燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第212話

「グララララっ。テメェが会いたいなんて珍しいじゃねえか。なぁ?バンドラ。」

 

偉大なる航路。

大きな白い鯨(モビーディック号)はその男の偉大さを示すように海にどっかと居座っていた。その船上には点滴に繋がれた白ひげと白ひげ海賊団の面々…そして、バンドラが居た。甲板に座るその姿には情け無さなど微塵もない。ただ確かに白ひげは威圧的な存在感を放っていた。

 

「…ええ。久しぶりです。おやっさん。」

 

「あん?なんだ。珍しい。今日は女どもは居ねえのか。」

 

「…危険なので。」

 

口元は笑っているものの、バンドラのその目は少し恩人たる白ひげを見極めるような…そんな目をしていた。白ひげも彼の異質さに気づいていたものの、何も触れなかった。

 

「…おやっさん。アンタ、今から何をしようとしてるんです?」

 

「…なに?」

 

「俺はアンタの助けになりたい。これは俺の我儘です。…だから、女達は置いて来ました。危険な目には合わせたくないからです。」

 

…その目は決意に満ちていた。

白ひげはその目を見て…。

 

「ふっ。」

 

鼻で笑った。

 

バンドラはその答えを予感していた。白ひげは酒を思いっきり飲むとドカンと地面へ薙刀『むら雲切』の刃ではない方を甲板に叩きつける。

 

「何を言うかと思えば…。テメェに出来ることなんて何もありゃしない。大人しく帰って女と仲良くして「俺はッ!!」…あん?」

 

「…孤児だった俺はアンタに拾ってもらわなきゃ世界の真実を…ましてや、生きることさえできなかったんだ。スフィンクスは優しいが、貧しい村。アンタの金で俺たちは生きている。…アンタが育てたも同然なんだ。そんなアンタに…何か恩返しを…「勘違いすんじゃねえぞ、ハナタレ坊主。」…。」

 

バンドラの言葉に白ひげが見せたのは冷徹な目。骨の髄からグラグラと揺らすその視線は怖いもの知らずのバンドラにも少し恐怖に感じた。白ひげは低く冷たい声で話し出す。

 

「俺はテメェを育てたつもりはねえ。テメェに『親父』と呼ぶ権利は与えたが、テメェに心配される筋合いはねえんだよ。」

 

「だが…!!」

 

「…いい加減にしろ。」

 

その言葉にバンドラは出かけた言葉を飲み込んだ。そのキツい目に気圧されたのかもしれない。白ひげの迫力に言葉が出なかったのだ。

 

「テメェ一人、俺に何が出来る。俺がかけた恩情はそんな簡単に返せるもんなのかァ?エェ?」

 

「…だが、アンタに返せるものは…「テメェに返せるもんはなにもねえよ。」…くっ。」

 

「…俺はな。テメェに何か返してもらおうと思って連れ出したわけじゃねえ。ここにいる奴らはな。何か返そうと思って俺といるわけじゃねえんだよ。俺といるしかねえから、一緒にいるんだ。テメェは違えだろ。」

 

「…。」

 

バンドラは苦虫を噛み潰したような顔になる。その後ろからマルコが優しげな顔で見ていた。

 

「身の程を知れよ。ガキ。お互い、この海に生きる者同士。馴れ合いごっこはやめにしようや。さっさと帰って、その面見せてやれ。」

 

「…だけど、おやっさ…。」

 

白ひげはもうバンドラを見てはいなかった。バンドラはまだ何か言いたげだったが、聞く気のないその様子にバンドラは何も言えなかった。バンドラは踵を返し、ルエノルーヴ号へと戻ろうとする。

 

「待つよい。バンドラ。」

 

「…マルコ。」

 

バンドラは振り向き、マルコの方を見る。

 

「親父はお前の身を案じて言っていた。海軍もここも、お前の古巣だ。そこがぶつかり合うってことをお前が見るのはお前が1番辛えだろ?…だから、親父のこと許してやってくれよ。なぁ?」

 

「…許すも何も。子は親には逆らえない。」

 

少し悲しげにそう言うとバンドラは振り向き、ルエノルーヴ号へと戻っていった。マルコは白ひげを見て、笑う。

 

「なんだ。マルコ。」

 

「別に?アンタら二人は似た者同士だって思っただけさ。」

 

「ふん。…俺はあんなに節操なしじゃねえよ。」

 

「ハハッ。全くだ。」

 

そう言って微笑むマルコ。

白ひげは遠く遠く…海を進むルエノルーヴ号を見届けて、酒を一煽りした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルエノルーヴ号船内。

バンドラは顔を顰め、猪口を持って行った。その上空を飛ぶ黒い影。バンドラはその姿を見て、少し表情を和らげる。

 

「…オグル。久しぶりだな。」

 

「旦那。」

 

そこに居たのは口元をマスクで隠した鳥人だった。首にはカメラを掛けており、服はまるでキングのような服をしていた。金色の目がバンドラを映す。

 

「何やら顔色が悪いね。どうしたんだい。バンドラの旦那。」

 

「うるせえよ。…てか、悪かったな。新聞の件。」

 

「こんなもの。旦那に貰った恩情に比べたら安いもんだ。…で?僕を呼ぶってことは何か厄介ごとかい?」

 

「…ウェザリアの場所を知りたい。」

 

そう言うバンドラを鳥人…オグルは面白そうに目を細めて見た。バサバサと動く翼をバンドラは煩わしく思っていた。

 

「ウェザリアなら場所は知ってる。あそこの学問は希少だが、門外不出。面白いからね。で?なぜ、ウェザリアに。」

 

「フリーランスってのは詮索までするのか?」

 

「世経を動かすのは骨が折れたんだ。少しぐらい聞いてもバチは当たらない。」

 

落ち着くような声にバンドラははぁ…とため息を吐く。やけ酒かと言わんばかりに酒をゴクリと飲むと首をこきりと鳴らした。

 

「…あそこに少し心配な奴がいてな。仲間と離れて無事ならいいが…。」

 

「泥棒猫ナミか。」

 

「流石だ。…一歩でも干渉した以上、場所を知ってるのに見捨てるような真似…夢見が悪くて。」

 

「…旦那らしいや。」

 

そう言ってオグルは胸元から紙とペンを取り出す。ささっと描いたのは地図。バンドラはそれを受け取ると、懐から小袋を取り出した。

 

「毎度あり。」

 

「情報のバイヤーってのも儲かるかわからねえな。」

 

「海軍を利用できない海賊のお客様は多いんだよ。これでも。それじゃあ旦那。これからもご贔屓に。」

 

そう言ってオグルは上空へと飛び立った。バンドラは船を地図通りに進める。…地図通り…と言ってもオグルがバンドラのいる場所から移動したウェザリアの位置を算出した場所である。

 

こと、ウェザリアは空島。だが、その研究の稀有さや重大さから悪用を避ける為、空を自由自在に闊歩する。オグルはその大体のスピードからバンドラが着く頃には大体この場所…を算出したのだ。故にいつもより情報量は安い。

 

「…あれか?」

 

不気味に漂う白雲。

一ヶ所に集まるには不思議なほどのそれは運が良いことにバンドラの上空にあった。

 

「…あれから3日か。無事だといいが。」

 

バンドラはボソリと呟くと狂骨を握り、風を使って上空へと飛び出す。空島に行くのは一か八かの方法と確実だが誰か死ぬ方法しかない為、バンドラにとってはこれが初の上陸となる。とはいえ、自然発生したものではないが。

 

「な、なんじゃっ!?」

 

空島に飛び乗って来たバンドラに一人の老人が声を上げる。長い顎髭と長髪、まるで魔法使いのような様な彼はバンドラを見るなり恐ろしげなものを見たかのように表情を変えた。

 

「驚かせて申し訳ない。ハレダスさんですね。噂はかねがね。私、バンドラ…と申します。」

 

「あ、あぁ。これはご丁寧に。」

 

バンドラは笑みを浮かべて、その手をぎゅっと取る。ハレダスも少しびっくりしながらも物腰柔らかなその様子にまぁいいかと心を落ち着かせていた。

 

「で、バンドラさんや。このウェザリアに何のようじゃ。」

 

「御安心を。別に荒らすつもりはありません。…ただ知人がここにご厄介になってると聞きまして。」

 

「知人?」

 

「オレンジ髪の女…ナミと言います。ご存知ですか?」

 

そこまで言うとハレダスはあぁと合点がいったように呟く。

 

「彼女ならワシの家で看病しておるよ。もう直ぐ目覚めると思うが。」

 

「…ほう。失礼ですが、お邪魔しても?」

 

「え?あぁ。大丈夫だが…しかし、どうやってこの島まで?」

 

「単純なことですよ。聞こえたから飛んだだけです。」

 

そう言ってバンドラは笑う。ハレダスの家へと案内されたバンドラはベッドにすやすやと眠るナミの様子を見ていた。無事で良かったと言わんばかりに。

 

「…して、飛んだとは?」

 

「…はい?」

 

「偶然、この島の下を君ほどの体躯の人間が飛ぶ旋風が吹くのはどう考えてもおかしくてな。」

 

「あぁ…それは悪魔の実…ですね。」

 

バンドラは狂骨をナミの眠るベッドに立てかけるとハレダスの対面に座る。もちろん、同意を得てである。

 

「情報の漏洩は…。」

 

「大丈夫じゃ。気象科学の第一人者として約束しよう。」

 

「ふむ。それなら。…俺の能力、『ワザワザの実』は天変地異を起こすものです。」

 

バンドラは淡々と話し出す。

ハレダスとしてもバンドラの話を聞くことで天候の科学に役立てるのではないかと考えていたのだ。

 

「先ほど、飛んできたと申しましたが、俺は自身よりも重い物質も、軽い物質も…旋風により飛ばすことができます。しかし、操縦者はあくまで俺。伸びた手足のような感覚なので少しでもミスると大きくよろけてしまいます。」

 

「なるほど。…天変地異ということは気象は変幻自在ということかな?」

 

「変幻自在…というにはちょっと違いますね。俺の能力はあくまで必殺一撃。風以外の事象は二つ以上扱うことはできません。あくまで人の命を奪うものですから。」

 

セーブ状態では一種類の事象を扱うことのみ可能である。ただし、体力の消耗の比較的緩やかな風のみバンドラは組み合わせることができる。ハレダスはその言葉を聞いて納得した。変幻自在というよりかは器用貧乏といった方が良い。

 

「…んっ…んん?ここは…。」

 

「おや、目覚めたようじゃ。」

 

「おはよう、ナミ「ギャァァァッ!!」…痛え…。」

 

寝覚めにバンドラに天候棒を振りかざすナミ。完全に油断していたバンドラの頭にクリーンヒット。バンドラは頭を抱え、溜め息をついた。

 

「あれ?えと、バンドラさん?」

 

キョトンとするナミ。

バンドラはふっと笑うと口にタバコを咥えてマッチを擦り、火をつけた。

 

「元気そうで良かった。」

 

「…う…あ…。」

 

その笑顔に堰き止めていたのであろう。ポロポロとナミの目から雫が落ちる。ナミはバンドラがタバコを咥えているにも関わらず、その胸へと飛び込んだ。バンドラの胸で泣き崩れるナミ。バンドラとハレダスはただ静かに少女が泣き止むのを待っていた。




オグル
性別:男
能力:『動物系』トリトリの実 古代種 モデル『アルゲンタビス・マグフィニセンス』

巨鳥になる動物型、人のままの人獣型を好み、その素顔は誰も知らない。顔をONE PIECE本編で言うところのカラスのようなマスクで隠している。しがない情報業を営んでおり、世経とは情報を交換する仲。取り合ったりもするが意外に社長モルガンズとの仲は良好。

ホウジョウとはワノ国で出会う。
元々、百獣海賊団の飛び六胞だったオグルと光月家の家臣だったホウジョウとは犬猿の仲であったが、飛び入りのバンドラと戦うにつれ、カイドウの真意に気づく。その後はバンドラのコネで世経に入り、自身の目で全てを見るため、独立した。戦闘能力は折り紙付き。

…ということで次回は傷心気味のナミさんを…と。では。
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