燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第15話

「…すまない。小さな船だが。」

 

その船はカイドウから貰った船より、確かにこじんまりとした船だったが、それでも文句を言うものは誰も居なかった。

 

「いや、ありがとう。…これでまた、海に出れる。」

 

バンドラは波に浮かぶその船を見て、ニヤリと笑った。港にいたゲンゾウはそうかと静かな笑みを浮かべる。

 

「…ふぅ。…私はもう行くよ。君たちには返しきれない恩がある。ありがとう。」

 

そう言って、ゲンゾウは帽子を脱いで、頭を下げた。バンドラはふっと笑い、タバコに火をつけ咥える。

 

「…前も言ったが、俺は助けるつもりで戦ったんじゃない。ただ、女を泣かす魚人どもに腹が立っただけさ。…それに…。」

 

「…それに?」

 

「これでもウタの親代わりだからなっ。アイツらの気持ちは少しわかる気がするよっ。」

 

ぱっと明るい笑みを浮かべるバンドラにゲンゾウはそうかとまた笑った。

 

「バンドラ。」

 

遠くから走ってくる。

バンドラはその人物に手を振った。それはヤマトであった。ヤマトは金棒と食料を詰めたリュックを持って走ってきたのだった。

 

「ごめん。遅れた。ウタちゃんはまだ荷物積めてる。」

 

「そんな要らないんじゃないか?荷物も積めるほど無いだろう。」

 

冷や汗をかき、そう言うバンドラにヤマトが確かにと言った風に笑う。

 

「バンドラ。ナミちゃん達には話さなくて大丈夫?」

 

「…あぁ。アイツらにはアイツらの時間がある。」

 

髪を掻き上げ、そう言うバンドラ。彼のトレードマークと化している稲妻模様の傷がしっかり見える。ヤマトはその様子をじっと見ていた。

 

「うーん。バンドラ、褒めてあげよっか?」

 

「んぁ?んだよ、急に。」

 

「いや、だって。頑張ったじゃん。おでんだったら、頑張った侍を褒めるよ。」

 

俺は侍かよとヤマトをジト目で見るバンドラ。ヤマトは豊かに実った胸を張り、ふふんと鼻を鳴らしていた。

 

「お前な。もっと女って自覚持ちなさい。」

 

「ボクはヤマトであり、光月おでんだっ!!」

 

「聞いてねえよッ!!」

 

胸を張ってそう言うヤマトに、大口を開けてそう言うバンドラ。ヤマトはふっと笑うとバンドラの頭をガシガシと撫でた。

 

「うっ。なんだよ。」

 

少し照れながら、そう言うバンドラ。

ヤマトはにししと歯を見せ笑いながら、バンドラの頭を少し強めに撫でていた。

 

「良いでしょ?ご褒美、ご褒美。」

 

「テメェ…18だろうが。オッサンの頭撫でてんじゃねえよ。」

 

「あははっ。ボクから見たらお兄ちゃんだよ〜。」

 

ヤマトの手から自分の頭を外し、照れ隠しのようにタバコを蒸した。バンドラは港に座り、一息つく。その隣にヤマトは座った。

 

「ヤマト〜ッ!!バンドラ〜ッ!!」

 

「…お前…また…。」

 

「女の子だもんね。」

 

港までやってきたウタは大きなリュックを持ってやってきた。バンドラはそれにため息を吐きながら、ウタを見る。

 

「こんなに貰ったよ?ご飯とか…服とか。」

 

「…まぁ、いいか。ふぅ…。そろそろ行くか。」

 

バンドラはゆっくり立ち上がると船に乗り込んだ。ウタとヤマトは後ろにある室内に荷物を全て積み込んだ。

 

「…うん。広さも申し分ないな。ありがとう。ゲンゾウさんっ!!」

 

刀を上げて、ふっと笑うバンドラ。

村の人たちはまた来いよだとか、達者でなとか。ウタのファンになった子達はウタの名前を呼んでいた。

 

「うんっ!!みんな、ありがとうっ!!また、歌いにくるねぇ!!」

 

ウタも満面の笑みで右手を振っていた。バンドラは弱めの風を起こして、船を海へ動かした。

 

「あっ。バンドラ、見てっ!!」

 

ウタが大きな声で言う。バンドラはそっちの方を見て、口を軽く開けるもすぐさまふっと笑った。

 

そこにはナミとノジコ、そして、片腕のベルメールが港近くの場所で此方を見ていた。ベルメールが口元に右手をやり、思いっきり叫ぶ。

 

「ありがとうッ!!貴方達のお陰で私は生きてるッ!!ありがとうッ!!次来た時は美味しいみかん、用意してるからねッ!!また絶対来てねッ!!」

 

「「おじちゃんッ!!ヤマトお姉ちゃんッ!!ウタッ!!ありがとうッ!!」」

 

…バンドラはニヤリと笑って、応える。

 

「おうッ!!母ちゃんのこと、大事になッ!!」

 

その声にノジコとナミは元気に頷いて答えた。ウタとヤマトは腕をいっぱいに振り、3人にさよならと言った。ベルメール達は、船が小さくなるまで…見えなくなるまでその場所に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さてと、次はどこに行くかね。」

 

「私、お買い物したいっ!!」

 

「ウチにそんなにお金はありません。」

 

ココヤシ村が見えなくなった頃。そう言うウタへ、バンドラはそう言って返す。ぷくーっと頬を膨らませて、バンドラを睨むウタ。仕方ないことなのだ。お金はほぼ全て、カイドウからもらった船に入っていたから。

 

「…まぁ、取り敢えず、ブラブラと行くかね。どこ…ちょっと待て。」

 

バンドラの持っていた電伝虫が鳴っているのに気づいた。嫌な予感がして、それを取ると嫌な予感は的中した。

 

「…もしもし。」

 

『マンママンマッ!!調子はどうだいっ。バンドラ。』

 

「アンタのせいで絶不調だ。リンリン。」

 

噂をすればなんとやら。お菓子の国『万国(トットランド)』の女王『ビッグマム』シャーロット・リンリンからの電話であった。バンドラは嫌な顔をしながらも、その電話に答えた。

 

『マンママンマッ。そりゃ良かったよ。で、考えてくれたかい?ウチの子との縁談。お前なら誰でもやれるよ?』

 

「お断りする。」

 

『スムージーでも良いんだぜ?俺が聞いといてやろうか。』

 

「断るっつってんだろ。お前の家族になったら、俺は自由に動けねえだろうが。」

 

電伝虫に向かって半ギレしながら言うバンドラ。しかし、リンリンは動じていない。向こうからすれば子どもが粋がっている程度なのだろう。

 

「アンタには大恩はある。だが、俺はもっと色んな世界を見て回りてえ。それに…約束があるんだよ。」

 

『約束?結婚のかい?』

 

「良いや。冒険のさ。」

 

『じゃあ、良いじゃねえか。ウチの娘と結婚してから、行っても。あー、そういやぁ、カイドウの娘と一緒にいるんだったな。なんだ、その娘と駆け落ちでもしたか?』

 

その単語が聴こえて、肩をぶるっと振るわすヤマト。そう言うことを言われることに免疫がないのか、少し顔を赤らめていた。

 

「カイドウから預かってんだよ。半ば強引にな。この子らの夢を叶えるまで俺は結婚云々は考えてねえよ。」

 

『ふん。女好きが笑わせるね。…まぁいい。次のお茶会にでも来な、招待はしておくからよ。』

 

「…ふん。考えといてやる。お茶会に行くだけならな。」

 

そう言ってバンドラは電伝虫を切った。

バンドラはタバコを咥えて、火をつける。

 

「今のは?」

 

ウタが聞く。

 

「お菓子の国の女王様。ヤマトの父親と同じ船に乗ってたらしい。アイツ、俺の能力が欲しいんだと。」

 

そう言って嫌そうにタバコを蒸すバンドラ。

 

「良いじゃん。お菓子の国、行こうよ。」

 

「んー。ああ言った手前、もう少し後でな。偉大なる航路に行くか、このまま東の海を進んで行くか。」

 

ウタはそれを聞いた途端、ぴょんっと後ろのリボンのような髪が上がった。フーシャ村とは言ってないがあそこには…彼がいるからである。バンドラはそれを察してか、どうするとウタに聞いてくる。

 

「ボクはどっちでも良いよ?」

 

「んー。マキノさんぐらいには挨拶しておきたいけどなぁ…。」

 

「…ルフィが大きくなってから…で良いんじゃない?」

 

バンドラは微笑み、そうかと答えた。

 

「…一旦、偉大なる航路には出とくか。」

 

シャンクスもそっちの方に行っただろうしとバンドラは船を走らせた。




暫くは船内話とかになるかな。
万国編はもう少し後。と言ってももう後少し進んだらになると思います。意外と早め。次は…アラバスタか、ウォーターセブンか。

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