赤髪さん家の海賊見習い   作:ヤマアラシ

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評価、誤字脱字報告ありがとうございます!

台風の被害が酷かったですが、皆さんは何事もなくお過ごしでしょうか?
私のいる地域は大した被害もなく済んでいます。


episode2

 

 『覇気』

 

 ONE PIECEの物語中盤、シャボンディ諸島編辺りから明かされた全ての人々が持つ潜在的な力であり、世界の中でも指折りの強者達が必ず身につけている人間が持つ最大の武器である。

 

 『肉体の直接的な強化に繋がる武装色』

 

 『相手の気配や感情を読み取ることにより、様々な情報の探知や危機回避を可能とする見聞色』

 

 『王の資質を持つ、ごく僅かな人物しか持たぬ特殊な覇王色』

 

 覇気は以上の三つに分類され、四皇であるカイドウに「覇気を制するものが世界を制す」と言わしめる程の、この世界においての、強さの指標を示す重要なパラメーターである。

 

 あれから時が流れ、7歳になった俺ことグリフィスもその覇気を身につけるべく日夜、訓練に明け暮れていた。

 

「目だけで攻撃を追うんじゃねぇ!気配で感じとって避けろグリフィス!」

 

 怒声と共に飛来する無数の弾丸。

 

 〝赤髪海賊団〟の狙撃手『ヤソップ』の持つ小銃から放たれた弾丸が此方に向かって飛来する。

 

「ヤソップの野郎…手加減するって言ったのにギア上げやがったな!?仕方ねぇ!まだ探り探りだけど……やるか」

 

 迫る弾丸を前に俺は瞳を閉じる。

 

(焦るな、気を落ち着けて冷静に気配を感じとれ)

 

 視界を閉ざした暗闇で感じとるのは、ヤソップから発せられる気配。

 

 まだ習得したばかりで未熟な見聞色を発動させて、彼の感情や気配の起伏を探知する。

 

 闇の中にぼんやりと浮かび上がるのは、ヤソップのものである白く縁取られた人型のシルエットとそれから湯気の様に立ち上るオーラ。

 

(躱わす必要の無い攻撃には反応するな)

 

 此方の回避を誘うための脅しの弾丸はスルー。真横を通り抜けていく音にヒヤリとしながら、冷静に探知を続ける。

 

「っ!!分かった!」

 

 ヤソップが放った無数の弾丸の中で、攻撃の意図を持って放ったものは計六発。一定感覚ごとに狙いをズラして放たれた攻撃の目標を察知する。

 

 頭部に一発、脚部に二発、胴体に三発。

 

 避けにくい様に狙いを一箇所に絞っていないのが実に嫌らしい。

 

 俺がどう対処するのか、面白そうに伺っている狙撃手の姿に若干の不満を覚えつつ迫る脅威に意識を引き戻す。

 

「……ふっ!」

 

 頭部への弾丸は後方へ頭を捻り、回避。

 

 顔面すれすれに弾丸が通るのを尻目に見ながら、次の回避行動をとる。

 

「よっと……!」

 

 地面を蹴り跳躍。バク宙の動きで右足と左足を狙って放たれている二発の弾丸を避け、地面に着地。

 

「おらっ」

 

 キンッ!キンッ!キンッ!

 

 腰のベルトに備え付けた鞘からサーベルを抜き放ち、胴体に迫っていた残り三発の弾丸は切り払う事で防御する。

 

「次はこっちの番だ!」

 

 ギシッ!!

 

 甲板を蹴り、攻撃を防いだ流れで反撃へと転じる。

 

 サーベルを肩口に構えて、前傾姿勢のままヤソップに向かうように疾走。余裕の表情を浮かべるヤソップに一泡吹かしてやろうと上段にサーベルを構える。

 

「やるじゃねぇか!見聞色を使う感覚掴めてきたみてぇだな。だが、コイツはどうだ?」

 

 バンバンバンッ!

 

 鳴り響く射撃音。

 

 今までの射撃感覚とは比べ物にならない早打ちで撃たれた弾丸が、四方八方を駆け巡り壁や柱に辺りその軌道を変える。

 

 弾丸そのものが意志を持っているかのように、此方を取り囲む変則的な跳弾射撃。

 

「うわっ…マジかよ」

 

 狙ってこの包囲網を作り上げるヤソップの銃の腕前に思わず感嘆の声が漏れ出るも、ふと我に帰る。

 

 これ……逃げ場無くないか?

 

「ちょ、待てって!これ無理!無理だろ!?」

 

 抗議の意味を込めてヤソップを見れば、ニヤッと挑発的な笑みを浮かべる彼と目が合う。

 

「お前が俺に攻撃を当てるなんざ10年早ぇよ」

 

 野郎……!

 

 鼻から逃げ場のない攻撃を繰り出しやがった……!

 

 大人気ねぇ……訓練用にゴム弾を使ってるとはいえ当たるとめちゃくちゃ痛いんだぞこれ!?

 

「チクショーが!」

 

 回避が不可能な以上、とれる手段は防御のみ。サーベルを腰の鞘に戻し、駆けていた足を止め急ブレーキをかける。

 

 意識を腕に集中。

 

 肌色の皮膚が鉛の様な黒に染まっていくのを確認し、両腕を盾の様に頭上に構える。

 

「武装色……硬化!」

 

 次の瞬間。

 

 銃弾の雨が俺を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「いでっ…痛てっ!!おい、ウタ!もう少し優しく治療してくれよ!」

 

「煩いわねー、文句あるなら自分でやればいいでしょ?やってあげてるだけ感謝しなさいよ!ほれっ!」

 

「アザを突くな!?マジで痛いんだから!」

 

「へぇ〜……ふ〜ん」

 

「何でにじり寄ってくんだよ……おい、止めろ!止めろぉー!」

 

 逃げるグリフィス。

 

 それを追うウタ。

 

「ハハハハ!逃げろ!グリフィス!」

 

「いいぞやっちまえ!ウタ!」

 

 甲板の上で追いかけっこを始めた子供達の姿に、それを見た連中が野次を飛ばす。

 

「ウタもグリフィスも随分と成長したもんだ……泣いてばかりいたあの頃が懐かしいんじゃないかお頭?」

 

 駆け回る二人を眺めながらシャンクスに問いかけるのは〝赤髪海賊団〟副船長『ベン・ベックマン』。

 

 口に咥えられた煙草を蒸して、シャンクスの隣にに立つ姿は副船長の名に恥じない貫禄を放っている。

 

「冗談じゃない!あの寝不足ばかりの日々に戻るのはおれはゴメンだぞ?ウタの夜泣きを鎮めるのにおれ達がどれだけ苦労したか……お前も知ってるだろ」

 

「確かに……違いない。しかし、あの二人の成長にはいつも驚かされるな」

 

「ああ、ウタの音楽家としての才能には目を見張るものがある。あいつの歌は世界に通用する…天性の代物だ。惜しむらくはおれ達じゃ、あいつに相応しい舞台を用意してやれないことだろう。それに、グリフィスの奴は成長速度が段違いだ。前から大人びちゃいたが、まさか一年足らずで覇気まで身につけるとは思わなかった……」

 

 跳ねる銀髪を視界に止めながら、シャンクスは未だに記憶に新しいグリフィスとの会話を思い出す。

 

『なぁシャンクス、覇気を教えてくれ!』

 

 それは一年程前、ウタの曲作りを祝った宴の直後の出来事だった。頭を下げ、何かを決意したように真剣な眼差しを浮かべるグリフィスにそう強請られたのだ。

 

 何故、覇気を習いたいのかと聞けばグリフィスから帰ってきたのは答えとも言えない返答だった。

 

『ウタの歌を聞いてて思ったんだ。ウダウダ悩む前に俺は自分に出来る事をやろうって!俺は強くなりたい…何があっても守りたいもんを守れるように出来ることは全部やりたい!何かあってからじゃ遅いんだ!俺は後悔したくねぇ!』

 

 それは、5年間共に過ごして来たシャンクスが初めて見たグリフィスの姿だった。いつもは願い事や頼み事すら稀、何処か遠慮しがちな一歩距離を置いた位置から自分達を見ている息子からの初めての我が儘だった。

 

 だからこそ、それ以上の理由は聞かずシャンクスはその願いを承諾した。

 

 それからの訓練内容はシャンクスから見ても苛烈。

 

 覇気を身につけるには並大抵の鍛え方では不可能だ。極限状況まで自身を追い込み、内なる力を引き出す必要があった。

 

 ベックマンを初めとする幹部達と一緒に考えたとても子供がこなす様な内容ではないそれをグリフィスは日々、着々とこなしていった。

 

 そして先日、遂に覇気を意識的に使用できるまでになった。大の大人でも難しいというのに恐るべき成長速度である。これにはシャンクス達も舌を巻いた。

 

「生まれ持っての資質が高いんだろう……まさか、覇王色の資質も持っているとは思わなかった。お頭との訓練で目覚めたんだろう?」

 

「あれはおれも予想外だ……。毎日、覇王色を浴びせてくれだなんて誰が考える?今でも夢に白目を向いたグリフィス(あいつ)の顔が出てくる……あれは狂気の沙汰だ」

 

 額に手を当て、心底疲れ切った顔を浮かべるシャンクス。

 

『強い覇気を受けた方が上達が早いんなら……シャンクスの覇王色を毎日受ければ俺も覇王色使えるんじゃねぇの?』

 

 そんなグリフィスの一言から始まった正気を疑う狂気の訓練。

 

 思い浮かぶのは毎夜、人に覇王色を連発させて失神していた息子の姿。誰が好き好んで、白目を剥き倒れる子供の姿を見たいと思うだろう?

 

 見せられるこっちの身にもなって貰いたいと、何度辞めさせようとした事か……。しかし、そんなシャンクスの思いとは裏腹に覇気の才能を開花させていたのだからタチが悪い。実質的な成果を目の前で見せられているのだから辞めるに辞めれないという悪循環。

 

 グリフィスが覇気を身に付けるまで続いたその生活は、シャンクスに少なくない(トラウマ)を植え付けていた。

 

「あーご苦労だったなお頭」

 

 これにはベックマンも同情を隠せずに慰めの言葉を掛ける。

 

「お頭!もうすぐ目的地だぞ!」

 

 シャンクス達に声が掛かる。

 

 声の主はマストの上で航路を指示していた〝赤髪海賊団〟航海士『ビルディング・スネーク』。彼の手には目的地を示すエターナルポースが握られている。

 

「着いたかゴア王国……」

 

 頭の麦わら帽子を被り直しシャンクスが目を向けるのは、転々とある緑豊かな島々。何もない自然豊かなその景色を進んでいけば、周りに風車小屋の立ち並ぶ小さな田舎町が見えてくる。

 

 ドーン島に属する、ゴア王国。

 

 そのゴア王国に属する、大陸の外れ僻地にあるフーシャ村。

 

 それが今回の目的地だった。

 

 ある目的(・・・・)を達成した、シャンクス達のこれからの活動拠点となる場所である。

 

「暫くはここを拠点にして活動するとしよう。旅の疲れも癒したいし、思わず手に入ったコイツの処遇も決めたいからな」

 

 シャンクスが手に持つのは一つの宝箱。蓋を開けた宝箱に収められているのは珍しい形をした果物。

 

 果物で例えるなら洋梨だろうか。厳密には多少形は違うがそれに近い形をした白い果皮に青い紋様が浮かぶ外見。

 

「ゴムゴムの実と一緒に保管されていたから奪ってきたが、図鑑と照らし合わせてもどの悪魔の実にも当てはまらないとはな……さて、どうしたもんかね?」

 

 シャンクスの手にあるその実は、まるで存在を誇示するかのように陽の光に照らされていた。

 

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