燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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過去最長です。


第168話

エニエスロビー『司法の塔』

 

「ふふふっ…ハッハッハッ!!見ろ、ファンクフリード!!」

 

キラキラと輝く結晶、そして、掌の上に光り輝く金の電伝虫が乗っていた。ニヤニヤ顔でその電伝虫をゾウゾウの実を食べた剣『ファンクフリード』に見せびらかしていた。

 

「この“ゴールデン電伝虫”をッ!!」

 

…ゴールデン電伝虫。

海軍の隊長以上の権限の人間のみ、持つことが許されるバスターコールの起動スイッチ。つまり、ニコ・ロビンの手綱と言っていい。しかし、バスターコールが天帝バンドラによって追い返されているはずだ。それを知らないスパンダムではない。

 

「ふっふっふっ…天帝の野郎にも一泡吹かせてやったぜ。エレジアに集中砲火?そんなことするわけねえだろッ!!ニコ・ロビンも大事な男のためとありゃ嘘でも信じるんだなぁッ!!ブヒャヒャヒャッ!!…あー、歌姫の護衛にサメ野郎もついてるし、俺はゆっくりと…。」

 

「おら、歩け。」

 

「つ、連れてきてるゥゥゥゥッ!?」

 

目が飛び出たかのように驚くスパンダム。

その眼差しの先には、ウタの腕に嵌めた海楼石の手枷のチェーンを持ってウタを引き摺ってきたアーロンの姿があった。右胸から斜めがけに切られた傷の跡が生々しく残っていた。

 

「な、何連れてきてるんだッ!!サメッ!!」

 

「あ゛?…下級種族の分際で。俺が手を貸してやっているをわかっているのか?」

 

アーロンはウタを地面に捨てるようにぶん投げると激昂するスパンダムの首根っこを掴んだ。

 

「俺ァ、あのバンドラ(クソ野郎)さえ殺せりゃあお前となんざ手ェ組んでねえんだよ。少しは言葉を慎め、クソ人間。」

 

「ず、ずびばぜん…。」

 

「チッ…人間の分際で。テメェもこの女も俺を煩わせやがって。えぇ?おいッ!!」

 

そう言うとアーロンは床に転がるウタの頭に足を乗せた。ウタは目を閉じてその痛みに耐える。アーロンはニタニタと笑いながら、ウタの頭をぐりぐりと踏み躙っていた。

 

「テメェもバカさ。あの男と俺に出会わなければ、こんな目に遭うことはなかったッ!!弱えからテメェが狙われたんだッ!!シャーハッハッハッ!!」

 

ウタの鎖を掴み、隣の部屋へとアーロンは連れて行く。そこにはロビンとフランキーの姿があった。アーロンの後ろを少し遅れながら、スパンダムが歩いてくる。

 

「ウタッ!?」

 

青ざめたロビン。その慌てたような視線は一変、きっとアーロンとスパンダムを睨みつける。

 

「“麦わらの一味と天帝海賊団には手を出さない”…貴方達との約束のはずよッ!?何故ッ!!」

 

「わはははッ!!こいつだけは例外さ。貰い手はもう付いている。何せ、お前と一緒だ。コイツァ…一つの国を滅ぼした悪魔なんだからよッ!!」

 

何を言うかとスパンダムは笑いながら、ウタの口元の枷を取り外す。ウタの頬は赤く腫れ、その目はスパンダムをギロリと睨みつけていた。…そして、スパンダムの手にウタは勢いよく噛み付いた。

 

「痛えェェェッ!?チッ!!」

 

「…ッ!?」

 

スパンダムはそんなウタの頬に浮かせた結晶片をぶつけ、突き放す。先の尖った結晶片によってウタの頬からたらりと血が流れ出た。スパンダムは歯形のついた右手にふーふーと息を吹きかけていた。

 

「…おい、スパンダ…。テメェ…悪魔の実を…。」

 

「スパンダ“ム”だッ!!わはははッ!!そうさ、俺は『クォツクォツの実 』を食べた『結晶人間』。この鉄よりも硬い結晶でここへお前達を助けにきた天帝を串刺しにしてぶっ殺す戦法よッ!!」

 

「アンタみたいなクズが、バンドラに勝てるわけがないでしょッ!!」

 

地面に転がるウタがスパンダムを睨みつけてそう叫んだ。スパンダムはそんなウタの首元に結晶片を落とす。ウタの首の薄皮が少し切れた。

 

「あぁん?そんな姿でよく言えるぜッ!!テメェもニコ・ロビンも、アイツにとっちゃただの足枷さッ!!ノコノコとやってきたあのクソ野郎にお前たちを人質にしてただ蹂躙する…それが俺のやり方よッ!!」

 

「…クズが。」

 

フランキーがそんなスパンダムを睨みつけてそう言った。スパンダムは下世話な顔で大口開けて笑っていた。そんなスパンダムを疎ましく見ていたアーロンがウタの目の前に腰を下ろし、見下す。

 

「アンタは…!!ナミの村を襲ってた…ッ!?」

 

「俺もアイツにゃ世話になってなぁ。復讐したいのは俺も一緒よ。余裕綽々で来るアイツを前から完膚なきまでに叩き潰すッ!!そうすりゃあ、俺も同胞達も報われるッ!!シャーハッハッハッ!!」

 

「まぁ、お前はそこで見ていれば良いさ。」

 

そう言ってスパンダムとアーロンは隣の部屋へと歩いて戻っていった。

 

「…ごめんなさい。貴女を巻き込んでしまった。」

 

…その様子を見ていたロビンが二人が去った後、小さく声をかけた。ウタはロビンの方へ首だけを向けて、ふっと笑った。

 

「大丈夫だよっ。…あんなクズにルフィもバンドラもその仲間達も負けるわけないんだからっ!!」

 

にっと笑う姿は何処かルフィ(幼馴染)の姿を彷彿とさせた。しかし、今のロビンには逆効果。楽しかったはずの航海が彼女に呪いのように縛り付く。それ故か、彼女の笑みはどこか引き攣っていた。

 

「…私はもう彼の仲間じゃない。」

 

「ふぇ?」

 

「彼にかけてもらう優しさは私には過ぎたものだったの。だから、委ねてしまった。生きてしまった。…私は彼に迷惑をかけ過ぎてしまった。これ以上…彼らに迷惑はかけられないわ。」

 

そう言うロビンにフランキーはため息をついた。

なかなかどうして…頑固なこの女は…と。ウタはそんなロビンにふっと微笑む。

 

「…私もおんなじこと思ってたな、最初。」

 

「え?」

 

ウタはエレジアにいた時のことを思い出す。

…トットムジカで自身は一国を滅ぼした。ウタはその真実に苦しめられ、自身を咎め続けた。

 

果たして自分は生きていて良いのかと。

 

それをバンドラに一度相談したことがあった。悪い夢を見た時だ。燃えるエレジアの中で一人、赤髪海賊団にも責められ、ゴードンを含んだエレジアの国民にも咎められる。お前のせいだ。お前のせいでここは死んだと。壊れたと。

 

気づけば声も出さずに涙だけがポロポロと布団の上に流れ出ていた。月明かりに照らされた雫に自分のひどい顔が浮かび上がる。

 

…それをバンドラは優しく頭を撫でて微笑みながら、目線を合わせて言った。

 

「『例え、世界全員がお前を目の敵にしようと、ウタはウタで、俺は味方だ。ウタの歌がトリガーになったなんて屁理屈構うものか。…お前の歌は世界一優しい。そんな歌を罪という奴は俺がぶった斬ってやる。』ってね。」

 

「…ふふっ。彼らしい、優しい言葉ね。…でも、私は貴女とは違うわ。貴女は貴女の意志と関係なくとんでもないものを呼び寄せた。でも、私は私の意思で歴史を知ろうとしているんだもの。」

 

「だーかーらー、そんな人でも優しくしちゃうのがバンドラなんだから。全く何度言えばわかるかなぁ…。ルフィもバンドラも同じ種類のバカなんだから。…バカで優しいんだから。」

 

その時だった。

遠くで何か言い争っているような声が聞こえる。ロビンとフランキーに慌てたような顔のスパンダムが入ってくる。

 

「嬢ちゃんら、俺に捕まってな。」

 

フランキーがそう言うとウタとロビンを足で掴んだ。徐々に膨らむフランキーの臀部。それに政府の役人達は近づけないでいた。

 

「な、何してやがるッ!?」

 

「おお…スパンダ…。俺は自分の命の淵を悟り、自爆という道を選ぶ…せめて憎いお前達を道連れに…。」

 

その膨らみたるや元のフランキーの臀部の2倍上にも満たしていた。能力者になったスパンダムでも自爆は堪える。せめて別部屋に待機させておいたアーロンを連れてくればよかったと後悔するスパンダムをよそにフランキーの臀部は膨らみ続ける。

 

「行くぞッ!!『風来噴射(クー・ド・ブー)』ッ!!」

 

フランキーはそのまま室内を飛び出し、ウタとロビンを連れて、外へと出る。ベランダのような場所で柵にひっかかり、なんとか持ち直した。ロビンがゆっくりと立ち上がるとその目の前の塔には…。

 

「…なんじゃありゃぁ…。龍かッ!?」

 

応龍と化した狂骨を背に、ルフィ、そげキング(ウソップ)、ゾロ、サンジ、チョッパー、ナミの麦わらの一味とバンドラ、ヤマト、ハンコック、レイジュ、ビビ、カリファ、アイン、そして、モネの天帝海賊団が立っていた。

 

「ロビンッ!!」

 

「…ウタ。迎えにきたぞ。」

 

目をキラキラと輝かせるルフィとは対照的に優しくニヤリと静かに笑うバンドラ。喜ぶ面々を前にウタはにっと歯を見せて笑った。その面々に対峙するかのようにCP9のメンバーがその塔に立つ。

 

「…ルフィ…みんな…バンドラ…さん。」

 

「バンドラ、遅いッ!!」

 

小さく言葉を紡ぐロビン。ウタはロビンの横に立つとバンドラに向かって憎まれ口を叩く。しかし、その言葉とは裏腹にウタの顔は晴れやかだった。

 

「待ってろ、今助けに…「なんで…。」…。」

 

「なんで来たの…。何度も言ったわッ!!貴方たちへの下へは戻らないッ!!帰ってッ!!私はもう…貴方たちの顔は見たくないのよッ!!」

 

…悲痛な顔でそう叫ぶロビン。

本当はこんなことは言いたくない。もっと一緒に船でいたかった。もっと一緒に遊びたかったし、笑いたかった。…そして、もっと一緒に時間を過ごしたかった。

 

何か言おうとする麦わらの一味の面々をバンドラが手を横に出して静止する。

 

「…船長の言葉を待て。」

 

そう言うバンドラの顔は険しく固かった。

 

「どうして助けたりするのッ!!私がいつ、そうしてと頼んだのッ!?…私はもう…死にたいのよッ!!」

 

その言葉にルフィは言葉を失う。

…天上からポツポツと雨が降り出した。狂骨はそれを見て目をギッと細める。

 

「死にてえッ!?」

 

「ええ…。」

 

「あのなぁ…。俺たちもうここまで来てんだッ!!バンドラたちも一緒にお前の為にここまで来てんだ。とにかく助けるからよ。それでも死にたかったら、その時死ねッ!!死ぬとかなんとか何言っても…構わねえからよッ!!そう言うことは俺たちのそばで言えッ!!」

 

…その言葉にロビンの目に涙が浮かぶ。その様子を見てバンドラもニヤリと笑い、息を吐いた。

 

「…良い仲間じゃねえか。なぁ?ロビン。俺ァよ。お前を拾ったあの日から、お前の為に命を張ったことなんざ一度もねえ。こいつらの為だってそうさ。俺は俺のやりたいようにやるだけよ。…だから、テメェを助ける。」

 

そう言ってバンドラはにっと笑いながら、ロビンを指差す。ロビンはその様子を見て、言葉を失っていた。

 

「…まだ俺はお前とやりてえこといっぱいあるんだよ。俺を放って死ぬなんて言うな。あの世まで追いかけねえとできねえじゃあねえか。…俺もこいつらもお前が死にてえなんて言って諦める奴らじゃねえぞ?」

 

「…。」

 

「“バスターコール”だろうが、“世界政府”だろうがなぁ…俺たちは止まらねえんだよッ!!」

 

バンドラのその叫びと共に狂骨も大きく咆哮を上げる。空を揺らし、地まで響くその咆哮はバンドラたちに俺もいるぞと伝えるものだった。

 

「はぁ?何言ってやがんだ、テメェはッ!!…あの象徴を見ろッ!!あのマークは四つの海と偉大なる航路にある170以上の加盟国の結束を示す…これが世界だッ!!楯突くにはお前らがどれほどちっぽけか…この女がどれほど巨大な組織に追われてきたか、わかったかッ!!」

 

スパンダムが空中にたなびく旗を指差した。

そこには五つの丸とそれを紡ぐように引かれた線のマークが描かれていた。

 

「…よーくわかった。そげキング。」

 

ルフィは冷静に声を上げる。

そげキングはその言葉をただ待つのみ。

 

「あの旗、撃ち抜け。」

 

「了解。…必殺『火の鳥星(ファイヤーバードスター)』ッ!!」

 

パチンコ『カブト』から打ち出された炎の鳥が宙を舞い、その象徴を…貫いた。その燃える様にバンドラはふっと笑う。スパンダムや周りの役人達が顔を青く染める。

 

「テメェら、あの旗への攻撃の意味がわかっているのかッ!?正気か、貴様らッ!!全世界を敵に回して生きてられるとでも思うなよッ!!」

 

臨むところだッ!!!

 

ルフィが大きく空中へと叫ぶ。

バンドラもふう…と息を吐くとバリバリと周りに雷を走らせた。狂骨がその雷に応え、宙を舞い、火の玉を吐く。旗はさらに燃え広がり、消滅した。

 

「んなっ!?」

 

「…ロビンが安心していられないんだ。…こんな世界、要らねえだろ。俺を七武海にしてリードでも繋いでいたと思ったか?…冗談は寝てから言え。」

 

バンドラとルフィのその言葉にロビンの目からは涙がポロポロと落ちる。死ぬ覚悟はできていた。彼らに迷惑はかけたくなかった…だが、今はただその優しさが嬉しかった。死ぬのがここにきて惜しくなってしまった。ウタはまたやってるよ…と呆れたように笑う。

 

「ロビンッ!!まだお前の口から聞いてねえッ!!“生きたい”と言えぇぇッ!!

 

それはロビンにとっては許されていない言葉だと思っていた。ロビンの目からはとめどなく、涙が溢れ出る。気づけば…声を出していた。

 

「生ぎだい゛ッ!!私も一緒に…海は連れてって!!!」

 

その答えに納得がいったようにバンドラとルフィはニヤリと笑う。その言葉と同期するか如く、司法の塔への跳ね橋が下がっていった。バンドラの元へ狂骨が降りてくる。バンドラとヤマトはその狂骨の頭を撫でると狂骨は満足そうに笑い、刀へと戻っていった。

 

「お疲れ。此処まで助かった。うっし。坊主。」

 

「おうっ。行くか。」

 

「「全面戦争だッ!!」」

 

その言葉に仲間達も応える。

バンドラとルフィはニヤリと笑っていた。




狂骨君はみんな大好きやからな。もうそれは…ぺっ…ゴホン。

カリファの悪魔の実。皆さん素敵なアイデアありがとうございます。スパンダムに関してはクリクリとしていましたが、クリクリは別にあるからと綺羅星様よりクォツクォツの実をどうかと素敵なアイデアを頂きました。綺羅星様、ありがとうございます。

因みにカリファの悪魔の実について作者が考えたオリジナルは『ロズロズの実』の茨人間?棘人間?荊人間?です。
手足をイバラにして相手を包み込んだり、イバラの棘を飛ばしたりと用途は色々。技名はローズ〇〇とか〇〇ローズとかそういうの。自然種よりも超人種かな?

カリファじゃなくても使えるので誰かに採用するかもですな。それでは。

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