〈1〉
ダンテを海鳴公園に案内することになったなのは、アリサ、すずかの三人は、道すがら自己紹介をしながら、目的地に向かっていた。
海鳴公園は、見晴らしの良い高台にある公園で。休日などは小さな子供を連れた親子でにぎわうどこの街にもあるような公園である。
「ここが海鳴公園です。」
ダンテが到着すると公園の敷地内に人の姿は無かった。
それを確認したダンテは、道案内をしてくれた少女達に礼を言った。
「助かったぜ、嬢ちゃんたち・・・。この礼は嬢ちゃんたちがもう少し立派なladyになったら返すぜ。」
ダンテは、少し乱暴になのはの頭を撫でた。
ダンテは、公園の中央に歩いて行く。
それを見送ると、三人は公園を後にした。
公園からの帰り道、なのは達は、それぞれの意見を述べながら帰っていた。
「まったく何なのよ、あのきざったらしい態度は―――!」
「まぁまぁ、アリサちゃんそんなに怒らなくても・・・。」
「何が立派なladyになったらよ、失礼しちゃうわね。」
「でもカッコイイ人だったね。背なんか高くてモデルさんみたいだったし・・・。」
「なに、すずかは、あんな男が好みなの?」
「ち、違うよ!」
それぞれがそれぞれの感想を述べる。
「でも、確かにちょっぴり格好良かったよね!」
「えぇー、なのはまで、あんな軽そうな男が好みなの!?」
「別にそういう訳じゃないよ!」
なのは達がそれぞれの感想を言い合っていると、その穏やかな空気をぶち壊す一発の銃声が響き渡った。
「何、今の音!」
「今の音って銃声だよね!」
銃声を聞いた少女達の表情は一斉にこわばった。
しかし、なのはだけは冷静だった。
『ユーノ君聞こえる!?』
『うん、聞こえてるよなのは。』
『微弱だけど海鳴公園の方から魔力反応を感じるんだけど』
『うん、僕の方でも確認できてる。何か強い魔力に引き寄せられて集まってきてるみたいだ。ジュエルシードかもしれないからなのはは、僕が行くまで現場近くで待機を・・・』
『そんな事出来ないよ! さっき公園に案内した男の人を助けに行かなきゃ!』
そう言うとなのは、一方的にユーノとの通信を切った。
「ごめんね。アリサちゃん、すずかちゃん、私行かなきゃ!」
そう言い残しその場から走り出すなのは
アリサとすずかの呼び掛ける声も聞こえないほどに速くその場から走り出していた。
〈2〉
なのはが海鳴公園に向かって走り出していた少し前に時間は遡る。
ダンテは、少女達が去るのを確認すると、近くにあったベンチに腰掛け、公園から見える街の景色を眺め始めた。
しばらくすると、そんな彼の元に一人の女性が現れた。
「あなたが、街の観光を楽しむなんて以外ね。」
「随分と遅かったじゃないか、トリッシュ!」
「あら悪い、私もちょっとした観光を楽しんでたのよ。」
やって来たのはダンテの相棒である女性、トリッシュであった。
二人は、いつものように軽口を言い合うと改めて本題に入った。
「ジュエルシードの場所は掴めたの?」
「いや、着いてから色々歩き回ったが全く手がかりなしだ。そう言うお前はどうなんだ?」
「私の方もさっぱり・・・。」
「だが、面白そうな奴なら見付けたぜ!」
「あら、どんな奴よ。」
「ドでかい魔力を持った小学生だ。」
「・・・あなた、いつからロリコンになったの?」
「生憎と俺は、ロリコンじゃないが子供が好きなのさ。」
また、軽口を言い合うとダンテはおもむろに立ち上がって、近くにあった木陰に移動した。
そして木上を見上げるダンテ
「どうやら、捜し物は以外と近くにあったみたいだぜ。」
その視線の先には青白く光る小さな宝石が木の枝に引っ掛かっていた。
そしてその光に集まるような異形の存在もダンテは感じ取っていた。
「トリッシュ!」
「イカれたパーティーの始まりだ!」
そう言うと空に向けて自身の武器であるエボニーを発砲した。
すると空からジュエルシードと思われる宝石とともに、巨大なハサミが空から降ってきた。
降ってきたハサミは、地面に刺さるとガラス細工のように粉々に砕けてしまった。
そのハサミの持ち主であるシン・シザースは、短い悲鳴を残し砂となって消えた。
すると次の瞬間には、互いがそれぞれの銃アイボリーとルーチェ&オンブラを抜き構え背中合わせの状態になる。
周囲には、おびただしい数の悪魔が宙を漂い標的であるダンテとトリッシュに視線を集め、二人に殺到した。
臨戦態勢をとる二人だったが、そんな二人を助ける援軍がダンテとトリッシュに殺到する悪魔の群れに向かい一発の魔力砲を発射した。
その魔力砲のお掛けで半分近いシン・シザースを殲滅した。
二人は、その魔力砲の発射主に視線を向ける。
そこにいたのは、小さなフェレットを従えたダンテにも見覚えのある少女だった。
「Crazy Girl!」
Crazy Girl呼ばわりになのはもムッとしたのか簡単な自己紹介をする。
「Crazy Girlじゃありません! 私は高町なのはって言います!」
「なのはか・・・良い名じゃねーか。俺の名はダンテ、そしてアイツが相棒のトリッシュ」
「まぁ、早速来てくれたことや、その格好についても聞きたいことがあるが、ここから先はR指定だ。まずは、お家に帰りな!」
そう言うとなのはの顔面に向けてエボニー&アイボリーを向けた。
なのはの耳近くで炸裂した銃の発射音が彼女の鼓膜を震わせた。
気が付くと、彼女の後ろに迫っていたシン・シザースの額に銃弾がめり込み、シン・シザースを砂へと変えていた。
「お嬢ちゃんじゃ力不足だ下がってな!」
それからはなのはの目に写る光景は信じられないものだった。
無数に飛び交う悪魔達をダンテ達は、一匹残らず銃だけで殺し尽くしたのだ。
例えるならば銃同士の演舞
悪魔達を掃討したダンテとトリッシュに向け、もしもの時に備えレイジングハートを構える。
そしてダンテが持っていたジュエルシードに視線を向けた。
「あの、ダンテさん。その手にしてる青い宝石何も言わずに私達に渡してもらえませんか?」
「・・・嫌だといったら」
「それは、とても危険な物なんです。」
「知ってるさ。ジュエルシードって言うんだろ・・・」
「それじゃあ、何で渡してくれないんですか!?」
「生憎とこちらも仕事でね。こいつが必要なのさ!」
そう言いながらダンテは、高台にある落下防止用の安全柵を飛び越えた。
海鳴公園は、山の中腹にあるため、落下防止用の柵から落下すればただではすまない高さにある。
しかしダンテは、そんな事はお構いなしといった表情で柵から飛び降りたのだ。
あわててなのはは、柵に駆け寄ったが、そこには、ダンテの姿はなかった。
その代わり、何処からかダンテの声が響き渡ってきた。
「運があれば、またどこかで会えるだろうさ!」
その一言だけ残しダンテもトリッシュもその場から姿を消していた。
その後、慌ててなのはの後を追って来たアリサとすずかに、心配かけさせるなとこっぴどく怒られたのであった。
〈3〉
海鳴りの街のとあるスーパー
そこにフェイトとバージルはやって来ていた。
主な目的は非常時の医薬品を購入するため、そして当面の食料を得るためである。
二人が店内に入ると店内にいた者達の視線が集まる。
それも当然である。
入ってきたのはモデルの様な長身と特徴的な銀髪の青年と同じくモデルの様な容姿をした金髪の少女の二人組だったのだから無理もない。
二人は、周囲の視線に目もくれず、目的の医薬品コーナーに歩を向けた。
そこで粗方の医薬品を買い込むと、次は食料品コーナーに向かって歩き出した。
「ねぇ、バージルは、どんな食べ物が好き?」
フェイトの問いにバージルは、簡単かつ明瞭に答える。
「何でも良い。特に嫌いな物はない。」
それを聞くとフェイトは、片っ端から冷凍食品をカートの中に放り込んでいく。
それを見たバージルは、一瞬顔をしかめた。
幼い頃に母から言われていた言葉を思い出す。
「そんな食材ばかりで味気無くはないか?」
「なんで・・・?」
「幼い頃に母から言われていたことがある。」
「なんて言われてたの?」
「野菜もしっかり食べなさいっと言われていた。」
それを聞いたフェイトは、クスりっと笑った。
「やっと自分の事話してくれたね。」
フェイトは、嬉しそうにバージルを見つめる。
バージルは、ばつの悪そう表情をすると、少しだけフェイトから距離をとった。
フェイトは、生鮮食品のコーナー、野菜コーナーにも足を向け、大量の食品をカートに放り込むと、会計を済ませるべくレジコーナーに向かった。
カートから溢れんばかりの荷物を見たバージルは、一言フェイトに問い掛けた。
「金は足りるのか?」
「お金なら大丈夫。でも、少し買いすぎちゃったかな?」
「男一人増えたくらいでこの量は、買いすぎだと思うが・・・」
「うん、そうかもしれない・・・けどね」
フェイトは、バージルの問いに少し気恥ずかしそうに頬を染めながら言った。
「一緒に食事をしてくれる人が増えたのが嬉しくて、つい・・・ね」
フェイトの言葉にバージルは、人間だった頃を思いだし、ーーー実際は、今も心身ともに半分は人間なのだがーーー嬉しそうに鼻で笑って答えを返した。
「あぁ、今、笑ったでしょ! バージルのバカ・・・」
そう言う言葉のやり取りをしながら、大量の荷物を持ち帰路に着いた。
〈4〉
マンションに帰ってきた二人を出迎えたのはアルフだった。
「二人ともお帰り」
「ただいまアルフ」
大量の戦利品を一度キッチンに運ぶと、フェイトとアルフは、荷物の片付けに入った。
二人が荷物片付けに悪戦苦闘していた最中、バージルは、リビングに飾られている写真を見ていた。
そこには、今より幼いフェイトとそのフェイトに寄り添う様に写る女性の姿が写されていた。
バージルは、そこでフッと疑問に思ったことを口にした。
「フェイト、両親はどうした?」
バージルの問いに片付けをしていた彼女の手が止まる。
「父さんはねいないの。母さんも今は別の場所で暮らしていて今は私とアルフだけで暮らしているんだ・・・」
フェイトの重い口調にバージルは、一言だけ詫びの返事を返した。
「すまない。辛いことを聞いたな」
「うん、でも良いの、今はアルフと・・・バージルもいるし」
フェイトは、嬉しそうに言った。
両親がいないのは幼いフェイトにとって何よりも辛いことのはずだが彼女は、屈託のない笑みをバージルへと向け答えた。
「その言い方だと俺は、ついで扱いのようだが・・・」
バージルは、笑いを噛み殺し、フェイトに意地悪な問い掛けをした。
「そっ、そんな事はないよ。バージルも私達の家族みたいなものでしょ!」
「家族か・・・」
脛に傷を負う身であるバージルを助け、自分の事を詮索しないフェイトとアルフ
そんな二人に対し、バージルは、忘れかけていた一つの感情を思い出していた。
ーーー守りたい、彼女達をーーー
かつての自分と重ね合わせてかバージルは、二人に強い感情を抱くようになっていた。
しかし、彼にとってこの気持ちが意味するとこは何なのかその日は理解することができなかった。