100話でござる。記念でもなんでもないけれど。
…東の海、オレンジの街。
ルエノルーヴ号は取り敢えずの着港をする。というのも、ひさびさにウタが東の海を見て回りたいという話だからだ。ココヤシ村に行ったら、その後、マキノの酒場へ顔を出すつもりであった。
「…腰が痛え。」
「…自業自得だ。」
「体力お化けめ。」
バンドラの抗議の目にヤマトがほのかに顔を赤くする。その様子をモネとウタは怪しく思っていた。
「背中も痛えし、首筋にも噛みつきやがって。」
「バンドラが調子に乗るからいけないんじゃんっ!!」
「…でも、気持ちよかったろ?」
「…それは…そうだけど…。」
顔をぽっと赤くするヤマト。歯を見せて笑うバンドラから目を逸らして、モジモジとしていた。そこで二人が感じたのは…肌を刺すような冷気。二人は顔を青ざめて後ろを向く。すると…プクッと口元を膨らませたウタと不敵に笑うモネの姿があった。…目は笑っていなかったが。
「…つまり、昨夜はお楽しみだったってことね?」
「「…はい。」」
「あの音って…そうだったんだ。」
モネが腰に手を当てて、二人を見た。ヤマトと共に地面に座らされるバンドラ。ウタは顔を赤くして、キュッと身体を抱いていた。
「…狡いわね。みんな我慢してるのに。」
「私はわかんないけど…。」
「「すみませんでした。」」
ヤマトはその時思った。…何故ボクが謝っているのだろう…と。モネがプクッと頬を膨らませて、ムッとしていた。
「…モネってこんなに積極的だったっけ?」
「うーん。知らん暇に溶けて、子どもになってると思うんだが…。」
流石に子どもとやるのはなぁ…と引き攣った笑みを浮かべるバンドラ。その手にギュッとモネが抱きつく。
「…ん?なんだありゃ。」
そのとき、バンドラは見つけた。
白い立髪のライオンに乗る…獣男を。バンドラ達の前に立ちはだかる。
「おい、ここは我々、バギー海賊団の縄張りだぞ。」
「…バギー?バギーって…。」
ウタの髪が上へと上がる。
バンドラがニヤリと不敵に笑った。
「その
「
その声と共にゾロゾロと現れる男たち。その前で率いていたのは、赤い鼻のピエロのような男だった。
「なに?あの赤っ鼻。」
「ダーレが、赤っ鼻じゃっ!!いいか?俺は泣く子も黙る…「五月蝿い、赤っ鼻。」…。」
『船長〜ッ!?』
ヤマトとバンドラからの集中砲火にピエロのような男は項垂れた。
「…やっぱり。バギーおじさんだよね?シャンクスの友達の。」
「友達だとォッ!?…てか、お嬢ちゃん。なんでシャンクスの野郎の名前を…!?」
ウタの口から出たシャンクスというバギーが反応する。因みにバギーの口からシャンクスという言葉が出た瞬間にバギー海賊団の面々は驚いていた。バギーの頭が少し浮く。ウタはバギーを睨みながら…。
「だって私、シャンクスの娘だもん。」
と言った。
バギーは開いた口が塞がらないと言ったように顎が外れそうなくらい口を開けて驚いていた。
「…ハァァァァッ!?しゃしゃしゃ…シャンクスに娘だとォォッ!?」
「うるさ…。うん、シャンクスの娘だよ?」
「あ、あのハデバカ野郎に子育てなんて出来るわけねえだろうがッ!?嘘だろ…!?」
バギーが周りを見渡すとバンドラ達は嘘じゃないと首を縦に振っていた。ウタがバギーの方を軽く睨みつける。
「シャンクスのこと、バカにしないで。」
「馬鹿野郎じゃねえかッ!!…あの野郎のせいで俺がどんな目にあったか…。って…!?」
そう言いながらバギーは泣き真似をする。
ウタはその様子を遠い目をしながら見ていた。と、バギーがバンドラに気づく。
「お、オメェッ!?七武海の天帝じゃねえかっ!?」
「騒がしい奴だな。面白え。」
新しいオモチャを見つけた少年のように笑うバンドラ。バギーとバギー海賊団の面々はバンドラに指を差しながらまた驚いていた。
「しかしまぁ、何から驚きゃいいか…。」
戦うよりも仲良くしていた方がいいと察したのだろう、バギーがバンドラ達を迎え入れて、ビールを入れたジョッキを渡した。
「シャンクスの野郎が…誰と結婚しやがった?」
「別に誰とのこどもでもない。拾ったんだろ?」
「…で、なんでテメェはこんなところに…。」
バギーにことの次第を教えるバンドラ。すべて話し終えるとバギーは…いや、バギー一座は涙を流しながら、バンドラ達を見ていた。
「おうおう…!!泣かせるじゃあねえかっ…!!救えなかった奴の腕のためだけに遠路はるばるこんなとこまで…!!」
「…バギーおじさん、調子いいよね…。」
「しっかし、シャンクスのやつは何してんだァッ!!ウタちゃんのことを捨てておっさんと二人っきりだァッ!?海賊なら向かってくる海軍も政府もぶっ倒して、自分の道理叶えるのが筋ってもんだろがいッ!!」
憤慨するバギー。浮いてる手足が面白いのか、ヤマトが目で追いかけていた。バンドラは酒を一飲みするとふっと笑う。
「…シャンクスはウタの為を思ってした結果だ。確かにウタに何も伝えず、置いていったことはアレだが、小さなウタにすべて伝えても飲み込めるはずがなかったし…時期を見て伝えるつもりだったんだろ。」
「それが気に食わねえってんだッ!!スカしやがってぇ…あの野郎ッ!!自分が船に乗せて、自分の娘、名乗らせてんならしっかり最後まで面倒見やがれってんだ。」
「お前なら見るのか?」
「ん?いや、船にすら乗せねえ。めんどくせえ。」
真顔でそう言うバギーを周りの人間は冷や汗をかきながら見ていた。バンドラもその言葉になんだそりゃ…と呆れながら笑い、酒を飲む。
「おじさん、面白いね。シャンクスと一緒に船に乗ったら良かったのに。」
「ハッ。ウタちゃん、それはお断りっつう話だ。アイツにゃ借りがあるからなぁ…。」
「“借り”?」
「おうおう…聞いてくれるか…?話すも涙…聞くも涙…長くなる話だがよぅ…「じゃあいいや。バンドラ〜っ。」って聞けよッ!?」
おじさんの話は幼き少女をその場に止めることは不可能だった。少し酔ったのか、ウタはにこやかな笑みを浮かべて、バンドラの膝の上に乗る。バンドラはそんなウタの頭を優しく撫でていた。
「…しかし、ウタもウタで割り切ってるってこった。ありがとよ。バギーおじさん。」
「おじさんじゃあねえっ!!キャプテンバギーと呼べッ!!ハデバカ野郎ッ!!…ったく。俺はこのオレンジの街から東の海全土を征服し、いずれ海賊王になるんだ。」
「…そうかい。頑張りな。」
そう言い、立ち上がるバンドラ。
朝方から酒を飲んだせいで、ウタと小さくなったモネは少し眠たそうにしていた。ヤマトは親の遺伝で大丈夫だった。バンドラはモネを、ヤマトはウタをおぶり、立ち上がる。
「それじゃあ、またな。バギー。」
「チッ。お前は赤髪に似てて嫌いだッ!!どいつもコイツもスカしやがって…。」
「ハッハッハッ。…まぁ、どっかで会うだろ。」
そう言ってバンドラ達はオレンジの街を去って行った。バギーはまだ知らない。その後やってきた海賊達によって、自分が倒されてしまうことを。
バギー、なんでフィルムRED出なかったんだ?出ても良かったと思うが…戦闘力か?それとも、鷹の目とサーにボコボコにされすぎてなんもできなかったのか…?と。
次回はバラティエ。ようやく、あいつらと会います。まぁ、どちらかと言うと間接的に?だって、あの人出るもの。では。