燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第197話

「…ふぅ。」

 

風呂上がりのバンドラ。甚平に身を包み、長髪を後ろで束ね、メガネをかける。

 

バンドラの向かう先はウタの部屋。今夜はバンドラの意向により、ウタの部屋で一緒に寝ることになった。いつもはヤマトだけだったり、交代制だったりするのだが、今夜だけは別。

 

ノックをすると中から返事が返ってくる。ガチャリとバンドラがノブを回すとそこには特徴的な赤と白の髪を下ろしたウタの姿があった。なにやら楽譜と睨めっこしている様子だった。

 

「…どうした?」

 

「ん?今日のあれ、すっごくムカついたから。ペンを取ったら進んじゃって。新曲できちゃった。…タイトルはそうだなぁ…。『逆光』っ!!」

 

「そりゃ良かった。」

 

案外元気そうなウタの頭を優しく撫でる。ウタは目を細めて満足そうに声を上げた。少しゆるゆるの首元から何もつけてない胸の谷間が伺える。

 

…いつもなら怒るところだが、今日はいいやとバンドラも微笑んでいた。エレジアの城内ぐらい楽にさせてやろう…と。

 

「ごめんな。ウタ。俺が驕ってたばっかりに怖い思いさせて。」

 

…こいつもマリンフォードに連れて行けば良かった。そうすれば今回のような悲劇は起こらなかったかもしれない。そんなバンドラの手をぎゅっとウタが握る。

 

「んーん。来てくれるって信じてたから。」

 

「…そうか。」

 

バンドラもふっと微笑みながらそんなウタの手をぎゅっと握り返した。テヘヘと笑うウタ。ヤマトの真似事で始めた、バンドラの肩に寄り添うウタ。バンドラはその肩を優しく抱く。

 

「…モネ達、大丈夫?」

 

「…もっと強くなりたい…だってさ。あのカリファですらだぜ?いけすかないけど、死ぬよりはマシだってな。感謝してやったらちょっと照れてたよ。」

 

歯を見せてニヤリと笑うバンドラ。その様子を見てウタの胸がちょっぴり痛くなる。バンドラが笑っているのは嬉しい。でも、その口から二人きりの時に…他の女の子の名前が出るのは…。

 

「…どうした?浮かない顔して。」

 

そんなウタの方を見るバンドラ。全てを見透かすような紺碧の目にウタの顔が映る。

 

「べ、別にー?」

 

「なんだよ。」

 

笑いながら聞くバンドラにウタはプイッと顔を背けた。バンドラはニヤリと笑いながら、日本酒の入ったお猪口を傾ける。ちゃぽんっと波紋打つお猪口にバンドラの顔が映る。その顔は少し悔しげだった。

 

「…俺はあめえなぁ。」

 

「…え?」

 

「泣き言なんて言いたきゃねえけどよ。防ごうと思えば防げたことだ。スパンダムの裏にいる存在。それがティーチの野郎とまでは思わなかったが…誰かいるのは確実だったんだから。情けねえなぁ…俺は。」

 

…だから、全部俺のせいだ。

その言葉を聞いてウタはムッとした顔になる。そんなバンドラからお猪口を引ったくるように取り、ぐいっと飲み干した。

 

「おい、お前…?」

 

「そんなことないっ!!」

 

ムッとした顔でそう言うウタ。バンドラはびっくりしたように目を見開いて、そんなウタを見た。

 

「バンドラは情けなくないッ!!…そりゃあ、ちょっとえっちで馬鹿だけど…。でも、今回も一足飛びで来てくれたし、いつも助けてくれるし…。感謝してるよ?」

 

「…だが、今回は…。」

 

「私はッ!!」

 

ウタがバンドラの頬を手で挟み、バンドラの方を見る。バンドラの顔が少し赤くなっているのは…別に風呂上がりだとか酔っているとか…そう言う意味ではない。

 

「私は、バンドラに救ってもらった。シャンクスに捨てられて、ゴードンと二人っきりで…もう生きる意味がわからなくなった。私、バンドラに救われたんだよ?そんなこと言わないでよ。」

 

「…ウタ…。」

 

少し震える声でそう言うウタ。バンドラはため息を吐くと、そんなウタの頭に手を伸ばして、自分の胸に寄せる。

 

「…俺、弱えなぁ。強くなるわ。俺。どこに居ても誰が来ても…手を出そうとは思わねえほどに。」

 

「シャンクスみたいに?」

 

「…あぁ。シャンクスみたいにな。」

 

そう言ってバンドラはウタの髪を優しく掻き上げ、唇を重ねた。お互い素面ではないにしろ、長く長く…。唇を離せば透明な橋が掛かり、千切れる。ウタの口から息が漏れる。顔はほのかに赤く、目はとろんとしていた。バンドラは生唾を飲むものの、シャンクスの顔を思い出し、落ち着く。

 

「…なんか、躊躇してる?」

 

「…まぁ、お前の親を知ってるわけだし。」

 

「何よそれ。シャンクスより強くなるんでしょ?」

 

「…そんなことは言ってねえぞ。」

 

笑いながらウタはバンドラから離れる。ふかふかのベッドに寝そべり、布団をぺろりと上げて、ニヤリと笑うウタ。バンドラは誰に似たんだか…とため息を吐きながらも、その布団の中へと入っていく。

 

「んっ。」

 

「…はいはい。」

 

バンドラはそのままウタの頭の下に自身の腕を入れる。ウタは満足げな顔でバンドラの方に寄り添い、ギュッと抱いた。

 

「どうする?このまま寝ちゃう?」

 

「うっせぇ。マセガキ。」

 

「意気地無し。」

 

「お前なぁ…。」

 

ため息をついて、バンドラはジトーとした目をウタに向ける。ウタはムッとした顔でそう言うとバンドラに向かって目を閉じた。

 

バンドラはその顔を見た瞬間、あぁもう…と思いながら、唇を合わせる。ただじっくりと交わす。

 

「ぷはっ。…好きものだな。お前も。」

 

「むぅ。こんなことするの、バンドラだけだもん。」

 

「全く、シャンクスになんて…。」

 

そこまで言おうとした途端、バンドラの口が指で塞がった。

 

「…シャンクスは関係ないでしょ。」

 

ジトーとした目でバンドラを睨むウタ。バンドラは何度目かのため息を吐きながら、そのぷくーっと膨らました頬を指で突っつく。

 

「だったら、もうちょっと我慢を覚えような。」

 

「は?人を盛りのついた犬みたいに言わないでくれる?そりゃ、もうヤマトだよ。」

 

「…お前、ヤマトのことそんな風に思ってたの…?」

 

本人が聞いたら泣き喚きそうである。

 

「だってさ、人が我慢してる時にチュッチュッチュッチュッと。空腹の時に目の前にステーキぶら下げられてるみたいなもんだよッ!!あー、腹立つ…。」

 

「お…おう。」

 

「だーかーらー。今、独り占めするのッ!!…良いでしょ?」

 

硬い胸板に寄り添いながら、ウタは潤んだ目をバンドラに向ける。バンドラはそうだな…と笑いながら、彼女の頭を枕にしていない方の手で撫でた。

 

「…だからさ、バンドラになら…何されても良いよ?」

 

…少し赤くなった顔で目を逸らし、そう言うウタ。ウタの心臓はもうどくどくとうるさく騒いでいた。バンドラもそのウブな様子に少し戸惑いながら、生唾を飲む。

 

「…あと、別に酔ってるわけじゃないわよ。」

 

「…。」

 

いつも酔いすぎだと逃げ口を作るバンドラ。ウタにはそれがお見通しだったのである。

 

「…後悔しねえんだな?」

 

「するわけないじゃん。私は赤髪海賊団の音楽家で…天帝海賊団の幹部なんだから。」

 

「あっそ。」

 

そう言ってバンドラはウタの顎をくいっと上げ、服に手をかけようとした。その時だった。

 

「天帝〜?眠れぬ故、酒に付き合うことをゆるす…ぞ?」

 

…酔ったハンコックがウタの部屋とバンドラの部屋を間違えて入ってきたのである。バンドラの手は既にウタの服を腹まで捲り、その様子が完全にハンコックの目に止まる。

 

「えっと…これはな?その…。」

 

「なんじゃ?狡いぞぉ?二人で抜け駆けなんて…。妾もぉ〜いれろぉ〜。」

 

幸いなのは、ハンコックが酔っていたことだった。ハンコックは真っ赤になったニコニコの笑みを浮かべながら、バンドラのいる布団の上にダイブした。

 

「ぐおっ!?」

 

「何してんのよ、ハンコック!?」

 

「むぅ〜。妾を除け者にする、お主らがわーるーいー。妾も入れろー。」

 

駄々をこねるハンコックにバンドラとウタははぁ…とため息を吐く。バンドラは少しウタの方に詰めると。

 

「ほら、おいで。」

 

「うむっ!!それで良いのじゃっ。」

 

喜色満面のハンコックを迎え入れたのだった。




ウタ、ビビはこれが平常運転。
ハンコックさんはヤケ飲みです。誰にも相手されないからね。次回からは頂上戦争に向けて、修行うんたらを書きたいわね。では。

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