燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第122話

…女ヶ島のウタのライブ当日。

いつものトレードマークの髪型を決め、いつもとは違うオレンジのパーカーに可愛いといつも着る短めの今日は黒いスカート、そして、片方のみ履く黒いハイソックスを履く3度目の新衣装公開を予定している。

 

今度はヘマはしないと、デカデカと九蛇と描かれた要塞の中でゴクリと水を飲む。万国では結局、ライブ出来なかったなぁ…と思いつつ、(バンドラから貰った)レモン味の飴を舐め切る。

 

「…よしっ!!」

 

そう意気込み、手を組み、伸びをするウタ。

久々のライブで気合が入っている。所在が知れた幼馴染に、所在の知れぬ父親たちに…そして、彼女の夢を認める大切な人(仲間)達に向けて…〈歌姫(プリンセス)〉ウタのライブが今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでこうなる。」

 

一方、バンドラといえば。

数刻後にはライブ会場になる闘技場で二人の女性に絡まれていた。

 

「アンタが姉様をたぶらかしたからよッ!!」

 

「絶対に許さないッ!!」

 

一人は緑の髪が特徴的なボア・サンダーソニア。もう一人はふくよかな体型のボア・マリーゴールドである。バンドラは首を鳴らした後、ため息を吐く。遠くを見れば、ヤマトとスムージー…そして、スムージーの膝の上で眠る蛇姫様の姿も見える。

 

「ウタのライブなんだが。」

 

そう。

世に名を轟かせる若き歌姫のライブの為、現在も闘技場の席は満席である。しかも、二人はバンドラが『ゴルゴンの目』の意味を知っていることは知らない。ただ、バンドラ(コイツ)が来たから姉さんがおかしくなった…と思っているだけなのだ。

 

「…あれはなんなの?」

 

闘技場の観覧席で見る金髪の女性…マーガレットがバンドラを指差す。その隣では大きな体の女性やふくよかな女性にまぎれて、小さな老女の姿もあった。

 

「あれは男…しかも、七武海の一人じゃ。」

 

「ッ!?ということは…蛇姫様と同じと言うことですかッ!?」

 

マーガレットの問いに老女…ニョン婆、もとい、グロリオーサは頷く。

 

「しかも、あれは七武海の中で世界に名を轟かせている男。名を知らぬものはこの女ヶ島の住民のみであろうな。」

 

「…そんな人が…。」

 

「流石に女ヶ島のあの二人とはいえ…ただで済むまい。」

 

ニョン婆がそう言う。

…闘技場では、サンダーソニアとマリーゴールドの身体が徐々に大きく変化していく。その姿はまさに大蛇。

 

「このまま噛み殺してやる…ッ!!覚悟しろッ!!男ッ!!」

 

「…ふぅ。」

 

怒り心頭の二人。それに対し、バンドラは…タバコを蒸していた。

 

それが二人の怒りを逆撫でする。

 

マリーゴールドが口から毒液を噴射する。

 

それをバンドラは後ろに跳んで避けた。

 

「おいおい。歌姫のステージを汚すなよ。…掃除が大変だ。」

 

バンドラはそう言い、嫌そうに笑う。

 

その背後にサンダーソニアが先回り。髪を自身の手足のように操り、蛇の形をした髪でバンドラを噛みちぎろうとする。

 

バンドラはそれを身動きの取れない空中で後ろに回りながら跳び、避ける。

 

「なっ!?」

 

「おいおい。余興にしちゃあ、本気出しすぎだっつの。」

 

そう言うとバンドラの周りに風がまとわりつく。

 

「『風の刃(ラーマ・バン)』ッ!!」

 

「ぐっ…!?」

 

黒い竜巻がサンダーソニアの周りを覆う。軽くではあるが、サンダーソニアの肉を少し削ぎ、吹き荒れる。

 

「姉様ッ!!…クソッ!!」

 

「…髪が燃えた。」

 

続いてはマリーゴールド。

自身の髪に火を灯し、そのままバンドラの身体を絡め取ろうとする。

 

バンドラはその火の髪の攻撃を、武舞台を走ってくぐり抜けた。

 

「…ウタに怒られちまうだろ?」

 

「ぐっ!?」

 

そう言ってマリーゴールドの腹部まで行くと上へと跳び、その額に手を合わせる。

 

「すまんが、眠っていてくれ。『震八卦(しんはっけ)』ッ!!」

 

「ッ!?」

 

マリーゴールドの頭に優しく強打を入れるバンドラ。

 

マリーゴールドはプツンと糸の切れた人形のように泡を吹いて倒れた。

 

バンドラはシュタッと地面に降りると首を鳴らして、歩き出す。

 

「おいッ!!誰かッ!!…この二人、運んでやってくれ。」

 

そう言うと九蛇の戦士達がマリーゴールドとサンダーソニアを抱き上げて、連れて行く。心配そうな声を出しながら。その一瞬の出来事に他のアマゾンリリーの住人達は…声を出せなかった。

 

「…んぁ…?なんじゃ…何が起こった?」

 

先程まで夢の中にいた蛇姫が漸く覚醒する。

実際、だらしのない姿を見せてもいい場所…いや、他の住民からは見えない場所だった為、良かったと後々、ニョン婆は明かす。

 

目を擦りながら、武舞台を見下ろすハンコック。

ヤマトは嬉しそうな顔をして、武舞台を見ていた。尻尾が生えていれば、ブンブンと引きちぎれそうなくらい振っていただろう。

 

しかし、歌姫のライブをするには少し悲惨な状況だった。武舞台は主に風と蛇のような形の髪のせいでボロボロになり、壁はマリーゴールドの体に当たり、亀裂が入ってしまっている。

 

「…ふむ。少しアレンジを加えるか。」

 

そう言ってニヤリと笑ったバンドラ。

バンドラは上に向かってパチンッと指を鳴らす。すると凪の帯からか、海水が上へと巻き上げられ渦を作った。それが武舞台の上からまるでアーチのように降り注ぐ。

 

「『華氷(はなごおり)』」

 

バンドラの左手から氷の蔓のようなものがその降り注ぐいくつかのアーチ状の海水へからみつく。絡みつかれた海水は瞬間的に凍り、滝は氷の天井へと変化した。蔓は氷の薔薇を咲かせる。

 

「…まぁ、こんなもんだろう。」

 

灰色一色。

その武舞台に透き通った氷がアクセントとしてつく。

 

「それでっと。」

 

武舞台のヒビを氷で補うバンドラ。

…これで歌う舞台にうるさいウタも文句を言うまい。そう思いながら、ウタが滑って転けないようにして武舞台からハンコックたちのいる場所へと飛び上がる。

 

「こんなもんか。」

 

「綺麗だね。」

 

バンドラはヤマトの横へと腰を下ろす。

ヤマトはバンドラを見るなり、その身体へピタッと引っ付いた。もはや、いつものことである。

 

ハンコックもスムージーに礼を言い、トコトコとバンドラの横へ座った。

 

「お前の妹に良からぬ因縁をつけられたぞ?俺が来たからお前が変になったって。」

 

「変とはなんじゃ。妾はまだ貴様にそう言う感情は抱いておらぬ。言ったじゃろうが。妾は其方でリハビリしているだけ。好きとか愛してるだとかそういう感情は抱いておらぬわ。」

 

「へぇ…?だけどさ、『変になった』とは言ったが、『好き』とは一言も言ってないぞ?アイツらもそこまでは思ってないと思うが?」

 

そう言ってニヤリと笑うバンドラ。

ハンコックの方を見ると、ハンコックは耳まで真っ赤になっていた。

 

「…ふ、ふん。ウタに見せてもらった恋愛漫画にそう書いてあったのじゃ。男女の変とはそういうものだと相場が決まっていると…。」

 

「…ま、いいけどよ。でも、ウタの持ってるのって割と過激なのもあるからなぁ。あんまり、間に受けんなよ。」

 

そう言ってタバコを蒸すバンドラ。

ハンコックはきっとバンドラを睨む。

 

「妾はタバコは嫌いじゃ。」

 

「…そうだった。」

 

そう言ってまだ一吸いしかしていないタバコを消すバンドラ。ハンコックは流し目でその様子を見る。

 

「…其方、この後、どうするのじゃ?クロコダイルの言うアラバスタへと行くのか?」

 

「まぁ、そうなるな。…アラバスタでさ、ウタのライブって失敗してんだよ。」

 

そう言うバンドラの顔は優しく、微笑んでいた。ハンコックはその顔を不思議そうに覗き込む。ヤマトもうんうんと頷いていた。

 

「ウタが途中で倒れちまって、それっきり。まだ幼かった姫様にも悪いことをしたな…って。」

 

「…ふむ。なるほどのう。よし、妾もアラバスタに行くとしよう!!」

 

「「は?」」

 

突拍子もないその提案にバンドラとヤマトが声を上げる。スムージーですらぽかんとした顔でハンコックを見ていた。ハンコックは目を少し輝かせながらそう言った。

 

「見聞を広めるのもアマゾンリリーの皇帝としての務めじゃっ!!それに…これも男に慣れる為っ!!寝食を共にした方が慣れるじゃろ?お主ら全員、妾の背のことは知っておるしのっ!!これがでーと?とかいうやつじゃっ。」

 

「…違いますね。」

 

ウキウキとして、そう言うハンコックにバンドラはため息をつきながらそう言った。

 

「てか、お前が居ない間に攻めてこられたらどうするんだよ。」

 

「それは大丈夫じゃ。この凪の帯を越えられるのは妾らか、海軍しかおらぬ。七武海になっている以上守られるからの。ほら、エレジアもおなじじゃろ?」

 

「…そうかい。だったら良いが。」

 

バンドラは横目でヤマトの方を見る。

ヤマトはバンドラを睨み、口元を膨らませていた。ここ最近、ヤマトに構ってやれてないな…とバンドラは思う。バンドラはヤマトの頭を優しく撫でる。

 

「…こんなんでボクが機嫌直すと思うな。」

 

「わかったよ。今度一緒に出かけよう。な?」

 

「…それなら許す。」

 

そう言って前を向くヤマト。

前では新衣装に着替えたウタのライブが今、始まろうとしていた。

 

「ウタちゃん、噛まずにラップ言えるかなぁ?」

 

「大丈夫だろう。噛んだら、慰めてやろう。」

 

そう言ってバンドラとヤマトは優しげな顔で前を見ていた。




ハンコック、ヒロイン案が多かったので、女ヶ島編終わってもついてきます。マーガレットなぁ…どうしようね。

さて、ようやっとアラバスタ行くかなぁと。
アラバスタ編のバンドラ登場は考えてありますのでね。

ハンコックとマキノさん同い年って…マ?

どこまで乗せるかは決めてないけどロビン枠です。ではでは〜。
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