真剣にみんなに恋しなさい!   作:Y2D

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番外編:合縁奇縁

あれから約五か月。異例な変化であったが、ファミリーの面々はそれをもうすっかり受け入れている。…加藤龍、一応彼も含めてそうである。

 ゴールデンウイークを経て小さな問題、大きな問題も起きずに平和に過ごしている。

さて、今日の彼は島津寮にいる。不思議なことではあるが、留守番という名目である。たくさん人数はいるのだが、それぞれ予定があるという。つくづく不思議だ。

年上からの依頼は流石に断ることができず、誰もいない島津寮に合い鍵とスーツケースを持って訪れた。そのまま泊まるつもりは毛頭ない。

銀色の大きなスーツケースを開けると、これでもかと大量の本が詰まっている。留守番用に自分の家から持ってきたのだ。居間で一人本を読んで過ごす。至福の時である。

 

 

 

 

 

何時間経ったのだろうか。時計は見ていないのでわからない。一冊読めばその世界に入って帰ってこない。読み終えれば数秒間だけ、次の本を手に取る為に意識が戻る。

それの繰り返し。何時何分何秒というのも理解していない。ただ本の世界に集中するということは周りの気配などにも気づかない。正直留守番として機能はしていない。

本の世界から引きずり戻すには、体を大きく揺らす、大声で何度も呼ぶなどすればいい。誰でも思いつく単純な出来事である。過剰な起こし方をする某二名は除外して。

 

「おーい!龍―!おーい!…駄目だ、まゆっち。龍の奴、帰ってこないぞ。」

「そうですか…では松風にやってもらいましょう。」

「よっしゃ、オラに任せろ!昔ドラマを見て覚えたんだぜ。いくぞ!元に戻れ~~、もど~れ~もど~~れ~~~~オーレィッ!!」

「……………黙れ、駄馬。」

 

突然目の前に由紀江の携帯ストラップの松風が現れる。それにより意識は戻り、さらには耳障りな大声。龍を怒らせるには十二分であった。

携帯を奪い取り、松風を振り回す。こんな状況であるのに、得意の腹話術でしっかりと松風に台詞をつける由紀江を見て面白がる。本の世界に入り浸っていた龍が悪いのだが、仕置のつもりで松風を振り回すが、クリスにキリの良い所で辞めさせられる。

 

 

 

 

落ち着いたところで由紀江がお茶を入れてくれた。留守番の役目を果たした龍は帰ろうとしたが、引き止められる。ここまでくるともう様式美の域である。

この季節、温かい緑茶は身体によく染みる。しかも由紀江の出身地である石川県の茶葉は特別美味しかった。一杯飲んでも、二杯三杯飲んでも中々帰ることが出来ない。

事の仕舞いには、まさかのクリスにこう言われる始末である。

 

「帰るなら、父様に来て叱ってもらうぞ!…と言えば、龍は留まってくれると京に教えてもらったが…効果的のようだな。」

 

(GUN)に直接叱られる。しかも娘を溺愛している父君が銃を片手にやって来る。それを想像して再び椅子に腰かけた。この場にいない京、当人クリス両名への舌打ちも忘れずに。

それから他愛もない話が続く。岳人がまた振られたとか、百代がまた一瞬で挑戦者を何処か遠くへ吹っ飛ばしたとか、翔一が昨日また突然に出掛けていた話など。

本当に他愛のない話である。いつもの日常の話。賑やかし役がいないのもあって平穏に時が進む。五月蠅い奴(川神百代)がいないと、普段の場がこんなに静かになるのか、と龍の気分が良くなる。

ひと時も途切れない会話の中で、突如クリスがこんな事を言った。

 

「そうだ、丁度いい。こんな時だし今度は龍にたくさん喋ってもらうぞ。」

 

風間ファミリー新入り二人が目を輝かせて(獲物)に標準を合わせる。

クリスだけならまだしも、由紀江も何やら様子がおかしい。雰囲気に酔ってしまう川神水のせいではない。ただいつもより人数が少ないのでこちらに興味が移ったようだ。

逃げようと思ったが、前門の虎、後門の狼である。前門には”自分の父様はドイツ軍中将!”とか言う娘。後門には川神院の跡取り娘に一目置かれている武力未知数の後輩。二人とも首には川神一子を呼ぶことが出来る犬笛。厳しい闘いである。

 

 

 

 

「あの、血液型は?」

「……………AB。」

「ここのお風呂も素晴らしいが、龍が行っている銭湯も教えてくれ。」

「……………嫌だ。」

「ハァ…ハァ…龍ちゃんの3サイズは?」

「……………黙れ、駄馬。」

 

「体重は何kgですか?」

「60kg。」

「いや、教えてくれよ!」

「……………嫌だ。」

「ハァハァ…龍ちゃんの今日のパンツの色は?」

「……………駄馬は 黙 っ て ろ。」

 

風間ファミリー入りして五か月。といっても加藤龍という人間はロクにコミュニケーションをとっていないので、今交わされた会話はまるで昨日今日会った人間としているようであった。

これ以外にも根掘り葉掘り聞かれる。矢継ぎ早に三者三様の質問。興味津々な二人と一匹の勢いに青息吐息。

この状況に耐えられなくなった龍は携帯を取り出して、誰かに電話をかける。

 

「……………限界。」

 

それだけ言って通話を終えると、すぐに誰かが寮へやって来た。

椎名京が一直線で龍に駆け寄って、抱きしめる。椅子に座っている彼に一目散なので、胸が思いっきり顔に当たる。というかそのまま頭を押さえつけられている。

 

「龍にしてはよく持ったね。よしよし。」

「……………苦しい。」

 

 

 

 

またもやサプライズである。本日十月二十六日は黛由紀江、クリスティアーネ・フリードリヒの誕生日である。合わせたのかと思うかもしれないが、嘘だと思うかもしれないが事実である。

島津寮留守番兼由紀江・クリス足止め係の加藤龍は一応役に立ったようだ。おかげで秘密基地には綺麗な飾りつけが施された。

合同誕生日会なので飾りつけ二倍、料理も二倍、プレゼントも二倍、祝福も二倍。とにかくいつもより盛大に。ファミリーとして初めての誕生日。二人の思い出に残るようにと皆が計画した事。

 

加藤龍のプレゼント。それぞれ某江戸時代にタイムスリップできるような施設のお土産品である。最近の代行業のアルバイトは遠征ばかりである。

それぞれ刀や新撰組法被など。渡したのはいいのだが、お決まりの台詞を吐く。

 

「……お前らの為に買ったんじゃない…これも仕事のうちだったから……。」

 

質問をしてだいたい彼の事がわかったようだが、こういう所はまだまだ苦笑するしかないようである。それでも狙い通り素晴らしい誕生日会だったようだ。

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