〈1〉
流れる川の真ん中で剣を構える二人の剣士。
紅の剣士‘ダンテ’
蒼の剣士‘バージル’
二人は、それぞれの武器である‘リベリオン’と‘フォースエッジ’を手に睨み合っている。
「俺たちが受け継ぐべきなのは力だけじゃない、もっと大切な・・・誇り高き魂だ!!」
ダンテは、双子の兄であるバージルに説得の言葉を投げかける。
「その魂が叫んでる、あんたを止めろってな!!」
バージルは、笑いながらダンテに返事を返す。
「残念だが俺の魂はこう叫んでる。」
――I need more power!(もっと、力を・・・!)――
バージルの言葉を聞いたダンテは、天を見上げながら消え入りそうな雰囲気で呟く。
「いつから違ったんだろうな、双子なのに・・・。」
「さぁな、だが生憎と口で語れることなどたかが知れてる。」
言葉を交わし終えると、二人はそれぞれの武器である‘リベリオン’と‘フォースエッジ’を握る。
少しの睨み合いを終えると、二人は、剣を構えて間合いを詰めるために走り出した。
二人は、二回、三回とぶつかり合って金属のぶつかり合う音が木霊する。
永遠に続くと思われた打ち合いも、ダンテがバージルを吹き飛ばしたことで終わりを告げる。
バージルを吹き飛ばしたことで、二人の距離が大きく開いた。
二人とも肩で大きく息をしている。
「立てよ、あんたの実力はそんなもんじゃないだろ!」
バージルは、渾身の力を振り絞りフォースエッジを構え、ダンテに向かって走り出す。
ダンテもリベリオンを構え、バージルに向かって走り出した。
二人が交差した瞬間、リベリオンの刃がバージルの体を斬り裂いた。
バージルの手からフォースエッジが零れ落ち、地面に突き刺さった。
リベリオンの軌跡の後を鮮血が尾を引き、一拍遅れて吹き出る血が水に流されて奈落へと落ちていく。
その血と一緒に胸元から零れ落ちる物が目に入ったとき、バージルは、薄れゆく意識の中でそれを掴み取った。
スパーダの力を継ぐ者の証であり、亡き母の形見である‘アミュレット’
「これは俺の物だ、誰にも渡さない・・・!!」
アミュレットを握りしめたバージルは、一歩、一歩と魔界へと続く滝壺へと歩を進める。
「待て、バージル!」
バージルの異変に気が付いたダンテがバージルに走り寄るが、閻魔刀(やまと)を突き付けてそれを拒んだ。
「もうすぐ人界に通じる道が閉じる。お前も魔界に飲み込まれたくはなかろう?」
そう言いながらもバージルは、一歩、一歩と後ろに下がっていく。
「俺はここに残る・・・親父が生まれ育ち愛した魔界に・・・。」
バージルは、ダンテにそう言い残すと魔界に通じる奈落へと身を投げた。
ダンテが手を伸ばし、兄であるバージルを助けようとするが、バージルは、手にしていた閻魔刀(やまと)を横に振りぬいてダンテの掌を浅く斬りつける。
最後の最後で明らかなる拒絶の意思を示したバージル。
ダンテは、斬りつけられた手を悔しそうに握りしめた。
そしてバージルは、徐々に濃くなる魔界の気配を感じながら意識を失った。
〈2〉
漆黒の闇の中で目覚めたバージル。
闇の中で浮かんでは消えるダンテの姿。
――――消えろ・・・テ
暗闇にも映えるその姿に向かってバージルは叫ぶ。
――――――消えろ・・・ンテ
答えを返さぬ我が弟に力の限り叫ぶ。
――――――――消えろ、ダンテ!!
バージルが目を覚ますと、眼前には白い天井が広がっていた。
バージルは、大汗をかいていた自分の額を掌で拭った。
掌に汗の生暖かく、湿った感触が残る。
それと同時に、自分の脇腹を覆うように包帯が巻かれ簡単であるが治療されていることに気が付いた。
その後、自分の居場所を確認するために周囲を見渡す。
ベッド、ポール状のハンガー掛け、最低限の家具しか置かれていない殺風景な部屋に寝かされていることが分かった。
枕元には閻魔刀(やまと)が立てかけられており、ハンガー掛けには自分の纏っていた蒼いロングコートが掛けられていた。
バージルは、体を起こし、ベッドから降りようとすると、オレンジに近い茶髪の髪色の女性が戸口から顔を覗かせた。
バージルは、素早く閻魔刀(やまと)を手に取ると臨戦態勢を取る。
「フェイト、目が覚めたみたいだよ!!」
その女性は、部屋の外にいるフェイトと呼ばれる相手を呼びに行くと間もなくして金髪ツインテールの少女が部屋に入ってきた。
「それじゃ、包帯とか取り替えないと・・・。」
「俺に近づくな―――!!」
バージルは、フェイトと呼ばれた少女に閻魔刀(やまと)の切っ先を突き付ける。
「えぇっと・・・武器を下げてもらえませんか。じゃないと包帯も取り替えられないし、傷の手当てもしないと・・・。」
オドオドしながらもバージルの言葉に真剣に答えるフェイト。
「ここはどこだ。テメンニグルは・・・。お前は何者だ?」
続けざまにぶつけられるにフェイトと呼ばれた少女は、困惑した表情を見せる。
「ちょっと、あんたを助けてやったフェイトに対してそんな態度は無いんじゃないの!?」
「やめてアルフ、その人ケガしてるんだよ。私なら大丈夫だから・・・ねっ。」
アルフと呼ばれた女性は、フェイトと呼ばれた少女の言うことを聞き、一歩後ろに下がる。
「私の名前は、フェイト・・・フェイト・テスタロッサです。テメンニグルっていうのは、なんだか分からないですけど、ここは、日本の海鳴市っていうところです。」
フェイトの話を聞いたバージルは、テメンニグルでのダンテとの闘いの後を思い出していた。
(確か・・・ダンテとの闘いに負けた俺は、魔界に通じる奈落に落ちたはずだ。なぜ・・・?)
バージルの頭の中には、‘なぜ!?’といった疑問が頭の中を廻っていた。
フェイトの言葉が耳に届かないくらい集中して考え込んでいたバージルであったが、現状把握のため外に出ることを決め、ベッドから起き上がり、ハンガーに掛けられていた蒼いロングコートを手に取り歩き出そうとしたが、塞がっていない傷の痛みから膝をついて苦悶の表情を浮かべる。
「無理しちゃダメですよ。傷だって塞がっていないのに・・・。」
苦悶の表情を浮かべるバージルに走り寄ろうとするフェイトだったが、彼が突き付けた閻魔刀(やまと)がそれを遮った。
「俺に近づくなと言ったはずだ!!」
脂汗をかきながらも、フェイトに敵意を向けるバージル。
そんなバージルを見つめるフェイトだったが、少しの間の後に彼女は、突き付けられた閻魔刀(やまと)の刃を素手で掴んだのだ。
その行動には、アルフだけではなく、使い手のバージルも驚愕の表情を隠せずにいた。
そんなフェイトに対して‘放せ!’と圧の掛かった口調で言うバージルだが、フェイトは話すどころか握る力を強めた。
フェイトの手から流れ出た血が、閻魔刀(やまと)の刃を伝って鍔のとこまで届く。
無言のフェイトと睨み続けるバージル、ただならぬ二人の雰囲気を打ち壊したのはフェイトだった。
「あなたが傷の手当てをさしてくれるまで放しません。」
静かだが力強いフェイトの言葉に、折れたのはバージルだった。
「すきにしろ・・・。」
静かに呟いたバージルを見て、抵抗はないと判断したフェイトは、掴んでいた手を放してバージルの元に駆け寄った。
傷口から滲み出る血液が、巻かれている包帯を赤く染める。
フェイトとアルフは、肩を貸してバージルをベッドまで運ぶ。
途中バージルがポツリと呟いた。
「・・・だ。」
聞き取れなかったフェイトは、聞き返す。
「バージル、俺の名だ。名を名乗れない程、礼儀知らずじゃない・・・。」
バージルの名を聞いたフェイトは、嬉しそうに笑みをこぼした。
〈3〉
フェイトとバージルが出会った翌日。
海鳴市に一人の男性がやって来た。
紅いロングコートを纏い、道行く人が程の背丈と巨大なトランクケースを手にし、銀髪碧眼が特徴的な男性。
男の名は‘ダンテ’便利屋兼デビルハンターを営んでいる。
何故、デビルハンターである彼が日本の海鳴市にいるのか。
ダンテは、それまでに至る経緯を思い出していた。
「ジュエルシード、なんだそりゃ?」
ダンテが営む事務所‘Devil May Cry ’には、同業者である‘レディ’と相棒の‘トリッシュ’が集まっている。
ダンテは、お気に入りの事務机に両足を乗せ、好物のピザを食べている。
レディは、そんなダンテの元に資料代わりの写真を机の上を滑らすようにして手渡す。
それを受け取ったダンテは、その写真に目を通す。
軽く目を通すと机の上を滑らせて再びレディに写真を返した。
「あいにく宝石に興味はない。」
「これは、ただの宝石じゃないのよ。」
「宝石の形を模した‘魔具’よ。正確に言えば、魔力を宝石状に加工・圧縮したものとでも言えばいいかしら。」
「これが魔具ね。それで、いつから悪魔達が宝石細工を始めたんだ?」
ダンテは、もう一度、写真を一瞥すると、いつものように軽口をたたく。
「だから、ただの宝石じゃないって言ってるでしょ。このジュエルシードは、持ち主の考えや欲望を酌んでそれを現実にしてしまう力があるのよ。」
「そいつは物騒だな。で、この物騒な物はどこにあるんだ?」
「日本・・・。正確には言えば海鳴市っていう街よ。今回の依頼は、このジュエルシードの回収よ。悪い依頼じゃないし、受けてくれない?」
ダンテは、机の上に置かれていた雑誌を手に取り、それを読み始める。
「日本ね・・・。それで、なんでこの依頼を持ってきたの。悪い依頼じゃないなら、あなたが受ければ良いじゃない。」
トリッシュがレディに問いかける。
「私が受けれるならそうしたわ。でも、依頼主はダンテを指名したのよ。」
「俺を・・・?」
「えぇ、仲介者を使って私に接触してきたから詳しく相手のことを知ることはできなかったわ。分かったのは、依頼相手がとある組織ってことだけ・・・。」
「・・・ところで、俺に依頼を持ってきたってことは、‘あれ’が絡んでるんだろう?」
「えぇ、ジュエルシードの魔力に引き寄せられてかなりの数が集まっているみたいよ。」
軽くため息を吐き、椅子から立ち上がるダンテ。
「トリッシュ!!」
そして、相棒である女性の名を呼ぶが、返答が無かったため後ろを見ると、‘そこにあるはずの‘魔剣・スパーダ’が無く、掛けられていた場所に‘現地集合’と口紅で書かれていた。
そんなことを思い出しながらダンテは、軽くため息を吐いた。
「ややこしい事にならなきゃ良いが・・・。」
そう呟きながら街を歩いていく。
街を歩いていると、あることに気が付いた。
上位悪魔に匹敵する魔力を持った何かが街中を移動している。
一瞬、ジュエルシードかと考えたダンテだったが、それが魔具である以上、普通の人間が触って、持ち運べるものじゃないため、その考えを即座に否定する。
その魔力の正体に興味がわいたダンテは、その魔力の正体を確認するため、力の波動が流れてくる方角に足を向けた。
〈4〉
上位悪魔に匹敵する魔力を持つ何かである。
ダンテは、その魔力の持ち主をすぐに見つけることができた。
魔力の主を発見したダンテの中を強い驚きの感情が支配した。
なぜなら、その魔力の主が、年端もいかぬ少女だったのだ。
魔力だけならダンテが闘った悪魔達とも劣らない力を持った少女は、同年代の少女たちと本屋から出てくるところだった。
「Hum、Crazy Girl!!(ぶっとんだお嬢ちゃんだ)」
小声で呟いたダンテは、その少女‘高町なのは’に話しかけてみることにした。
「Hey Lady(そこのお嬢ちゃん)」
ダンテに声をかけられた少女達は、慣れない英語にオドオドしながらも返事を返そうとしている。
そんな様子を見たダンテは、日本語で話しかける。
「おっと悪い、日本語じゃないと分からなかった?」
ダンテの言葉に金髪の少女‘アリサ・バニングス’が頬を膨らませ、不満そうな表情になる。
「えぇっと、何か御用でしょうか?」
白いヘアバンドを着けた少女‘月村すずか’がオドオドしながらも用件を聞いてきた。
「海鳴公園ってとこで人と待ち合わせしてるんだが場所が分からなくてね。道案内をしてくれないか?」
「えぇっと、案内するだけならいいかな。アリサちゃん、なのはちゃん?」
「私なら別にかまわないわよ。」
「私も大丈夫だよ。」
すずか達は、アリサとなのはの了承を得たことで、ダンテを海鳴公園まで案内することになった。