燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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ハーレム要素とかそういう系の要素がないから無理やりしたらこうなります。読める方はどうぞ。ただ、薄めにはしてあります。はい。


第16話

偉大なる航路に入る直前は安らかだった。風はゆっくりとふき、落ちる夕日は澄んでいる。海に飲まれる太陽を見ながら、タバコを蒸すバンドラ。

 

その後ろから歌声が聞こえる。バンドラは風に吹かれながら、天使の歌声を耳に入れていた。

 

「…素直に聞かないと、ウタちゃん、拗ねるよ?」

 

横からヤマトがやってきた。白い着物の袖が風に吹かれる。ヤマトはふっと笑うとバンドラの方を向いた。

 

「大丈夫だ。アイツはこれでも聞いていると自覚している。」

 

「すごい信頼感。」

 

驚きながらそう言うヤマト。

バンドラは微笑み、また前を見た。太陽の三分のニが生命の母たる大海に沈む。

 

「…いいのか。暗闇はお前にとってのトラウマだろう。」

 

バンドラがそう言うとヤマトは少し暗い顔になる。

 

…10年前。ヤマトが8歳の頃。ヤマトの父親、カイドウはワノ国の勇猛果敢たる豪傑『光月おでん』を射殺した。その死に様たるや、見るもの全てを魅了した。8歳の子どもがなりたいと思うほどに。

 

宿敵を名乗り続けた娘をカイドウが許し続けるわけがない。カイドウはヤマトに「おでんを名乗るなら死ね」と言い放ち、ヤマトを岩屋に閉じ込めた。その時、そこに居たのは…ワノ国の大剣豪達と…当時、15歳のバンドラであった。

 

「…いいさ。ボクの隣に君がいる。それだけで、気が楽だよ。」

 

ニコッと笑うヤマト。

その真っ白な髪は毛先までにグラデーションがかかり、夕日がキラキラと光らせる。

 

「…そうか。」

 

ヤマトがバンドラを信頼する理由。カイドウがバンドラを気に入る理由。それも10年前にある。当時、すでにワザワザの実を食していたバンドラ。侍達と共にヤマトを救う為、戦った。

 

侍達は20年後の戦いにヤマトを参加させるためという口実であったが、バンドラは違った。戦いは三日三晩続き、史上最強生物であるカイドウにバンドラは命からがら勝利した。侍達はこの事実を知らない。それは負けたからだ。

 

その日からカイドウはバンドラという喧嘩仲間を気に入り、兄弟のような関係へと発展する。バンドラはその条件としてヤマトを外に出すこと。そして、ヤマトが『光月おでん』を名乗ることを許すことを提示した。

 

カイドウとまともに戦える人間はこの世で一握り。しかも、死人もいた為、カイドウはそれを了承。15歳の少年がこれから強くなるということを踏んで了承したのだった。

 

「もう、あれから10年か。時は早いね。」

 

ヤマトは思い出したかのような笑顔でそう言った。バンドラはそんなヤマトを見て、ニヤリと笑った。

 

「アレからのカイドウの変わりっぷりったらないよなぁ?」

 

「むっ。アレは君のせいだろ?お父さん大好き〜なんて言わせたっ!?」

 

むすっと睨むヤマトににししと歯を見せて笑うバンドラ。

 

そこから数年、ワノ国で過ごしていたバンドラだったが、カイドウが全くヤマトに興味を示さない為、考えたのが『ファザコン』作戦だった。ヤマトがカイドウにラブコールすることによって、カイドウは3年ほどで酔えば溺愛するバカ親になってしまったのだ。

 

「あれっきり暑苦しいんだからねッ!?」

 

「ヒヤハハハッ!!良いじゃねえか。親子水入らず。」

 

ヤマトは青ざめたような顔でバンドラを見る。

 

…そういえばとバンドラは思い出す。あの日、カイドウと戦い、血だらけになった自分を助けてくれたのはヤマトだった。思えば、カイドウはこれからの喧嘩相手を育てるために…全力を出さなかったのだろう。その時のヤマトの顔も大粒の涙を流して、「助けて」と誰かに懇願していたのを思い出した。

 

「君がいるから…ボクは頑張れる。カイドウ(父親)とも言い合えるようになった。おでんと君はボクにとっての憧れのヒーローだよ。」

 

眩しい笑顔でそう言うヤマト。

しかし、バンドラは顔をほのかに赤らめて目を逸らした。

 

「…ヤマト…。お前、中々に恥ずかしいこと言ってるの…気づいてる?」

 

「…うん。ちょっと…暑いな…。」

 

ヤマトも照れ笑いを示しながら、顔を赤らめていた。…バンドラはウタの方を向いて、笑う。ウタは清々しいまでに良い顔で歌っていた。

 

「…光月おでんは何を見てたって。」

 

「ロジャーの船に乗って、全部。でも、帰る途中で奥さんと子ども達と降りたんだって。…ボクもそんな生き方がしたい。」

 

「そうか。」

 

バンドラはタバコの火を消して、二曲目に入るウタを見ていた。

 

「取り敢えず、歌姫の歌でも聴いてようや。」

 

「そうだね。」

 

バンドラとヤマトは甲板に腰掛け、座った。かの音楽の国の王、ゴードンが賞賛した天使の歌は、聞くもの全てを魅了した。ウタはまるで自分の…いや、自分だけのステージで歌い踊ってるかのようだった。その姿はまさに天使。

 

「バンドラが居なきゃ、ボクは海にすら出ず父に殺されてた。」

 

「…別に。俺はガキを自分の為に閉じ込める奴がムカつくだけだ。」

 

ヤマトはそっかと笑って、バンドラの肩に頭を乗せた。

 

「そんなの何処で覚えたんだよ…。」

 

「あははっ。ブラックマリアさんが教えてくれた。」

 

「…お前、男じゃなかったか。」

 

ジトーとバンドラがヤマトを睨む。するとヤマトは男でもあり女でもあると笑った。

 

ヤマトとしては、今の父親は確かにヤマトのことはそこそこ好きだが、甘えられる立場ではない。ヤマトにとって歳上の人で甘えられるのはバンドラしかいないのだ。

 

「ねぇ、そこ、ちゃんと聴いてる!?」

 

「「聴いてる、聴いてる。」」

 

二曲目を終えて、少し怒り気味に二人に向かってくるウタ。感情と連動して、リボンのような髪が上にぴょんぴょんと跳ねている。ヤマトとバンドラはほのかに微笑みながら、返事を返した。

 

ウタはなら良いけどと、三曲目を歌い始めた。

 

「なぁ…ヤマト。」

 

「…ん?」

 

バンドラは珍しく険しい顔をしていた。ヤマトはその顔を見上げるように見た。

 

「…俺の能力は暴走するかもしれねえほどの能力だ。お前らにも危険が及ぶかもしれない。そのときは容赦なく…止めてくれ。俺と一緒に行く以上、約束だ。」

 

「…なんで、ボクに?」

 

「ウタは…まだ若いし、優しすぎる。頼めるのは昔から会ってるお前しかいない。」

 

わかった…とバンドラに答えるヤマト。バンドラはそれに微笑みで答えた。その微笑みは心の底から安堵したという風にも取れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁ。」

 

バンドラは、ヤマトとウタが船内のシャワールームに入っているところで何者かに電伝虫をかけていた。

 

『…俺の娘は元気か。バンドラ。』

 

その人物とは赤髪の異名を持ち、バンドラの親友であるシャンクスその人である。

 

「今日も元気に歌っていたよ。あの子も成長しているんだ。」

 

『…そうか。』

 

電伝虫ごしのシャンクスは嬉しそうに答えた。その後ろでガヤガヤと騒がしい声が聞こえる。赤髪海賊団の面々がウタの無事に湧いているのだろう。

 

「お前は何処にいる?…あの子に会っちゃくれねえか。」

 

『…一目会いたいが、そりゃできねえ。』

 

何故だとバンドラは少し切羽詰まったように言う。シャンクスは笑いながら、答えた。

 

『俺は、まだあの子には会えねえ。仕方なかったとはいえ、あの子を捨てた。だから、俺はあの子が世界一の歌姫になるその時まで、俺はあの子に会えねえんだ。約束したからなぁ…。』

 

「…お前の言いたいこともわからんでもないが、会ってやれよ。少しくらい。」

 

『親子の誓いに水を差さないで頂こう。』

 

そう言って通話が切れた。バンドラは頭をかきながら、ため息を吐くのだった。




思ったんだけど、次どうしよう。
原作時空にならないと中々、難しいんだよなぁ。2、30話くらいまではこうして頑張りたい。今考えてるのは、ビッグマムとテゾーロ、ドフラ?ミホークもありだけどいつから七武海があるかわからんっ!!w
では次回。

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