赤髪さん家の海賊見習い   作:ヤマアラシ

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この小説を読んでくれてる方、お久しぶりです。
もう何日か経過してしまいましたが、台風ヤバかったですね。我が家は床上浸水までは行かずとも庭が泥や砂利、流れてきた木々などにやられまして、それを完全に綺麗にするまでに丸二日間掛かっちゃいました。
車が水に浸からなかったのが唯一の救いでしたね。前日に避難させていて正解でしたね。
台風被害に遭われついる方々の苦労が少し分かった日々になりました。


episode3

 酒場『PARTYS BAR』。

 

 フーシャ村に存在する唯一の村酒場であり。

 

 ウエスタン・サルーン風の建築模様である、西部劇に登場するバーを連想させる風情あるその外観は村人、山賊、海賊等に愛され。酒を好む者達の溜まり場でもあった。

 

「マキノさん!こっちにエール一丁!」

「はーい!ただいま!」

「こっちはツマミをおかわり頼む!」

「はーい!少々お待ち下さいね」

 

 そんな店の中で忙しなく動くのは緑の黒髪をワンレンにした年若い女性。

 

 名を──マキノ。

 

 この『PARTYS BAR』の女店主である。急に来訪した来客への対応で店は大忙し、人によっては文句の一つでも言いたくなるような状況だがマキノの表情には疲れはあれど不満や苦痛の表情はない。愛想のいい笑みを浮かべて仕事をこなす様は彼女の仕事への情熱と人の良さを物語っている。

 

「すまんな店主さん、こんな大所帯で押し掛けちまって」

「いいえ、むしろ稼ぎ時ですよ。港に着いた立派な船を見る限り、羽振りも良さそうですしたっぷり飲んでもらわないと」

「はっはっは!そりゃ責任重大だ。お前等!店主さんのためにも今日はたっぷり飲むぞ!!どの道しばらく航海は休みだ!飲み潰れても構わねぇ!」

「「「「「オオオオオオォォ!!!」」」」」

 

 手に持った酒樽を掲げてカウンターに座る赤髪の男──シャンクスが仲間達に声を掛けると上がるのは喜びの歓声。浴びる様に酒をかっ喰らう男たちの顔は徐々に赤みを帯びていき頬を緩めていく。

 

「そういえば、ありがとうございます船長さん。ルフィの相手をしてくれたみたいで…」

「何、俺はちょっと冒険の話を聞かせてやっただけさ。それに此方こそ感謝してる、うちの子達は他の子供と話をした経験が無かったからな。今回のルフィとの出会いはいい機会だろう。初めは心配だったが随分と打ち解けたらしい」

「ふふふっ、そうですね」

 

 マキノとシャンクスが目を向ける店の隅。木製の丸テーブルを囲むように三つの椅子の置かれたその空間に座るのはルフィ、ウタ、グリフィスの三名。

 

「なぁなぁ!!もっと冒険の話、聞かせてくれよグリフィス!!」

「そうだなぁ。じゃあここに来る前の島で見つけた光るカブトムシの話なんかどうだ?」

「スッゲェ!?そんなカブトが居んのかぁ!?」

「ああ!カッコよかったぞぉ!あれを見つけた時は俺も興奮したなぁ」

「はぁ……まったく二人揃って子供なんだから」

 

 冒険話を強請るルフィにそれに応えるグリフィス。子供らしいカブトムシの話で盛り上がりを見せている二人の姿にため息を漏らすウタ。呆れ顔を浮かべながらも、反応の一つ一つが大袈裟なルフィの姿を見て彼女も笑みを浮かべていた。

 

「どうやら、いい友達になれそうだな」

「そうですね」

 

 方や父親。方や姉代わり。シャンクスとマキノはそんな三人の様子を微笑ましく見守っていた。

 

「冒険に出会いは付きものだからな……。良し!店主さん、おれにも酒のお代わりをくれ!」

「直ぐに準備しますね」

 

 願わくば、この出会いが彼らにとってかけがえのない物になるように。保護者目線でそんな事を祈りながら、シャンクスはマキノが準備したエールを仰ぐのだった。

 

 ちなみにこの数時間後、悪酔いしたシャンクスが裸になりマキノが悲鳴を上げたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……うーん……」

「何唸ってるのグリフィス?」

 

 『PARTYS BAR』での酒盛りを終え、裸になったシャンクスと酔い潰れた仲間達をベックマン指揮の元で回収し終えた俺達は、自分達の船であるレッド・フォース号へと戻って来ていた。

 

 宿屋に泊まれば宿泊代も掛かるし、そもそもな話……そこまで規模の大きな村ではないフーシャ村には赤髪海賊団全員が泊まれるような宿泊施設は存在しない。

 

 そういった諸々の理由からいつも通り船での寝泊まりをする事になった夜中、ウタと供用になっている自室に戻った俺は自分の机の上に置かれた宝箱と睨めっこをしていた。

 

 蓋の開かれた宝箱の中に収められているのは珍しい姿をした果物。洋梨のような外見に青い紋様が浮かび上がっている。見たことも聞いたこともない奇妙な外見をした果実に俺は心当たりがあった。

 

(これって悪魔の実だよなぁ……)

 

 悪魔の実。

 

 ONE PIECEを知る誰もが知っているであろうこの世界特有のチートアイテム。食べた者は海に嫌われて一生泳げないカナヅチの身体になるかわりに、食べた悪魔の実に対応した何らかの能力を身につける事が出来る伝説の果実。その効果は人間だけでなく魚や動物…はたまた武器にまで及び、原作では犬になる銃や象になる剣なんかも存在していた。

 

 人智を超えた能力が身に付く『超人(パラミシア)系』。

 

 動物への変身能力が身に付く『動物(ゾオン)系』

 

 身体を自然物そのものに変化させ操る事のできる『自然(ロギア)系』

 

 以上の三系統に分類される悪魔の実は、基本どんな実を食べても強力な力を得る事が出来るとされていた。

 

 そんな代物が目の前にある。

 

『覇気を身に付けた祝いだグリフィス。どうするか悩んでたが、コイツはお前にやる事にする。酒の席だが船の奴ら全員に了承は取ってる後は売るなり食うなり好きにしろ』

 

 『PARTYS BAR』の帰り道このレッド・フォース号に着いた際に、まだ酔いの残るシャンクスからそう言い手渡されたのがこの悪魔の実だった。売れば数億ベリーは下らない代物を簡単に渡してくるあたり、流石未来の四皇というか懐が深いというか……。

 

 そんなこんなで今の俺は食うか食わないかという二つの選択の岐路に立たされていた。

 

「ふぁぁ……私だって早く寝たいんだから。いつまでも唸ってないで早く決めちゃいなよグリフィス」

 

 眠たげに目元を擦るウタに急かされる様にして、俺は頭を回らせる。

 

 食べた場合の利点は言わずもがな、力が手に入るという一点だろう。ただ、デメリットとしてはカナヅチになってしまう事に加え、何の実が分からないだけにいわゆるハズレ能力である可能性がある点である。

 

 扱いにくい能力やそもそもが余り使えない力だった場合、海や海楼石といった明確な弱点を作るだけに終わる場合が考えられる。能力者になれば、海に落とされればほぼ死刑宣告、一発アウトだ。その危険を承知で食べるべきか……もしくはこのまま、無能力者で強くなるか。

 

 …………。

 

 ………。

 

 ……。

 

「良し!食う!」

 

 頭の中では数時間にも覚える熟考の末に俺が出した結論は食べる事だった。理由としては小難しい事を抜きにして、悪魔の実の能力者になってみたいという子供の頃に描いた夢想を実現したいが為である。

 

「じゃあ頂きます!」

 

 宝箱の中でまるで此方を待っていたように照明を反射する実を手に取り、勢いよく齧り付いた。

 

 そして、俺は能力者になった。

 

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