燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第215話

…狂骨を振るい、己を奮い立たせる。

骨まで響く一振り。バンドラの額に汗玉が流れる。まさに修羅。

 

小一時間、ルフィの答えを待つためにバンドラはずっと刀を振っていた。自身にとってもルフィの決断は転機になると考えていたからだ。

 

…というよりも、待つ必要があった。あくまでルフィに決断させる…というのがバンドラの狙いであったためである。成長とは奇なるもの。いついかなる時にそれが成せるかはわからない。

 

だから…。

 

「ふぅ…来たか。」

 

…ルフィがバンドラの元へやってきた今では並々ならぬ覚悟が伺えるのである。バンドラはニヤリと笑うと、狂骨を鞘に収める。

 

「…結論を聞こう。」

 

「正直…俺はお前とは戦いたくねえ。…でも、エースを助けにも行かなくちゃいけねえッ!!だから、それを邪魔するなら…俺はお前をぶっ飛ばしてでも行くッ!!」

 

…上から見ているビビや遅れてやってきたウタには複雑だった。

 

今まで遊びで喧嘩をすることはあっても、今の二人は決意が違う。方や兄を救うために、方や相手を止めるために。喧嘩ではなく、決闘なのだ。

 

バンドラが首をこきりと鳴らす。

 

「…七武海、天帝バンドラ。麦わらのルフィを敵とみなし…押して参るッ!!」

 

「ゴムゴムのぉぉ…『(ピストル)』ッ!!」

 

バンドラの顔を目掛けて、伸びる拳を打ち込むルフィ。

 

バンドラはそれを易々回避する。

 

「『風の刃(ラーマ・バン)』ッ!!」

 

風を纏った狂骨から縦薙に飛ばされる刃風。

 

ルフィの頬に切り傷をつける。

 

「ゴムゴムのぉぉぉ…『鞭』ッ!!」

 

ルフィは地面に降りるとそのまましなる蹴りがバンドラに伸びる。

 

バンドラはそれを上に跳んで回避。

 

そのまま狂骨に冷気を纏わせた。

 

「『吹雪一刃(タンペート・ド・ネージュ)』ッ!!」

 

地面を凍てつかせる斬撃。

それがルフィへと飛んでいく。ルフィは慌てた様子でその斬刃を避け、武舞台に着地する。斬刃の通った場所は張り立った霜柱がたくさん立っていた。砕けた武舞台が凍りついている。

 

「危ねえ…。…青キジに似てるな。」

 

「本気で来いよ。俺とやるんだろ?」

 

「…『ギア・2(セカンド)』ッ!!」

 

ルフィの腕がポンプのように重なる。

ゴムの形状により、異常なまで血流を加速させることでゴムの血管は血圧に耐え切れる為、瞬発力を爆発的に高める力。普通なら心臓が爆発してしまうだろうが、ゴム人間のルフィは衝撃に耐えていた。

 

「…あの時の…か。」

 

「ゴムゴムのぉぉ…『JET(ピストル)』ッ!!」

 

「…。」

 

まさに一瞬のできごと。

バンドラはその拳を首を傾げて回避した。

 

…先ほどよりもスピードが上がっている。見聞色を使わなければ、バンドラでも避けられるか怪しかった。

 

「…なるほど。…こっちも本腰入れないと…試してみるか。」

 

「ゴムゴムのぉぉぉ…『JET(ウィップ)』ッ!!」

 

「『霧害(ミラージュ)』」

 

バンドラの周りに霧が発生する。

 

ルフィの蹴りがついにバンドラを捕らえた…かと思いきや、バンドラの身体は空中に霧散。

 

「ッ!?どこだッ!!」

 

消えたバンドラを探すルフィ。

しかし、武舞台からバンドラは消えてはいない。

 

「『氷の刀(エペ・グラース)』ッ!!」

 

「うわぁぁッ!?」

 

何もない空中から氷の刀がいくつもルフィに降り注ぐ。

 

ルフィはそれを最初は避けていたが、慣れてきたのか拳でかち割って行った。

 

「…後ろにご注意。」

 

「ッ!?」

 

聞こえた声に瞬時に反応するルフィ。拳を後ろに向かって打ち込むが、バンドラはそれを余裕のある顔で回避。左手で伸びた腕をギュッと掴むとそのまま後ろに投げる。

 

「うわぁぁぁあ〜ッ!!」

 

円心力でそのまま後ろへとぶっ飛ぶルフィ。しかし、武舞台を掴み、なんとか武舞台へと戻ってきた。

 

「…はぁ…はぁ…くっ。」

 

「…ここいらでウォーミングアップは終わりだ。潮時だ。」

 

「ハァ…ハァ…俺は…エースを助けに行かなきゃ…いけねえんだよッ!!」

 

バンドラに向かってルフィの蹴りが飛んでくる。

 

それをバンドラは左掌でガシッと掴んで受け止める。

 

「灸を据えてやる必要があるみたいだな。」

 

「くっ…!!」

 

ルフィは即座に足を戻そうとするが、そんな隙をバンドラは与えない。バンドラは足を掴むとそのままルフィの身体を引き寄せる。

 

「うわぁぁぁぁッ!?」

 

「ハッ!!」

 

バンドラは狂骨を上空に投げる。そして、バンドラはルフィの腹に狂骨を持っていた右掌を押し当てた。直後、ルフィの腹に灼熱感と衝撃が走る。まるで腹の中で何かが爆発したようなそんな感覚だった。

 

足を離すとルフィはその場に血を吐いて倒れた。

 

ウタとビビはもう…見てられなかった。

 

「………。」

 

「…俺は…俺は…助けに行かなきゃ…いけねえんだ…。エースの…たった一人の…弟だから…。俺は…諦め…ねぇ…。」

 

ボロボロの身体でもう一度立ちあがろうとするルフィ。しかし、パシフィスタとの戦いの傷も癒えていない以上、状況は芳しくなかった。バンドラはただその様子を見届ける。

 

「……ッ!!」

 

「…当たるか。そんなパンチ。」

 

最後の足掻きと言わんばかりに拳を振るうルフィ。しかし、振るわれた拳は全くもって見当違いの場所に飛んでいく。バンドラは静かにそれを避けた。

 

「…助けに…いくん…だ…。」

 

「これはエースの冒険の結果だ。お前は水を差すってのか。」

 

「例えそうなろうとも…俺は…エースの弟だから…!!俺が行かなきゃ…今、行かなきゃ…後悔する…ッ!!」

 

若く無様。

口元は垂れ流した血に汚れ、怒気のはらんだ目は微かに燃える炎のよう。バンドラが一太刀でも攻撃すれば刈り取れそうなほど。しかし、執念だけは図太かった。

 

…その姿がバンドラはかつて、ヤマトを助けようと絶対に敵わないカイドウ(相手)に向かって行った自分と重なった。

 

「…俺はッ!!…もう…誰も失いたくねえんだ…ッ!!もう、兄ちゃんを失いたく…ねえんだよッ!!」

 

「…全く、昔から弱えくせに…一丁前なことばかり言いやがって。」

 

先程と違い動かないバンドラ。それもそうだろう。ルフィの奴が動けないからだ。最後に言った本心。まるで…いや、まさに子どものようなその文言。家族を失いたくない一心で戦おうとする少年は立ったまま、何もできずにいた。もう、身体が言うことを聞かない。

 

「…その身体で何処へ行く。その身体で何を見る。…人は死ぬんだよ。お前が言ったことだ。今は休め。…そうすりゃ、連れて行ってやる。」

 

「………え?」

 

「…ただし、何があろうと注意を切るな。油断をするな。お前は…死ぬなよ?…そして、どんな結果になろうと後悔はするな。」

 

そう言ってバンドラは振り向く。

隙だらけの背中にルフィはふっと笑った。そして、糸が切れたようにその場に倒れた。

 

「「ルフィ(さん)ッ!?」」

 

ウタとビビが駆け寄る。

ビビが声を出したのはもう完全に気絶していたからだ。ヤマトとハンコック、レベッカも観覧席から降りてきた。

 

「…お主、なぜ、あの小童を連れて行く気になったんじゃ。…間違いなく、死ぬぞ。あの小僧。」

 

「…ハハッ。…そりゃ、あいつの折れない心が似てたからだよ。なぁ。ヤマト。」

 

ヤマトはふっと微笑みながらそうだねっと答える。ハンコックは首を傾げて、キョトンとしていた。バンドラは息を吐きながら、椅子に座る。

 

「…アイツの傷が癒えたら…どうするか。」

 

「白ひげの親父さんと戦うの?」

 

「…それは無理だな…。」

 

バンドラは暗い顔で笑う。

…いくら、バンドラでも白ひげを相手にするのは嫌だ。彼には並々ならぬ恩情があるからである。

 

「…しゃあない。乗り込むしかねえな。俺たちは俺たちで。」

 

「ハハッ。そりゃいいね。」

 

笑うヤマトにバンドラも笑い返す。

…ハンコックもそんな二人を見てふっと笑っていた。




…もうすぐ戦争開始でございます。
皆様的にはその後のナミさんとバンドラさんの同棲ライフの方が上がるのかな?バトルバトルだの結構強引にここまで進めてきたので、反動でイチャイチャ書きすぎたらすんません。(2年間やることないし)

次回は箸休めでハンコックとあれやこれやか、ルフィ起こして即決行か少々迷い中。ウタ、ビビ、レベッカはどっかで書きたいなぁ…。ウェザリア連れてって見せつける?……なにを。

では。
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