「ウタッ!!ヤマトッ!!3人を死ぬ気で守れッ!!『晴天・群龍』ッ!!」
燃える炎の刃が魚人達を貫く。
ヤマトはそれでも向かってくる魚人達を金棒で打ち払っていく。
「チィッ!!何が知ってるだッ!!お前たち人間が、俺たち魚人に何をしたッ!!」
アーロンはバンドラに向かって拳を振るう。
バンドラはそれを武装色で硬化した左拳で迎え撃った。
「ぐっ!!」
「テメェも偉大なる航路に居たなら知ってんだろ?『雷鳴』ッ!!」
雷を纏った刀身を上から振り下ろすバンドラ。それはアーロンの肩を裂き、血が噴き出た。
「ぐぁぁッ!!」
「よくもアーロンさんをッ!!」
「弱そうな赤白女から狙えッ!!」
その声を皮切りにウタヘ銃口を向ける魚人達。
しかし、そいつらの銃弾は全て、風の壁によって弾かれた。
「もぅっ!!私だって海賊だよッ!!バンドラッ!!」
「おまえの最重要任務は、その子たちを守ることだッ!!…頼むぞ。ウタッ!!『
風の壁は槍状に変化し、魚人たちの肩、足、腹を薙いで進む。
すると魚人たちの目の形が変わった。魚人たちがついにキレ始めたのだ。アーロンは自分の強靭な歯を取り出すと、両手に嵌めた。
「
地面を蹴り、右手の歯をバンドラへ向けた。バンドラはそれを見聞色で回避。
「ぬっ!?」
「魚人の歴史は差別の歴史。そりゃわかってる…だけどな…!!人間が全員、テメェらを差別するなどと思うなッ!!」
狂骨で薙ぎ払い、アーロンの胸を横一閃に削ぐ。血は飛ぶものの、傷は浅い。
「ウォォォッ!!」
「『
立ち上る黒い竜巻がアーロンを飲み込み、血肉を削ぎながら上へと吹き飛ばす。
「テメェが今やってんのは、テメェを差別してきた人間と何が違うッ!!」
「ぐっ…!!黙れッ!!」
「アーロンさんッ!!此処は俺がッ!!」
両手に剣を持ったエイの魚人…クロオビがバンドラへ向かってくる。両手の剣をバツ字に斬ろうとする。
しかし、それの刀は振り下ろされるまでに、受け止められた狂骨の刃によって砕け散った。
「ッ!?」
「へっ。テメェの鈍と一緒にするんじゃねえ…!!」
「まだ、まだだッ!!魚人空手『百枚瓦正拳』ッ!!」
クロオビは腰を下ろし、正拳突きの構えになる。
しかし、バンドラは静かに炎を纏った左拳を構えた。
「ウォォォッ!!」
「『
相対した人の拳が魚人の拳を焼き焦がし、そのまま魚人は後ろへと飛ばされる。クロオビは負けた。着地したアーロンは更に青筋を立てる。
「ふぅ…。」
「クロオビィィッ!!よくもウチの同胞をッ!!」
「チュッ!!アーロンさん、次は俺がッ!!」
次はキスの魚人、チュウが口に含んだ水を銃弾のように放とうとする。しかし…。
「チュ…ぐぼえぇぇッ!!」
「ふっ!!」
前線で戦っていたヤマトの金棒に伏した。頭から血を流し、倒れるチュウ。目の前でやられたアーロンは唖然にするも、ヤマトに向かって、手に嵌めた歯を振り下ろす。
「ヌオォォォッ!!」
「『雷鳴八卦』ッ!!」
「ぐっ!!」
ヤマトの雷鳴八卦をモロに喰らい、バンドラの方へ吹き飛んだ。
「ぐあぁぁ…!!テメェら下等種族どもが…!!この俺をぉぉぉ…ッ!!」
「…『雷鳴・浮き上げ』ッ!!」
雷を纏った刀身でそのアーロンを打ち上げた。
2度目の上空に飛び、血を流して、そのまま地面に落ちるアーロン。もはや、アーロンに意識はなかった。
「…おわ…った…。」
誰かが言った。
幹部は全滅。アーロンの仲間たちも地面に伏していた。村人たちは歓声を上げる。ベルメールとナミ、ノジコは…泣いていた。母の腕の中で泣く2人を見て、バンドラは微笑み、タバコを蒸した。
「バンドラっ!!」
「よく頑張った。ヤマト、ウタ。」
ニヤッとしてそう言うバンドラ。ヤマトは顔を真っ赤にして照れ、ウタは笑顔で元気よく頷いた。
「うにゅ〜…ど、同胞たち…。あ、アーロンさん…。」
起きたのだろう。頭から血を流したハチが倒れる全員を見て、涙を流した。ウタは内心、なんか可愛いかもと思っていたが、バンドラはその首に狂骨の刃を押し付けた。
「うにゅ…。」
「…誓え。二度とこの村の人間に手ェ出さねえと。」
「あ、あぁ。誓う…!!誓うからっ…!!」
ハチは手を上げて、降参した。
「…うっ…。」
『べ、ベルメール(さん)ッ!?』
血を流しすぎたのだろう。ベルメールが左腕を押さえて、倒れた。ウタは能力を解除すると雪崩のように村人たちがベルメールへと集まってきた。バンドラはハチを峰打ちで気絶させる。
「血を流しすぎたんじゃ…!!ベルメール…!!早くしないと左腕を切らねばならんッ!!」
「…良いよ。命があるんだ…。こんなに嬉しいことはない…!!」
早く診療所へ運べと誰かが叫ぶ。
ヤマトとウタは心配そうに、バンドラは蒸したタバコを消して、その様子を見ていた。
数時間後。日ももう落ちてきた頃。診療所にて、ベルメールの報告を待つバンドラ。待ち疲れたのであろう…ウタはバンドラの膝を枕にして眠っていた。バンドラは穏やかな様子で、その頭を撫でる。
「ねぇ…。」
心配そうな声でナミがバンドラに話しかけた。
「ベルメールさん…大丈夫だよね…。」
泣きそうな声でそう言うナミ。バンドラはそんな彼女の頭を優しく撫でた。
「安心しな。母は強しだ。人はそう簡単に家族を残して死ねねえよ。」
ニィッと歯を見せ、笑うバンドラ。ナミは涙を堪えて、コックリと頷いた。隣のヤマトもふっと微笑む。
「…こうしてみると可愛いもんだね。ウタちゃんも。」
「いつも減らず口ばかり言うからか?…ウチの歌姫は最高さ。いつでも天使みたいだ。もうちょっと歳いってたら狙ってるね。」
「ハハッ。…ボクの妹みたいなもんだよ。」
ヤマトは甘えるかのようにバンドラの肩に頭を寄せた。
その時。診療所の扉が開かれ、中からDr.ナコーが現れた。その顔から見るに、芳しくないらしい。
「…ベルメールはひとまず無事じゃ。だが…左腕はどうにもならんかった…!!」
涙を堪えて言うナコー。
「…間に合わなくてすまんかった。」
「いや…君は皆んなを守ってくれた。誰も君たちを責める奴は居ないはずじゃ。」
「…そうか。」
穏やかに笑うバンドラ。ナコーは2人の良かったと泣く子どもたちを母親の代わりにゆっくりと抱きしめた。
そのときだった。
バンドラの横からきゅ〜…と言う音が聞こえた。バンドラが横を向くとお腹を押さえながら、顔を真っ赤にするヤマトが居た。
「…ご、ごめん…なさい…。」
「腹が減ったな。そう言えば、晩飯を食いっぱぐれた。」
「ハッハッハッ。村人たちに準備させよう。今宵は宴だ。」
ナコーがそう言う。
ヤマトはぱぁっと表情を明るくし、バンドラはにっと笑った。
「ん…なぁに…?」
ウタは寝ぼけ眼を擦りながら、ことの次第を聞く。ベルメールはまだ眠っている。子どもたちもひとまず村で宴をすることになった。