まだエタらないで続けられそうです!
※感想でご指摘を受けまして、どうするか悩んだ結果主人公の年齢を多少変更する事にしました。
訂正前7歳→訂正後6歳
まだ太陽も登っていない朝方‥‥‥。
ほんのりと明るくなり始める暁の空を背景に、大海原を一隻の海賊船が航行していた。
龍の顔のような形を模した船首に、左目に赤い眼帯をした骸骨が描かれた海賊旗を掲げるその船の名はレッド・フォース号。
赤髪のシャンクス率いる〝赤髪海賊団〟の海賊船である。
タタタッ!!!
そんな船の甲板で、忙しなく動く人影が一つ。
活発そうな印象を抱かせる跳ねた銀髪と、黒真珠のような漆黒の瞳。
海風に身につけたシャツをはためかせ、甲板を走る一人の少年。
その手には清掃用に使うモップとバケツが握られていた。
チャポンッ
モップを水の入った桶に突っ込み、軽く水けを絞ると少年は甲板の掃除を開始する。
濡らしたモップで船の甲板についている汚れをふき取り、ある程度の範囲を拭き終えると、またモップを水につけ絞る。
それを幾度も繰り返す。砂や土といった汚れが落ちていき、黒ずんでいた甲板の木材が綺麗な木目を晒す。
やがて1時間程の時間が経ち、暁の空が朝焼けの空に変わる頃。
甲板のすべてを拭き終えた少年は、陽光を反射しピカピカと輝くその仕上がりを確認すると満足そうに頷いた。
「よし!朝の掃除は終了だな!」
グーッと両手を空へ伸ばし、少年は空から降り注ぐ光を全身に浴びる。
「おーいグリフィス、掃除終わったならこっちも手伝ってくれ!」
「お前の飯は美味いからなぁ!今日も頼むぜ!」
ふぅ…と小休止を入れる少年───グリフィスに船の厨房から声がかかった。彼を呼ぶのは彼と共に朝から作業を始めている雑用担当の船員達。
「おう!これ片づけたらすぐ行くよ!」
そんな仲間達に返事を返し、グリフィスは急いで掃除用具を片付け始めるのだった。
◆◇◆◇◆
「にしても……もう五年か……なんていうか、あっという間だったなぁ」
先程まで使っていた掃除用具を倉庫に片付けながら、俺は過去の記憶に思いを馳せる。
現在の俺の年齢は6歳。
船医である『ホンゴウ』の見立てでは、拾われた時の年齢は満1歳になるかならないかといった所の赤子であったらしい。
敵船から奪った宝箱。その中には俺と一枚の紙切れが入っており、その紙に書かれていたのが今の俺の名前だった。
紙を見たシャンクスから『グリフィス』と名付けられ、その日から俺は〝赤髪海賊団〟の
それからの生活は混乱や驚きの連続だった。
今は慣れたものの、慣れない船上での生活での船酔いで吐気を催したり。
海賊ということもあり、海軍や敵対する他の海賊達とのいざこざに巻き込まれる事も少々。
航海中に海王類に遭遇するなんて事件もあった。
まあ基本、戦いは船室の中で見守っているだけだったけど……。
命の取り合いどころか、殴り合い喧嘩すらまともにやった事がない俺からすればハラハラの連続だった。まぁ、少し刺激的で面白かった部分もあるけどな。
そんな前世に比べれば、波瀾万丈な日々を過ごしている訳だが。
人間、一度慣れてしまえばそこからの順応は早いものだ。
流石に五年も同じ生活を続けていけば、不慣れだった海賊生活もいつもと変わらぬ日常になる。
正式な海賊見習いと認められて、船の雑用を任されるようになったのが今から二年前の4歳の頃。見習いといっても、未だに戦闘には参加させて貰えない下っ端だが、日々の訓練は付けてくれるようになった。
話を聞けば、俺の成長速度はシャンクス達からしても予想外の物だったらしい。肉体的な面での成長も早いが、一番驚いていたのは精神面。
普通の子供なら、精神も未熟さから命の奪い合いになる荒事には参加させないのが普通。余程張り詰めた環境下で育った子供でなければ、戦闘という行為に忌避感を覚えてもおかしくない。
だが、俺は別だった。なにせ見た目は子供だが、中身は前世も合わせれば30歳になるおっさんだ。
弱肉強食。大海賊時代の真っ只中にあるこの世界を示す言葉にこれ以上の言葉は無いだろう。市民だろうが海賊だろうが海軍だろうが、弱ければ奪われるだけ。それが嫌なら抗う術を覚悟を決めるしか無い。
海賊として殺し、殺される覚悟。
ONE PIECEとしてこの世界を知っている俺がそれを決めるのにそう時間は掛からなかった。
シャンクス達は簡単な仕事をやらせて徐々に慣れさせ行くつもりだったらしいが、それらが前倒しになった訳だ。
あと、もう一つ。
これは前世の経験が生きた。見習いの主な仕事は炊事洗濯などの雑用がメイン。生前、一人暮らしを続けていた俺はそういった面で即戦力になれたのだ。
特に重宝されたのが料理スキルである。
外食は金が掛かるからと、手作り出来るものは自作していた経験がこんな形で発揮されるとは俺にも予想外だった。
この海賊団には料理をできる連中が船員の中に殆ど居ないのだ。良くも悪くも海賊をやる連中は、戦闘などの荒事は得意だが細かなことが苦手な人が多いらしい。
まぁ、料理人である『ラッキー・ルウ』なんかはあのでかい図体で器用に料理をこなすし、少数はそういった雑務が得意な人達もいる。
たが、大抵はやる事が雑か家事をやらせようものなら逆に仕事を増やしかねない腕っ節が取り柄の連中ばかり。
皿を洗わせれば力み過ぎて割ってしまったり、洗濯すれば力を込め過ぎて服を破いてしまったりなどなど……。
それを見かねて進んで色々な手伝いをするうちに、気付けばそういった雑用は俺が任される事が多くなっていた。
【海賊見習い兼雑用係】
それがこの船における俺の立ち位置である。
「……よっし!」
掃除で汚れた手を洗い、バンダナと前掛けをして厨房に入る。
料理中の芳しい香りが鼻をくすぐり、仕事で空いた小腹を刺激する。
「あむっ…!おお、グリフィスか。肉は俺が準備してるぞー」
「了解!じゃあスープとサラダは俺が作るよ!」
骨付き肉を食べながら船員たち分の肉を焼く『ラッキー・ルウ』の後姿を確認し、俺はまだ誰も手を付けていない汁物と前菜の準備を始める。
「さてと……確か昨日下処理をした魚の骨があったよな」
スープの出汁に使うのは天日干しさせておいた魚の骨。それを軽くオーブンで炙った後、水の中に入れ火をかける。
湯が沸く迄の間、次に処理するのはサラダのための野菜達。
厨房に備え付けられた巨大な冷蔵庫を開き、そこから使う野菜を選別していく。
「こいつは痛みが速いから早めに使っちまうか……こっちはまだ新鮮だから後回しだな」
海の上では食材の調達は非常に困難だ。
買い足すにもどこかの島に寄る必要があるため、使う食材は痛みの早いものから順に使う。これが、船上生活での常識だ。
手慣れた包丁さばきで野菜を切り、大きめの皿を何枚か用意してそれぞれ綺麗に盛り付ける。最後に作り置きしてあるドレッシングを垂らせば完成だ。
「サラダは出来たぞ!持ってけ!」
食事の準備をすすめる船員に完成したサラダを持っていくよう、指示を出して、今度はスープの味付けに取り掛かる。
表面に浮いてきたアクを取り除き、火を弱火に変える。その際に、出汁を取るために入れておいた骨を取り除く。
元日本人としては、このまま味噌汁を作りたくて堪らないが……今手元には味噌がない。仕方ないので調味料で味を整えて、サラダを作るときに切った野菜の一部を投入。しんなりするまで煮込み野菜スープを作り上げる。
「うん、美味い……ってもうこんな時間か。アイツを起こさないとな」
最後に味見をして、厨房の壁に取り付けられた時計を見れば時刻はすでに7時。
そろそろ寝ていた連中が起きて、飯を食べにくる時間だ。
未だに眠りこけているだろう同居人を起こさなければ、あとで小言を言われかねない。
「あとは頼む!!」
スープの盛り付けは、残りのメンバーに頼み厨房を出る。
向かう先は俺ともう一人の同居人に割り当てられた一つの小部屋。
その部屋の前に立ち、まだ中に居るだろう住人に声を掛ける。
「おーい、起きてるかー?」
軽く扉をノックするが返事がない……。
どうやら同居人はまだ眠っているらしい。
念のためもう一度確認の声を掛け、返事が無いのを確認して中に入る。
「……すぅ…すぅ」
簡素な二ベットに机と椅子が二つずつ、鏡合わせのような配置で置かれた部屋の中。
俺の使っているベットの反対側、少し毛布の盛り上がりのあるベットには一人の少女が眠っていた。
頭の分け目で紅白に分かれた特徴的な髪に、幼いながらも整った顔立ちはまるで妖精のようだ。
「おーい、もう朝だぞー」
すやすやと寝息を洩らしている彼女の肩を揺すり起床を促す。気持ち良く寝ている所を起こすのは気が引けるが、背に腹は変えられない。
起こさないで朝飯を食いそびれたら、待っているのは目の前の少女からの文句の嵐である事は身を持って知っている。
「……んぅ…ふぁ…?……グリフィス…?」
身体を揺すられたことにより意識が覚醒したのか、ぼんやりとした寝ぼけた眼が此方を見つめる。
「だいぶ寝ぼけてんな……昨日も遅くまで歌でも作ってたか?」
「……うん……ちょっと良い詞が浮かんじゃって……。おはようグリフィス」
「とりあえず着替えて顔でも洗え。水は持ってきてやっから」
「ふぁぁ……ありがとグリフィス……」
眠っていた身体を起こし、大口を開けた欠伸をする少女。
「まったく……歌作りもいいけど程々にしとけよ
彼女の名は────『ウタ』。
俺と同じく、幼い時にシャンクス達に拾われた少女であり、聞き惚れるような歌を歌う〝赤髪海賊団〟の音楽家。
そして、
全世界を魅了する歌姫にして、
◆◇◆◇◆
俺が
『
その頃の彼女は拾われたばかりの俺と一緒の2歳。まだ言葉もまともに喋ることが出来ないくらいの、幼い少女だった。
正直、最初彼女を見た時は自分の目を疑った。
なんで……どうして…
そんな考えが頭を巡り、間違いであってほしいと強く願った。
だが、ウタという名前に、特徴的な容姿は余りにも…余りにも見覚えがあり過ぎたのだ。
未来の歌姫である、彼女の歌や音楽への情熱や興味は凄まじい。
出会ったばかりの二歳の頃は歌を聞かせなければ夜泣きを辞めず、三歳の頃には、すでに鼻歌を歌い始め、四歳になれば拙いものの歌を奏で始め……5歳、6歳とその才能は増して行き、7歳の現在では自分で作曲を手掛けるまでになった。
そして確定的ともいえる特徴……それは。
極度のカナヅチであり、彼女の歌を聞くと決まって皆んな眠ってしまう。
この一点。
つまりウタウタの実の能力をすでに所持しており、今からそう遠くない未来で"あの悲劇"が起こる
正直、確証は無い。
まず俺というイレギュラーの存在もあるし、劇場版の世界はいわばパラレルワールドの世界線だった筈だ。
この世界のウタウタの実に魔王を呼び起こす力など無いかもしれないし、もしくは魔王そのものが居ない事だってありえる。
「───てるの───ス!」
……そうあくまで可能性の話だ。
「ねえ!!聞いてるの、グリフィス!!」
「っ!?」
「グリフィスが椅子から転がり落ちたぞ!!」
「ハハハハ!!何やってんだ、グリフィス!!」
耳元で発された大声に驚き、座っていた椅子からずり落ちてしまった。船ね床にぶつけた尻がジンジンと痛みを訴えてくる。
「……痛ってて、急に大声出すなよウタ!」
地面に打ち付け痛む尻を摩り、原因である少女に不満を漏らす。
「無視するグリフィスが悪いじゃない!何度、声掛けても上の空だし……うん、どう考えてもグリフィスが悪い!」
まるでフグのように顔を膨らませて怒るウタ。やっている姿は非常に愛らしいが……不味い。随分とご立腹のようだ。
ニヤニヤと此方の様子を面白そうに眺めている面々に、助けてと視線を向けるも親指を立てられ無言で頷きを返される。
成程。
助けてくれる気はゼロ……というか楽しんでやがるな?
「いや、聞いてた聞いてた!!えーと、シャンクスの話だったよな?」
「違うわよ!!やっぱり聞いてないじゃん!!」
毎日のように話している、シャンクス絡みの話題だろうと当たりを付けてみたが、どうやら今回は違ったらしい。機転を効かせるつもりが火に油を注いでしまったようだ…ウタの頭の後ろで結われた耳の様な髪が逆立ち、ピョコピョコと怒ってますアピールを繰り返している。
こんな時は、
「すまん、悪かった!!」
頭を下げて素直に謝る、これに限る。話を無視してしまったのは事実だし、ここで粘ってもいい事はない。素直に謝れば大抵の場合は向こうから折れて許してくれる。
「むぅ……仕方ないわねぇ……」
腕を組み、渋々といった感じではあったがウタから許しを貰う事には成功したようだ。
「で?そんなに怒るなんて何の話だったんだよ?」
こんなに怒るという事はウタにとって余程重要な話題だったのだろう。内容が気になり聞いてみると、先程までの表情から一転。
ウタはニンマリと笑みを浮かべる。
「ふふん……!ようやく私の歌が完成したの!」
じゃーん!!
両手に広げられて見せられたのは、歌詞と音符の書かれた数枚の楽譜だった。これには俺も見覚えがある、今朝方にウタを起こした時にも話題に上がった彼女が作っていた歌。、その楽譜だった。
何度も手直しを加えたのだろう、インクで所々汚れているその楽譜からはウタの努力が感じられる。
「凄いじゃんかウタ!!」
素直に賞賛が口を付いた。まさか、数ヶ月足らずの期間でもう歌を作り上げてしまうとは驚きだ。
「当たり前よ!私は〝赤髪海賊団〟の音楽家でシャンクスの娘!ウタなんだから!」
自分の努力が褒められて嬉しいのだろう。
小さな胸を張り、ドヤ顔を浮かべるウタは実に誇らしげで見ている此方まで嬉しくなる。
「何だ何だ?」
「ウタがついに曲を完成させたってよ!」
「おーい船長!!ウタの奴がやったみたいだぜ!!」
「本当かっ!?それなら宴を開かないとな!!」
『ウタがついに自分の歌を完成させた!』
その話は瞬時に広がり。
船の上は朝食を食べたばかりだというのに、宴ムードに染まる。
そこからの動きは早かった。
「野郎ども!今日は宴だぁ!!」
そんなシャンクスの号令がかかり皆んなが一様に動き出す。ルウと俺は食事係として駆り出され、酒の肴になる料理を。
酒好きの酒豪たちは、酒蔵に大事に取っておいた酒樽を甲板に運び出す。
音楽家である『ボンク・パンチ』と『モンスター』のコンビを筆頭に楽器の心得がある連中はウタから完成した楽譜をかり演奏の練習を始める。
それ以外の連中は宴会場の準備。
『ヤソップ』や『ベン・ベックマン』が指示を出し、甲板の上に机や椅子を並べていく。
あれやこれや、数時間もしない内に宴会場はあっという間に出来上がった。
「野郎ども!おれ達の娘が初めて歌を完成させためでたい日だ!今日は朝から晩まで飲み明かすぞ!カンパイ!!」
シャンクスが、ジョッキを片手に音頭をとり宴が始る。
「「「「「カンパイ!!!!」」」」
皆が片手に酒を持ち、各々のペースで宴を楽しむ。
力試しだと腕相撲や殴り合いをする者。
つまみを片手に酒を楽しむ者。
浴びる様に酒を飲み酔い潰れそうになっている者など様々。
「むー……」
ちなみに、俺はジュースを片手に酒を飲む連中を羨ましそうに見る者だ。宴の隙にこっそり酒を飲もうとしたところ『ハウリング・ガブ』や『ビルディング・スネーク』といった大人達に取り上げられてまった。
強面な外見して面倒見が良いんだよあの二人……。
はぁ……久しぶりに酒飲みてぇな……。
「何、落ち込んでるのよ?」
「ウタか……むー、酒が飲めなかったんだよ」
「懲りないわね、またこっそり飲もうとしたんでしょ?お酒なんて苦いだけじゃない」
「あの苦さがいいんだよ!あれを飲んでこそ大人って感じがいいの!」
確かに苦いし俺も味はそんなに好きじゃないけど、あの苦味を感じてこそ酒を飲んだ気分になれるんだよなぁ。
キンキンに冷えた生ビールとか堪んないよね。
「ふーん……まぁいいわ。今から、お酒の事なんて吹き飛ぶくらいの歌を聞かせてあげる!ちゃんと私のライブ見ててよグリフィス!」
そう言い残しウタは宴会場の中央にいるシャンクスの元に駆けていく。そこにはパンチ達を始めとする楽器を持つ男達の姿もあった。
「よーし野郎ども!今からうちの歌姫が、新曲を披露してくれるらしい!耳の穴をかっぽじってよく聞きやがれ!」
「おおう!歌え歌え!」
「今日の主役の登場だ!」
「いつもみたいに一曲頼むぜウタ!」
シャンクスの一言で好き勝手に宴を楽しんでいた船員達が集まり、中央に設置されたステージの周りに集合する。
「皆!今から歌うのはこの船での思い出を歌詞にした私が初めて作った曲!曲名は『風のゆくえ』聞いて下さい!」
ウタのそんな挨拶と共に演奏が始まる。壮大な、けれど何処か暖かさを感じる伴奏と共に響く彼女の歌声は、その歌の名前の様に風に乗り運ばれていった。
主人公設定(現時点)
名前:グリフィス
役職:海賊見習い兼雑用係
所属:赤髪海賊団
容姿:癖のある銀髪に黒眼。
趣味:料理
年齢:6歳