燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第10話

—————2年後。

 

「ゴードン、本当にいいのかい?」

 

波風立てて、エレジアの近海に船が浮かぶ。造船技術は持ってない為、カイドウよりもらった船だ。エレジアの港には少し大きな船に見えた。

 

船内には2人の男の姿が。

1人はエレジアの元国王、ゴードン。もう1人は髭を綺麗に整えたバンドラの姿だった。

 

「…せめて、見送るぐらいはさせてほしいのでな。」

 

「乗ってかないのか。ウタが悲しむな。」

 

「…エレジアは私と民の全てが詰まっている。あの子と2人で作った思い出もある。手放すわけにはいかないのだ。…君たちについて行きたいのは山々だがな。」

 

そう言ってエレジアを一望するゴードン。

バンドラに一礼すると、船を降りて行った。

 

…バンドラもエレジアを見渡す。

2年で、ウタウタの実の制御もなんとかなった。攻撃手段もでき、サポートもできるようになり、ウタなりの戦闘方式を獲得した。年も11になり、段々と大人びてくる頃だ。

 

「バンドラっ!!」

 

船へ飛び乗ってくる女子。

大きなリュックサックを持って、飛び乗ってきた。

 

「…ど、どうしたんだ…。その…荷物…?」

 

「えっとね、えっとね?服とー、楽譜とー…ゴードンの作ってくれたぬいぐるみ。ゴードンだと思って持ってくの。ゴードンとシャンクスとバンドラはまた違うもんねー。」

 

そう言ってにぱーっと笑うウタ。

バンドラもそんなウタの頭を優しく撫でて、笑った。

 

…食料も積んだ。そこそこいい船を貰った為、電伝虫ももらった。どうせ、またそれでワノ国まで来いってことだろうとバンドラは考えていた。

 

「…行くぞ。」

 

「うんっ!!…ゴードンッ!!」

 

ウタはまだ港で此方を見るゴードンへ、柵に身を乗り出し、笑顔で見る。出港する船が生み出す風に髪が吹かれて、靡いていた。

 

「今までありがとうっ!!ゴードンは私にとって、もう1人のお父さんだったよっ!!また、帰ってくるときはお土産いっぱい持ってくるからねっ!!ありがとーッ!!」

 

大きな声でそう言うウタにゴードンは震え、涙を流す。…今まで、笑わなかった子がバンドラが来て…とてもいい笑顔になるようになった。それがゴードンは…とてつもなく嬉しかったのだ。

 

「バンドラくんッ!!ウタを…頼んだよ〜ッ!!」

 

ゴードンもウタに負けないくらい、大きな声で言った。バンドラはその声に応えるように、狂骨の鞘に収まった刃先を天へと上げた。

 

「…そうだ。ウタ。」

 

「ん?」

 

「さっきパンツ見えて「変態ッ!!」ぐぇっ!?」

 

顔を真っ赤にして、怒るウタ。

バンドラの頬に赤く紅葉の形が付いていた。

 

「…この島は…こんなに静かだったか。」

 

船の立ち去った後、居住区にしていた城へと戻ったゴードン。ウタの歌もバンドラの声も聞こえない。その様子を見て、少し寂しいように見える。ゴードンは1人静かにピアノを奏で始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、バンドラ。」

 

「なんですか。」

 

甲板に出て、不貞腐れて寝っ転がるバンドラ。

ウタはそんなバンドラの横にあぐらをかいて座った。

 

「今からどこ行くの?」

 

「…さぁね。」

 

「もーっ!!さっきのは明らかにバンドラが悪いでしょっ!!不貞腐れないでよッ!!」

 

「いやぁ、中々に可愛いお召し物…あ、すいません。もう言いません。」

 

パンツの柄を誉めようとしたバンドラ。それにウタは笑顔で右掌を見せて、迫ってきた。バンドラが即座に謝るとウタはその手を下ろした。

 

「…ほんっと変態なんだから。」

 

「見えないようにしましょうね〜。」

 

バンドラは立ち上がると前へ風を送り、船の中へと入っていく。

 

ウタは甲板から海と空を見て、微笑んでいた。ウタにとっては何度目かの航海だった。慣れているはずなのに…すごく懐かしい。風が、耳元に当たる心地よさ。あの頃の記憶が凄く鮮明に蘇る。

 

「…ん?」

 

ふと、船の室内の方が騒がしいのがわかる。

バンドラが暴れているのかな?とも思ったが、子どもでもあるまいし、そんなことはない。ウタは甲板から少し暗めの色の木の扉を開ける。

 

「…え?」

 

「…カイドウが妙に甘いと思ったよ…。」

 

「なんだ!!ボクが居て悪いのかッ!!」

 

「悪いよッ!?」

 

船内、食料保存庫にて。

バンドラと白髪の女性が言い争っていた。中には大きな空いた宝箱が入っており、そこに入っていたのかとウタは疑問に思った。

 

「おっ?やぁ、ボクはヤマト。またの名を、光月おでんだ!!」

 

「…は?」

 

ウタにはその少女の言葉にはてなを浮かべる。

バンドラは電伝虫を使って、何処かに電話をかけようとしていた。

 

「こ、コウヅキオデン?や、ヤマト?ねぇ、バンドラ…何言ってんの?この子。」

 

「んあ?…あぁ、この船をくれたカイドウっておっさんの子どもだ。…っと、繋がった。おいッ!!カイドウッ!!」

 

バンドラは青筋を立てて、電伝虫で通話をする。電伝虫から聞こえる低い声はウタにとっては威圧感の塊であった。まるで…気絶しそうな。そんな感覚と何処か懐かしい感覚を覚える。

 

「どういうことだッ!!ヤマトがいるなんて聞いちゃ居ねえぞッ!!」

 

『ウォロロロロッ!!ただで船一隻くれてやるわけねえだろ。ヤマトも最近、手がつけられなくなってきてな。テメェのせいだ。責任取りやがれ。』

 

「は?何言って…。」

 

無情にも、電伝虫の切られる音が船内に響いた。

バンドラは肩を落として、ため息を吐き、ジトーとした目でヤマトを見た。

 

「…俺のせいって…。」

 

「そりゃ、バンドラのせいでしょ?ボクのこと、なんで海に連れてってくれなかったんだっけ?」

 

「そりゃ歳が若すぎるから…あっ。」

 

ヤマトの抗議の目にしまったといった表情で返すバンドラ。ヤマトからしてみれば、自分より若い…しかも、女子と共に海に出るというヤマトにとっては裏切り行為みたいなものだ。

 

どこで知ったんだとバンドラは疑問に思ったが…十中八九、酔ったカイドウが漏らしでもしたのだろう。

 

「ねぇ。」

 

置いてけぼりのウタから少し不機嫌そうな声が上がる。ウタにはヤマトの存在に関して、一から十までわかっちゃいないのだ。

 

「…バンドラ。どういう関係?」

 

「どういう関係か。…まぁ、喧嘩仲間の子どもだな。会ったのはもうちょい小さな頃か。本名はヤマト。光月おでんってのは、サムライの名前だ。」

 

「…サム…ライ?」

 

えー!?とヤマトが声を上げる。

 

「知らないの!?サムライっ!?」

 

「う、うん。私、外のこと全然知らない。」

 

「まぁ、コイツはずっと一つの島に居たしな。そんな情報も入ってこねえわけだ。」

 

ついでにワノ国は鎖国国家だしなと付け加えるバンドラ。

 

「で、なんだ…。お前はおでんのように生きる…だったか。」

 

「あぁ。…ボクはおでんの見ていた世界をこの目で見たいんだ。だから…君に着いていくっ!!」

 

にっと歯を見せ笑うヤマト。

バンドラはクセ混じりの髪の毛をわしゃわしゃと片手で髪の毛を掻く。面倒臭そうに。

 

「…だが、俺たちの旅路は光月おでんとは違うものだぞ。良いのか?」

 

「…良いんだよ。光月おでんはこの広い海と空をその目で見ていたんだ。僕はそれだけで…。」

 

「じゃあ降りろ。」

 

「それは話が別。」

 

そう言ってバンドラにピースをするヤマト。その左手をウタの肩に手を当てて、自分の方へ寄せる。ウタの背丈上、ヤマトのもはや成長しきっているのではと思う胸に横顔がくっつく状態であった。ウタはそれと自分のものを比べるが…歳の関係上ウタの完敗であった。

 

「…ふぅ。しかし誤算だな。」

 

「何が?」

 

ウタがそう問いかける。

バンドラはことの次第を話した。バンドラ曰く、これから東の海に行くつもりなのだが、食料を2人分しか用意しておらず、東の海まで持つかどうかがわからないと。

 

「ま、待って。東の海へ行くの!?」

 

「ん?あぁ。…安心しろ。まだルフィには会わねえから。」

 

と言って、ウタの頭を優しく撫でるバンドラ。

ウタはそれを聞いて複雑な気持ちになった。…多分、ルフィ以外と会ってそれを…ルフィが知ったら憤慨するんだろうな…と。

 

「それとも、会うか?」

 

「…んーん。まだ…良い。」

 

バンドラは聞き逃さなかった。

小声でウタが出来れば会いたいなと…言ったことを。

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