燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第120話

「つーか、ただ最近会っただけの男に肌を見せるったぁ、どういう了見なんだよ。」

 

「…普通なら先程の時点で貴様のような色欲狂いならば、石になっているのじゃが。それが気になって仕方ない。」

 

バンドラは後ろを向く。その後ろでハンコックが服を脱ぐ。バスタオルで身体を隠し、それによって潰れる彼女を代表するかのような二つの立派なもの。…男ならば誰しも心躍るだろう。

 

「出来たぞ。感謝するが良い。お主以外に妾の肌を見れるものは居ないのだから。」

 

いつものように傲慢に振る舞うハンコック。

バンドラはため息を吐きながら、軽く流す。ハンコックは少し恥ずかしいのか、髪を指で弄っていた。

 

「…まぁよい。ほら、入るが良い。妾の背を流せることを光栄に思いながら。」

 

「…ただ背中流してもらうだけなのに何故そうも、傲慢なんでしょうな。」

 

そう言いながらバンドラも脱ぐ。

…ヤマトに付けられた咬み傷やスムージーにつけられた刺し傷が大きく残り、そして、数多の切り傷の跡が薄く残る筋骨隆々の肌。ハンコックはそれをじっと見て、ゴクリと生唾を飲む。

 

…ハンコックにとって男の裸とは醜悪なものしかなく、良い思い出がない。だからか、それをかき消すようにじっくりと見た。

 

「…見過ぎだぞ。」

 

「其方の身体はボロボロじゃの。…妾とは大違い。なんとも醜い。」

 

「あっそ。」

 

身支度を終えたバンドラがハンコックの手を握る。ハンコックは数分、固まるものの、ゆっくりとその手を握り、湯煙立つ湯浴み場へと上がる。

 

「…背中を流してくれ。」

 

バンドラはその言葉に少し引っかかった。

…別に言葉自体に他意はない。ただ、微か…ただ微かにハンコックの声が震えたのがわかったのだ。

 

ゆっくりとバスタオルが剥がれる。

そこにあったのは先ほども見た天翔ける龍の蹄。

 

タオルを泡立て、ハンコックの背を優しくなぞる。

 

「…んっ…。」

 

「痛かったら言えよ〜。」

 

…何故だか、バンドラの声は感情がなかった。目の前にいるのはこの世に生きている中で最も美しいとされる女帝。それの裸を見て、女好きのバンドラの心が踊らないわけがない。しかし…バンドラにとって目の前の女は同盟相手というだけ。

 

「…貴様、何故、妾の裸にときめかん。」

 

「あ?」

 

「普通の男なら、妾の裸を見るなど死ににくるようなもの。心がときめきに耐えられん。貴様は無類の色情狂いと聞く。節操のない男とも。」

 

…その言葉にバンドラが返したのは…穏やかな笑みだった。

 

「…お前さ、例えば…目の前にどうしようもなく好きな大好物と嫌いじゃなくて寧ろ好きな方の料理が並べられたとき…どっちに食いつく?」

 

「なんの話じゃ。」

 

「いいから、答えなさいや。」

 

「それは…大好物じゃろう。」

 

間髪入れずにハンコックがそう答える。バンドラは歯を見せてにやりと笑った。

 

「…そういうことさ。」

 

「は?なんの話じゃ、さっきから。」

 

「俺は好きに優劣をつけている。一番下は嫌いではなく、上に行くほど好きだという気持ちが強くなる。…つまりは、俺をその気にさせるやつはこの世にそう居ねえってこった。わかる?」

 

「…ムカつく。したり顔でそうも自信満々に。」

 

そう言うとハンコックは口元を少し膨らませて、バンドラを横目で睨む。バンドラは肩を落としながら…あのなぁ…と返す。

 

「わかんなかったら良いけどよ。…お前、男嫌いだろ。」

 

その言葉にびくりとハンコックの肩が震えた。

 

「男を魅了する魔性の女が男嫌いってのは世の常かな?」

 

「…巫山戯た口を閉ざせ。…妾はもう誰にもナメられとうないのじゃ。」

 

「…やっぱりな。さっきから虚勢を張っちゃいるが、声は震えてるぞ。」

 

その言葉にハンコックがバンドラへ見せたのは…少し怯えたような睨み。バンドラはため息を吐くとその背中にゆっくりと湯をかけた。

 

…ハンコックが気丈に振る舞うのは『もう支配されたくないから』という強い意志のみ。妹たちもおらず、万が一の護衛のためとは言え、こんな男に頼んだことを…ハンコックは後悔していた。

 

「…貴様に妾の何がわかる。」

 

「なにも。…ただ、お前の政府を嫌う気持ちはわからんでもない。」

 

「支配されることの恐怖は支配された者にしかわからぬのじゃ。目の前で人ではない所業を与えられるものの苦痛。貴様にわかるのか?」

 

…机上に振る舞わなければ目の前にいるのはただの女性。偉大な海賊女帝も先ほどよりも小さく見えた。水を被った黒髪が艶やかに輝く。

 

「…わかるわけがないじゃろう。」

 

「ああ。俺は見ただけだからな。されたわけではない。」

 

「だろうな。」

 

そう言ってハンコックは立ち上がる。

 

「妾の湯浴みであると言うのに、其方が服を脱ぐとはのう。」

 

「今更かよ。まぁ、裸の付き合いってやつだ。」

 

「そうなのか。…まぁ、良い。妾も貴様の背を流してやるとしよう。」

 

そう言ってふっと笑うハンコック。あの海賊女帝が…とバンドラは思いつつ、背を向けた。

 

「刺すなよ?」

 

「刺さんわ。流石に同盟相手を失うと妾が困る。」

 

そう言ってバンドラの後ろに立つハンコック。…その後ろからマジマジと背中を見ていた。

 

「なんだよ。」

 

「背に龍。…妾もこれを入れればもっとナメられぬようになるか。天翔ける龍の蹄も消せるかもな。」

 

「それで良いのか…お前は。」

 

「冗談じゃ。」

 

そう言ってタオルを泡立てて、バンドラの背中に這わすハンコック。慣れない所作であるからか、手がおぼつかない。

 

「か、硬いな。割とゴツゴツしておる。」

 

「当たり前だ。」

 

「…そうじゃのう。…痒いところはないか?」

 

男の肌を自主的に触るのが初めてなのか、ハンコックの頬がほのかに赤く染まっていた。バンドラも大丈夫と笑う。

 

「なんだ、意外とビビりなんだな。お前。」

 

「…は?」

 

「イッテッ…!?」

 

笑いながらそう言うバンドラの背をガリッと強めに拭くハンコック。タオルの通った軌跡は赤く色づいていた。ハンコックがギロッとバンドラを睨む。

 

「…妾がビビリじゃと?…妾を馬鹿にするのもいい加減しろよ?小童。」

 

「…歳上なんですけど。…ビビリで…それでいて、優しい。妹たちの為をこの国の為を見て、お前は過去に争い、七武海になった。それでいいじゃねえか。」

 

「くだらない妄言よ。…ほら、終わったぞ。」

 

そう言って湯をバンドラの背に流すハンコック。少し粗雑な感じでばしゃりとかけられ、バンドラの髪から水が滴る。その様子を見てハンコックが鼻で笑った。

 

「良いではないか。水も滴るいい男…ってやつじゃ。」

 

「…お前なぁ…。」

 

自慢げなハンコックの顔を睨むように見るバンドラ。ハンコックはケラケラと笑いながら、ゆっくりと風呂へと入って行く。バンドラもため息を吐きつつも、その隣に腰をかけた。

 

「…誰かと一緒に湯船に浸かるのは初めてかもしれぬ。良いものかもなぁ。退屈が薄まる。」

 

「よくもまぁ、そう、男に気を許すものだ。」

 

「貴様は貴様じゃ。男と思わず、天帝と思うことにした。光栄に思え、妾と同じ湯に浸かる幸福ものはお前くらいじゃぞ?」

 

「…へいへい。」

 

そう言って呆れたように笑うバンドラ。

ハンコックは鼻を鳴らして得意げに笑っていた。

 

「そうじゃっ。貴様に良き話をやろう。」

 

「…次はなんですかね?蛇姫様。」

 

「妾は貴様の言うように男が苦手じゃ。故に、貴様に妾の男へのリハビリを手助けさせてやるッ!!」

 

「…ええ。」

 

「異論は認めぬぞっ♡」

 

甘えたような口調でそう言うハンコック。まだ骨抜きにしようとしているのかとバンドラは思いながら、ため息を吐いた。

 

…湯浴み場には護衛はいない。

その扉から恨めしそうに見るヤマトとウタ。それを呆れてみるスムージーにも気づかず、二人は時間いっぱい喋っていた。




蛇姫様は絶対チョロいぞ…。
ちょっと気を許しすぎ感半端無いですが許してね。

次回から多分アラバスタ(未定)…では!!

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