燃ゆる龍、覇道の道征く   作:紳爾零士

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第226話

「『暴風(トルネロ)』ッ!!」

 

「うわぁぁぁッ!?」

 

飛ばされる雑兵。もちろん、それぞれの強さはバンドラにとっては取るに足らない。しかし…。

 

「ハァ…ハァ…くっ…。わらわら出てきやがって…。」

 

バンドラは肩で息をしている状態だった。

胸部から腹部にかけての火傷。身体中の刀傷は去ることながら、そろそろ天神災害のリミットが迫っていた。

 

「…チッ。」

 

バンドラの視界にあるものが映る。

そこには少し血を出したスムージーの姿だった。スムージーもヤマトも強い。四皇の幹部だし、それほどの力は持っているからだ。しかし、容赦しない三大将は四皇と同じく海の均衡を守る立場にある。並大抵の実力ではない。

 

「…ッ!!」

 

「おっとっと〜。凄いね〜?わっしを意地でも麦わらのところにゃ行かせないつもりか。」

 

「…私もバンドラ(アイツ)には返せない恩がある。お前を行かせるわけにはいかない。それが私にできる罪滅ぼしだッ!!」

 

スムージーの突きが黄猿を貫こうとする。しかし、黄猿は光になって回避した。ワープした場所で悠々と指を差し、その先からレーザーを溜める黄猿。

 

その黄猿に向かって鞭が振り落とされるが、黄猿はそれをも避けた。

 

「ッ!?」

 

「遅いね〜?」

 

カリファの身体を蹴り抜く黄猿。カリファも武装色でそれをガードするが、疲弊しきった身体には全てのダメージをガードし切るのは無理だった。口から血を吐くカリファ。

 

レイジュもその黄猿に蹴りをかまそうと飛ぶが、黄猿はそれをも回避。

 

レイジュを下へと蹴り落とした。

 

「ッ!?」

 

「よく頑張るね〜?ジェルマの娘〜。天帝になにか、弱みでも握られているのかなぁ?」

 

レイジュの身体を踏みつけながら、下へと指を差す黄猿。その先からはレーザーが光っていた。レイジュはその痛みに苦悶に歪んだ表情を浮かべる。

 

「…私は…私たちは…彼を信じている…!!彼に救われたもの、彼に拾われたもの…いろんな人が居るの…!!だから…彼の為ならみんな死んでも構わないわ…!!」

 

「怖いね〜?この執念。病的なまでのこれを政府は野放しにしてきたんだね。安心して死ぬといいよォ?」

 

「…それを俺が許すと思うか?」

 

「ッ!?」

 

黄猿は目の前のレイジュに意識を取られていた。だからか、少しバンドラの攻撃に対して反応が遅れてしまう。こめかみからツーっと血を流す黄猿。あと一歩のところでバンドラの斬撃から光となって避けたのだった。

 

「天帝…その傷でよくもまぁ、こんなにも早く動けるね〜?」

 

「ハァ…ハァ…。へっ…親父もルフィも気合い出してんだ…!!俺がへばってどうするんだよ?…それになぁ、どれだけ辛かろうが苦しかろうが俺は俺の仲間を見殺しになんて出来るかってんだ。」

 

「『八尺瓊勾玉』〜!!」

 

光の球がバンドラに向かって飛ぶ。

 

バンドラはそれを切り裂き、黄猿に向かって距離を詰めるが…初めのような全てを避ける余裕はなく、少し掠ってしまっていた。

 

「『狩斬染雨(かきぞめ)』ッ!!」

 

バンドラの突きが驟雨のように黄猿を襲う。

 

その早い突きを黄猿は涼しげな顔で避けるが、腹や頬に一閃。傷がついていた。

 

「怖いね〜。君も十分化け物だよぉ〜?『天叢雲剣』」

 

「『刃骨(じんこつ)阿波羅(あばら)』ッ!!」

 

天叢雲剣に滑らせ、斬撃を打つバンドラ。まるで包み込むかのように回転する横薙ぎの斬撃の応酬に堪らず、黄猿も飛んでいく。

 

黄猿はバンドラの背後に立つとそのままバンドラの背を斬ろうとするが、バンドラはそれを狂骨で受け止めた。

 

「ぐっ…!!」

 

「もうボロボロだね〜?…このままじゃあ麦わらのルフィがポートガス・D・エースの下へと行ってしまうね〜。」

 

「…へっ。それが親父の意思なんだ。…息子が叶えないでどうすんだよ…!!…踏ん張れよ。俺。吹けよ…嵐ッ!!『重化雷舞(オーバードライブ)』ッ!!」

 

天神災害からの重化雷舞。

あまりの体への負担に節々から血が吹き出していた。レイジュやスムージーの顔が青ざめている。

 

「俺はテメェ如きに止められるタマじゃねえんだ…!!人並みに家庭を作って、人並みに海を生きて…人並みに死ぬッ!!俺の夢をコイツらは全うさせてくれるッ!!親父は支えてくれるッ!!だからこそ、本気で戦っていいって言えるんだよッ!!」

 

「もう限界でしょうに。『八尺瓊勾玉』ッ!!」

 

「数秒だ。」

 

バンドラが地面を蹴ると無数の光線を喰らいつつも、黄猿の下へと辿り着く。それは黄猿が避けれないほどである。黄猿のこめかみから冷や汗がツーっと垂れる。

 

「…テメェに俺が与えられるのは。」

 

「こりゃまずいね〜…?」

 

「『刃骨(じんこつ)射螺皇鞭(しゃれこうべ)』ッ!!」

 

縦薙ぎの一撃、それは黄猿を割くのではなく、黄猿を叩き落としたのである。地面に落ちた黄猿は血だらけになり、サングラスのレンズは割れていた。

 

「ハァ…ハァ…。」

 

…バンドラもよろけていた。足元がおぼつかない。最後に喰らったレーザーがバンドラの身体を貫いていたそれが…致命打になっていたのだ。

 

「バンドラッ!!」

 

倒れそうなバンドラをレイジュが優しく抱き止める。内臓にこそ達していないものの、流した血の量が多いことや重化雷舞の無理が祟っていた。

 

「もうだめよ!!…ここで逃げても誰も文句は言わないわっ。だから…。」

 

「…まだだ…。まだみんな…戦ってる。俺はまだ…やれる…!!」

 

それでも立ちあがろうとするバンドラをレイジュは必死に抱き止める。バンドラの視線の向こうにはボロボロになって戦っているヤマトやモネ、凍ってしまったシュガーやその後ろで戦っているウタ。そして、処刑台へとただ走るルフィとその前へと立ち上がる祖父ガープなど…。戦乱に次ぐ戦乱が見えていた。

 

「…安心しろ…。戦で死ぬのは…いつも…英雄(ヒーロー)だ…。俺はまだ…そんな大層なもんになりきれちゃいない…。この刀を振るわなきゃな…俺はここで存在意義を失うんだわ。…だから…。」

 

「…いや…嫌よ…。」

 

消え入るような声でそう言うレイジュ。その目には微かに涙を浮かべていた。バンドラは手でその涙を拭う。

 

…ヴィンスモーク家には父母と三男を除いて感情はなかった。その代わり、戦闘技術はずば抜けており、戦争屋としてピカイチだった。しかし、レイジュはバンドラに人にしてもらった。感情を持ち得ていない自身のためにバンドラは父親たるヴィンスモーク・ジャッジに憤慨し、そして…勝ったのである。

 

「…嫌なの…!!もう誰かが…大切な…誰かが居なくなるのは…!!」

 

滴り落ちる大粒の涙。

レイジュは他でもない母親を亡くしている。他の兄弟よりも長く彼女を知っているからか、人知れず泣いた。父親だって同じだったと知るのは少し遅すぎた。故に母の寵愛を一身に受け、文字通りまっすぐ育ったサンジをレイジュは好きだった。初めて家族と言えたのだ。

 

バンドラを抱く腕が強くなる。

一番上だから、いや、ヴィンスモークの戦士だから普段は絶対にこんな情けない姿をレイジュは見せない。

 

「…安心しろ。俺が一度でも…テメェらの前から居なくなったこと…あったか?」

 

バンドラはそんなレイジュの頭を優しく撫でる。

バンドラの頭の中には色んなことが思い浮かんでいた。…ビビには怒られるだろうな…とか、ハンコックとは次にどこへ行こうか…とか。ただそれ以前に自分が死ぬというビジョンが見えなかったのである。

 

「…俺は必ず生きてお前らと帰る。…約束する。だから…泣くな。お前らが笑ってくれりゃ俺は…鬼になれる。」

 

「…なにそれ。…絶対に倒れないで。死なないで。…許さないから。」

 

ギュッと握っていた手が優しく解かれる。バンドラはレイジュの涙を指で拭うと、晴れやかな笑みであぁと答えた。

 

タッタッタッと走る背を見て、レイジュも糸が切れたかのようにその場にへたれこんだ。

 

「あ〜らら。…せっかくのボイン姉ちゃん達が。こんなに居たら久しく楽しめるだろうに。なんでこんなところまで来ちゃったわけよ。」

 

「ハァ…ハァ…。バンドラが…行きたいって言う場所には…絶対にボク達もついて行くんだ…。彼を…無茶させないために…。」

 

ヤマトは金棒を握り、青キジへと振り回す。

 

しかし、青キジはそれを避けると氷の矛を空中に顕現し、ヤマトへと飛ばした。

 

ヤマトはそれを金棒で叩き割る。

 

「俺ァ。別にお前らに恨みはねえんだぜ?…あの馬鹿を止めるのには賛成だ。だが、選んだ道から外れちゃいけねえだろ。俺は海軍、お前らは海賊。…恨みっこなしで戦わなきゃいけねえ。それを無茶なんて言っちゃあいけねえよ。」

 

青キジはふぅ…と息を吐いた。ヤマトも人獣型になっているが、戦闘経験の差から青キジには敵わない。モネもシュガーを壊さないようになんとか守っている状況だった。

 

「…まだやるってんのかい。だったら、相手にならなきゃいけねえな。」

 

青キジはエレジアで何が起こったのかを知っている。だからこそ、バンドラという男の危険度を目に見えて知っていたのである。…その時だった。風が…ヤマト達を守るように吹き荒れる。

 

「…そんな身体でよくやるよ。全く。」

 

青キジはやれやれと呆れたようにそう言った。そこには誰がどう見てもズタボロのバンドラが立っていた。本気も本気。しかし、身体はそれについていけてなかった。

 

「バン…ドラ…。」

 

「…ウタ達をよく守ってくれた。ここからは…俺に任せろ。」

 

いつもは頼れる背中。しかし、ヤマトはどうしてもそのバンドラを食い止めなくちゃいけない。…そんな気がしていた。向かうバンドラの腕をヤマトがぎゅっと抱く。

 

「…ヤダ。行かないでよ…。」

 

「…俺は絶対死なねえ。約束する。」

 

何度目かのその言葉は少し軽いようにも思えた。バンドラはヤマトの手をゆっくりと解く。

 

「…言ってるだろ?いい男ってのは良い女との約束を…絶対に破らねえもんだって。それに…他でもない。ヤマト。お前との約束だ。…俺は絶対に破らねえ。」

 

「…。」

 

その笑みにヤマトは少し寂しさを感じた。

 

…信じるしかない。

 

そう心に決めて、ヤマトはバンドラの背を見送った。

 

「…あらら。相当、ドンパチやってきたみたいだ。ボロボロじゃねえの。」

 

「…アンタは一番好きだよ。だが、ウチの船員に手ェ出されちゃあ、俺は引けねえなぁ…。」

 

「先に手ェ出してきたのはどっちだってんだ。」

 

睨む青キジにバンドラも目を切らない。青キジはヤマトとの戦いで疲弊はしているものの、目立った傷はなく、対してバンドラはボロボロだった。青キジが構える。

 

「まぁ…昔の同僚のよしみだ。苦しまずに逝かせてやるよ。」

 

「ふん、お優しいねぇ…。だが、俺は多くのものを背負いすぎたみたいだ。例え、足を切られようが、喉を潰されようが…命火消すことは許されない。…俺は天帝バンドラ。…望まれなくても災いとなる。」

 

そう言ってバンドラが放つのは異形とまで言える覇気。しのごの言えない。そういった切羽詰まった覚悟が伺える。青キジの顔にも自分は無事では済まないな…と言った表情が窺えた。

 

「かかってきな。」

 

「…あぁ。」

 

今、まさに二人は衝突しようとしていた。

…しかし、それは壊れる処刑台と共に燃える炎の中に立つ人物の救出成功にて閉幕することになる。

 

「エースッ!!」

 

「お前は昔からそうさッ!!ルフィッ!!俺の言うこともろくに聞かねえで無茶ばっかりしやがってッ!!」

 

…火拳のエース救出成功。

手には弟ルフィと共に。バンドラはその様子を見てニヤリと笑う。

 

「…あらら。本当にやっちまいやがったよ。ったく。…しゃあねえ…なッ!!」

 

「チッ!!待てッ!!」

 

青キジを追いかけるバンドラ。

青キジはエースの首を取ろうと前に出る。エースは救われた。戦争は終わりだ。…誰もがそう思っていた。




頂上戦争もクライマックスに近いといったところで御座います。バンドラさん、この後も波乱の展開です。ワザワザの実の力の一端も見れそうですな。

因みにカイドウさんとの戦いは2話ぐらい続く予定です。なぜ、バンドラは世界最強生物とやり合えたのか、それが少しわかる場面で御座います。このままだと何が強いのか少しあやふやですからね。バンドラの覇気にも少し特徴があるそうで…。

思うけどウタちゃん、赤髪海賊団と会うことになるんだよなぁ…。修羅場でござる。このカイドウさんの枠をシャンクスにしようって考えもありましたが…まぁ、強さの値としてはカイドウさんが一番わかりやすいかなっと。

頂上戦争が終われば箸休め。
暫くは平和です。物語も大きくは進みません。3D2Yだからね。仕方ない。バンドラ達も一皮剥けます。狂骨も一皮剥けます。1番の大盛り上がりがここら辺でかつ、一番書きたかった場面がここら辺です。

バンドラvs〇〇→バンドラvsカイドウ

気合を入れて書かせてもらいます。時間はあるんでね。お楽しみに。まさに災害級の戦いになります。…生きるか死ぬか。それでは。

スッ…

  • ヤマト
  • ウタ
  • レイジュ
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  • レベッカ
  • ビビ
  • カリファ
  • アイン
  • カリーナ
  • シュガー
  • ナミ(同棲?)
  • ハンコック
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