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…アラバスタ、地下遺跡。
「…何度殺されりゃあ気が済むんだッ!!テメェはよぉッ!!」
…クロコダイルが吠える。彼の中で誤算が三つあった。一つ目はバンドラが裏切ったこと、二つ目は歌姫ウタの存在。…そして、三つ目は目の前に立つルーキーの異常な精神力だった。
一度目は腹にフックを突き刺し、二度目はその身を干からびさせ…殺したはずだった。だが、その男は自身がどこまで行っても…どこまで悲惨に殺しても着いて這って出てきたのだ。
「…まだ返してもらってねえからなぁ…。お前が奪った物を…!!」
「奪ったもの?金か、名声か、信頼か、それとも命かッ!?いや、雨かッ!?」
「…“国”ッ!!」
ルフィの声にクロコダイルは理解ができなかった。ルフィは淡々と言う。
「…だって、この俺たちがこの島来た時にゃもうとっくになかったぞ…!!アイツの国なんてッ!!ここがアイツの国なら…もっと笑って居られた筈だッ!!」
そのままそのビビの…国民の悔しさを苦しみを拳へと込めるルフィ。水はない、覇気も知らないそんなルフィがクロコダイルを殴ることなどできない。クロコダイルもそう思っていた。
…次にクロコダイルを襲う衝撃を知るまでは。
ポタポタと流れる鮮血にクロコダイルが焦りを見せる。
「てめぇ…まさか…血で…!!」
ルフィの腕は血まみれだった。
「血でも砂は固まるだろ。」
「これが最後だ…決着つけようじゃねえかッ!!」
クロコダイルはルフィを海賊の敵と認めた。
…ビビに使った毒の鉤爪を見せた。
…地下遺跡が崩壊を始める。ネフェルタリ・コブラの最後の策も自然種『スナスナの実』の能力者サー・クロコダイルには通じなかった。倒壊する瓦礫に塗れ、クロコダイルが動き出す。
毒針がルフィの肩を裂き、鮮血を飛ばす。クロコダイルは勝利を確信し、笑う。
「串刺し、生き埋め、干上がり…そのいずれからも立ち上がったお前であろうと…この毒からは逃れられまい。」
「お前は何もわかっちゃいねえ。」
血だらけの手を握り、構えるルフィ。それを見て、国王コブラは目を見張っていた。
…アルバーナ時計台内。
「あ゛あ゛あ゛ッ!!」
ビビは地面に手を当てて、絶叫していた。カチカチと無情にも進む爆弾のタイマー。もうどうすることもできない…と王女は叫ぶ。そんな彼女に手を差し伸べたのは誰あろう…天帝バンドラだった。
「…一国家の王女様がみっともない顔してんじゃないよ。」
そうは言うものの、バンドラの顔は穏やかだった。
ビビは目を晴らした顔でそのバンドラの顔を見た。
「…バンドラさん。」
「さぁて、こっからは大トリと行こうぜッ!!」
バンドラは叫ぶとそのまま砲弾を持ち、砲弾ごと時計台から飛び落ちる。ビビは口元に手を当ててその様子を目で追いかけた。
「狂骨ッ!!」
バンドラは狂骨を引き抜くとそのまま上空で獣型へと変化。狂骨はそのまま砲弾を食らいつき、飲み込んだ。
「…食べ…ちゃった…。」
下にいたヤマトがそう漏らす。下にいた全員も驚愕の表情を浮かべていた。狂骨は上へと顔を向け、口を開けた。
「『
火球と共に空中に爆弾が吐き出される。
空中で爆発するそれはまるで花火のように光り輝いていた。
「…っ。」
ビビが地面にへたれこむ。
もう何度目か、頬を伝うのは安堵と張り詰めた糸の切れたような涙。バンドラが狂骨に乗って、手を広げる。
「来いっ!!ビビっ!!」
ぱぁっと光り輝くような少年のような笑みを浮かべるバンドラ。ビビも涙を袖で拭き、アラバスタにふさわしい太陽のような満面の笑みを浮かべる。
「うんっ!!」
ビビがそのまま両手を広げて、時計台から飛び降りてくる。踊り子衣装のベールが上へと上がり、天女のようなビビの身体をバンドラがその細いがしっかりとした腕で受け止めた。
「あははっ!!」
「…ハハッ。」
元気に笑えているビビを見て、ゾロを抜く麦わらの一味は涙を流し、倒れる。ゾロも優しく微笑み、ゆっくりと瓦礫に背を押し付けると眠るように気絶した。
「…またやってるよ。どこでも引っかけるよね、バンドラ。」
ウタが眠たそうに目を細めてバンドラを見ていた。ヤマトはそれに少し不機嫌そうにバンドラたちを見て、ハンコックは胸の下で手を組み、無表情で見ていた。
「…まぁ、良いじゃろう。彼女も救われたのじゃ。あの無鉄砲な馬鹿によって。」
「…ちょっとひっついてる時間長くない?」
「妾もそれは思う。」
抱き合い、笑い合う二人にハンコックとヤマトはジトーとした目でそれを見ていた。安心したのか、ヤマトの背に背負われながら、目を閉じた。
「はぁ…クソが…あの野郎…!!」
アラバスタ地下遺跡。
クロコダイルは汗を垂らし、息をゼーハーと漏らしていた。冷静沈着でまさに 狡猾、カリスマという言葉のふさわしい彼だったが、今は彼の艶やかなオールバックは乱れ、額から血を流し、その顔に怒りをむき出しにしていた。
「ぐっ…!!」
ルフィも限界だった。
何度も何度も毒針による応酬を食らい、毒が回り、身体は言うことを聞かない。クロコダイルが嘲笑する。
「何度やっても同じだッ!!お前じゃ俺には勝てないッ!!俺とお前じゃ海賊としての格が違うんだよッ!!」
…その言葉は当時、白ひげという大化け物に挑んでいた自分にも突き刺さった。ルーキーだった頃、クロコダイルと海賊王ロジャーと覇権を争っていた白ひげ。無謀にも果敢に挑んだクロコダイルはのちに語る。…あれは化け物だったと。
吐き捨てたその言葉にルフィはゆっくりと立ち上がった。
「…お前なんかじゃ…俺には勝てねえ…!!俺は“海賊王になる男”だッ!!」
…すでに体は限界。常人なら倒れていてもおかしくないが…ルフィは精神で立っていた。ビビの国を取り返したい、この男を打ち負かしたい…その心でただ立っていたのだ。
そのルフィの放った言葉にクロコダイルが青筋を立てる。…海賊王。それはかつて自分が抱いた夢だった。荒波に揉まれ、それを達成するためには仲間は要らないと。クロコダイルの怒りの頂点へとルフィのその言葉が持って行った。
「…この海のレベルを知れば知るほどそんな夢は見れなくなるのさッ!!」
吐き捨てるようにそう言うクロコダイル。
ルフィはその言葉に…きっと強い睨みで返す。ルフィは折れなかった。例え、相手が自分より格上の海賊であろうが、自分の夢を諦めるようなことは考えない。
「俺はお前を…超える男だッ!!お前がどこの誰であろうと…俺はお前を超えていくッ!!」
そのままルフィはクロコダイルを蹴り上げる。
クロコダイルはそのまま上へと飛ばされるも、砂嵐をその手に圧縮し、それを投げ飛ばすことで応戦した。
「『
砂嵐を圧縮した衝撃波がルフィを地下遺跡ごと押し潰した。
しかし、ルフィは止まらない。体内いっぱいに空気を吸い込み、風船のように身体を膨らますとその空気を下へと一気に吐き出し、クロコダイルへと一直線に飛んでいく。
「チィィッ!!『
クロコダイルは砂漠の斧のようなものを四つ生み出し、前へと飛ばす。
しかし、ルフィはそんなもので止まらなかった。
「ゴムゴムのォォ…『
ルフィの拳が砂漠の金剛宝刀を破壊し、クロコダイルを激しく殴りまくる。
血まみれな拳。それがクロコダイルを執念で殴りまくった。
「ウォォォォォッ!!」
そのままクロコダイルは地下遺跡の天井…そして、そこの上にある厚い厚い岩盤を突き抜けて、空へと吹き飛ばした。
…ルフィ決着。数分前。
笑顔のビビを片手に抱き、バンドラは笑った。
「…わぁぁぁ…。」
ビビは狂骨の背中からその様子を見る。コーザ、ペル、チャカがそれぞれの軍を止めていた。もう戦う意味はないのだと。
「『
…バンドラが雨を呼んだのだ。
まるで母親のハグのように優しく、温かな雨が二人へと当たる。光が差し込み、虹がかかる。…そのまま、地下遺跡からクロコダイルが飛び出す。
…アラバスタの民はこの雨を『奇跡』と呼んだ。
「バンドラさん。ありがとう。」
…ビビは心からの笑みを浮かべ、そのバンドラの頬に口づけをした。バンドラもふっと微笑み、そんなビビの頭を優しく撫でた。
ビビちゃんが男の子にキスできるかどうかは置いておいて…。
アラバスタ編、完ッ!!
…長かった。ホールケーキとどっちが長いかな。エレジアは入れないでね。全部それになるから。
ようやくイチャイチャかけるよ。(アラバスタ編終始、何コックさんといちゃついてたような気がするけど…)
これからちょっと多くなるけどお許しを。
ハンコックとビビは書きます。
後は…ウタちゃんか、ナミさんか…。書いたことないからね。ナミさんとイチャイチャ。
要らねえよッ!!って言われても書きます。ちょっとずつ飛び出してきた欲が爆発しそうです。バンドラくんのガチ戦闘も何処かで。
それでは。