燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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※少々、ネタバレ?注意です。


第210話

「…で?どういうことだ。バーソロミュー・くま。」

 

黄猿が消え、バンドラとレイリーは二人を見るくまを見ていた。バンドラは言葉によっては(大切なナミやロビン、ルフィを飛ばされている為)叩き伏せるといったように少し眉間に皺を寄せていた。

 

「…先ほど言った通りだ。麦わらの一味は逃がした。それだけだ。何処へ行ったかは言えない。」

 

「…おい。あん中には俺の大事なもんも居るんだ。…事と次第によっては切るぞ。」

 

ドスの効いた声で狂骨を掴むバンドラ。くまは淡々と言葉を放つ。

 

「…一人はお前の近しい場所に。」

 

「ナミとロビンは。」

 

「…ニコ・ロビンは革命軍が匿える場所に送った。彼女にとってはその方が安全だ。そして、泥棒猫に関しては…天候を研究する場所。」

 

「…なるほどな。ウェザリアか。話には聞いている。」

 

バンドラは顎に手を当てる。

同時にニキュニキュの実はその時どこにいるかもわからない空島へも飛ばせるのかとバンドラは思っていた。バンドラの言葉にくまは肯定も否定もしなかった。

 

「…時間がない。天帝、お前に話がある。」

 

「そうだったな。」

 

「…それは私が居ても良いのかね?」

 

レイリーは一呼吸おいて静かにそう言った。問題ないとくまは答える。

 

…はっきり言おう。

バンドラとくまに七武海以外の接点はない。つまりは、バンドラにくまが拘る理由もバンドラにはわからないし、今回の話も前提としてバンドラは一から十まで知らないのである。

 

「…お前に俺の大切なものを預けたい。女帝、ボア・ハンコックよりお前の一味は女ばかりだと聞いている。…俺の娘だ。頼めるか。」

 

「…なんでお前ら大海賊は俺に娘を預けたがる。」

 

ため息混じりにそう言うバンドラ。くまは笑うも泣くもせず、無表情でバンドラを見ている。

 

「…で?その娘っつうのは?」

 

「…最悪の世代、大喰らいジュエリー・ボニー。」

 

「…最悪の世代か…。俺はアイツらの子守りじゃねえんだけどな。」

 

「すまない。…だが、彼女は良い子だ。俺はいずれ、彼女すらも忘れてしまうだろう。」

 

そう言うとくまは立ち上がった。

…言ってる内容は酷なもの。しかし、もうバーソロミュー・くまにはそれを悲しむような感情も無かった。バンドラとレイリーは何も言わずに見守る。

 

「俺は…いずれ死ぬ。だから、頼む。彼女を助けてやってくれ。」

 

「…全く。逃げ道無くして、断ったら野暮。これもあんたの計算か?…まぁ、良いさ。約束してやろう。…会ったら保護ぐらいはしてやるさ。」

 

そう言ってはにかむバンドラにレイリーも目を細めてふっと笑う。くまはその日初めて、柔和な笑みを浮かべるとその場から立ち去って行った。

 

「…で?バンドラくんはどうするのかね?私はハチの治療があるのだが。」

 

「一度、エレジアに帰ろうと思います。それからは…一応、ナミやロビンの消息を辿ろうかと。そのほかの奴らも出来たらですけど。」

 

「ふむ。暴君くまの言葉は信じられないと?」

 

「いや…そう言うわけじゃあないんですが…。」

 

バンドラは鼻の頭を掻きながら、申し訳なさそうに笑う。

 

「…俺はアイツらに賭けてるんで。」

 

「…なるほどな。」

 

屈託のない笑みでそう返すバンドラ。レイリーも目を細めて笑う。

 

狂骨を握り、帰っていくバンドラの背を見てレイリーはふっと息を吐いた。レイリーの目から見てもバンドラは強い。もちろん、若き日の己やロジャー(相棒)には及ばないだろう。しかし、諦めの悪さだけならそれに引けを取らないほどだ。

 

「…さて、私もやることをするか。」

 

そう呟くとレイリーは帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ルフィ達が…。」

 

「あぁ。」

 

ルエノルーヴ号船内。戻ってきたところをヤマトやウタにどこへ行っていたのかと咎められたバンドラ。ありのまま先ほどあったことを話すとウタやビビは少し青ざめた顔をしていた。

 

「無事…なんですよね…?」

 

心配そうにそう言うビビ。

彼女にとっては大事な大事な仲間達。それが1日にして壊滅したとすれば、酷であった。バンドラはそんなビビの頭を撫でる。

 

「…大丈夫。アイツらはまだ生きている。」

 

「…そうですよね。…私が信じなきゃ誰が信じるってものですよねっ!!」

 

そう言って歯を見せて笑うビビ。

王女としてははしたないかもしれないが、歳相応の少女としては元気いっぱいな笑みであった。バンドラもつられて笑う。

 

「あぁ。」

 

「で、これからどうするんだ?バンドラ。」

 

バンドラの背中におぶさるように寄り添うヤマト。背に伝わる豊かな感触をバンドラはもはや、気にしていない。

 

「まぁ、海軍と白ひげ海賊団の衝突は杞憂に終わる可能性もあるからな。今、焦ってもしょうがない。だからこそ、海軍に殴り込みに行くことはしない方が良いだろう。…俺はまず、ナミやロビンの消息を辿ろうと思う。ナミは俺の恩人だし、ロビンも形違えど仲間だ。そこからは修行に注力するかな。」

 

「…ルフィは生きてるかな。」

 

「……ウタ。」

 

ウタの不安そうな顔にバンドラは少し暗い表情を浮かべた。いつもならば『ルフィなら大丈夫』と言い張るウタだが、ボロボロにやられてしまったということには変わりない。友達が…幼馴染がやられたという事実はウタにとっては酷な事実だった。

 

「…あの馬鹿の打たれ強さは伊達じゃねえ。死ぬとしたら空腹以外あり得ねえだろ。…信じろ。アイツはいずれ、この海の王になる…かもしれない男だ。」

 

「むっ。なにさ、ルフィは絶対、海賊王になるよっ!!約束してくれたもんっ。」

 

「バーカっ。あのタイミングで逃げることを選択したのは良いとして、アイツにゃまだ知らねえ世界が多すぎんだよ。」

 

口を紡いでむすっとするウタ。

バンドラはタバコに火をつけて、空に蒸す。

 

「…アイツは何をもって海賊王になるんだろうな。」

 

「どういうこと?」

 

「いや、なんでもない。」

 

小首を傾げるウタにまだ早かったかと思いながら、バンドラはふっと微笑んだ。時刻は正午過ぎ。麦わらの一味が解体され、およそ数時間ほどしか経っていない。

 

そのルエノルーヴ号へ電伝虫の着信を告げる音が響き渡る。バンドラは急いで、船室に入り、その受話器を取った。

 

『…なぜ、緊急集合に応じない。』

 

…受話器から聞こえる厳格な声は懐かしさと共に…異様な圧を感じるものだった。それは現海軍元帥センゴクのもの。バンドラは生唾を飲む。静かな声ではあるものの、怒っていることは確かだった。船室を覗き込む女性陣を背にバンドラは息を吐く。

 

「…野暮用があったので。」

 

『七武海の緊急招集以上に優先すべきことはないだろうッ!!…何故、お前は我々に刃向かうんだ。』

 

「…そもそも、俺は喜んで七武海になったわけではありません。」

 

『…我々のメンツを組んでのことだろう。そして、エレジアとウタという少女の為。しかし、七武海になっても政府に従わないとなれば本末転倒だぞッ!?』

 

…センゴクの言うことも最もだった。

七武海になれということは政府の軍門に降れということ。それをしないことは七武海と名乗っていようと政府は納得しない。

 

『私は…私たちはお前のために言っているのだぞ。バンドラ。まだ間に合う。ボルサリーノを止めたことも、エニエスロビー陥落に関与したことも…全て闇に葬れるのだ。政府につけ。そうすれば、お前は…大事なものを守れる。私とは違い…な。』

 

先程の怒号とは一変して、優しげな声色に変わるセンゴク。

 

…元帥たる彼は時に非情な判断をしなければならない。言い換えれば、政府の奴隷になれという自身の言葉をバンドラがどれだけ嫌うかは、嫌というほどわかっている。事実上、息子のような人間を失ったセンゴクにとって、バンドラという存在は二人目の息子と同義。ロシナンテの代わりとは違うが、同じように愛情を注いできた。

 

そのロシナンテの関係も闇に葬られてしまった。だからこそ、同じことはもう起こさないよう、バンドラを説き伏せることが必要だったのだ。仏のセンゴクの名に恥じぬほどの優しさ。バンドラはごくりと生唾を飲んだ。

 

「…すいません。それは出来ません。」

 

『…何故だ…。好き嫌いという話なら…。』

 

「…確かに好き嫌いという話もあります。ですが、政府は俺たちをただの飼い犬としか思ってません。元帥に言うのもなんですが、海軍とて同じこと。もし、世界政府を頼りにしていたばかりに、七武海の撤廃などで地位を失ったとして…政府に身を置いていたとしても守れますか。本当に大切なものを。」

 

七武海というネームバリューは政府の犬とされても魅力的なものである。しかし、いつかは政府は海賊を頼るのをやめるだろう。バンドラはそう考えていた。勿論、嫌いであるということが大半ではあるものの、バンドラが求めているのは永久的に本当の意味でウタやヤマト達を守れる力だった。

 

「…それに今回の招集はポートガス・D・エースの処刑に際し、白ひげ海賊団とぶつかる時の戦力補強でしょう?…俺は大恩ある白ひげのおやっさんに弓引く真似はできません。あなた方に感謝はしています。しかし、俺に初めて家族としての暖かさを教えてくれたのは…おやっさん含めた白ひげ海賊団の奴らですから。」

 

『…それがお前の答えだな。いいか。七武海を除名されれば、海軍は脅威たるお前を全力で拿捕しに行く。その際にエレジアやお前の仲間に何が起こっても自己責任だ。…それでも覆らないな?』

 

…あえて厳しい言葉を放つセンゴク。バンドラはふぅ…と息を吐いて、首を鳴らす。だからこそ、センゴクは最後の切り札を取り出す。

 

『お前と繋がっている海賊女帝にも類が及ぶとは思わんのか。』

 

「…ッ!!…彼女は関係『ないとは言わせんぞ。』…くっ。」

 

バンドラは目を見開いた。

 

天帝と女帝の同盟は今や、どんな海賊も知るとてつもないもの。七武海同士の同盟など前代未聞だったからである。故に優しいバンドラがハンコックのことになると取り乱すのはセンゴクには容易に想像できた。…例え、自身が嫌われようとバンドラには悲しんでほしくなかったのだ。

 

『女帝はそのまま七武海に残るという生易しい考えが通ると思うな。お前と繋がりがある以上、政府から爪弾きにされるのは当然だ。…それでも覆らないな?』

 

「…その場合、女ヶ島は。」

 

『世界政府の船が乗り込む。場合によってはバスターコールだ。』

 

「…正気ですか。ボア・ハンコックはただ、アマゾンリリーを守りたかっただけですッ!!…俺と一緒なんですよ…。そうなれば俺は…海軍と世界政府を…潰しかねない。」

 

…それが笑い話なら良かった。

しかし、バンドラならそれが出来てしまう。例え、海軍だとしても四皇とその船員を全員連れてこられては勝てる見込みはほぼ…いや、ゼロである。それが出来てしまうのがバンドラなのだ。メラメラと燃える怒りの目が電伝虫を静かに睨む。

 

「…俺たちはただ平穏に生きたいだけなんです。夢を叶えたいだけなんです。…そのために障壁となるなら七武海なんかかなぐり捨てます。世界政府だろうとなんだろうとハンコックや俺の仲間に手ェ出すのは許しません。あるのは報復合戦です。世界政府としてもそれは避けたいでしょう。」

 

『…貴様。私を脅すのか。』

 

「…すいません。ですが、これが海賊のやり方なので。…虫のいい話です。お願いします。女ヶ島にだけは…手を出さないでください。」

 

『…我儘なやつだ。…ならば、お前の我儘のせいでエレジアがバスターコールにあっても良いのだな?』

 

「…その余裕があれば。」

 

バンドラは電伝虫を睨みつける。

その殺気や怒りは、ヤマトですら冷や汗をかくレベルだった。その言葉を最後にセンゴクからの通話は途絶えた。バンドラは静かにため息を吐く。

 

「戻ろう。エレジアに。」

 

「バンドラ、大丈夫?」

 

…そう心配の声を上げるのはウタだった。バンドラはふっと優しく笑う。

 

「あぁ。…ハンコックにゃ謝らないとな。危ない橋、渡らせちまって。」

 

そう言ってバンドラはウタの頭を撫でた。




バンドラにとってはセンゴクさんと対立することは苦しいはずです。白ひげもそれをわかって参加はするなと釘を刺しています。バンドラという人間は自身の幸せは二の次に考えてしまいます。ヤマトの為にカイドウと戦い、ウタの為に七武海になり、ハンコックの為に女ヶ島を守りたいんです。

方やセンゴクさんは息子のような存在を失ってます。そんな彼が手塩にかけて育て上げたのがバンドラでした。海賊に取り入り、海軍として死んだロシナンテ、海軍の真実を知り、海賊に堕ちたバンドラ。ロシナンテを失ったからこそ、バンドラにとって一番いいことを考えてしまうのです。しかし、バンドラは政府が嫌いです。

ウタをダシに使い、ロビンを捕まえ、都合のいいように自分たちを使い、天龍人を見て見ぬふりをするだけでなく守る。それがバンドラの嫌う理由です。

貴方はセンゴクさんとバンドラ、どちらが正しいと思うでしょうか。ただの押し付け合いですが、私はどちらも正しくないと思い書いてます。

という裏話です。気分を害したらすいませんね。次回から頂上戦争に向けて、大幅にスピードアップしていきます。では。
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