〈1〉
次の日、フェイト、アルフ、バージルの三人はマンションの屋上に来ていた。
フェイトの手には母親への贈り物なのだろケーキの入った箱が握られている。
「皆、準備大丈夫?」
フェイトの問いに短く返事をするアルフとバージル
「それじゃあ、行くよ。次元座標固定、目標、時の庭園」
そう言い終わると三人はマンションの屋上から大きな屋敷を彷彿とさせる庭に姿を表した。
「母さんの部屋はこっちだから・・・」
そう言って初めての来客であるバージルを案内しようとしたが、当の本人はそれどころじゃなかった。
強烈な目眩、吐き気、頭痛に教われていたのだ。
いっこうに立ち上がらないバージルに二人が駆け寄った。
「大丈夫バージル?」
「あぁ、少しここの空気にやられただけだ・・・俺の事は気にせず先に行ってくれ」
「分かった、体調が良くなってからで良いから絶対に来るんだよ!」
二人が離れると今度は強烈な耳鳴りがバージルを痛め付ける。
しかし、その耳鳴りは少しずつ何かの言葉になっていくのが分かった。
(スパーダの息子だ許すまじ、裏切り者の末裔生かして返すな)
(裏切り者は殺せ、殺せ、殺せ・・・)
自分を呪う呪詛の言葉を耳元で叫ばれたバージルは、少しゆっくりと立ち上がり閻魔刀(やまと)を杖がわりにしながらフェイト達が歩いていった方に向かう。
どれ位の距離を歩いたろうか、バージルの前には一枚の扉が立ちはだかって現れた。
その扉の前でうずくまるアルフにフェイトがどこに行ったのか聞こうとした瞬間、扉の奥から聞き覚えのある少女の声が悲鳴となって飛来した。
バージルがやって来た事に気が付いたアルフは、バージルにすがり付いて泣き出した。
「バージル頼むよ、あの娘を・・・フェイトを助けてやっておくれ!」
バージルは、アルフの頭を軽く撫でるといつもの調子で部屋の中に入っていった。
中では、バージルの創造以上の事態が起きていた。
宙に吊り下げられたフェイト
そんな彼女に鞭を打ち続ける女
バージルの中で何かが弾けた瞬間だった。
バージルは、神速の踏み込みから繰り出される強烈な抜刀術で鞭の根を切断
次に宙に吊り下げられ、ボロボロになったフェイトを降ろすため、両手首を縛っているバインドを閻魔刀(やまと)で断ち切った。
宙から落下するフェイトを受け止め床に下ろした後、敵意の矛先である女に視線を向ける。
「お前がフェイトの母親か!」
「えぇ、一応はそうなっているわね」
「微笑ましい家族の再開にしては随分と過激なことをするんだな」
「えぇ、再開も大事だけれど躾はもっと大事よ。私の言い付けを守らなかった悪い子にはね。」
「躾だと・・・フェイトちゃんとジュエルシードを集めてきたはずだが?」
「足りないのよあの程度の数じゃ全然足りないわ! この大魔導師プレシア・テスタロッサの娘に見あった活躍をしてもらわないと困るのよ!!」
その言葉を聞いたバージルは、抜き身の刃をそのままにプレシアに向かって飛び込み、刃をプレシアの首に押し当てていた。
見ていたものは一瞬の事で理解が追い付かなかっただろうバージルの驚異的な脚力から生み出されたエネルギーは、瞬時の間に体をプレシアの首をはねれる間合いまで飛び込ませたのだ。
ただ単純ゆえ強力な一撃受けプレシアは、狼狽していた。
「もし、次にフェイトに手を出す様な真似をしてみろ、その時は、貴様の首と胴体が離れ離れなっているだろう」
それだけ言い残すとバージルは、フェイトをお姫様だっこで担いで部屋を後にした。
バージルが去ってからしばらくして、彼女はとある部屋に向かう。
部屋に入ったプレシアの視線に飛び込んできたのは、培養液に浮かぶ一人の少女
プレシアは、その少女にアリシアと何度か呟きながら培養液の中を除き混む。
その培養液が入ったタンクが置かれた部屋にはタンクの他に巨大なものが置かれていた。
それは真っ白で巨大石像である。
神々しさを放ちまるで神のようにそこに鎮座するそれを見てプレシアは叫んだ。
「ムンドゥス様、今のジュエルシードの数ではアルハザードに行くことはできないのでしょうか?」
プレシアの問いにどこからともなく答えが帰ってきた。
できぬ! 早くジュエルシードを集めるのだ一つでも多く
「はい、分かりましたムンドゥス様。必ずや全てのジュエルシードを持って参ります。」
そう言うプレシアの表情はいびつに歪んだ笑みが浮かんでいた。
〈2〉
同日の夜、海鳴市の市街地に来ていたなのはとダンテ、時刻は夜の19時を回っていた。
「多分、この辺のはずなんだけど・・・」
ダンテと一緒に街中を歩きまわるなのは。
「見つからないですね」
「あぁ、そうだな」
ダンテは、空を仰ぎながら、どこか暇そうに呟いた。
「しっかりして下さい、ダンテさん!」
「あっ、あぁ悪い、つい考え事をな・・・」
「何を考えてたんですか?」
「何、刺激の無い散策ってのはつまらないものだなってね」
「もう、しっかりして下さい!」
「悪い、悪い」
なのはに肘で小突かれたダンテは、軽く謝るが、まだどこか上の空のようだ。
その時だった、街の空気が一変したのは
『ユーノ君、これって!』
『魔力流を流し込んで発動させる気だ、こんな街中で無茶な!』
あわててユーノは、広域結界を展開する。
そんな中、街中に立つ高層ビルの屋上に立つ三つの影。
「傷の方は大丈夫なのか?」
「うん、問題ないよ。」
「フェイト・・・ここは、私とバージルだけでも何とかできるから、マンションに帰って傷を癒した方が良いんじゃ・・・」
「傷なら大丈夫だから、気にしないでアルフ」
それだけ言い残すと、フェイトは、発動しかけたジュエルシードの元に飛翔する。
アルフとバージルもビル伝いに跳び移り、目的の場所へと向かって行く。
目的の場所に到着すると、そこには見覚えのある影が二つ
、真っ赤なコートを靡かせて立つ男、ダンテ。
白いバリアジャケットを着て立つ少女、高町なのは。
ジュエルシードを挟み向かい合うバージル、フェイト、アルフ。
まさに一触即発の状態の中、先に動いたのは、以外にもなのはだった。
「フェイトちゃん・・・もう止めよう、こんな事・・・」
そう語りかけるなのはにバルディッシュの切っ先を向けた。
明確な敵意の表れである。
意気消沈気味のなのはにダンテが語りかける。
「なのは、こういった奴には言葉は通じないものさ! こういった奴等には肉体言語で語り合うにつきるぜ!」
そう言い切るないなや握りこぶしを構えバージルの元に飛び込んでいった。
懐に飛び込んだダンテの右ストレートがバージルの顔面を襲う。
しかし、これを最低限の挙動で避け、反撃の一撃を加えるべく、バージルの拳がダンテのボディーを狙う。
しかし、これをガードしたダンテは、バージルのバランスを崩すべくローキックを叩き込んだ。
しかし、この攻撃もバージルが後ろに跳んでこれを回避した。
「やるじゃねーか」
「貴様も少しは成長したようだな、徒手空拳で勝負がつかぬとあらばこれで勝負をつける他あるまい」
そう言ってバージルは、閻魔刀(やまと)に手をかける。
ダンテもリベリオンの柄を握る。
次の瞬間、二人は、神速となってぶつかり合った。
〈3〉
ダンテとバージルがぶつかり合っていた頃、なのはとフェイトも激しい空中戦を展開していた。
逃げるなのはを追うフェイト
そして、フェイトから放たれた魔力弾をなのはは、紙一重で回避しつつ、反撃の機会をうかがっている。
後方を追撃してくるフェイトに対し、飛行中の自分自身に 急制動を掛け、体を反転させると、ディバインバスターの発射体制をとる。
あわてたフェイトは、回避行動に移る。
発射されたディバインバスター、それを紙一重で回避するフェイト
それを回避したフェイトになのはが語りかける。
「フェイトちゃん、もう止めようよこんな事」
なのはの問いかけにフェイトは、黙ったままバルディッシュをなのはに向ける。
「ちゃんと話し合いもしてないよね。私は言うよ、だからフェイトちゃんも教えて、フェイトちゃんの色々な事・・・」
裏表のない、なのはの問い掛けに一瞬、戸惑いを見せるフェイト。
「フェイト、言わなくて良い! それよりも早くジュエルシードを」
しかし、アルフの声がこれを遮った。
アルフの声を聞いて我を取り戻したフェイトは、空中でなのはと向かい合っていた状態から、慌てて踵を返しジュエルシードがある方へと飛行進路をとった。
なのはも慌ててその後を追う。
その姿を一瞥したダンテとバージルは、先程までの激しい剣撃を止める。
「ずいぶんと余裕そうだな。」
「なに、兄より優れた弟など存在せん。」
ダンテの問いにバージルは、挑発じみた答えを返す。
「なら、その考え改めさせてやるよ!」
そう言ってバージルの懐に飛び込もうとしたダンテ
それを迎え撃つべく閻魔刀(やまと)を振るバージル
二人を予想だにしない衝撃波が襲った。
二人は、その衝撃波が襲ってきた方角に視線を向けた。
そこには、発動しかけたジュエルシードとボロボロになって倒れているなのは、そして、素手で発動しかけたジュエルシードを掴み、これを封印しようとするフェイトの姿があった。
「止めろフェイト!」
バージルがフェイトに意識を向けている間に生まれた隙をダンテは見逃さなかった。
「隙だらけだぜバージル!」
「しまっ・・・!」
次の瞬間、ダンテの持つリベリオンがバージルの体を貫いた。
リベリオンを引き抜くと傷口から大量の血液が吹き出してくる。
「ダ・・・ンテ」
バージルは、そのままダンテの胸の中へと倒れこむ。
「バージル!!」
バージルの危機に先程までユーノと戦っていたアルフは、戦闘を止め、バージルの元に駆け寄った。
しかし、これをダンテが遮る。
「こっから先は家族の問題でね。お嬢さんには、お引き取り願おうか」
この男には勝てない、そう判断したアルフは、ダンテを睨み付けた後、ジュエルシードの封印を終え、満身創痍のフェイトの元に向かう。
倒れ掛けるフェイトを抱き抱えると、こんどは、なのはを睨み付けると、ビル伝いに跳び移りながらその場から立ち去って行った。
フェイトとアルフが去ってから数秒後、なのはに声を掛けるダンテ
「悪いなのは、後は頼んだぜ。」
そう言い残すとダンテは、フェイトを追って行ってしまった。
〈4〉
隠れ家であるマンションにたどり着いたアルフは、帰還早々に頭を抱えていた。
「おい、この家は、客人にお茶も出さないのか」
「誰が客人だよ。無理やり着いて来たくせに」
「そうだったな、悪い悪い」
バージルと入れ替わる形でやって来た客‘ダンテ’
到着早々、ソファーに腰掛け、テーブルに足を投げ出して、こう言い放ったのだ。
アルフは、軽くため息をつく。
「それよりもそこを退きなよ。フェイトを治療するんだから」
そう言われダンテは、腰を上げる。
立ち上がったダンテと入れ替わる形でソファーに腰を降ろすフェイト
立ち上がったダンテは、室内の物色を始めた。
そんな彼の視線内に一枚の写真が飛び込んでくる。
「これ、お袋さんとの写真かい・・・?」
ダンテの問いにフェイトは、黙ったまま頷いた。
「優しそうなお袋さんじゃないか」
「優しいもんか、そんな鬼ババ」
「アルフ!」
以外にもダンテの問いに真っ先に答えたのは、フェイトではなくアルフであった。
「あんたに、フェイトの何が分かるんだよ!」
犬歯を剥き出しにしてダンテを睨み付ける。
「アルフ!!」
「フェイト・・・」
フェイトの声で我を取り戻したアルフは、ダンテに謝った。
「ごめん、カッとなりすぎた。」
「いや、良いんだ。どこの家庭にも色々な事情はあるさ」
そうとだけ言い残すとダンテは、頭を掻きながら隣の部屋に行ってしまった。
「ねぇ、フェイト。もう止めようよこんな事! いつかは管理局にもバレる。そうしたら、フェイトの身に危険が及ぶかもしれない!」
「大丈夫だよ、アルフ。私、強いんだから。」
「大丈夫じゃないよ。バージルだっていないし、悪魔だって出てきた。それに管理局まで出てきたらどうする気だい」
「大丈夫だよ、私を信じて・・・」
「フェイト・・・」
二人の会話をダンテは、扉越しに聞き入っていた。