Devil May Nanoha   作:アーカード

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第3話

〈1〉

海鳴公園でダンテと熱烈な別れをした後、アリサとすずかとも別れ、なのはは一人帰路に着いていた。

夕暮れがなのはの帰り道を照らす。

ダンテと別れた後にきた異様なまでの疲労感

たった一発、ディバインバスターを放っただけだったが、あの得体の知れない闇の者との遭遇が幼い彼女の精神力を磨り減らしたのは間違いなかった。

彼女は、重い足取りで両親の営む喫茶店ーー翠屋ーーの戸をくぐった。

 

「ただいま」

 

帰りの返事に疲れを残し、仕事中の両親に帰宅の報告をする。

 

「お帰りなのは」

 

「お帰りなさいなのは」

 

両親の問い掛けになのはは、再び重たい口調で返事を返す。

 

「ただいま」

 

もうすぐ夕飯時でもある時間に差し掛かっているせいか店の中は閑散としていた。

客と言えば、なのはから見て店の奥に陣取り座りながら、ストロベリーサンデーを頬張る、真っ赤な革製のコートを着こんだ外人がいるくらいで・・・

なのはは、短い人生で初めての二度見と言うものをしてしまった。

そこにいたのは、先程まで公園で巨大な二丁拳銃を振り回し闇の者を塵へと変えた男がいたのだ。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

なのはは、指差し店中に響き渡る絶叫をした。

両親に咎められようともなのはは、外人を指差したまま動きを止めている。

 

「よう、なのは、三十分ぶりだな」

 

そんな中、なのはに対し挨拶をする男、ダンテの姿があった。

少しの間の後、硬直から解けたなのはは、ダンテに詰め寄った。

 

「何でダンテさんが家にいるんですか!?」

 

「運があれば会えるだろうって言っただろう」

 

そうニヒルな笑みを浮かべながら囁くダンテ

そんなダンテの元になのはの父、高町士郎がやって来た。

 

「困りますよダンテさん。うちの娘をたぶらかさないでくださいよ。」

 

「士郎、俺は子供好きなだけだぜ。たぶらかすだなんて事する訳無いだろう」

 

次いで母、桃子がやって来た。

 

「まぁ、ベッピンさんな奥さんの方なら分からないがな・・・」

 

「まぁ、誉めてもなにも出ませんよ。」

 

まるで友人同士の会話に驚いたなのはは、近くにいた母、桃子にこの疑問を問い掛けた。

 

「お父さんもお母さんもダンテさんと知り合いなの?」

 

「えぇ、そうね。知り合いと言えば知り合いかしら」

 

「なのはは、父さんが昔やっていたボディーガードの仕事の事覚えているかい?」

 

「うん、覚えてるよ。」

 

「その時に知り合った古い友人だよ。」

 

ダンテとの関係を簡単に説明する士郎

 

「まぁ、そう言う事だ宜しくな、なのは。」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

こうして、翠屋に本日二度目の絶叫が轟いたのだった。

 

〈2〉

新月の夜

月明かりもない夜中に鬱蒼と生い茂る森を歩く二人の少女

フェイトとアルフ

 

「バージルを置いてきて本当に良かったのかい?」

 

アルフは、胸中に抱いていた疑問をフェイトにぶつけた。

 

「バージルは、元々この件には関係ない人だから・・・」

 

「でも、腕はたつよ」

 

「それでも関係ない人を巻き込みたくないんだ。」

 

フェイトの強い意思がアルフの言葉を押し止めた。

そうこうしていると、二人は目的の場所へと到着する。

 

「ここにジュエルシードが眠ってるんだね。」

 

フェイトの問いにアルフは無言で頷く。

森を抜けやって来たのは西洋墓地

月明かりもない墓地は、独特の空気が支配している。

肌にまとわりつくような、ネットリとした空気が二人を包み込む。

 

「何だか薄気味悪いね。」

 

深夜の墓地なのだから当然と言えば当然な感想をアルフは述べる。

話し掛けられたフェイトは、無言のまま歩を進める。

するとしばらく歩いてから歩みを止めた。

アルフもそれにならって歩みを止める。

フェイトの眼前には、十字架に磔にされた男性の石像が現れた。

夜露に濡れたその石像の顔は、まるで苦しみに悶え、涙を流しているように見えた。

少しの間、石像を見つめたフェイトは、その胸に光る青い宝石に視線を向けた。

 

「発動間近みたいだね、早く封印しないと・・・」

 

フェイトは、己の相棒であるデバイス、バルディッシュを宝石へと向けた。

 

「ジュエルシード、シリアル・・・」

 

フェイトがジュエルシードのシリアルナンバーを読み上げようとした瞬間、場の空気がガラリと変貌した。

肌にまとわりつくような嫌な感覚はそのままに、腐敗と死臭を纏った空気が辺りを覆ったのだ。

フェイトは、持ち前の勘で臨戦態勢をとる。

 

ホォホォホォホォォォォ

 

墓地全体に響き渡るような笑い声が聞こえてきたのは、彼女が臨戦態勢をとり終えてからだった。

フェイトは、瞬時に索敵魔法を展開して敵の位置を把握することに勤める。

しかし、それが仇となった。

 

「フェイト! 後ろ」

 

アルフの呼び掛けに反応し飛び退くと、先程まで立っていた場所の近くにあった墓石が袈裟斬りに斬り倒されていた。

そして彼女達は目にした。

この世のものではない闇の者の存在を

手には大鎌を携え、漆黒のトーガに身を包み、人にとって頭部に当たる部位には、角の生えた頭蓋骨だけが浮かんでいた。

 

「あ・・・悪魔」

 

まさにおとぎ話に出てくる悪魔そのものがその場所に立っていたのだ。

戦おうと腕に力を入れるが全く力が入らない、そればかりか震えが止まらず、相棒であるバルディッシュを落としそうになったところを必死で踏み止まる。

フェイトの戦意が喪失仕掛けているところを悪魔は見計らったように再度大鎌による斬撃を仕掛けてきた。

フェイトに避ける気力は残ってなかった、ダメだと諦めもした。

しかし、フェイトにその斬撃が届くことはなかった。

何かが風を切る音の後にカチンと金属同士がぶつかり合う小さな音がフェイトの耳に届いた。

ゆっくりと瞳を開けると、そこにいたのは蒼い革製のコートを靡かせて立つ一人の男の姿

フェイトは、その男の名を大声で叫んだ。

 

「バージル!」

 

しばしの間の後、フェイトを斬り殺そうとしていた悪魔は、上半身と下半身を切り分けられ、砂となって消滅した。

フェイトは、自身を救ってくれた男性に走り寄った。

敵の沈黙を確認すると構えていた閻魔刀(やまと)の柄から手を離した。

 

「あの・・・ごめんなさい」

 

走り寄ったフェイトが見たのは険しくなったバージルの表情である。

それを見たフェイトは、思わず謝ってしまった。

 

「なぜ謝る?」

 

「だってバージルを巻き込んじゃったし・・・」

 

そう言うフェイトの瞳には彼を巻き込んでしまった後悔からか大粒の涙がたまっていた。

 

「俺は気にしてない。さぁ、帰ろう。」

 

バージルの思わぬ優しさに触れたフェイトは、泣き顔から一変して笑顔に変わっていた。

ジュエルシードを封印してから墓地から去ろうとした瞬間、強い気配に当てられバージルは、再び閻魔刀(やまと)を鞘より抜き放った。

 

「誰だ、こそこそ隠れていないで出てきたらどうだ」

 

バージルの問いかけに答えたのは、バージルと同じ容姿をした男

真っ赤なコートを靡かせ、さほど広くない墓地の出入り口に立っている。

その足元にはフェイトと同い年位の栗毛色の髪をした少女

バージルは、その真っ赤なコートを着た男に見覚えがあった。

忘れるはずもない、テメンニグルでの一戦を・・・

 

「久しぶりだなバージル。」

 

「ダンテ。」

 

二人は、お互いの得物に手を掛け睨み合う。

 

「何年ぶりだ」

 

「さぁな、いちいち別れた年数なんて数えるほどおセンチじゃないんでね。」

 

「何が目的だ。」

 

「その宝石を渡してもらいたいんだ、こっちも仕事でね」

 

「断ると言ったら」

 

「悪いがそれはできない相談だ力付くでも頂いていくぜ。」

 

そう言うとダンテは、リベリオンを抜き放ち上段からバージルに斬りかかる。

バージルも閻魔刀(やまと)でそれをガードする。

鍔迫り合いの中、後方に飛び退いたダンテは、再度バージルに向けて突撃した。

こんどは、神速の踏み込みから繰り出される強烈な突きがバージルに襲い掛かった。

バージルは、その攻撃をいなし、掌で器用に閻魔刀(やまと)を逆手に持ち帰ると刀の鍔でダンテに打突を加えた。

ダンテは、後方に吹き飛ばされ墓地の墓石に叩きつけられる。

 

「戦い方は全く変わってないんだな」

 

「だとしたらなんだと言うんだ。」

 

ダンテは、苦笑いを浮かべる。

フェイトは、と言うと呆気にとられ見ていた先程の攻防の余韻から抜け出せずにいた。

そんなフェイトにバージルからの言葉が届いた。

 

「フェイト、早くジュエルシードを封印しろ!」

 

ハッとしたフェイトは、急いでジュエルシードの封印を行った。

封印を終えたフェイトの元になのはが歩み寄ってきた。

 

「ねぇ、フェイトちゃん。こんな事もう止めようよ。」

 

「私は母さんの願いを叶えるために引くことはできないのもう・・・関わらないで・・・」

 

そう言い残すと黒いバリアジャケットのマントを靡かせて飛び立って行ってしまった。

漆黒の空を見上げてるなのはの元にダンテがやって来る。

 

「ダンテさん、さっきの人って誰なんですか?」

 

「何、昔の顔馴染みだよ。」

 

「さぁ、用事は済んだことだし、さっさと帰ろうぜ、久々にフカフカのベッドで休みたい」

 

そう言うなのはを引っ張ってなのはの実家に歩みを向けた。

 

〈3〉

マンションに帰ったフェイト達を待っていたのは話し合いだった。

だが三人がそれぞれ口を閉じ押し黙っている。

そんな中、先に口を開いたのはバージルからだった。

 

「言っても信じてもらえないと思うが、俺の半分は、悪魔だ。この世界に来る前には魔界への入り口を作るために魔塔テメンニグルを作り上げた。親父の力を手に入れるために・・・」

 

そんな話を聞いてポカーンとするフェイトとアルフ

 

「まぁ、信じるか信じないかはお前らしだいだがな」

 

いきなり同居人が悪魔であることをカミングアウトしたことが大きいのか、絶句の表情から中々二人は戻ってこない。

そんな中、真っ先に戻ってきたのはフェイトだった。

 

「バージルが悪魔だって言うのにはちょっと驚いたけど私だって秘密隠してたしぬ。私ね、魔導師なの、そしてアルフは私の使い魔なんだ。」

 

「それであの宝石を集めて何をする気だ?」

 

「あれは、母さんの願いを叶えるために必要なものだっだの。」

 

「母さんの願いだと・・・それはどんなものなんだ?」

 

「詳しくは分からない、だけど母さんの願いだから叶えてあげたいの!」

 

「そうか、それなら俺を母親の元に連れて行ってほしい」

 

「ジュエルシードを集める理由をフェイトの母親から直接聞き出し、場合によってはこれを止めさせる!」

 

急な言葉にフェイトだけではなくアルフも驚いていた。

何故ならバージルの真意が読めなかったからだ。

フェイトは、理由が理由なだけに母親に会わせるのを反対したが、バージルに気押され渋々これを受け入れた。

 

 

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