるかもしれません。悪筆ですのでご判読ください。あらかしこ。」
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六月七日日曜日。由紀江は川神書店に来ていた。
「お、アンタはバンダナのバッキャロのとこのねーちゃんか!」
「はい、こんにちは!」
軽く挨拶を返して、目当ての部門の一区画に行く。そして適当に何冊か手に取る。迷惑にならないようにぱらぱらとめくって内容を判断する。とりあえず今日は一冊に絞って購入することにした。
「このタイトル…なんだ、誰かに作るのか?」
「は、はい!恥ずかしながら!」
「カ~ッ!そいつが羨ましいぜ~バッキャロ。」
これで準備は出来た。しかし受け取ってくれるのだろうか?そんな事を気にしても仕方がない。友達作りの他にもう一つ頑張ってみよう。彼という人間に興味が湧いてきた。それと同時に心配だ。これは恩返しだ。という思惑を胸に由紀江は行動に移すのであった。