燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第11話

…偉大なる海を越え、東の海へ。

東の海にあるココヤシ村は騒がしくなっていた。村のニュースは海賊船が来たという話で持ちきりである。

 

「多いね。人。」

 

ウタとヤマトが先に見る。

港らしき場所には村の大勢の人がごった返していた。ウタは柵に身を乗り出して、見ている。

 

「すまない。船を少しの間、止めさせちゃくれないか。」

 

「そりゃ良いがアンタら…海賊か?」

 

茶色の服を着た男がバンドラへ話しかける。カラカラと男の帽子の上の風車が回っていた。

 

「いや、似たようなものだが俺たちは海賊じゃない。」

 

「…そうか。」

 

そう言って男はバンドラ達を案内した。

 

男の名前はゲンゾウと言い、村の駐在であった。村はココヤシ村と言い、フーシャ村を思い出すような…長閑な雰囲気がウタとバンドラは懐かしく思っていた。

 

「幼い女の子を連れて航海とは、大変だったろう?」

 

「まぁ、楽ではないな。」

 

そう言って笑うバンドラ。ウタはそんなバンドラの手をガシッと掴んでおり、ヤマトは初めて見る景色に目を輝かせていた。

 

そうやって村内を歩いていると…。

 

「ん?」

 

バンドラの目の前から駆けてくる人物が見えた。その者はバンドラの方まで走ってくるとバンドラの胸に当たり、後ろへと吹き飛ぶ。

 

「うわぁっ!!」

 

その者はぼすっと地面で尻餅をついてしまった。その者…いや、その子はとても発色の良いオレンジ色の髪をしていて、薄い緑のワンピースを着ていた。その手には大事そうに何か本を持っていた。

 

「コラァ!!ナミィッ!!」

 

後ろから大きな声を上げる男が追いかけてきていた。少女はまずいと思ったのか、前にいたバンドラの後ろに隠れようとする。

しかし、近くにいたゲンゾウにより、少女は見つかってしまった。

 

「ナミーッ!!お前、またかッ!!」

 

ゲンゾウは青筋を立てて、少女…ナミを怒鳴りつけた。ウタはいきなりのことに顔を顰めながら、耳を塞いでいた。

 

「ゲンさん、ナミがまた…!!」

 

「わかっている。…ナミ、何故、そんなに欲しいならベルメールのやつに言わないのだ。」

 

「だって、ウチは貧乏だもん。」

 

ぷくーっと頬を膨らませてそう言うナミ。ゲンゾウはそんなナミに頭を抱えていた。ナミの持っているのは地図帳で、おおよそこの歳の女の子は読まないだろう本であった。

 

「…もし。」

 

話を切り出したのはバンドラ。ゲンゾウとナミはそのバンドラをキョトンとした顔で見た。バンドラはナミに視線を合わせるように視線を低くすると穏やかな笑みで、ナミを見た。

 

「嬢ちゃん。そんなもん読むのか。」

 

ナミは笑顔でうんっと頷く。その太陽のようにキラキラと輝く笑みに思わず、バンドラの手が彼女の頭に伸び、優しく撫でた。ウタはその様子を見て、少し頬を膨らませていた。

 

「私、世界地図をいつか自分で作るのが夢なのっ!!」

 

「そうかそうかっ!!…なら、これは餞別だ。」

 

そう言って、バンドラは自身の胸元に手を伸ばし、懐から唐草模様の巾着袋を取り出した。

 

「それ、いくらだい。」

 

「はっ!?いやいや!!旅の人から貰えないよっ!?」

 

「良いから良いから。俺がその本、買わせてもらう。んで、この子にそれをやる。そうしといてくれ。」

 

でも…と申し訳なさそうにする男性にほぼ無理やり金を握らせるバンドラ。ナミはキョトンとしているものの、大人達はその行為に少し冷や汗をかいて驚いていた。

 

「ゲンゾウさん。これで文句ねえだろ?」

 

「むぅ…。客人に払わせてしまうとは嘆かわしい…。こら、ナミ。ちゃんと感謝しなさい。」

 

「うん!!ありがとう、おじちゃんっ!!」

 

にっと笑うナミ。

バンドラはおじちゃんと呼ばれたことに少しガッカリしながらもナミの頭を撫でて、微笑んだ。

 

「…となれば、ベルメールのところに連れて行かねばな。」

 

奴にも一言言わせねばと言うゲンゾウ。

ベルメールとは誰なのかと聞くとナミの母親のようなものだと答えた。母親のようなものと聞いて、バンドラはウタの顔を見る。ウタにとって、シャンクスも父親のようなもの。それと似たような感じなのだろうと思っていた。

 

「ヤマト、行くぞ。」

 

「あ、うんっ!!」

 

人々と話しながら交流をするヤマトにバンドラがそう言った。ヤマトは笑顔で首を縦に振り、ダッシュで追いついてきた。手に金棒を持っているので、それはそれで恐怖である。

 

ゲンゾウはナミを連れて、バンドラ含めた3人を村ハズレの一軒家へと連れて行く。一軒家にはナミに少し似た青髪の少女が立っていた。

 

「あっ!!ベルメールさーん!!ナミ、帰ってきたよ〜っ!!」

 

その声に呼ばれ、中から1人の女性がやってくる。緑のチェック柄の服を着た女性はナミに近づき、ナミの頭を撫でた。

 

「あら、ゲンさん。その人たちは?」

 

バンドラ達に気がついたのか、女性はナミを撫でた後でゲンゾウにそう聞いた。

 

「あぁ。この人らは…。」

 

ゲンゾウはバンドラたちのこと、さっき会ったことを事細かに伝えた。女性は自身をベルメールと名乗り、青髪の少女はノジコと名乗った。

 

「お金、返さないといけないわね。」

 

「良いよ、俺が勝手にお節介しただけだし。俺の顔を立てて、貰っといてくれや。」

 

家の中に入ったバンドラとウタ、そしてヤマトは室内の椅子に座り、ベルメールと話をしていた。ウタはノジコとナミと歳が近いのか、女の子らしいファッションや可愛いものの話で盛り上がっていた。

 

「…あの子はアンタの?」

 

ベルメールはウタを見てそう言った。

 

「いや、親友が名のある海賊でな。危ないってんで、俺が預かってる。」

 

「なるほどね。…来た時からアンタに懐いてるから、てっきり親子かと。」

 

そう言ってベルメールはニィッと笑った。

時刻は夕飯時に近くなる。

 

「夕飯、食べて行く?」

 

「良い誘いだが、うちの女どもは結構大食いだぞ。見た目以上に食う。」

 

「誰が大食いだ。君が一番食べてるじゃないかっ!!」

 

目を細めてニヤッと笑うバンドラをジトーとした目で見るヤマト。ベルメールはポカンとしていたが、咄嗟にぷっと吹き出し、大笑いした。

 

「うっし。そろそろ、出るか。長居は失礼だ。」

 

そう言ってウタとヤマトに出るように言い、バンドラはベルメール達に感謝を言い、出て行った。

 

「ウタ、良かったな。同年代の女友達が出来て。」

 

「あんなの子どもよ。」

 

口ではなどと言いつつも、音符のような髪の毛は高鳴っているかのようにピンッと立った。

 

「取り敢えず、なんか食うか。」

 

「そうね。お腹すいちゃった。」

 

ウタはそう言いながら、お腹をさすっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…数時間後。ナミはノジコと走っていた。

愛してくれた母、ベルメールと喧嘩をしてしまったのだ。血の繋がりもない。だが…それでも愛してくれた。

 

『シャーハッハッハッ!!ご機嫌麗しゅうッ!!くだらねえ人間どもッ!!』

 

…奴がやってきた。海賊だと誰かが叫ぶ。それは魚人だった。ノコギリザメの魚人、アーロンは村中に聞こえるように言った。

 

『今この瞬間からこの島を俺たちの支配下にするッ!!』

 

アーロンが提示したのは大人10万、子ども5万ベリー。払わなければ…見せしめとして殺すと言った。村の人間はなんとか出せたものの…ある1人の魚人が、村の外から出る煙に気付いたのだ。

 

…それはナミとノジコの母、ベルメールが彼女らのために昼飯を準備しているところだった。




詰め込みすぎたかな。
さて、次が勝負ですね。頑張らないと…。

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