燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第128話

「…えっ。」

 

「来やがったな…。」

 

止まらぬ反乱(うねり)

怒号と共に、走らす馬は大きな足跡を立てて、反乱軍統率者(リーダー)コーザを筆頭に走り出す。バンドラはハンコックを降ろし、狂骨を抜いた。

 

「…バンドラさん。」

 

「…やりてえことをやれ。お前のことは俺が守ってやる。」

 

「俺()がじゃ。妾もおるわ。愚か者。」

 

ハンコックが足を折り、いつでも蹴れる準備をしていた。バンドラは首の骨をコキコキと鳴らす。

 

ビビが反乱軍の前へと飛び出し、手を横に広げた。

 

「止まってッ!!止まりなさいッ!!反乱軍ッ!!」

 

「全隊散るなッ!!南門(みなみゲート)一点突破ッ!!次いで内部から全門を崩すッ!!覚悟はいいかッ!!」

 

コーザ(リーダー)の声に反乱軍は声を上げる。コーザは刀を抜き、そのままアルバーナへ突っ込もうとした。

 

「待ってッ!!お願いッ!!」

 

ビビが声を張り上げる。…しかし、怒りの進軍には届かない。その火に油を注ぐ様に…王国軍から砲弾が飛んでくる。

 

「チッ…!!」

 

バンドラとハンコックが足元のおぼつかない中。ハンコックはその砲弾を武装硬化した足で蹴り上げた。

 

「妾を舐め…ひゃんっ!?」

 

…そのまま転けそうになるハンコックをバンドラが左手で抱き上げ、走る。…砲弾は一撃ではない。

 

「ハンコックッ!!飛ぶぞッ!!」

 

「えっ…えっ!?」

 

バンドラがハンコックを抱えながら、地面に斬波を打ち込む。

 

そうして、そのまま空中で砲弾の軌道を変えた。

 

「チッ…。アイツら、仕掛けてきやがったッ!!絶対止まるなッ!!」

 

「待ってッ!!止まりなさいッ!!反乱軍ッ!!」

 

ビビの悲痛なる声は…三発目の砲弾の着弾により、掻き消された。馬の足が作り出した砂煙によって、コーザはビビの横をすり抜ける。

 

「…なんで…。きゃっ…!!」

 

ビビの足が砂に埋もれ、ビビはその場に転ける。

…それだけならいい。しかし、目の前からはまだまだ続く反乱軍の進み。激しい馬の雪崩にビビが飲み込まれそうになる。

 

「おいッ!!バンドラッ!!妾を置いて、あの娘を助けろッ!!」

 

「んなことしなくても…助けられるよッ!!」

 

バンドラは狂骨を口に咥えると、そのまま砂の上を滑り、間一髪、ビビの身体を抱き、上げた。

 

「っ!?」

 

そのまま声を上げて、バンドラはハンコックとビビを降ろし、口から狂骨を落とした。

 

「あ…ありがとう…ございます…。」

 

「顎が痛え。」

 

流石に七武海バンドラとはいえ、顎までは鍛えていない。剣をいつも咥えているゾロに敬意を持ちつつも、狂骨をしまった。首を傾げるバンドラの背にハンコックが飛び乗る。

 

「ぐえぇっ…!?何し…ッ!!」

 

「阿呆ッ!!反乱軍は進んだのじゃぞッ!!早く進めいッ!!」

 

「…そうだッ!!」

 

指を前に指すハンコックとすぐにダッと走り出すビビ。バンドラは歯を見せニヤリと笑うと、少しの意地悪も含めて…ビビをガシッと左手で抱きしめ、右手でハンコックを支える。

 

「「え?」」

 

「…振り下ろされんなよ?」

 

そのままアルバーナの外壁を…足だけで登った。ハンコックとビビが大きな悲鳴をあげる。アルバーナに到着するなり、憔悴しきっていたハンコックとビビを地面へと下ろす。

 

「も、もっと…他にあったじゃろう…ッ!!」

 

息を肩で吐きながら、ペタンと足を開いて座るハンコック。ビビは息を吐くとそのまま、アルバーナへと歩き出した。

 

「おら、いくぞ。ハンコック。」

 

「…ひ、一人じゃ無理じゃ…。こ、腰が…。」

 

「…全く。いつもの勝ち気はどうしたよ。」

 

バンドラは呆れた様に笑いながら、ハンコックを抱き上げる。

 

「ひゃっ…!!き、貴様…!!妾の…お、おし…。」

 

「一回やったろ。いくぞ。これが一番…楽だッ!!」

 

バンドラはハンコックの臀部に左腕を回し、右手で背中を支え、走り出す。ハンコックは目を閉じ、バンドラの首に腕を回す。バンドラは走っていくと…なにやらビビが揉めていた。そこにいたのは馬に乗ったウソップ。

 

「ビビッ!!乗れっ!!これの方が楽だッ!!」

 

「やだ…!!貴方、ウソップさんじゃないッ!!」

 

「チッ…いいからッ!!ウゲフッ!?」

 

ビビの手を無理やり引っ張ろうとしたウソップ。ビビは必死の抵抗を示す。…アラバスタに会う前にあったマネマネの実の能力者の対策。それが実際に効果を発揮した。ビビは目の前のウソップが偽物であることがわかり、逃げようとするも腕を掴まれてしまった。それを助けたのは…。

 

「…サンジさん…ッ!!」

 

「…ビビちゃん。反乱は君にしか止められない。このおかま野郎は俺に任せろ。」

 

タバコを蒸す黒足のサンジだった。

ふっと笑うサンジ。バンドラの方へと視線を向ける。

 

「おい、くそバンドラッ!!そんなかわい子ちゃんと遊んでる暇あんなら、ビビちゃんを死ぬ気で守れッ!!オロすぞ、クソ野郎ッ!!」

 

「…へっ。当然。いくぞ、ハンコック。」

 

「うぅ〜…。誰かに見られるなんて…なんて屈辱…。」

 

「早く行けェッ!!」

 

サンジが目から涙を流してそう叫んだ。

バンドラはハンコックと共に、ビビを追いかける。

 

「…ふぅ…。」

 

サンジはタバコを蒸し、前を見る。

その前にはナノハナでコブラに化けていたおかまのバレーダンサーが立っていた。

 

「ジョーダンじゃ無いわよぉ〜ッ!?アンタ、噂のMr.プリンスねっ!?」

 

「…違う。俺はサンジ。海の一流コックだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…アルバーナ宮殿。

周囲を取り囲むは反乱軍を追い返さんとする国王軍。そして、轟音立てて向かってくるはアラバスタを取り戻さんとする反乱軍だった。

 

それを冷静に見る影。

 

「…どうする。ウタちゃん。どっちも全員、叩く?」

 

踊り子衣装に着替えたヤマトとウタであった。

比較的涼しい踊り子衣装だったが、ヤマト達の肌には少しのてかりが見える。金棒を構えながらそう言うヤマトにウタはジトーとした目で睨む。

 

「海賊なら仕方ないけど…どっちも違うでしょ?片方はわかんないけど…。」

 

「…なら、どうする?このままじゃ。」

 

…両方が潰し合う。

最悪は、それがクロコダイルに利用されるのだ。

 

「…私が歌って全員を眠らせる。それしか無いと思う。」

 

「よしっ!!ならやるぞッ!!」

 

「待って。」

 

急いで行こうとするヤマトをウタが止める。

ヤマトがウタの方を向くと、ウタは強い眼差しをヤマトに向けていた。

 

「…この数よ。全員が全員、私の歌を聞けるはずがないわ。少しでも耳に入れば、眠らせられるんだけど…。」

 

「注目を浴びる様にしなくちゃ…ってこと?」

 

ウタはコックリと頷く。

ヤマトは周りを見渡した。何かないか…と。

 

その時、ビビが抜け道を使って到着する。コーザも打倒国王に向けて、アラバスタ宮殿へと入っていく。

 

「ヤマトッ!!ウタッ!!」

 

…バンドラが叫ぶ。

その方向へとヤマトとウタが嬉しそうに目を向けた。

 

「…ねぇ。あれって。」

 

「話は後だ。」

 

なんのことはない。

自分達が潜入捜査をしているにもかかわらず、世界一の美女(ハンコック)を抱き抱えたバンドラを見た。そのハンコックが顔を少し赤らめていた…だけなのだから。ヤマトとウタはジトーとした目をバンドラへと向ける。

 

「ビビはどこへ行った。」

 

「…さっき、王宮に入って行ったけど…。」

 

「ねぇ、ハンコック。降りなよ。」

 

不貞腐れたように言うヤマトとウタ。

 

「わ、妾も被害者じゃッ!!」

 

ハンコックは顔を真っ赤に染め上げ、声を上げた。バンドラはハンコックを下ろすと狂骨を抜き、首をコキコキと鳴らす。

 

「状況は。」

 

「王宮の中に4人の声が聞こえる。…一人は息絶え絶えよ。」

 

ウタが耳を澄ませてそう言った。

ウタの見聞色…こと、聞くことに関してはバンドラよりも秀でていた。そうか、とバンドラはニヤリと笑う。

 

「…俺が王宮に行こう。ハンコック、ヤマト、ウタ。お前らは反乱軍と国王軍の行動を少し遅らせろ。ビビの声が聞こえるようにッ!!」

 

「わかったッ!!」

 

ウタの元気な声を皮切りにバンドラは仮面を被り、アルバーナ宮殿へと入っていくのだった。




次回はようやっとフラグ建てられるか…建てられないか。

誰かれ構わず入れると私が死ぬんで加減はしますが。ビビ王女がどうなるかですな。

まぁ、そこそこに収めときます。
アラバスタ終わったらイチャイチャパラダイスになりそう。バナロに乗り込んだらそれはそれで大変なことになるしなぁ…。まだ先だけど。それでは。

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