燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第204話

数日後。

レベッカとビビの成長速度は凄まじいものだったとバンドラは語った。レベッカの闘争心、ビビの根性は筋金入りだった。

 

「はっ!!」

 

レベッカのサーベルの銀閃がバンドラの前を走る。

 

バンドラはそれを狂骨で受け止める。

 

しかし、直後にレベッカは刀身を滑らせ、バンドラの首を狙う。

 

「ふんっ!!」

 

「きゃっ…!!」

 

バンドラはその刀身を峰で振り上げるとレベッカの足を払う。下は芝生。頭を打っても怪我しないようにはなっていた。しかし、レベッカは地面に転がる直前、身体をぐるんと回転させ、立ち上がる。

 

バンドラはその様子を見てニヤリと笑った。直後、バンドラの横を苦無が飛ぶ。バンドラはそれを狂骨で弾き、後ろを向く。

 

前から飛んでくる弾丸をバンドラは切り裂き、後ろから飛んでくるレベッカの斬撃をもう片手に忍ばせた苦無で受け止めた。

 

バンドラの向く方にはビビが拳銃と剣を持って、バンドラを見ていた。その銃の先からは立ち上る煙。

 

「…うん。二人ともびびらず出来るようになったな。」

 

バンドラは理解していた。微弱ながらもビビとレベッカの持つ刀身が黒鉄色に光っているのがわかる。バンドラはまだ余裕そうだが、レベッカとビビは汗をダラダラと流していた。普段清楚な二人が、砂に汚れ、汗だくになりながら、はぁはぁ…と息を吐いている姿は王族とは思えない。

 

「はぁ…はぁ…もうだめぇ…。」

 

「おっと。」

 

流石の根気強いビビも流石に3時間休憩無しを数日間続けていれば疲れてしまったか、サーベルと銃を地面に投げ捨て、よろよろとした足捌きでバンドラの胸へと飛び込んだ。

 

よしよしとバンドラはビビの頭を撫でる。

 

「バロックワークスにいた時の戦闘スキルが後押ししてるのか、足捌きや土壇場に対する決断の強さは流石だな。後はメンタルもな。…まぁ、覇気も使えるってレベルにはまだ至ってねえが。」

 

「はぁ…はぁ…!!師匠、まだ行けますッ!!私は…!!」

 

両手でレベッカは剣を握り、バンドラを見る。肩で息をしている、そして、足元も震えていた。水分やらなにやらは取らせていたが、レベッカは一切、小さな休憩も取らず、ただ母親を救う為、剣を振り続けた。

 

「…足がふらついてるぞ。」

 

バンドラもそれは指摘した。

しかし、レベッカの目はそれを許さないと言ったところだった。決心の揺らがないその目にバンドラはため息を吐く。

 

「…だめだ。ここで死んだら、終わりだぞ。今日は終わりだ。人を殺す覚悟ってのは簡単に割り切れるもんじゃねえ。…光り物を振り続けるのはどんだけメンタルが強くても心の疲れが酷いんだよ。」

 

「あうっ。」

 

ビビを抱き抱え、バンドラはレベッカの方へ行くとその額を優しくこづいた。コロンと剣を置くとレベッカはその額を押さえながら、バンドラを上目遣いで見る。

 

「…強さは気合だけじゃねえ。自分の限界を知り、それをどう超えるかを知る。知ることは強さだ。…だからこそ、ぶっ倒れたらそこでおしまいなんだよ。わかったか?」

 

その言葉は女に対するバンドラの優しい言葉ではない。師匠として、大切な命を預かっているものとしての厳しい眼差しと言葉だった。しゅんとした様子でレベッカは下を見た。そんなレベッカの頭をバンドラはクシャクシャと撫でる。

 

「だが、ビビよりも剣の使い方はしっかりしてる。昔、いい剣闘士にでも習ったか?」

 

「…い、いや…。」

 

「じゃあ、血か?母親か、父親の…。」

 

「…うちは母だけです。それに、お母さんからは誰も傷つけてはいけないって言われてて…こんなもの、握るなんて思ってなかったから。…でも、だからこそ、私がお母さんを守らなきゃいけない。だから、強くならないと…!!」

 

…一度曇ったようなその表情は決意の元にまたあの熱い眼差しに戻った。バンドラはふっと笑うと首をコキコキと鳴らした。

 

「汗もかいたし、風呂でも入るかー。」

 

「ご一緒します。」

 

「…え?」

 

バンドラの何気ない一言に賛同するビビ。バンドラはもはや、ヤマトやらウタやらハンコックやらのせいで異性と一緒にお風呂に入ることは厭わない。しかし、レベッカは違った。唖然とするレベッカ。

 

「レベッカは少し待っててくれるか?それとも…。」

 

「い、いくっ…!!いくら、お師匠様とはいえ…っ。その…そういうのは…。」

 

顔を真っ赤にしてバンドラを見るレベッカ。バンドラは何気ない顔でそっかと言うとビビを連れて大浴場へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湯煙立つ大浴場。胸までタオルで隠したビビがバンドラと共に現れた。

 

「王女様が男の前で裸になるとはねえ?」

 

「特別です。バンドラさんの前だけ。」

 

ふふっと笑いながら、バンドラの腕に手を寄せる。バンドラは酒瓶と樽を持ち、湯船に浮かべるとそのまま入っていった。キュッと目を瞑ると水面が揺らめく感覚でビビが入ってきたことがわかる。流石に隅から隅まで見るわけにはいかない。脱衣所でもビビが脱いでからバンドラが入っていた。

 

「…綺麗だねえ。流石は王女様。」

 

「ふふ。そんなこと言っちゃって。何が目的なんですか?」

 

「別に?…ただ、悪いことしてる気分になってな。」

 

「…今更ですか。」

 

少しため息混じりでそう言うビビ。窓から入る夕日が束ねたビビの頸を照らす。その視線に気づかず、ビビはバンドラの方に寄った。

 

「…男の人とお風呂に入るのはお父様以来です。…意外と硬いですね。」

 

「まぁ、鍛えてるからね。」

 

「いつ頃から…ですか?」

 

そう聞くビビにバンドラはふっと笑い、猪口を傾ける。酒が入り、多少饒舌になっているのだろう。

 

「…俺はな。小さい頃から海賊を潰すことだけを教えられた。刀、格闘術、銃に…覇気。海軍を止めた後も、バカみてえに強えおっさんの元でヤマトと二人で育てられた。まさに殺しの英才教育。暴力を教えられたんだ。」

 

「へぇ…。」

 

「まぁ、守るものが多すぎるからなぁ。良かったよ。こんなんで。」

 

ふっと笑い、ビビの頭を優しく撫でるバンドラ。ビビはぼーっとした顔で見ていた。

 

「…テメェらのために死ねるなら、俺ぁ生きてて良かったと言える。白ひげのおやっさんにセンゴクさんや先生に…恩を返せるなら、俺ぁ生きてる価値があるってもんさ。」

 

そう言ってくいっと猪口を煽るバンドラ。ふっと笑うその胸には薄いが沢山の傷がついていた。特に脇腹の火傷は生々しく残っている。当たり前だ。マグマで焼かれたのだから。

 

「まぁ…死ぬ気は…。」

 

そう言おうとした時、バンドラはふと横のビビを見る。…ビビは心の優しい子。国のために強くなろうとしている。だからこそ…ビビの涙は美しいものだった。

 

「…やだよぉ…死なないでよぉ〜…!!」

 

「うぇっ?ビビ?」

 

「バンドラさん…死なないでよぉ…!!ひっぐ…嘘でも言わないでよぉ〜…!!」

 

ポタポタと落ちる雫。ビビがバンドラの腕にぎゅっと抱きつく。彼女の啜り泣く声が浴室に響く。バンドラはそんな彼女の頭を優しく撫でる。

 

「…すまない。」

 

バンドラは困ったように笑いながら、ビビの涙を指で拭った。ビビにはエレジアが襲われた時に自身がヤマトを連れていったことに負い目を感じていた。だからこそ、自身がコブラを守れるくらい強ければ、ヤマトが居なくても良いくらいに強ければ…というものが頭に残って離れなかった。

 

ビビもある意味でバンドラという男に執着していた。レイジュやスムージー、ロビンのような居なければ生きられないというほどではないものの、頭の中をただ好きという気持ちが制圧されるほどの。独り占めしたい…ではなく、ただ見てほしいという感情。一緒にいて欲しいという…それだけの感情しかなかった。

 

「…そうだ。今度、一緒に遊びに行こうか。」

 

ふっと笑いながらそう言うバンドラ。

 

「うぅ…ほんと…?」

 

赤くなった眼差しを擦りながら、ビビがバンドラを見る。潤んだ目がバンドラを映す。

 

「本当だよ。」

 

一段と優しい声でそう言うバンドラ。ビビはそんなバンドラの首に腕をかけるとそのまま唇を奪った。その唇を優しく離すとビビはぷくっと頬を膨らました。

 

「…もう死ぬなんて言わないでください。絶対にッ!!」

 

「…はいはい。」

 

そう言ってバンドラは優しくビビの頭を叩く。ビビはそんなバンドラの手をぎゅっと両手で掴んだ。

 

「じゃっ、背中流しますね。」

 

「…そうだな。」

 

そう言って二人は湯船から出たのである。




ちょっとずつ強くしていこうね。ビビとレベッカ。

ビビちゃんは若いのに国を背負ってます。だからこそ、バンドラの存在ってのは特別なんですね。頼れる大人の男?的な。

それでは。
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