燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第130話

…アルバーナ宮殿内。

 

「…君には救われた。あのままであれば、国民たちは激突し、アラバスタという国は死んでしまうところだった。」

 

医療室からガーゼや傷薬を持ってきて、コブラ王の治療をするバンドラ。そのコブラが重々しく口を開くとそう言った。口調は優しく穏やかで、声は少し震えていた。

 

「…ビビも無理をさせた。良い保険をかけていたものだ…。私も。」

 

「偶々が重なっただけです。偶々、クロコダイルに呼ばれ、偶々、ビビ王女と会った。彼女の国民を救いたいという熱い意志が俺を動かしたんですよ。」

 

「…そうか。」

 

バンドラはコブラの治療を終えると、アルバーナの床へと座り込む。コブラの額からたらりと汗が流れた。…危惧すべきは爆弾。

 

「…ん、ぁあ…?私…寝ちゃって…はっ!?爆弾ッ!!」

 

バンドラの横で眠っていたビビが飛び起きる。

バンドラはその青ざめた顔を見て、ふっと息を吐いた。

 

「…じゃあ、最後の仕事をしましょうか。」

 

「バンドラくん。何から何まで済まないね。」

 

「いえ、俺は俺がしたいことをするだけです。」

 

そう言ってコブラへと笑う。コブラもそうかと微笑んでいた。ビビが立ち上がろうとするも、先ほどの毒がまだ体に少し回っているのだろう、立ち上がることができなかった。

 

「あ、れ?」

 

「まだ無理をするな。回復しきったわけじゃない。」

 

よろけるビビをバンドラが支える。

頬にガーゼが貼られた顔はそんなものには臆さないという強い意志が現れていた。そんなバンドラの襟をビビがギュッと掴んだ。

 

「…まだ爆弾があるんです…ッ。止まったとはいえ…このアルバーナを破壊し尽くすほどの……!!あのクロコダイルのことです…そこまで用意周到なはず…!!解除しないと…王国軍の人たちも…これから来るであろう反乱軍の人たちも…みんな死んじゃうッ!!」

 

「…だからどうしたい?」

 

優しい口調でそう聞くバンドラ。

ビビはきっとバンドラを睨む。その目は恐怖や恨みからではない。強い意志からである。

 

「私を…連れて行ってくださいッ!!早く…しなきゃッ!!」

 

「立つのもやっとの体で、よくもまぁ頑張るね。君が王女ならアラバスタも安泰だ。…ほら、乗りな。」

 

バンドラはビビの前へと背を差し出す。

ビビはそのまま、少しハンコックの残り香の香る背中へ乗り、バンドラの首に腕を回した。バンドラはニヤリと笑い、ビビをおぶり上げる。

 

「…では、行って参ります。」

 

「バンドラくん。…この国を、ビビを頼んだよ。」

 

「ええ。」

 

そう言ってバンドラはアルバーナ宮殿を後にした。

コーザがチャカを支え、歩いてくる。

 

「…チャカ。“ネフェルタリ・バンドラ”ってのはどうだ。」

 

「ハハッ。良いですね。なんとも…良い響きですな。」

 

コブラがニヤリと笑う。

その言葉にコーザもチャカも優しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいゴラァァァァッ!!バンドラ、テメェ…ッ!!なーに、ビビちゃんをおぶってやがんだッ!!」

 

「おい小娘ッ!!そこは妾の席じゃぞッ!!」

 

「こらっ。サンジくん。」

 

「…違いますね。」

 

外に出るなり、サンジがバンドラへ、ハンコックがビビへと声を荒げる。サンジをナミが、ハンコックをバンドラが宥め、ビビの話しやすいようにした。

 

「…これから十分足らず…。この宮前広場に爆弾が落ちるわ…。早く…止めなきゃ…!!お願い…探して…!!爆弾を…!!」

 

「ビビちゃんのお願いならッ!!」

 

そう言い、奮起する麦わらの一味。

ウタやヤマトもおおーっと拳を上げた。すこし、ウタが眠たそうであった。バンドラとビビの元へハンコックが走ってくる。

 

「ほぉ。ようやく学んだか。」

 

「ふん。妾も着替えてみたかっただけじゃ。」

 

踊り子の衣装。ヤマトやウタのとは違い、ハンコックらしい美麗があった。すらりと伸びた足、背中が見えぬよう布を巻き、腹を見せている。口ではそうはいうものの、褒めてほしいと言わんばかりに鼻を鳴らしていた。

 

「…まぁ、似合ってるんじゃないか?」

 

しかし、そんなのに構っている余裕は今のバンドラにはない。ハンコックはその素っ気無い仕草にムッと顔を顰める。

 

「なんじゃ。…妾が折角、着替えてやったというのに。」

 

「で?何しにきたんだ?お前の自慢に付き合ってる場合じゃねえんだよ。」

 

「ぶ、無礼ぞッ!?妾だって…その状態で其方が戦えないと思ってきてやったというのに…!!」

 

少しショックを受けるように口元を押さえて、そう言うハンコック。目には僅かに涙を浮かべ、口元を少し膨らませていた。バンドラとビビは顔を合わせて、ふっと笑うとバンドラの手がそんなハンコックの頭に触れた。ハンコックは目を一瞬閉じ、怖がるように身震いをした。

 

「ありがとう。助かるよ。」

 

「…ッ!?…か、感謝するとぉ…いいぞ?」

 

耳にかかる髪の毛を掻き上げ、目を逸らすハンコック。その顔は僅かながら、赤くなっていた。

 

「ほら、行きましょッ!!時間がないわッ!!」

 

「あぁっ!!」

 

「…あっ…。ま、待ってくれいッ!!」

 

走り出すバンドラたち。

その後ろをハンコックが追いかける。

 

ウタは獣型になったヤマトの上に乗り、ヤマトが足を動かした。砂漠をかける大口真神とはこれ如何に…という風であるものの、ウタもヤマトもその耳や見聞色の覇気を使って爆弾のありかを探す。

 

「まだ…見つかりませんかッ!?」

 

「天帝よ。其方の見聞色なら一発じゃろ。」

 

「そう言うなよ。“聞く”ことはできても、“聞き分ける”ことなんて幾分かむずいんだから。それに…物の声を聞くなんて…。」

 

その時だった。

ドタドタと現れたのは…海兵。その群れのリーダーは…。

 

「貴方は…天帝ッ!!」

 

「おや、アンタはローグタウンの女海兵じゃねえか。」

 

明らかに嫌そうな顔をし、バンドラを睨みつけるたしぎ。バンドラの方はニヤリと笑っていた。

 

「…貴方も今回の件に一枚噛んでいたとは…。」

 

「まぁ、偶々だ。…そこ、退いてくれ。これから、この広場は爆発する。市民誘導は海軍に任せる。」

 

「はぁ!?なんで貴方が…いえ、そうですね。わかりました。任せてください。」

 

たしぎの目つきが変わる。

バンドラはその目に対し、微笑むとビビの身体をギュッと支える。

 

「行くぞ。」

 

バンドラの声にビビが神妙な面持ちで頷いた。

ハンコックもそれに続く。足並み合わせて、爆弾を探すバンドラ。そうしてようやっと…見つかった。気づいたのはビビだった。

 

「…時計台?」

 

「賭けです。…でも、あそこなら…。」

 

その言葉にバンドラはニィッと笑う。

足を動かし、向かう物全てを壊すような勢いで走る。ハンコックもついていくのでやっとだった。

 

時計台の下に行くとバンドラが雷を落とす。

その音が合図だった。麦わらの一味、そしてヤマトたちが立っていた。

 

「ウタ、もう少し起きてられるか…?」

 

「ん…んぅ…が、頑張って…みる…。」

 

ウタウタの実のウタワールドを維持することは多大なる体力を要する。王国軍、反乱軍両名の武器は全て回収してはいるが、人が集まってしまうことには変わりない。ウタの寝ぼけ眼なようすをバンドラが手で支え、優しく笑った。

 

ウタはゆっくりと立ち上がり、その身体をヤマトが支える。

 

「中に誰かいるな。」

 

「…ビビちゃん。どうする。もう、一分もねえ。考えてる暇はねえぞ。」

 

サンジの言葉にゾロ、ナミ、チョッパー、ウソップもビビの方を向いた。

 

「…行くわッ!!私が止めてみせるッ!!」

 

「その意気だ。うっし。」

 

麦わらの一味はボロボロだった。それぞれ各地で戦っていたのだから。バンドラはそれを知ってか知らずか、ビビを左腕で支え、地面に右手を支える。

 

「しっかり捕まってろよッ!!口開けたら舌噛み落ちるぞッ!!」

 

その言葉にビビが口を閉じる。

バンドラの足元に風が吹く。

 

「飛ぶぞッ!!」

 

「ッ!!」

 

…上空へと飛び出す二人。そのまま空いた時計台へと突っ込む。中にはフロンティアエージェントのMr.7とミス・ファザーズデーが銃をバンドラへと構えていた。

 

「『風切(かざきり)』ッ!!」

 

バンドラは苦無上に形作った風を二人に投げ飛ばした。大技は起爆を誘ってしまう可能性があるからだ。その苦無は導火線を断ち切る。シュタリと降りた時にはもう全ては終わっていた。ようやっと立ち上がれるようになったビビが胸を撫で下ろすも…大砲の中からカチカチという音が聞こえた。

 

「…一筋縄ではいかない。それが七武海の海賊さ。」

 

バンドラが絶望するビビの横でそう言った。

…砲弾は時限式だったのだ。




ルフィ対クロコダイルを書いてないのは見てないからです。バンドラさんたちが。次回は書くと思います。別視点で。

ペルか、或いは。
次回、アラバスタ…多分最終回。
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