燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第133話

「遅い。妾を待たせるとは極刑に値するぞ。」

 

「悪かった。ちょっとぐる眉に追われてたんでな。」

 

待ち合わせ場所の時計台の下でハンコックが胸の下で腕を組みながら、仏頂面でバンドラを見ていた。ハンコックを見れば、少しオシャレをしたのだろうか、前の踊り子のような衣装に加え、履き慣れていないパンプスも彼女にしては珍しかった。

 

「それに…なんじゃ。その格好は。」

 

「いつもの格好ですけど。」

 

バンドラの言うように、バンドラはいつもの草鞋にいつもの着物という格好。通気性云々はバンドラの能力で如何様にも出来るため、どうでもいい。

 

「こういうのはもっと特別な格好で来るもんじゃろう?」

 

「“こういうの”?ただ同盟相手に…あー、そういうことか。」

 

髪を掻き上げ、横を見るハンコック。

そのほのかに赤らめた顔にバンドラはため息を吐く。

 

「悪いな。格好は諦めてくれ。…ほら。」

 

バンドラの差し出した手にハンコックは息を飲む。ゆっくりとハンコックが手を伸ばすも、その少し怯えた様子にバンドラは手を引っ込めた。流石にまだ自分からは難しいか…と。

 

「…あっ。」

 

「ほら、行くぞ。」

 

すぐに後ろを向くバンドラの手をハンコックがギュッと掴む。バンドラは驚いたように口を開ける。

 

「か、勘違いするな。妾が歩く労力を少しでも下げる為じゃ。断じて、妾が…繋ぎたいとか…そう言うんじゃ…ない。」

 

「…聞いてねえけど。まぁ、いいか。」

 

髪を耳にかけ、少し下に向けて赤面するハンコックにバンドラはため息をついて、微笑んだ。

 

 

砂漠の地面はあいも変わらず歩きづらい。

昼過ぎの砂漠は少し暑い為、ハンコックにも能力を使っているが、ギラギラと照りつく陽光は見ているだけで暑苦しい。

 

「…見渡す限りの砂だらけじゃあ。もっとビーチとかないのかえ?」

 

「やめときな。ナノハナまでは距離もあるし…俺たち二人とも能力者じゃねえか。」

 

「…そうか。」

 

少し残念そうに顔を下げるハンコック。

何の入れ知恵かはわからないが、ビーチとやらに行きたいご様子のハンコックを見て、バンドラは頭の後ろを掻いて、息を漏らす。

 

「わかったよ。探しとく。」

 

「本当かっ!?」

 

ハンコックが満面の笑みでバンドラの手を両手で握り、叫ぶ。その様子はいつもの高飛車な彼女ではなく、歳の若い少女のような…そういう笑みだった。…しかし、すぐにハンコックの顔が真っ赤になり、手をバッと離す。

 

「…べ、別に行きたいわけじゃない。だ、だが…すぉ…そにゃたが…ど、どうしてもと言うなら…わ、妾もついて行ってやっても良いぞッ!?」

 

…取り繕うように大きな声でそう言うハンコック。だが、茹蛸のように真っ赤になった顔と目に少し浮かべた涙が彼女の羞恥心を物語っていた。

 

バンドラはふっと優しげな笑みを浮かべると彼女の手を無理やり握る。

 

「ッ!?」

 

「ほーら。いくぞ。…あぁ、それとそうだな。()()()()()行きたいから、案内してやる。ビーチってやつ。」

 

「…ヤマトらも連れてか…?」

 

「当たり前だ。二人っきりなんて付き合う前の男女がすることだ。」

 

そっけなくそう言うと、ハンコックはそうか…と少し残念そうな少し安心したような笑みを浮かべる。バンドラはふっと笑うと首に手を当てた。

 

「少し疲れたなぁ。何処かで休憩にするか。」

 

「ふんっ。軟弱者め。男というものは妾よりもやはり脆いのお。じゃが、特別に許可してやろう。」

 

…バンドラは見過ごさなかった。

いや、疲れているのも本当である。足が絡め取られる砂上を何も見ずに小一時間歩くなど疲れる筈である。だが、バンドラが疲れたと言ったのは…ハンコックの足が傷ついているのを見たからだ。

 

彼女の性格上、痩せ我慢はするわ、心配はかけたくないわ…大事に至るまで言わないのがボア・ハンコックなのだ。

 

砂漠なので少ないものの、用意されているベンチに座る。

 

「…慣れない靴で来るからだぞ。全く。」

 

「…なんのことじゃ?」

 

「足。傷だらけじゃねえか。」

 

バンドラはハンコックの靴を外すと、懐から出した消毒液とガーゼのような布でゆっくりポンポンと当てていく。男に触られるのが初めてなので、どうかともバンドラは思い、チラリと上を見ると…ただ顔を赤らめて、手で口元を隠しているだけだった。

 

「…に、臭わない…かの?ほ、ほら、最近、湯浴みも出来ておらぬし…。」

 

「ところがどっこい。別に変わりゃしねえよ。」

 

「…そ、そうか。」

 

鑑定をするようにじっくりと治療をしていくバンドラ。雪のように白く柔らかな肌に指先や踵のところに少し皮が捲れ、血が滲んでいる。

 

「なんで無理したんだよ。いつもの…ヒールできたら良かったじゃねえか。」

 

「阿呆が。あれじゃ、妾は動けぬ。其方にまた背負われて歩けぬ仕舞い。」

 

「俺が案内するだけで良いんだったらそれでも…。」

 

「妾は其方と歩きたかったのじゃ。足で歩いて、隣で色々と見たかった。それだけじゃ。」

 

しんみりとした声でそう言うハンコック。バンドラはそうか…と笑うとハンコックの足にガーゼを貼り付け、パンプスを履かせる。

 

…できたと言ってバンドラがベンチに座るとハンコックがズズズ…と身体を寄せてくる。

 

「暑いぞ?」

 

「…男に慣れるためじゃ。妾の要求に答えよ。…さもなければ、貴様のような男とこんなように引っ付くことなどせぬわ。」

 

「そうですか。」

 

つんっとそっけなくそう言うハンコック。

流石にビビやヤマトのようにバンドラの肩へ頭を預けるような仕草はしない。

 

「其方は妾をバカにする。…しかし、人として見ておるよな。」

 

「あ?いきなりなんだよ。…まぁ、そうだな。嫌いなんだよ。奴隷とか…そういうの。」

 

バンドラは息を吐きながら、少しバツの悪い顔をする。ハンコックはその様子を横目で見ていた。

 

「そりゃさ、生きてる以上誰かが損をして誰かが得をするだろうよ。だがな、俺はそれは人として生きられてるから成立するもんだと思ってる。男をただの手足、女を…言っちゃ悪いが、孕み袋だのなんだの思っているような…そんな人間には成り下がりたくはない。…アマいかな。」

 

「…バカだな。お前は。馬鹿すぎる。」

 

…そう言うものの、ハンコックは優しげな笑みを浮かべていた。ギュッとバンドラの手を握るハンコックに、バンドラも握り返す。ハンコックは初めてビビリもせずに、バンドラの手を掴んでいた。

 

「…天帝よ。其方のその服、妾が見繕ってやろうか。」

 

「ウタにもそんなこと言われたなぁ。この服、変?」

 

バンドラは化粧は軽くはするものの、服の良し悪しはよくわからず、そのまま買ってしまう。その為、毎回、同じような服装になってしまうのだ。ハンコックはむむむ…と顔を顰め、バンドラの格好を見る。

 

「…少なくとも、ここでは浮いておる。後、妾の隣に立つのじゃ。もっと甘美で相応しいものを着るが良い。妾は世界一美しいのじゃぞ?」

 

不敵に笑うハンコックにバンドラもニヤリと笑う。

 

「そうかい。」

 

ため息混じりにそう言うバンドラ。ハンコックはその顔に手を触れる。

 

「ん?」

 

「…男慣れ…じゃろ?漫画じゃこういう時…く、口付けをしておった…。」

 

まだ早いだろと思いながらもバンドラはハンコックの髪を掻き上げる。触れられた掌越しにハンコックの熱さがバンドラへと伝わる。ドッ…ドッ…ドッ…とハンコックの心臓が高鳴っている。

 

バンドラはふっと笑うと目を閉じる。

 

「…い、行くぞ…。」

 

まるで戦地にでも赴くのだろうか、ごくりと生唾を飲むハンコック。ゆっくりと顔を近づける。…もう数センチ…。

 

少し震える口元をゆっくりと重ねようとするが…。

いつまで経っても唇の感触はない。バンドラが目を開けると…ハンコックが顔を手で隠していた。

 

「…やっぱ…無理ぃ…。」

 

「はいはい。よく頑張りました。」

 

バンドラがそんなハンコックの頭を撫でる。

ハンコックがバンドラの胸にぼすっと顔を埋め、声にならない悲鳴をあげていた。

 

「…すぐ、そう生き急ぐからそうなるんだよ。」

 

落ち着いたハンコックにバンドラが水を飲みながらそう言った。ハンコックも両手で水の入ったコップを持ちながら、バンドラを睨んでいた。

 

「…こういうのは…男からするものじゃろう…。其れでなくとも妾にやらせるとはどういう了見じゃ?」

 

「だって、俺からしたら泣き出すだろ。怖がって。男嫌いなお前に配慮してるつもりなの、俺は。」

 

ため息を吐き、水を一口飲むバンドラ。

 

「…あー、あと、似合ってるぞ?その服。」

 

「はぁ!?…い、いきなり何を…。」

 

落ち着いていたハンコックの顔色がボッと真っ赤に染まる。バンドラはいつもの仕草でタバコを口に咥えた。

 

「いや、この前はさ、ビビに付きっきりでなんの反応もしてやらなかったでしょ?だからさ。…あー、タバコ、ダメだったか。」

 

そう言ってバンドラは付け掛けてたマッチをしまおうとする。それをハンコックの手が掴んで阻止した。

 

「…いいぞ。今回だけ…許す。」

 

「…そうか。ありがとう。」

 

そう言って隣で赤い顔をするハンコックにふっと笑いかけるバンドラ。そのままマッチに火をつけて、煙草の先に火をつけた。タバコを蒸しながら、ハンコックにかからないようにふぅっ…と煙を吐き出すバンドラ。

 

「…。」

 

「ん?どうした?」

 

「…なんでもないわ。馬鹿者。」

 

胸が痛くなったのをバンドラのせいにしながら、プイッと横を見るハンコック。バンドラは首を傾げながら、遠くを見る。…ゆっくりとタバコを蒸しながら。




あんまり甘くならなかったかも。
次はもうちょっと頑張ってみようと思いつつ、次回はウタかなぁ。ナミかなぁ。ビビかなぁ。まぁ、後半は進めます。で、そのあと放ったらかしのヤマトをなんとかしたい。今まで一の甘々を書きたい。(求めてない人はすまない)

ビビはどうしようか。おでんみたいに筆記係でも良いし、ジャンゴみたいに催眠もできるし(黒歴史)

後、モネ、シュガー、レイジュなんだけど。
モネは航海士
レイジュはお父さんの技術を学んで船大工とかでも良いかも。(海に入れるのがレイジュしかいない)

ロビンはまぁまぁ。回収するかなぁ。そのうち。では。

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