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…エニエスロビー、司法の塔内。
『此方正門ッ!!此方正門ッ!!『長官』及び、『本島前門へ』ッ!!』
電伝虫から慌てた声が響き渡る。
椅子に深く腰掛け、足を組み、長官スパンダムは電伝虫を取った。
「どうしたッ!?何が有ったッ!?」
『侵入者が数名ッ!!『正門』を超え、『本島前門』へ疾走中ッ!!』
「なんだ…。侵入者ぐらい落ち着いて始末しろッ!!」
スパンダムのその言葉に電伝虫から聞こえる声の主である海兵は歯切れ悪く「それが…。」と返す。
『今話題の麦わらのルフィに加え、天帝『バンドラ』と海賊女帝『ボア・ハンコック』そして、元CP9のカリファさんまでが其方にッ!!』
「な、何ィィィィッ!?」
スパンダムの驚きの声が響き渡る。
ついに来たという汗と共に『出世』の二文字がチラつく。ゴクリと生唾を飲み、スパンダムは笑っていた。
エニエスロビー、島内正門近く。
「『
バンドラの背後をまるでシリンダーのように回る風球。バンドラがパチンと指を鳴らすと、その風球が順番通りに海兵を襲う。
地面は風球の形に凹み、海兵達は大きく吹き飛ばされていた。
「ぐっ!?なぜ、七武海が…!?」
「『
ハンコックはその細く長い脚を使って、海兵達を次々と蹴り抜いていた。サーベルとヒールが干渉し、火花が散る。しかし、ボロボロと石化し、サーベルは崩れ去っていた。
「くっ…!!ボア・ハンコックッ!!こんなことをして、どうなるかッ!!わかっているのかッ!?」
「黙れ。妾は何をしても許される…何故なら、妾が美しいからじゃッ!!」
海兵の声にハンコックは冷たい眼差しで答える。見下ろしすぎて、逆に見上げていた。海兵はその傍若無人さに言葉も出なかった。
「…ただ、妾にも引けぬ理由があるゆえ。あやつの…いや、妾らの大事なものを奪ったその罪…何万回蹴っても贖いきれんぞッ!!」
「なんのこ…ギャアッ!?」
「誰が喋っていいと言った、この愚男が。」
…いや、逆に拍車がかかったと言っていい。
ハンコックは額に青筋を立てて、蹴りまくっていた。
「くっ…!!俺たちも加勢をッ!!この際、麦わらはいいッ!!そいつらを通すなァッ!!」
「はいッ!!…寒ッ!!」
方や一軍隊。
しんしんと降り積もる雪に海兵達は肩を抱え震える。その海兵達に向かってくるのは刀を持った雪女。血は完全に止まり、怪我は完治とは言えないが、そこそこ治っていた。いつものノースリーブの緑と白のボーダーの服とハーフパンツに身を包み、その銀床を優雅に舞う。
「『たびら雪
モネが木刀を振るう。すると前に急激に吹雪が吹き荒び、海兵達の肌に切り傷を与えていた。
「ぐっ…くそ…!!動けな…。グァァァッ!!」
直後、傷はどんどんと凍り、海兵達の体が氷塊となる。モネは口から吐息を出して、その様子を見ていた。そのままスタスタと一番階級の高そうな男の元へいく。
「…吐きなさい。ウタちゃんはどこ?」
「…ぐっ…。ウタとは…なんだ…!?我々はそんな人物のことは…「あっそ。」グォォォォッ!?」
その回答をモネは求めていない。
即座に男を斬るとそこから急速に凍り始めた。
「…『
モネの肩甲骨当たりに雪が積もる。すると即座にモネの背中に白い羽根を形成した。モネはそのまま上へと飛び上がると、周りを見回した。
「なんだあれはッ!?撃ち落とせッ!!」
『ハッ!!』
そのモネの様子を見るや、海兵達は大砲の用意を進める。火を導火線へと灯し、モネに向かって発射される鉄球。しかし、それはモネに着弾する前に消し飛んだ。
「ぐっ…!!何が有ったッ!!」
「鬼姫ですッ!!鬼姫が…グァァァッ!!」
ヤマトの鳴鏑が砲弾を消し飛ばしたのだ。
その小隊の一番階級の高いであろう男が海兵達を見る。
「…なんだ…これは…!!」
それは見るも無惨。
海兵達の頭はひしゃげ、手足は腫れ、武器…大砲は完全に壊れていた。その中央で立つヤマトの姿は…まさに鬼。
「…君は知っているのか?ウタちゃんの居場所をッ!!」
地面を蹴り壊し、突き進んでくる様はまさに猪突猛進。男は向かってくるヤマトに2本のサーベルを抜き、前へと出る。
「舐めるなよッ!!牛女ッ!!」
「“牛女”ッ!?」
ヤマトはショックを受けたように目を見開くが、男のしたり顔に怒髪天をつく勢いで金棒を振るう。男は即座にサーベルを構えるが、目にも止まらぬその金棒の速度に男は吹き飛ばされた。
「…誰が牛女だッ!!言っていいことと悪いことがあるぞッ!!」
「…ガツタフ准将ッ!?くそ、誰を探しているかわからんが無茶苦茶しやがってッ!!」
ぷんぷんと怒るヤマトに向かってきらりと光る長銃の銃口。海兵達は屋上からヤマトを狙っていた。
「…撃てッ!!例え、あの化け物じみた天帝海賊団でも心臓や頭を撃ち抜けば死ぬッ!!撃てッ!!」
「…あら。誰が化け物かしら。失礼しちゃう。」
…しかし、前方ばかり気にしていた海兵達は悉く毒霧に侵されていく。その様子に前線で指揮していた男が銃口を向ける。そこに立っていたのはレイドスーツに身を包んだレイジュが立っていた。
レイジュはぺろりと舌なめずりをするとまるで消えたかのような速度で男の背後へと立つ。男の頬を手で撫でて、耳元で囁くレイジュ。
「ねぇ?…うちのプリンセス・ウタ。知らなぁい?困ってるの…。お願い。」
「…チッ!!」
その甘えるような声に海兵は即座に後ろを向き、引き金を引いた。バンという音が虚空に響く。鉛玉はレイジュを捕らえることはなかった。
「どこへッ!?」
「…そう。知らないのね?悪い人。『
レイジュが右手を銃のような形にする。そして、そのままばんっと口で言い、指先から濃度の濃い毒の弾丸を放った。それは海兵の胸を貫き、即座にその場に倒れた。ふぅ…と息を吐くレイジュの口元からは毒の霧が立ち上がる。
「まだ死ねるわけないじゃない。彼を骨抜きにしてないもの。」
そう言って不敵に笑うレイジュは何処か…美しさや可愛さよりも恐怖が勝っていた。
「正門前、負傷者多数、死者も出てますッ!!」
「クソォ…。天帝の野郎ッ!!オイモもカーシーはッ!?」
「はいッ!!現在、麦わらの一味と抗争中ですッ!!」
その言葉に一番大柄な男が爪を噛む。
男はその体躯に似合った薙刀を取り出し、小隊を率いて前線へと躍り出た。そこにいたのはアインとカリファ、そして、仮面を被ったビビである。
「…裏切ったら許しませんから。」
「どうかしらね。でも裏切るもクソもないんじゃなくって?だって、私の狙いは天帝の暗殺だもの。」
バシッと鞭を伸ばし、足を広げるその様は優艶と言わずして、なんと呼ぶのか。アインの視線はカリファの胸に一瞬向かい、少し気に食わないような表情を浮かべると二つの銃を構える。ビビは弓を弾き、普通の矢を装填した。
「…び…シエスタ様。弓矢の嗜みは。」
「少しだけ。昔、幼馴染と遊んだ時にやったことはあります。」
「…承知しました。」
向かってくる海兵。
その肩や頬をビビの矢が擦り、傷つく。ウソップやヤソップのようにはいかないにしろ、全く当たっていない訳ではなかった。
「薙ぎ払えッ!!」
「そうはいかない。」
アインは一直線に前へと走る。銃からダガーへと切り替え、シュガーには劣るもののものすごい速度で海兵達の喉元を掻っ切っていく。その身軽さはスレンダーな身体の賜物といっても過言ではない。
巨大な体躯の男はそんなアインに向かって薙刀を振り下ろす。
「ハァッ!!」
「…ふっ。」
アインは大ぶりなその一撃をいとも簡単に避けるとバンドラと同じように苦無を足のホルダーから取り出し、投げる。筋骨隆々な男の腕に突き刺さり、血を出すものの、男の勢いは止まらない。
「ぐっ…!?」
そんな男の腕を棘だらけの鞭が絡めとった。しなやか、柔らかな鉄でできた棘鉄鞭はザクザクと男の腕に囲み、肉を裂いていた。
「ぐぬぅ…!!か、カリファさん…!?」
「…『剃』」
上から振り下ろされる大ぶりな薙刀の一撃をカリファは剃で瞬時に避けた。男は突然のことに周りを見て探すもカリファに容易に背後を取られてしまった。カリファは胸の谷間から普通の鞭を取り出す。
「さっきのは貰い物。だけど、便利だから返してもらうわね?」
カリファが鞭を振るうと変幻自在の鞭は男の身体をズタズタにした。何度も何度も撃たれるそれにミミズ腫れのようになっていく様はとても痛ましい。
「ぐっ…あ…ごふっ…!!」
「…『
カリファは男の胸に指を立てる。
すると男は口から血を吐き、その場にバッと仰向けに倒れた。
「…血を浴びるのは久々ね。」
そう言ってカリファは髪を耳にかける。怪しげに笑うその様をビビの目を隠していたアインはジトーと見ていた。
「進むぞッ!!」
バンドラのその声に彼女らは答える。
目の前を壁のように迫る海兵達をバンドラは刀の一閃で散り散りにした。突き進めば、裁判所のようなところへと着く。そこには巨人族の男達が立ちはだかっていた。何やら、男達は海兵と争っているように見える。
「バンドラさんッ!!」
「モネ、どうした。」
バンドラは空を飛ぶモネの方を向く。
モネは前に指を指して、叫んだ。
「前の塔、麦わらのあの子と誰かが戦ってるわッ!!」
「…了解ッ!!」
塔の上ではブルーノとルフィの戦いが始まっている。バンドラ達はそれを知り、そのままその巨人族達の脇を突き進んでいった。
バトルたのちぃ…。
それぞれ独自の進化を遂げてます。ヤマトはどうしても原作基準になっちまいますが。
では。