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「………グルルゥ……ガゥゥ」
「……クゥン、クゥン」
「これに懲りたら、無闇矢鱈に人に襲い掛かるんじゃねぇぞお前ら」
悪魔の実を食べた翌日、俺はフーシャ村の近辺にあるコルボ山へと能力の確認に訪れていた。コルボ山の奥地である猛獣達の潜む山中へと入り込んで来た俺を出迎えたのは巨大な狼のような獣の群れ。
鋭い牙を剥き3mはあろう体躯を駆り、俺に対して襲撃を仕掛けてきた狼達。そんな彼らは今では目の前で頭を地面に伏せ、完全に首を垂れている。
「襲ってくるから丁度良いと思って力を試させて貰ったが……こりゃ当たりだな」
襲ってきた獣達への対処という事で昨日食べた悪魔の実の力を試させて貰った訳だが、俺を敵わない強者だと認識したのだろう。完全に戦意を喪失し、中には服従の証に仰向けになり腹を見せている個体もいる。
正直、自然系は高望み……超人系か動物系の使える悪魔の実であってくれれば良い、そう思って食べた悪魔の実だがその力は想像以上だった。
「ふぅ……」
意識を集中すれば、身体に変化が訪れる。
頭を起点として身体中を覆っていく白銀の羽毛。
身体は大きくより強靭に変化し、口は猛禽類の持つ鋭い嘴へと形を変える。
左右の両腕は、巨大な両翼へと変化。その両翼を開けば風が吹き、木の葉が舞い散る。
「ピィーーッ!!!」
目が行くのはその大きさだろう。全長はかるく5mを超え、翼を広げればその倍以上の大きさになる事が目測できる巨体。
そこにいたのは白銀の大鷲だった。
結論から言えば───。
俺の食べた悪魔の実は動物系───それも幻獣種だった。
翼での滑空能力に加え、その巨体から繰り出される一撃は重く強烈。まるで巨人族のような怪力を持つ。
動物系の特徴である単純な肉体強化といった面から見ても、かなり強力な印象を持つこの力だが、本当の真価は別にある。
「……風よ」
口から呟いた言葉。
その言葉を
風や大気を操る。
それが俺の食べた悪魔の実が持つ一番強力な力であった。
周りにある風の流れは此方の意思によって幾らでも操作可能。突風を吹かせる事も竜巻を作ることだってできる。やりようによっては風を操り真空を作り出す……なんて事も可能だろう。
当たりも当たり……大当たり。動物系の持つ生物へと変化に加え、その生物に付随した特殊な能力の付与。
そんな力を与える悪魔の実など、幻獣種以外には考えられない。
銀色の鷲の姿に風に関わる幻獣……。
そんな物が居たかと前世の記憶を引っ張り出して考えた俺は、一つの候補を思い出した。
『フレースヴェルグ』。
北欧神話で登場する鷲の姿をした
神話ではこの世界の風は全てフレースヴェルグが起こした……などと言われる程、風への関係性が深い存在だった筈だ。
俺の食べた悪魔の実に名前をつけるとすれば『ヒトヒトの実 モデル:フレースヴェルグ』って感じだろうか。
「にしても便利な能力だよなー」
風を操り、近くの木に実っている林檎に似た形の木の実を切り落とす。
「よっと!」
重力に従い地面へと落下するその木の実を地表からの風で浮かし運搬する。
「うん。美味い!」
「「「……クゥンクゥン」」」
「何だ?お前等も食べるか?」
「「「アウッ…!」」」
キャッチした木の実に齧り付く俺を見つめてくる狼達に尋ねれば、返事のように一吠えする狼達。
「ほらよっ……仲良く食べろよー」
そんな彼らに木の実を与えながら、俺の能力者としての生活は好スタートを切る事に成功したのだった。
◇◆◇◆◇◆
「すっげぇーー!!おれ空飛んだの初めてだ!!」
「ちょっとルフィ、暴れないでよ!危ないでしょ!」
「おーい!くれぐれも落ちるなよ二人とも!」
目を輝かせてはしゃぐルフィにそれを宥めるウタ。そんな二人に注意をしながら、俺は両翼を羽ばたかせる。現在、コルボ山で能力の確認を済ませた俺はルフィ、ウタの二人を連れ、大空を滑空していた。
何故そんな事になっているのか?
理由は単純だ。
シャンクス達は昨日ハメを外しすぎて二日酔い。マキノさんは酒や食材の仕入れに買い出しに出掛けており、一人で暇を持て余すルフィを見兼ねて誘いを掛けたのが今回のきっかけである。
「見ろよ!あれ村長ん家だ!」
「ちょ、ちょっと!乗り出さない!」
頬を撫でる風が心地よい。耳を裂く風切り音や変わりゆく景色を楽しみながら空の旅を続ける俺たち。眼下に見えるフーシャ村、その中に知り合いである村長の家を発見したルフィが手を振る。
頭だけでなく身体半分を乗り出して手を振るルフィ。
怒りそれを注意するウタ。
「おーい!村長ーー!!こっち──……ぎゃああああ!?」
「きゃあああ!?グリフィス!ルフィが落ちたぁ!!」
「っ!?何やってんだ!馬鹿野郎!」
言わんこっちゃない。ウタの注意を無視して身を乗り出していたルフィが手を滑らせて落下。叫び声を上げて落ちていくその姿を確認して、慌てて旋回。
風を操作しようにも昨日の今日で精密な操作はまだ無理、風力の調整をミスしたらルフィをあらぬ方向に飛ばしかねない。飛んで助けに行った方が早いか。
「ウタ!しっかり掴まっとけ!」
「あの馬鹿!後で覚えてなさいよ!」
翼を羽ばたかせて加速。叫び声を上げて落下を続けるルフィの元に急降下する。
「ぎゃああああああ!?助けてくれぇ!?」
「じっとしてろルフィ!」
「グリフィスゥゥ!!」
手足をバタつかせ、涙を流しながら助けを懇願するルフィ。
声を掛け接近。
Tシャツを嘴で挟む形で捕まえ、何とか救助に成功する。
(ふぅ……肝が冷えたぜ。原作前に主人公死亡とかマジ笑えねぇからな)
内心ホッとしながら風車の立ち並ぶ丘に着陸。そっと地面にルフィとウタを下ろして、獣型を解除する。降りてからルフィを確認するが、泣いてはいるものの怪我などは無い事を確認して一安心。
「たくっ……気をつけろよルフィ」
「うぅ……ありがとぉぉグリフィスゥゥ!!」
「まったく、泣くぐらいなら初めから危ない事やめなさいよ……」
涙と鼻水で顔が凄い事になっているルフィを見て怒りが引っ込んだウタは呆れ顔。相当怖かったのか、ルフィの号泣は数分間続く事になった。
そんなこんなで俺たち三人による空の旅は終わりを告げるのだった。
ちなみに数時間後──
「今度からは手振らねー!だからまた乗せてくれグリフィス!」
歩いてフーシャ村へ帰宅する帰り道、ケロッとした顔でそんな事をいい出すルフィに俺とウタが絶句したのは別の話。
常人なら一生モノのトラウマになってもおかしく無い出来事だったというのに、流石主人公……子供の頃からメンタルパネェ……。