燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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忘れてました。すみません。


第182話

…寝てしまったビビの頭を優しく撫でて、バンドラはベッドを抜けて、部屋を出る。

 

「…おや?」

 

バンドラが部屋を出るとホテルのバルコニーで紅茶片手に優雅に本を読むアインの姿があった。眼鏡をかけ、足を組んでいる彼女。気に入っているのか、膝上…いや、太ももの付け根程を覆うパンツを履いているのと元々の長さも相まってか、更にしなやか且つ長く見える。

 

「…前、良い?」

 

「…どうぞ。」

 

ふっと笑うバンドラを眼鏡のレンズ越しに見るアイン。飄々としたその態度はアインの好きな硬派な先生とは…似ても似つかない。逆にアインにとっては嫌いなタイプだった。

 

何せ、バンドラの周りには女が集まる。

歌姫に四皇の娘達、海賊女帝に他の船の女達。アインにとってはそんなうわついた彼が…どうしても人間として見れなかった。

 

「…どうした?俺の顔になんかついてる?」

 

「なにも。」

 

怪訝そうにそう言うバンドラにアインは気だるげに返す。…バンドラもアインとの会話が続かないことを気に病んでいた。そりゃそうだ。不安だろう。

 

現在、ゼファーの船はアクアラグナの影響で一度撤退。その後、諸海賊たちのせいでなかなかウォーターセブンに来ることができない状態だった。捨てられたわけでもないのに…アインは少し不安だった。

 

アインはただ一人が嫌いだった。

モドモドの力を手に入れてから、海軍でもアインは色もの扱いだった。

 

…触れるだけで相手の存在を消すことのできる能力。

 

もし、彼女を嫌がった人物たちがウタウタやホビホビの力を知ったらどうなるだろうと。

 

ある日、まだ幼くして海軍に入隊した彼女に転機が訪れた。それが海軍で武術の指南をしていたゼファーとの出会いだった。

 

歳のせいか、色々なことを知っているゼファーは勿論、アインを人として見た。化け物と蔑む人間も居ただろう。しかし、ゼファーはそんな能力はどうでも良い。ただアインを一端の海兵にしたいという願いしかなかったのだ。それがアインにとってはとても嬉しかった。

 

「…え?」

 

バンドラは目の前のアインを見て、そう小さく声を上げた。アインが啜り泣いていたからだ。…理由は単純明快。Z先生に会いたいから…というまるで子供じみた理由だった。

 

「ど、どうしたんだよ…?何かあったのか…!?」

 

「…目にゴミが入っただけです。」

 

そうごまかすが、一度決壊したダムは止まることを知らない。…バンドラははぁ…とため息をつくと、そんな彼女の頭にポンっと手を置く。アインの開ききっていない気だるげな目がかっと見開かれた。

 

「…別に減るもんじゃなし。何か困ったことがあれば頼って良いんだぜ?人が自分一人で解決できる問題の方が世の中少ねえんだから。」

 

「…困ってません。それと…やめてください。」

 

…氷の少女。鉄仮面のアインの顔がほのかに赤く色づく。目は絶対零度の視線を向けているのにも関わらず。…嫌なはずなのに、何故か嫌な気分はしなかった。

 

それもそのはず。

アインはゼファー以外に優しくされたことはない。近寄り難いその雰囲気から誰も…ゼファーが海軍に居た時はゼファー以外誰も寄って来なかったからだ。…だから、優しくされたことはゼファーからしかない。

 

「…節操なしですね。貴方は…本当に。」

 

手を頭から外したバンドラへ、アインが見ずにそう言った。バンドラはええ…と呆れたように笑う。

 

「…まぁ、確かにそうだなぁ…。でも、しゃあなくないか?…俺がアイツらの為に出来ることなんて、一緒にいるくらいしか無いんだから。」

 

「そういうところですよ。…はぁ…。」

 

ため息をついて顎を手にやるアイン。

バンドラはその様子を見て苦笑いをしていた。アインはメガネを置くと、大きく伸びをする。…ハンコックやヤマトに比べれば、少し劣るものの形良く、大きさもそこそこある二つの山が服を押し上げる。バンドラはその様子を見て、顔を新聞で隠した。

 

「…お前なぁ。」

 

「バレてますよ。ど変態。」

 

冷静沈着な面持ちでギロリと睨むアイン。足のホルスターから銃を取り出し、バンドラへと向ける。

 

「…誤解だ。それに見え…なんでもねえ。」

 

「よろしい。今回は許してあげますよ。」

 

…無防備なアインが悪い…とはバンドラは言わない。何せ、腕も足も見えており、体のラインがぴっちりと出る服を着ているアイン。目で追わない方がおかしい。

 

「そういや、昨日もその服だったな。服って一着だけか?」

 

「そうですよ。…不潔ですが裸で歩き回るよりマシです。服は全部Z先生の船に。ただ、昨晩の話では、高波と諸海賊の制圧に時間がかかり、もう1日は確定でそこにいてくれと。」

 

「…ふむ。買いに行くか。…服。」

 

「…はい?」

 

その提案にアインのメガネがカタンと地面に落ちた。バンドラは頬杖をつき、ふっと笑う。

 

「どうせ、オシャレなんてしたことねえんだろ?折角、可愛いのに。」

 

「ッ!?…貴方に言われても。どうせ、他の子にも言っているんでしょう。軽いですよ。」

 

「…まぁ、言っちゃいるが。…兎に角、オシャレしたら先生が褒めてくれると思うぞ?」

 

先生が褒めてくれる。

その言葉にアインの耳がぴくりと動く。と同時にアインはバタリと立ち上がり、バンドラの方へと歩くとバッとバンドラの肩を掴んだ。

 

「それ、ほんとですかッ!?ほんとにおしゃれしたら褒めてくれますかっ!?」

 

目をキラキラと輝かせて、バンドラを見る姿はまさに親に褒められたいいたいけな少女のようだった。

 

「そりゃあ、あの爺さん。お前を孫か娘みたいに可愛がってるからなぁ。…まぁ、男が出来た云々とキレ散らかすかもしれねえが。」

 

くすくすと笑うバンドラにアインはムッと口を窄み、睨む。アインにとっては自分の命すら差し引いても、Z先生が一番。それを馬鹿にされるってことは、アインにとっての最大の侮辱だった。

 

「Z先生を悪く言わないで。」

 

「はいはい。…つっても、俺もあの人には世話になったからなぁ。今の俺が丈夫なのはあの化け物爺さん連中とカイドウ(筋肉牛ゴリラ)のせいだからなぁ。アインと先生が喜ぶなら、役得だ。」

 

そう言ってバンドラは微笑みながら、アインの頭をポンポンと叩く。アインはボーッとそんなバンドラを見つめていた。

 

「ん?」

 

「…益々わからなくなりました。…何故、貴方はこんな海賊紛いのことをしているのですか?何故、Z先生の要求を…。」

 

「…そうねえ。ちと刺激が強すぎるが、良いかな。」

 

そう言うとバンドラはアインから離れ、タバコを咥える。立ち上る煙は虚無を表すようなえんえんと広がる空に吸い込まれていった。

 

「…俺は地獄ってのを見たことがある。聖域なんて名はついちゃいるがアレは本物の地獄だ。天竜人以外の生命体に人権はない。俺はそれを海兵がスルーしているのを見た。飼い慣らされ、脚にされる男。愛する人と無責任に別れさせられ、ただ嫁という名の玩具にされる女たち…俺は心底腹が立った。だからこそ、立場なんざ関係ねえ立場にならなきゃいけなかった。その地獄を終わらせる為に。」

 

「…貴方は天竜人を抹殺しようと?」

 

「いいや。…根本的に変えねえとまた第2第3の阿呆が生まれるだろう。だから、まだ考えちゃいねえけど。先ずは今ある問題を解決しねえとな。エレジア然り、仲間達然り。」

 

…煙草を指で掴み、そう微笑むバンドラ。アインはまたもボーッとしていた。勿論、話は聞いていたが、面と向かって彼の思想を聞くのは初めてだったからだ。

 

「さ、行こうか。…買い物(デート)。」

 

「…は?そんな不埒…ちょ、待ってくださいっ!?」

 

そう言ってアインとバンドラはホテルから出て行った。




いやぁ、リアルで少しあったので、甘いイチャイチャ書いて癒されたいのですけども、アインとの距離的にこれが限界かなぁと。残りの人たちは書けると思うけどね。

モネ、ヤマト、ナミ、ロビンでしょ?多分いける。歯も溶けちまうようなのにしてえなぁ。なんつって。

リアルがそろそろ忙しくなってきてますので不定期ながらに続けては行きたいと思います。想定していた話は書きたいなぁと。ドレスローザも頂上戦争も散々匂わせといて、そこで打ち切りですはやりたくないのさー。
楽しんでくださってる皆さんには更新が遅れ、御迷惑をかけていると思います。一週間も停滞することはないとは思いますので。…多分。

そう言う時はもう、ガッツリ日にち決めて定期更新にしていきたいと考えてます。それでは。

エニエスロビー編後のイチャイチャ(最終)

  • ヤマト
  • ウタ
  • モネ
  • レイジュ
  • ハンコック
  • ビビ
  • ナミ
  • ロビン
  • カリファ
  • アイン

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