【完結】あなたはノースティリスの冒険者ではない。(ウマ娘×Elona)   作:河畑濤士

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【お願いです】

ウマネスト要素があります。

ウマ娘がメテオの詠唱や時間操作などが可能であることは公式設定です。

苦手な方は読み飛ばしていただければ幸いです。

それからウマネストでエルコンドルパサーが左回り○で敵の時間操作(巻き戻し?)から脱出できた理由がわかりません。
正常に時間を進めるのであれば右回り○ではないでしょうか?
どなたか理屈をご存じの方はいらっしゃいますか?




◇◆◇


■25.「ウマ娘・種族スキル――!」

「だ、誰も気づかなかったね……」

 

 あなたとライスシャワーは、暴徒に絡まれることも、ガードに誰何されることもなく、未だ銃声と怒号が鳴り響くレース場を後にすることができた。

 彼女の暖かい手を握ったまま、先を往くあなたは「にっしっし♪」と笑い、道に迷うことなく城門へ向かう。ガードたちの隊列とレース場から逃げてきた善良な市民たち、負傷者でごった返す大通りを迂回し、しかしながら何が潜んでいるかもわからない裏路地を避けながら、可能な限りの最短ルートを選択していく。

 それがライスシャワーには不思議だった。

 

「あ、あのっ! 前にも来たことが……?」

 

 これまで複数回に亘ってこの世界に飛び込んでいる彼女でさえ、この市街地の構造を覚えられてはいない。ましてや初回の利用でここまで適切なルートを選択し、自信満々に動けるはずがなかった。となれば、目の前の“魔法使いさん”は、これまでにもUma Elonaをプレイした経験があるに違いない、と彼女は思ったのだった。

 しかし、緑髪のウマ娘に化けているあなたは、悪戯っぽい笑顔を浮かべて首を横に振った。

 

「前も何も、ここは故郷みたいなものだよ―っ♪ お姉ちゃん♪」

 

 ライスシャワーには、意味がわからなかった。

 

(故郷、といえるくらいこのゲームをやりこんだことがある、ってことかな……)

 

 それがライスシャワーのひねり出した解釈だった。

 が、3秒であなたはその解釈を打ち砕いた。

 

「わたしの故郷に、うん、すごい似てる♪」

「……」

 

 彼女はあなたに対して、畏敬の念を覚えた。

 

「す、すごいね……」

 

 最初にこの仮想空間に入りこんだとき、ライスシャワーは呆然とした。

 暴力と不道徳が日常であり、殺人がより普遍的な世界。ウマ娘のレースでさえも金銭が絡むようになっており、彼女が知っているそれとは似ても似つかない賭博興行となっていた。

 現実時間と切り離されていることでより効率的にトレーニングができ、実戦さながらの経験も積めるというメリット、そして何よりも彼女の勝利への執念・意志がなければ、彼女は二度とこのゲームをプレイしなかっただろう。

 

「こんな国が、海外にはあるんだ――」

 

 ライスシャワーはこれまであなたに対して抱いていた疑問が、氷解していくような気がしていた。こんな環境で育ったからこそ、強い意志がある。だから日本中からのバッシングを無視して、ミホノブルボンさんをクラシック戦線に送り出すことができたのだろう。又聞きした奇行も、文化風習の違いと思えばうなずける。

 それをライスシャワーは素直に口に出した。

 

「お姉ちゃんのいうとおり、確かに日本とはぜんっぜん違うね♪」

 

 ふたりは城門をくぐり、ムーンゲートまで続く街道を歩き始めた。

 

「でも本質は変わらないかなあ……♪」

「本質?」

「みんな一生懸命生きてるってこと」

「……」

「じゃあ、わたしからもしつもーんっ♪」

 

 あなたは無邪気に聞いた。

 

「なんでさっき、剣を抜いて使わなかったの?」

「へ?」

 

 あなたは不思議で仕方がなかった。ライスシャワーは勝負服の一部としてではあるが、帯刀している。もちろん、刃などついていない。だが模造刀であったとしても、鋭利な切っ先を有している。暴徒にそれを突き出せば、相手を害することは十分可能だ。

 対するライスシャワーは小首をかしげた。

 そういう発想はまったくなかったからである。

 それを看破したあなたは、なし崩しに“ペット”となっているライスシャワーのステータスを確認し、すべてを理解した。当然といえば、当然か。彼女は戦闘用スキルを何も持っていないのである。当たり前だが日本国内には、戦術をはじめとする戦闘用スキルを教えてくれるトレイナーはいない。

 ……そこであなたは、思い出した。

 あなたもまたひとりで勝手に強くなったわけではないことを。

 

 太陽は地平線に近づきつつあったが、王都からムーンゲートへの短い旅は何のトラブルもなく終わろうとしていた。街道にモンスターが現れたとしてもその強さはたかが知れている。インコグニートの効力が切れたあなたは、油断せず慎重に歩を進めていたが、それでも日が落ちる前には元の世界に戻れるはずであった。

 

「や、やっと戻ってこれたね……」

 

 ぼんやりと輝くムーンゲートまであと数十メートルのところで、ハロウィンじみた勝負服のままのライスシャワーは安堵の溜息をついた。

 しかし、あなたはそれに釣られなかった。

 

――百万バリキ。

 

 故に右手の雑木林から膨れ上がる闘気に、あなたは反応できた。

 

「ふえっ?」

 

 あなたはライスシャワーを抱きかかえると、亜音速で放たれた鉄鎖を避けた。

 その先端――黄金の錨は街道を穿ち、爆撃痕はかくやというクレーターを生み出すと、瞬く間に襲撃者の手許へ手繰り寄せられていく。

 着地とともにライスシャワーを下ろしたあなたは、その昏い瞳で不意打ちを仕掛けてきた敵を見た。

 

「下がっていろ」

 

 あなたは久しぶりに自身に比肩するであろう実力を有する存在と、相対した。

 白い仮面に、赤い勝負服。種族はウマ娘。葦毛の、ウマ娘だ。彼女からは殺意も、敵意も感じられない。むしろその全身からは、嬉々とした感情が――自身の全力をぶつけられるという喜びが放射されていた。

 得物は、錨鎖(びょうさ)

 速度、威力ともに、あなたに対しても十分通用するであろう。

 

 仮面の下で、葦毛のウマ娘が笑った。

 それとともにあなたとウマ娘は、地を蹴って加速した。

 

――時間停止*****+

 

――右回り◎

 

 あなたが★《シーナのパンティー》の投擲モーションに入るとともに時間停止が発動したが、その凍りついた時空の中でも葦毛のウマ娘は平然と走り続け、黄金の錨鎖を放った。舌打ちする時間すら惜しい。あなたは上体を大きく逸らし、横殴りの一撃を躱す。が、それは彼女にとって錨鎖の一撃は、陽動に過ぎなかったらしい。

 葦毛のウマ娘は一気に踏み切った。

 そして空中に完成する、高速のドロップキック。

 四次元ポケットを詠唱して、魔法の威力を高める装備を整える時間はないとみたあなたは、速やかに聖なる盾を完成させた。

 その盾ごと、あなたは吹き飛ばされる。

 久方ぶりに感じるHPが減る感覚。

 が、それに怯むことなく、あなたは投げ出された虚空で回復魔法ではなく四次元ポケットを詠唱し、一振りの大剣を引き抜いた。

 

☆神殺しの大剣『スターダストヒーロー』

・それは生きている

・それは魔法の威力を高める*****+

・それは……

 

 あなたは着地とともに、漆黒の凶刃を構えた。柄を握りしめた掌に激痛が走り、鮮血がほとばしる。そうして柄革から血を吸った『スターダストヒーロー』が活性化した。あなたはHPがさらに減るのを無視して、葦毛のウマ娘を睨みつける。彼女もまた体勢を立て直し、再び黄金の錨を投じてきた。

 同時にあなたは再度、聖なる盾を唱え直す。金属音。散る火花と、魔力の燐光。先程よりも数倍の強度を誇る聖なる盾は、容易く黄金の錨を弾き返した。

 

 錨鎖を手許に引き戻す葦毛のウマ娘。

 対するあなたは、彼女の出方を伺った。

 あなたは回復魔法、補助魔法を高速で詠唱しながら、同時に思考を巡らせていた。先程、確かに★《シーナのパンティー》の時間停止は発動していた。が、彼女はそれに囚われることなく、あなたに対して右回りで走り続け、攻勢に転じていた。

 おそらくあなたが知らないスキルを、ウマ娘は有しているに違いない。

 

「血、血がっ――!」

 

『スターダストヒーロー』によって噛まれた手指から垂れた鮮血が、地面にこぼれる。それに気づいたライスシャワーが悲鳴を上げ、葦毛のウマ娘は1秒未満ではあるが、そちらに気をとられた。

 その隙を、あなたは見逃さなかった。

 ライトニングボルトの連撃。『スターダストヒーロー』の刀身を経て、威力が増幅された電撃は、雷鳴轟かせ、地を焼きながら葦毛のウマ娘に迫った。

 

――ライトニングステップ。

 

 その雷光を、葦毛のウマ娘は独特のステップで躱し、躱しながら前へ出た。

 中距離戦は不利とみたか錨鎖から手を放し、唐突に大空から降ってきた冷凍本マグロをキャッチする。

 あなたは彼女が振りかぶる冷凍本マグロを、バカにはしなかった。あれは凶悪な鈍器。冷気や幻惑の追加ダメージをもたらすエンチャントを有していてもおかしくない。あなたも、あなた・ライスシャワー・葦毛のウマ娘・ムーンゲートの位置関係を見計らいながら、『スターダストヒーロー』で迎撃の体勢を整えた。

 

 次の剣戟で、勝敗は決した。

 

 葦毛のウマ娘が繰り出す袈裟懸けの一撃をあなたは体勢を大きく崩し、紙一重で躱した。

 通常、その姿勢からは威力ある斬撃は放てない。が、あなたは驚異的な体幹を以て『スターダストヒーロー』を前方へ突き出し、彼女の肩口に刀身を当てた。

 その瞬間、『スターダストヒーロー』が白熱した。

 

 

 

☆神殺しの大剣『スターダストヒーロー』

・それは生きている

・それは魔法の威力を高める*****+

・それは電撃属性の追加ダメージを与える*****+

・それは……

 

 

 

 次の瞬間、この高レベル帯ではさしたるダメージにはならないであろう電撃が、刀身から放たれる。が、それで十分。電撃属性のダメージは、短時間ではあるが確実に相手を麻痺させるのだから。

 と、同時にあなたはライスシャワーまで跳躍して彼女を抱き寄せると、一気にムーンゲートまで走った。

 

「――ッ!」

 

 硬直状態から回復した葦毛のウマ娘が慌てて振り向くが、そのときにはあなたはもうライスシャワーの小柄な体躯をムーンゲートに投げ入れ、再び葦毛のウマ娘と対峙していた。

 

 葦毛のウマ娘は、どこからか大型の水鉄砲によく似せた銃器を取り出した。

 対するあなたは、四次元ポケットから★《あきかわやよいのぱんつ》を取り出した。

 

 

 

★《あきかわやよいのぱんつ》

・それは幻惑属性の追加ダメージを与える*****+

・それはウマ娘に対して強力な威力を発揮する*****+

・それは……

 

 

 

 機関銃弾と、★《あきかわやよいのぱんつ》が交錯した。

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