燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第164話

「…言っとくがまともなものじゃないよ。コイツの名はロケットマン。とても客など乗せられねえ。…暴走海列車ら。」

 

廃れた倉庫の奥底。

眠る姿はまさに偉業。走るのを待ち侘びたかのようにとんがる鮫のヘッドには凶々しさすら感じる。

 

「…暴走…ね。」

 

「すんげぇっ!!速そ〜ッ!!」

 

目をキラキラと輝かせ、それを見るルフィ。

バンドラは少し歯を見せて笑いながら、後ろを向いた。

 

「…モネ、大丈夫か。」

 

モネの傷はまだ生々しく残っている。右腕の骨にヒビが入り、頬は一閃の傷があり、身体中に痣があった。自然系の能力者であるにも関わらず、ダメージを受けたところを見るにこんなところに覇気使いが居るのかと少し不安になる。

 

「…大丈夫よ。ありがとう。」

 

ゆっくりと歩いてくるが辿々しい。

足がもつれ、バンドラの胸へ飛び込んでくる。バンドラは優しく胸でキャッチする。…モネの頬はほのかに赤く染まるものの、肩は少し震えていた。

 

「…ごめんなさい。ウタちゃんと一緒に街を回ってたら…仮面の男達に囲まれて、善戦したのだけど…。」

 

「わかってる。お前は悪くない。」

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…。お願い…捨てないで…お願い…。」

 

啜り泣き、そう言うモネ。肩が震えて、声が掠れる。ポタポタとモネの頬を涙が伝い、地面に落ちる。雪のように冷たい彼女の肌に温かな雫が伝い、バンドラの手にも少し水の道を作る。

 

「…私のせいで…ウタちゃんは…。」

 

「…バーカ。お前を船に誘ったのは俺だ。…捨てるわけがない。お前は怪我してでもウタを守ろうとしていた。それだけで頑張ったってわかるから良いじゃないか。…俺はお前を責めない。」

 

優しくそう言う声にモネは震える声でうんと頷く。バンドラは泣き止むまで彼女の頭を撫でていた。

 

「んががが。若いって良いねえ。…で?だれが乗るらい?」

 

「うわっ!?」「きゃっ!?」

 

二人の間から出てきたココロにバンドラとモネは驚く。モネに関しては顔は真っ赤に染まっていた。ほのかに熱を帯びるバンドラはこほんと咳払いをして、ヤマト達を見た。

 

「…この先は決して安全とは言えねえ。誰がくる。」

 

その言葉にビビを含めた全員が手を上げた。バンドラはだよなぁ…とため息をつき、頭の後ろをかく。アインがその様子を鋭い目で見ていた。バンドラはビビにわざと冷たい視線を向ける。

 

「…世界政府に楯突く覚悟があるのかい?」

 

「…ミス・オールサンデーは私の敵です。でも、ルフィさん達のことは信じられる。彼らの役にも立ちたいし、貴方の役にも立ちたい。…ダメですか。」

 

その決意は揺らがない。

…もし、ビビが世界政府に楯突くのであれば、アラバスタは危機的状況どころの騒ぎじゃない。加えてエレジアも…。

 

「…まぁ、じゃあ、これ付けてな。割となんとかなる。」

 

そう言ってバンドラはハンコックに渡していた狐の面をビビに渡す。ビビはそれをつけると一向はそのままロケットマンに乗り込んだ。…すぐに出向すると思った。しかし。

 

「麦わらァァ〜ッ!!」

 

…倉庫内に響く男の声に麦わらの一味は顔を顰める。それは解体屋フランキーを親分として持つ街の荒くれ…フランキー一家だった。

 

「頼む、俺たちも連れてってくれッ!!エニエスロビーに行くってガレーラの奴らに聞いた。兄貴が政府に連行されちまったんだッ!!救いに行きてえがアクア・ラグナを超えられねえッ!!」

 

…相手は政府。そう聞き、一家は恐れ慄くどころか、勢いついた。

 

「冗談じゃないわッ!!アンタ達がいままで何したかわかってるのッ!?」

 

ナミはフランキー一家に怒り心頭といった様子だった。当たり前だ。彼らのせいでウソップとは別れることになり、彼らにお金は取られたのだから。

 

「…いいぞ。乗れッ!!」

 

しかし、ルフィはそれを了承した。

船長命令を出されてはナミもなんとも出来ない。フランキー一家は礼を言うとなぜか外へと飛び出していった。

 

「んががが…それじゃあ、行こうか。サァッ!!海賊ども、振り落とされんじゃないよっ!!ウォーターセブン発エニエスロビー行き…暴走海列車『ロケットマン』出向ッ!!」

 

「行くぞッ!!全部奪い返しにッ!!」

 

ルフィのその言葉に全員がニヤリと笑った。

ロケットマンは軌道に乗り、そのまま進む。先ずは線路を見つけねばならない。

 

「水路を出るよッ!!全員覚悟決めなァッ!!」

 

バンドラはその言葉に仮面をつけたビビと怪我人のモネの肩を掴んだ。

 

「ハンコックッ!!ヤマトッ!!レイジュッ!!アインッ!!…吹っ飛ぶなよッ!!」

 

バシャンと海に出るロケットマン。

同じく水路から出てきたキングブルとフランキー一家により、車体は少し揺らぐ。

 

…そうして、ロケットマンが線路に車輪をつける。道を得た暴走海列車は急激に加速。バンドラへ守っているビビとモネ以外、ナミやアインを含めた女全員とチョッパーがしがみついた。バンドラの身体中に柔らく温かな感覚が感じる。サンジが見れば確実な死を迎える光景だった。

 

「…お前らな…。」

 

穏やかになったロケットマン。

バンドラに抱きついていた全員が腕を離した。バンドラはため息を吐き、ジトーとした目で見る。バンドラの冷ややかな目にヤマトとレイジュ以外は目を逸らした。バンドラが車内にどかっと胡座をかいて座る。その横にヤマトが近づく。

 

「…全く。これから世界政府にカチコミに行くのに緊張感が足りねえ奴らだよ。」

 

「あはっ。それはバンドラもだろ?ボクは好きだなぁ。こういう賑やかなの。」

 

にっこりとしてそう言うヤマト。その肩へバンドラは頭を預けた。ガレーラの船大工を加えて、何やら前が騒がしくなっているが、バンドラには届かなかった。

 

「先輩。何してるんですか。」

 

アインが腰に手を当てて、バンドラを睨む。バンドラはふっと微笑み、そんなアインの頭に手をポンっと乗せる。アインは冷ややかな目…ではなく、驚いたように目を閉じ、またいつもの冷静な顔に戻っていった。

 

「何が楽しくてこんな…。」

 

「こういうのは心持ちなんだよ。…まぁ、疲れたしな。」

 

「…Z先生には遠く及びませんね。」

 

そう言ってアインは数分弄られた手を弾き、そのままトコトコと後ろへ歩いて行き、座った。…ロケットマンの前に再びアクア・ラグナが現れる。

 

「せっかく同じ方向向いてる仲間がバラバラに戦っちゃ意味がねえ。」

 

ルフィの言葉にバンドラは立ち上がる。

ルフィ、バンドラ、フランキー一家のザンバイ、ガレーラ職員のパウリーが腕を伸ばして、掴み合う。

 

「良いか、俺たちは同志だッ!!先に出た“海列車”には俺たちの仲間も乗っている。戦力はまだまだ上がるッ!!大波なんかにやられんなッ!!全員目的を果たすんだッ!!行くぞッ!!」

 

「ウォォォッ!!」

 

「んががが、さぁ、オメェら、この大波を越えてみなッ!!」

 

邪魔をする高波(アクアラグナ)

フランキー一家はブルの方の船に戻り、大砲を用意する。船大工達は電車の上に乗り、砲弾を波の壁へと打ち込む。砲弾は波に飲み込まれ、なんのためにもならない。だが、突き抜ける為、打ちまくる。

 

「仕方ねえな。」

 

バンドラはロケットマンの上へと出たゾロとルフィを追い、飛び乗る。

 

「…行けるか?ガキども。」

 

「「当たり前だ。」」

 

ゾロは二刀を抜き、ルフィは拳を構える。

バンドラは狂骨を引き抜き、天へと掲げた。

 

「…陽戒炎。」

 

「ゴムゴムのぉ…!!」

 

「300煩悩…!!」

 

燃える狂骨の刃を盾に握り、ニヤリと笑うバンドラ。ゾロは刀を構え、ルフィは拳を振り回した。もう高波(アクアラグナ)にロケットマンはぶつからんと進む。流石のロケットマンも飲まれればひとたまりもない。

 

「「『攻城砲(キャノン)』ッ!!」

 

「『飛龍(ひりゅう)』ッ!!」

 

飛ぶ斬撃とゾロとルフィの一撃がアクアラグナを破壊する。目の前の高波に穴が開き、間一髪でロケットマンはすり抜けた。




サンジパートは飛ばします。
あと1話2話でエニエスロビー行きたい。
え?バンドラさんがどんな状態だったって?…もふもふとたわわがたわわだったのさ。

ビビが仮面だけでバレないのはまぁ、霧害もあるしね。では。

ウォーターセブン後のイチャイチャ※改訂版の改訂版(ウォーターセブンを超えると極端にイチャイチャが少なくなると思われますので上位3名〜5名くらいを書きたいと思います。よろしくお願いします。)

  • ヤマト
  • ウタ
  • モネ
  • ハンコック
  • ビビ
  • ロビン
  • ナミ
  • カリファ
  • アイン
  • レイジュ

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