個性"ゴムゴム"のヒーローアカデミア   作:レイファルクス

5 / 9
No.5

 

 

オールマイトのヒーロー基礎学が行われてた翌日、雄英高校の正門前には多くのメディアが殺到しており、登校してくる生徒"全員"にインタビューをしていた。応対にオドオドしたり、頓珍漢な回答をしたり、真面目に答えたり、と様々だった。

 

 

しかし"彼女だけ"は違った。

 

 

「あのオールマイトの…あれ!?君は『ヘドロ敵』の時の!!」

 

 

「……その話、止めてもらえます?トラウマなんで。それともなんですか?あなた達マスコミは相手のトラウマを甦らせて心を痛まないのですか?『報道の自由』とか言って、やってる事はプライバシーの侵害ですよ?それを分かってやっているんですか?ああ、分からないからやっているんですよね?それを平気で行うあなた達なんか、記者でもましてや人間でも無い」

 

 

「人間の皮を被った醜い(ヴィラン)ですよ」

 

 

「もしまた同じようなことをされるのであれば、ヒーロー(先生)並びに警察に連絡しますので」ニコッ

 

 

勝美の目が笑っていない笑顔が炸裂し、メディア一同は黙ってしまった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ、VTR(ブイ)と成績見させてもらった。まあ皆いい線いってたんじゃない?」

 

 

教室で相澤先生が昨日の戦闘訓練について感想を述べていた。

 

 

「さてHRの本題だ…、急で悪いが今日は君らに…」

 

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

 

『学校っぽいの来た~!!』

 

 

相澤先生の言葉にクラス全員がときめいた。

 

 

「委員長!!やりたいですソレ俺!」

 

 

「ウチもやりたいス」

 

 

「リーダー!!やるやるー!!」

 

 

「ボクの為にあるヤツ☆」

 

 

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30㎝!!」

 

 

そして我先にと挙手をして自己アピールをする。

 

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 

「"多"をけん引する責任重大な仕事だぞ……!『やりたい者』がやれるモノでは無いだろう!!」

 

 

「周囲からの信頼があってこそ務まる聖務…!民主主義に(のっと)り、真のリーダーを皆で決めるというのなら…、これは投票で決める議案!!」

 

 

それを天哉が正論をもって落ち着かせようとする。

 

 

『そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!?』

 

 

その天哉も手を上に高く上げていたのだった。

 

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

 

 

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

 

 

「だからこそここで複数票を獲った者こそが、真にふさわしい人間ということにならないか?どうでしょうか先生!!」

 

 

天哉はクラスメイトに散々言われ、相澤先生に意見を求めるが、

 

 

「時間内に決めりゃ何でもいいよ」

 

 

相澤先生は投げ槍な意見を述べて寝袋に入ってしまった。

 

 

そして仕方なく天哉の案が採用され、投票が行われた。そして…

 

 

「僕が四票!?」

 

 

出久が四票を獲得したのだった。そしてその次に票が多かったのは百だった。

 

 

他は一部を除いて自分に票を入れていた、因みに0票はお茶子に勝美、天哉と"あと一人"だった。(誰が0票だったかは不明)

 

 

「じゃあ委員長は緑谷、副委員長は八百万。よろしくな」

 

 

「分かりました。よろしくお願いいたします、緑谷さん」

 

 

「うん、こちらこそよろしく。八百万さん」

 

 

二人は握手をして、無事委員長が決定した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

午前中の授業が終わり、出久は勝美、お茶子、天哉の三名を昼食に誘い、四人揃って食堂で昼食を食べていた。

 

 

「何とか席が確保できて良かったよ」

 

 

「この食堂はヒーロー科に加え普通科はもちろん、サポート科や経営科も一堂に会するからな」

 

 

因みに出久が注文したのは大好物の『カツ丼(大盛り)』、お茶子は『和風定食』、天哉は『カレーライスとオレンジジュース』、勝美は『激辛麻婆豆腐丼』である。

 

 

「しかし、いざ委員長やるとなると、ちゃんと務まるか不安だよ」

 

 

「出久なら大丈夫!だって中学の時も皆に人気があって『生徒会長』に推薦されたことあったじゃない」

 

 

「ええっ、緑谷君、生徒会長に推薦されたことあるの!?」

 

 

勝美のカミングアウトにお茶子が驚いていた。

 

 

「そうなのよ、前期・後期全てね。でも結局は一票差で落選しちゃったけどね」

 

 

「あはは…」

 

 

そう、出久は生徒会選挙では相手とは僅か一票差で負けていたのであった。

 

 

「そんな人気の緑谷君なら委員長も務まるよ!」

 

 

「そうだ、緑谷君のここぞという時の胆力や判断力は"多"をけん引するに値する。だから君に投票したんだ」

 

 

お茶子の言い分に天哉も乗っかった。

 

 

「えっ、飯田君出久に投票したの?実は私もなんだよ」

 

 

「あっ、私も!」

 

 

なんと勝美とお茶子も天哉同様、出久に投票していたのだった。

 

 

「でも飯田君も委員長やりたかったんじゃなかったの?」

 

 

「"やりたい"と相応しいか否かは別の話…、僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

 

 

「"僕"…?あれっ?今まで一人称は"俺"って…。もしかして飯田君って、お坊っちゃんなの?」

 

 

天哉の一人称が違ったことに気づいた勝美はさりげなく天哉に質問をする。

 

 

「別にお坊っちゃんじゃないさ。俺の家は代々ヒーロー一家なんだ、俺はその次男。『ターボヒーロー・インゲニウム』は知ってるかい」

 

 

「ああ、東京に事務所を構えていて65人もの相棒(サイドキック)を雇っている…」

 

 

天哉が口にしたヒーロー名にヒーロー好きの出久がいち早く反応した。

 

 

「それは俺の"兄"さ、規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!俺はそんな兄に憧れてヒーローを志したんだ。人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う、上手の緑谷君が就任するのが正しい!」

 

 

初めて笑った天哉の顔を見た三人は同時に微笑んだ。

 

 

ウウ~~ッ

 

 

だがそんな時に、突如警報が鳴り響いた。

 

 

『セキュリティ3が突破されました、生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。繰り返します…』

 

 

「すみません、"セキュリティ3"ってなんですか!?」

 

 

アナウンスが入り、生徒たちは一目散に出口へ殺到する中、天哉は先輩の一人にどういう状況なのかを質問する。

 

 

「校舎内に誰か侵入してきたってこてだよ!三年間でこんなの初めてだ!君らも早く!!」

 

 

どうやら最上級生もこの事態は初めてのようで、食堂の出入口はパニックになった生徒で溢れかえっていた。

 

 

そんな中、出久はふと食堂の外を見る。するとそこにいたのはメディアの人たちだった。

 

 

「侵入してきたのは報道陣だったのか!!このことを早く伝えないと…!でも皆パニックになっていて、普通に声を出しても誰も聞いてくれない…。どうしたら……」

 

 

出久はどうすればパニックが収まるのか考えていると

 

 

「緑谷君!」

 

 

「出久!」

 

 

ちょうど近くにお茶子と勝美がいた。

 

 

「麗日さん、かっちゃん!……そうだ!これだ!」

 

 

二人の顔を見た出久は何かを閃いたようだった。

 

 

「二人とも、力を貸して!まず麗日さんは僕を個性で浮かせて!それとかっちゃんは僕が浮いた後、個性を使って注意を惹き付けて!」

 

 

「「わっ…分かった!」」

 

 

出久の指示でまずお茶子は出久に触れて浮かせる。

 

 

「ゴムゴムの風船!」

 

 

更に出久は自分を目立たせるために自分の体を膨らませた。

 

 

「それっ!」

 

 

出久が十分浮いた所で今度は勝美が個性を使用し、爆音を響かせる。

 

 

するとその爆音に注意が集まった。

 

 

「皆さ~ん、侵入したのはマスコミで~す!慌てる必要はありませ~ん!!」

 

 

出久は窓の外を指差して状況を伝えた。

 

 

「マスコミだって?」

 

 

「な~んだ、敵じゃなかったのか」

 

 

出久が指差した所を見た生徒たちは徐々に落ち着きを取り戻していった。

 

 

その後警察が到着し、マスコミはそそくさと蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

 

その夜、"とあるニュース"が世間を騒がせた。

 

 

『暴力団組織・死穢八斎會(しえはっさいかい)、壊滅』

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

マスコミ騒動があった数日後、午後の授業のヒーロー基礎学では…。

 

 

「今日のヒーロー基礎学だが…、俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」

 

 

「(なった(・・・)…?特例なのかな?)」

 

 

相澤先生の言葉に出久は違和感を感じた。

 

 

「ハーイ、なにするんですか?」

 

 

「災害水難何でもござれ、人命救助(レスキュー)訓練だ」

 

 

相澤先生は手に『RESCUE』と書かれたプレートを見せた。

 

 

「レスキュー…、今回も大変そうだな」

 

 

「だね~」

 

 

「バカおめ!これこそヒーローの本分だぜ!?腕が鳴るぜ!」

 

 

「水難なら私の独壇場、ケロケロ」

 

 

皆各々様々な反応を見せた。

 

 

「おいまだ途中」ギロッ

 

 

相澤先生が睨みを効かせると、全員が黙った。

 

 

「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな、訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」

 

 

相澤先生の合図で各自準備を始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

準備が終わった生徒から順次バス乗り場まで集まった。

 

 

「それじゃ皆、手前の席から順番にバスに乗って!」

 

 

委員長である出久はクラスメイトを誘導する。この時出久は"ある懸念"があった。

 

 

それは『座席のタイプが市バスタイプだったら』というものだった。

 

 

そしてその懸念は当たり、先着した者から順次座席に着いた。

 

 

そして全員バスに乗り込み、バスは訓練場に向けて発車した。

 

 

「私思った事を何でも言っちゃうの"出久"ちゃん」

 

 

「なに"梅雨"ちゃん?」

 

 

「あなた、"まだ何か隠してる"?」

 

 

「っ!?」

 

 

出久は梅雨に言い当てられて内心ドキドキしていた。

 

 

因みに出久と梅雨がお互いに名前で呼んでいるのは、この日の2日前、勝美がクラスの女子全員と出久に天哉、B組からは達也、C組からは人使といったメンバーでカラオケをしたのが原因である。(何故カラオケかと言うと、百が『カラオケをしたいから』だった)

 

 

カラオケは大いに盛り上がり、別れ際には皆が下の名前や渾名で呼び合うようになるほど仲良くなったのだった。

 

 

「隠してるって…、何を?」

 

 

「それが分からないから聞いてるの、質問に質問で返さないでくれる?」

 

 

「でもよ~、隠し事ある方がカッコ良くね?」

 

 

「ケロ…」

 

 

鋭児郎の言葉に梅雨は黙ってしまった。

 

 

「……ごめんなさい、出久ちゃん」

 

 

「僕は別に気にしてないから大丈夫だよ。あっ、そうだ。皆、もし何か僕に質問があるなら聞いて?」

 

 

梅雨は出久に謝り、出久は梅雨を許すと、クラスメイトに向かって質問を投げ掛けた。

 

 

「なら僭越ながら私が。出久さん、あなたが個性把握テストや実戦訓練の時に見せたあの状態は何ですか?」

 

 

そこに百が挙手をして出久に質問をする。

 

 

「"ギア2"のこと?あれは僕の個性の"特徴"を活かしたモノなんだ」

 

 

「個性の…特徴?勝美さんは分かりますか?」

 

 

出久の回答にいまいちピンとこなかった百は勝美に質問をする。

 

 

「分かるよ?例えば私のコスチュームだけど、この籠手は私の"汗"を溜めることができるの。それで籠手の中にあるピンを抜くと、一気に爆発させることができるの」

 

 

「この籠手は出久が私の個性の特徴を理解して助言してくれてできた物なのよ。それで出久の個性は自分の体をゴムのように伸縮させることができるの」

 

 

「その特徴を活かしたのが、"体内の血流を速くさせる"こと。でもそれはまず普通の人間では絶対にできないの、何故ならそんなことしたら血管が血圧に耐えきれなくて破裂してしまうの」

 

 

「あれはゴムの特徴を持つ出久の個性だからできる芸当なのよ」

 

 

勝美の説明に百だけでは無く、全員が頭に『?』を浮かべていた。

 

 

「簡単に言っちゃえば、"出久にしかできない技"ってこと」

 

 

勝美が簡単に纏めると、一同はやっと納得したようだった。

 

 

「全員納得した所でそろそろ到着するぞ」

 

 

『はいっ!』

 

 

相澤先生の一言で全員が気を引き締めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「スッゲ~!!USJかよ!?」

 

 

到着した訓練場は正にアトラクションテーマパークを彷彿とさせる場所だった。

 

 

「水難事故、土砂災害、火事…etc.(エトセトラ)。あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も……」

 

 

ウソの(U)災害や(S)事故(J)ルーム!!

 

『(USJだった!!)』

 

 

そこに現れたのは宇宙服を思わせるコスチュームを来た教師、『スペースヒーロー・13号』だった。

 

 

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが?」

 

 

「先輩、それが…。通勤時に制限(・・)ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」

 

 

13号は指を3本(・・)立てながら相澤先生と話していた。

 

 

「不合理の極みだなオイ。(まあ……、念の為の警戒態勢…)仕方ない、始めるか」

 

 

「では始める前にお小言を一つ二つ…、三つ…、四つ…」

 

 

『(増えてる…)』

 

 

授業を始めると宣言した相澤先生の号令の前に13号が演説を始めた。

 

 

「皆さん御存じだとは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込み、チリにしてしまいます」

 

 

「その個性でどんな災害からも人を救い出しているんですよね」

 

 

出久の言葉にお茶子は何度も頷いていた。

 

 

「ええ…、ですがこの個性は簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう、相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でその力を人に向ける危うさを体験したかと思います」

 

 

この授業(ここ)では…、心機一転!人命の為に個性を"どう活用する"かを学んでいきましょう。君たちの力は『人を傷つけるためにあるのではない、(たす)けるためにある』のだと心得て帰って下さいな」

 

 

 

「以上!ご静聴ありがとうございました!」ペコッ

 

 

13号の演説が終わり、頭を下げると、出久たちは拍手喝采を13号に送った。

 

 

「そんじゃあまずは…『少々お待ちいただきませんか?』っ!?」

 

 

相澤先生が授業を始めようとすると、突然誰かの声が響き、相澤先生の後ろに"黒いモヤ"が生まれた。

 

 

その"モヤ"の中から『身体中に手のような物』を着けた男性が現れ、"モヤ"はその男性の後ろに集まると、人の形を形成した。

 

 

「私たちは『敵連合(ヴィランれんごう)』、私は『黒霧(くろぎり)』、彼は『死柄木(しがらき) (とむら)』。連合の"最高幹部"です、以後お見知りおきを」

 

 

黒モヤこと黒霧が自己紹介をするが、相澤先生と13号は警戒心を露にしていた。

 

 

「その最高幹部とやらのお人が雄英(ここ)に何の用だ」

 

 

「そんな露骨に警戒しないでいただきたい…と言いたいが、それは無理なのは百も承知。我々は『謝罪』と『お願い』をしに来たのですよ」

 

 

「『謝罪』と『お願い』…?」

 

 

黒霧の説明に教師は警戒心を強くする。

 

 

「ええ、まずは『謝罪』。先日雄英の校舎内にマスコミが侵入した事件がございましたが、あれはこの死柄木弔が一部の施設を個性で"崩壊"させてしまったからなのですよ」

 

 

「ですので、施設を破壊させてしまった"お詫び"として、こちらを」

 

 

黒霧は相澤先生の前に一枚の紙を渡した。

 

 

「これは…、白紙の小切手?」

 

 

「施設の弁償と賠償金、それをそちらの"言い値"で支払わせていただきます」

 

 

相澤先生は小切手を懐にしまう。

 

 

「……分かった。この小切手は校長に渡しておこう」

 

 

「ありがとうございます。では次に『お願い』なのですが…、あなたが"一番信頼する生徒"に"ある少女"を引き取っていただきたいのです」

 

 

黒霧はそう言って自身の一部をモヤ状にすると、そこから一人の女の子が現れた。

 

 

「この娘の名は『エリ』、個性は『巻き戻し』。"とある事情"がありまして保護しました」

 

 

「とある…事情?」

 

 

「ええ、皆さんは御存じでしょうか?この前とある暴力団組織が壊滅したニュースを」

 

 

「聞いたことがあります。その日の一夜にして暴力団が壊滅した…と」

 

 

黒霧の質問に出久が答えた。

 

 

「ええそれです。まあ壊滅させたのは我々なんですが」

 

 

「……何故そんなことを?」

 

 

「我々敵の情報網は複雑、そして信憑性に長けています。実は我々の情報網に引っ掛かる情報が入りましてね」

 

 

「『個性を破壊する銃弾が作られている』…と」

 

 

「個性を破壊する銃弾…だと!?」

 

 

黒霧の言葉に相澤先生は目を見開いた。

 

 

「その情報を下に組織の中に潜入し、調査を進めていた所、この娘がその銃弾の"材料"にされていることを知りましたので…」

 

 

黒霧の話を聞いていたメンバーは怒りを露にしていた。

 

 

「なんて野郎だ!こんな小さな女の子を材料にするなんて!」

 

 

「とても人道的とは思えませんわ!!」

 

 

「腐ってやがる…!」

 

 

「……ふふっ、あなたの生徒は見ず知らずの少女のことを思いやる良い生徒ばかりですね」

 

 

「……俺の自慢の生徒だ」

 

 

黒霧の言葉に相澤は少々照れながら呟いた。

 

 

「とりあえず組織が所有していた銃弾は全て破壊しましたが、もしかしたら既に流通している可能性があります。そこで…弔」

 

 

黒霧が弔を呼ぶと、弔はポケットから『銀色のケース』を数個取り出した。

 

 

「こいつは『個性を破壊する銃弾』の"血清"だ。こいつも彼女を材料に作られた代物、これを全部あんたらに渡す。それをどうするかはあんたら次第だ」

 

 

弔は相澤先生にケースを全て渡す。

 

 

「……万が一のことを想定し、こいつは雄英(こっち)で預かっておく」

 

 

「懸命な判断だな」

 

 

「さて、そろそろ彼女のことを…」

 

 

「そうだったな…。緑谷、こっちに来い」

 

 

相澤先生に呼ばれた出久は彼の横に並ぶ。

 

 

「緑谷出久、俺のクラスの委員長だ。他の奴よりは信用できる」

 

 

「……分かりました。では緑谷さん、彼女のこと、お願いできますか?」

 

 

出久は戸惑いながらも、エリの顔を見る。その顔はまるで人形みたいだった。

 

 

すると出久はその場でしゃがみ、エリと目線を合わせた。

 

 

「はじめまして、僕は出久。よろしく」

 

 

「………」コクッ

 

 

出久の挨拶にエリは頷いた。

 

 

「彼女にはあまり物に触れさせないようにお願いします、彼女はまだ個性を上手く制御できないものですので。今の所弔の個性である"崩壊"で角を短くさせましたが、角が伸びると個性が強くなりますので」

 

 

出久は黒霧の話を聞いていたが、突如エリの頭を撫で始めた。

 

 

「今までずっと怖い思いをしてきたよね?でも大丈夫、ここにはエリちゃんを怖がらせる人はいないから」ニコッ

 

 

出久はエリに向かって微笑んだ。するとエリは出久に自ら抱きついた。

 

 

「……なるほど、彼を選んだのは正解でしたね」

 

 

黒霧は出久とエリの様子を見て納得していた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

 

「では私達はこれで「悪い、もう一つお願いしたい」…なんですか弔?」

 

 

黒霧が立ち去ろうとした所を弔が止めた。

 

 

「俺たちの大将…、"先生"の所にチンピラが蔓延っていてな。先生は気にしていなかったが、俺たちはマッハでストレスが溜まりに溜まってなぁ、このままじゃ何時爆発するか分からねぇんだわ。だから」

 

 

「あいつらを何とかしてくんねぇかな?」

 

 

弔が無意識で出した殺気を浴びた生徒たちは、出久以外を除いて体が震えてしまった。

 

 

「(何という殺気…!奴に悪気は無いのだろうが…思わず臨戦態勢を取ってしまった!)」

 

 

相澤先生と13号は弔の殺気を感じた途端、いつでも戦えるよう身構えていた。

 

 

「弔、殺気を静めてください。先生方は身構えていますし、生徒は震えてしまっていますよ?」

 

 

「……すまねぇ、あんたらに当たっても意味が無いのにな」

 

 

殺気を静めた弔だったが、生徒たちの震えは一向に収まる気配を見せなかった。

 

 

「とこのように彼の我慢が限界に達しようとしています。このままでは他の方々に迷惑を掛けてしまいます。どうか何卒…」

 

 

黒霧が弔の代わりに頭を下げる。

 

 

「……分かった。そいつらをここに集めてくれないか?13号、連絡を」

 

 

「分かりました」

 

 

相澤先生は彼らのお願いを聞くことにし、13号に連絡を頼み、13号は学校へ連絡をしに向かった。

 

 

それから数十分後、連絡を受けた学校はオールマイトを"除く"動ける教師をできるだけ連れて来たのだった。

 

 

「長らくお待たせして申し訳ない。私は根津(ねづ)、雄英高校の校長さ」

 

 

「これはご丁寧にどうも、既にお聞きとは思いますが…」

 

 

「詳細は13号先生から聞いてるよ。小切手の件は有り難く頂くよ。それと、敵のこともね」

 

 

「よろしくお願いします。では今から私の個性である"ワープゲート"を使ってこちらに出させます」

 

 

黒霧は自身の体を広げた。するとそこから敵がうじゃうじゃと現れた。

 

 

「なんだぁ?黒霧さん、こんな所に呼び出して」

 

 

集められた敵の一人が黒霧に近寄り、質問をする。

 

 

「今回皆さんに集まってもらったのには訳があります。あなたたちには」

 

 

「ヒーローに捕まってもらいます」

 

 

黒霧の発言に敵たちはどよめいた。

 

 

「おい黒霧さん、そりゃ一体どういうことだよ!?」

 

 

「あなたたちは私たちのアジトで好き勝手"やりすぎました"。先生は笑って許してはいましたが、後始末をする我々はどれだけストレスが溜まったことか」

 

 

「よって、私たちのストレス発散のために、ヒーローにボコボコにされてください」

 

 

黒霧の言い分に敵たちは喚きだした。

 

 

「冗談じゃねぇぜ!?なんで俺たちだけが!?」

 

 

「言い訳は警察署で言ってください。ではヒーローの皆さん、よろしくお願いします」

 

 

黒霧の後ろから相澤先生を含む教師陣(ヒーロー)が敵に向かって躍り出た。

 

 

教師陣の突然の急襲に敵は対応するのが遅れたが、その何人かは教師陣の急襲を掻い潜り生徒がいる所へと向かっていった。

 

 

「ゴムゴムの(ピストル)!」

 

 

だがその敵を出久が殴り飛ばした。

 

 

「先生!捕らえ損ねた敵は僕たちが捕らえます!先生方は目の前の敵に集中して下さい!」

 

 

出久は自身の腕や足を伸ばして次々に敵を倒していった。

 

 

そして残った敵たちは一ヶ所に誘導させられるように固まってしまった。

 

 

「緑谷、奴らを一網打尽にできるか?」

 

 

相澤先生は出久に質問をする。

 

 

「……一つだけ手があります。でもコレは負担が大きいので…」

 

 

「構わん、やれ。もし捕らえ損ねても俺たちが捕らえる」

 

 

「分かりました」

 

 

出久は左手の親指を口に咥えた。

 

 

「"ギア(サード)"、"骨風船(ほねふうせん)"!!」

 

 

出久は親指に息を吹き込むと、左手がまるで風船のように膨らみ、そして左手から腕→体→右腕の順で空気が移動した。

 

 

「ゴムゴムの~…」

 

 

巨人の銃(ギカントピストル)」!!

 

 

『ギャアアァァァァッッッ!!』

 

 

出久が放った巨大な拳は残った敵を一人残らず気絶させたのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「フゥ~ッ」

 

 

「緑谷、お疲れ…っ!?緑谷…、お前」

 

 

出久が一息つき、相澤先生が出久を労うために近づくと、その異様な光景に目を見開いた。

 

 

「緑谷少年…、君は…何故、『体が小さくなっている』んだ!?」

 

 

そこにオールマイトが遅れて到着し、相澤先生が言おうとしていた言葉を根こそぎ喋ってしまった。

 

 

「あっ、オールマイト。これはいわば"副作用"です」

 

 

『副作用?』

 

 

出久の説明に生徒&教師は首を傾げた。

 

 

「先程の"ギア3"は自分の体の一部を大きくさせることができるんですが、その副作用として使用した時間と同じ時間、体が縮んでしまうんです」

 

 

出久が説明している最中に副作用の時間が過ぎたのか、出久の体が元の大きさに戻った。

 

 

「緑谷、それがさっき言ってた"負担"ってやつか」

 

 

「ええ、でも長時間使用しなければ問題はありませんので、大丈夫です」

 

 

「……そうか」

 

 

相澤先生は出久の頭を優しく撫でたのだった。因みに弔と黒霧の二人は教師陣が飛び出したと同時に"ワープゲート"でその場を去っていたのだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。